暗殺者のうちが何でハンターにならなあかんねん   作:幻滅旅団

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#19 ネン×ヲ×キタエロ

 ゴンとキルアが天空闘技場にやってきて、さらに【纏】を覚えて4日目。

 3人は当然のようにストレート勝ちで、一気に100階まで到達した。

 

『3日前に登録してから怒涛の一発KOでの6連勝! 手刀のキルア、押し出しのゴン、アッパーのラミナ!! この3人組の勢いを止める者はいないのかぁ!?』

 

 などと騒がれていたが、ラミナ達は一切気にすることなく【纏】の修行に集中していた。

 今日からは闘技場内の個室に移れるので、さっさと移った3人は早速【纏】の特訓を始める。

 

「ほれ~、ただ【纏】すればええんちゃうぞ~。その感覚が当たり前になるまで、ひたすら瞑想や」

 

 【纏】において重要なのは、ほぼ無意識で発動・維持を出来るようになることだ。

 敵意を感じた時や危険や戦闘を意識した時に、反射的に【纏】が発動することが理想である。

 

 そのためにはひたすら【纏】を続けるしかない。

 こればっかりは積み重ねしかないのだ。もちろん、その感覚を掴む早さは人によって差があるが。

 

 キルアとゴンは自然体で立ち、目を閉じて瞑想している。

 ラミナは2人に暇があれば、どこでも【纏】の瞑想をやらせている。少しでも時間を無駄にせず、【纏】の感覚を掴ませるためだ。

 

(感覚が重要なもんに関しては、やっぱ筋がええな)

 

 すでにゴンとキルアの【纏】はかなり精錬されてきている。目覚めさせた時に比べると、オーラもなだらかで静かになってきている。

 まだまだ乱れる事が多いし、オーラの量もまちまちで弱々しいが、目覚めさせて数日である事を考えると十分すぎる上達の早さである。

 もちろん、ラミナは一切褒めないが。

 

(200階まで後10日。……180階くらいで【練】を一度やらせてみよか。出来れば200階の連中と戦わせる前に【凝】を教えられれば、そうそう遅れはとらんやろ。まぁ、相手の【発】次第やけど)

 

 それでも放出系や変化系の【発】を躱せる手段を教えておかなければ、死ぬ危険性が段違いである。

 2人の才能次第ではあるし、ぶっちゃけ異常な速度で教え込もうとしているが、それでも普通について来れそうな気がしているラミナだった。

 

(これがホンマモンの天才っちゅう奴か。ゾルディックが期待するんも納得やな)

 

 しかし、それは危険な場に出やすいことでもある。プロハンターとて実力も素質もピンキリである。

 その中でゴンとキルアは間違いなくトップレベルの素質の持ち主だ。この2人の好奇心の高さも合わされば、様々な仕事の現場に参加することになるだろう。

 魔獣の中にも念を使う奴はいるし、賞金首にもごまんといる。なので、修羅場に巻き込まれる可能性は非常に高いと考えている。

 

(……いずれはうちとも殺り合うかもしれん)

 

 ラミナは暗殺者だ。賞金首になりやすい。

 仕事の内容によっては、ぶつかり合う可能性はある。

 その時はラミナは逃げる事も、手を抜くことも出来ないはずだ。それが自分の流儀なのだから。仕事を引き受けた以上、例え知り合いが敵にいようとも、殺しても達成する。もちろん、依頼を受ける前にゴン達がいるのが分かれば、引き受けないという方法を取るつもりではあるが。

 

(まぁ、その時にはうちの手から離れとるやろけどな)

 

 一人前になったならば、2人が選ぶことに文句を言う権利はない。

 そして一人前ならば、殺しても寂しくはなるだろうが、悲しくはならないだろう。

 

(全く……難儀なもんやで)

 

 ラミナは目を閉じて、小さく鼻でため息を吐くのだった。

 

 

 

 それから更に5日後。

 順調に150階まで到達したゴン達は、【纏】の修行も順調すぎる程進んでいた。

 

「ちょっとレベル上げよか。外に出るで」

 

 ラミナの提案で向かったのは、人気がなくそこそこ広い空き地だった。

 

「なにすんの?」

 

「【纏】を維持したままで、うちと追いかけっこや」

 

「追いかけっこって言っても……」

 

 ゴンは周囲を見渡す。空き地はもちろん障害物など見当たらない。

 

「もちろん範囲はこの空き地の中。もちろん攻撃アリ。まぁ、怪我せん程度でな」

 

「俺達はラミナを追えばいいの?」

 

「そやな。ただし、うちはちょっとズルするで」

 

「「ズル?」」

 

 ゴンとキルアが首を傾げると、ラミナの左手に短刀が出現する。

 突如現れた短刀に2人は目を見開く。

 

「それも念なの?」

 

「そうや。【発】で作り出したもんや。ただ、これはうち独自のモンやから、お前らが出来るわけやないで」

 

「そんなことも出来んのか……」

 

「ほな、始めるで。どんな時でも【纏】を維持せぇよ」

 

「「押忍!」」

 

 ラミナはもう2人のノリにリアクションをすることを諦めていた。

 

 開始と同時にラミナの姿が溶け込むように消える。

 2人は目を見開くも、すぐに顔を引き締めて周囲の気配を探る。

 

 すると、

 

「っ!? 【纏】が……!」

 

 気配を探ろうとすると、【纏】が乱れ始めた。

 2人は慌てて【纏】を練り直す。

 

「がっ!」

 

「でっ!」

 

「【纏】だけに集中しとったら、うちを捕まえられへんでぇ。動きながら、気配を探りながら、【纏】を維持できるようにせんと大怪我すんで」

 

 ラミナが2人の後頭部を小突いて言う。そして、また姿を消す。

 ゴンとキルアは駆け出して、周囲の気配を探る。しかし、やはり【纏】が乱れ始め、どれにも集中しきれない。

 

「くっ! (少しやることが増えただけでここまで【纏】を保つのが難しいなんて!)」

 

「ほれほれ、どこ見とんねん」

 

「イタっ!」

 

「くそっ! (全っ然気配を感じねぇ。姿が消えるってどんな念なんだ!?)」

 

「もっと周りに気を配れや」

 

「ってぇ! くっそ~!」

 

 その後もゴンとキルアはラミナを全く捉えることが出来ず、3時間が経過した。

 2人は荒く息を吐いて座り込み、【纏】も維持出来なくなっていた。

 ラミナは短刀を消して、疲れ切った2人を苦笑しながら見つめる。

 

「分かったやろ? 【纏】の修行にとことん費やす理由が」

 

「……うん。全然思う様に動けなかった……」

 

「命の危険があるって思ってるから、尚更乱れると焦って【纏】に気を取られるな……」

 

「けど、【纏】が出来へんと、この後教える予定の【練】も維持出来へんで? 戦いでは【練】の方が重視されるでな」

 

「うえ~……」

 

 キルアはうんざりしたように項垂れる。ゴンも空を仰いで、道のりの長さを思い知る。

 

「明日もやるで。それとこれからは【纏】をずっと維持すること。試合の時もな」

 

「ずっとって……寝るときも?」

 

「もちろん。それくらい出来んと、戦いの中で【纏】を維持出来へんやろ。ヒソカ相手に【纏】に意識割く余裕なんざないで」

 

「まぁ、そうだよな……」

 

 ラミナの言葉に納得するしかないゴンとキルア。

 敵は【練】を使って攻撃してくるし、ラミナのように念で作った武器を使ってくる者もいる。【纏】を維持出来ないと話にならない。

 その上で相手の素の戦闘技術にも対応しなければいけない。

 ヒソカは念無しでも、かなりの強さを誇っている。

 というか、ゴンでは念を覚えても、素のヒソカに勝てない可能性がある。

 

「うちはヒソカの念を知らん。まぁ、ヒソカに限らず、念能力者と戦うときは相手の実力+念能力が何かを見極めなあかん。さっきのうちみたいに見えなくする技や能力もある。念能力者同士の戦いはやることがたんまりやでな」

 

「どっひ~……!」

 

「そんなに覚える事あんのかよ~……!」

 

 ゴンとキルアは仰向けに倒れる。自分達がまだスタート地点に立ったどころか、立つ準備をしている段階であることを理解したのだった。

 それでもやめるわけにもいかない。

 ゴンとキルアは努力を続けることを改めて誓うのだった。

 

 

 

 そして、それから6日後。

 3人は180階に到達した。150階からは登録者数が多かったようで、試合が隔日で行われることになった。その分、修行に時間を割けたのでラミナ達には文句はなかった。

 

「今日からは【練】の修行も始めるで」

 

「「押忍!」」

 

「……気に入っとんなぁ」

 

 ラミナは呆れて2人を見るも、すぐに切り替えて説明を始める。

 

「【練】は前に説明した通り、オーラを多めに放出する技や。イメージとしては全身から体の中心に力を溜めて、それを一気に解き放つ感じや」

 

 そう言うとラミナのオーラが一回り膨れ上がり、力強さが増す。今にも爆発しそうな程の圧があり、ゴンとキルアは冷や汗が流れる。

 

「ここで間違うたらあかんのは、ただオーラを強く出すだけやとすぐにガス欠することや。しかも、それやと結局スカスカで相手の攻撃は防げへん。強く出したと同時に【纏】を意識せなあかんで」

 

「蒸気っていうよりは、風船みたいなイメージか……」

 

「それよりはボールの方がええ。【纏】がボール、オーラはボールの中の空気っちゅう感じやな。空気を多く入れれば、ボールは張って硬く感じるやろ?」

 

「なるほど……」

 

「けど、もちろんその分【纏】のコントロールは難しくなる。気を緩めると、途端に弾けてまう」

 

「そうなるとオーラを無駄にするだけってわけか……」

 

「さらに【練】の密度を高めれば、その分攻防力も上がる。これが【纏】と【練】を毎日行えっちゅう最大の理由や」

 

 鉄や砂を圧し固めて硬度を上げるように、オーラも密度を上げれば硬くなる。

 故に毎日【纏】と【練】を行い、その密度を高め、その硬度をすぐさま出せるように感覚を覚える必要がある。

 

「まずはオーラを強く出すことからや。やってみ」

 

 ラミナは【練】を手本のように維持したまま、ゴンとキルアにやらせる。

 ゴンとキルアは拳を握って脇を締め、目を閉じて集中する。

 

 髪の毛の先や足先から力を体の中心に集めるイメージを連想する。そして、それを一気に解き放って外に。

 

 ブオッ!とゴンとキルアのオーラが炎のように膨れ上がる。

 

「【纏】!!」

 

「「っ!!」」

 

 ラミナの一喝に、ゴンとキルアは噴き出したオーラを押し留めようと意識する。

 2人のオーラは普段の二回りほど大きく膨れ上がり、今にも弾けそうなほど不安定なものだった。

 といっても、初めて行ったのだから不安定なのは当然である。

 

「【纏】の意識が遅いし、オーラもデカすぎ。今の半分程度までには抑えんとあかん。それにまだまだ力も弱い」

 

「ぷはぁ! は、初めてなんだからしょうがねぇだろ!」

 

「ふぅ……。30秒程度なのに結構疲れるね」

 

「【練】はずっと力んどる状態に等しいでな。それだけ体力も使うんは当然や。それに加えて、ただ全力で動き回ることより集中力もいる。慣れるまで疲労感は普段とは比べもんにならんで」

 

 ラミナは【練】を解いて言う。

 キルアとゴンは息を整えて汗を拭う。

 

「【纏】【練】【絶】の順に1セットとして、それを10セット。出来る限り【纏】の大きさを維持してオーラを強めることを意識せぇや。ゆっくりでもええ。200階に行くまでに素早く安定した【練】を出来るよう目指すで」

 

「鬼教官かよ!?」

 

「なんや、優しぃ方がええんか? それでもええけど、ヒソカと戦えるんは数か月先になんで」

 

「ぐ……!?」

 

「今のペースって普通とどれくらい違うの?」

 

「ん~……。まぁ、ちょいと早いくらいやな」

 

(うちやマチ姉達と比べれば、やけどな。そこらへんの奴と比べたら倍以上やけど)

 

 ゴンとキルアは素質も高く感性も豊かであるのも原因だろうが、それ以上に同年齢の者達と比べて肉体が恐ろしく鍛え上げられている。

 恐らくラミナが何もしなくても、きっかけを見つけるだけで2人はそう遠くない内に自然と念を目覚めさせていただろう。

 

 後は簡単なコツと経験を積ませれば、この2人は自然と最適のやり方に気づくことが出来る。

 

 ラミナはそう評価していた。

 

(っちゅうても、あと半年足らずで全部を実戦レベルまで教え込むのは無理。とりあえず最低限の知識とコツを教え込んで、後は自分達で鍛えて行くしかない)

 

「ほれ、回復したんならさっさとやるで。ゲームで言うなら、まだチュートリアルすら終わってへん。レベルアップしたいんなら、さっさと終わらせんとな」

 

「「押忍!」」

 

 ゴンとキルアは気合を入れ直して、特訓を再開する。

 

 そして、4日後。

 ラミナ達は遂に200階に足を踏み入れた。

 

 

 

 エレベーターを降りたゴンとキルアは、受付に向かう通路に足を踏み入れた途端、ゾクリと怖気が背中に走る。

 咄嗟に【纏】を発動すると、怖気が大分和らぐの感じたが、それでも嫌な予感は消えない。

 

「いきなり殺気かよ……」

 

「【纏】が出来なかったら、進む気にもならなかったね……」

 

「おい、ヒソカ。試すんは十分やろ」

 

「「!!」」

 

「くっくっくっ♠ そのようだね♥」

 

 通路の奥角からヒソカが笑いながら顔を出す。

 ラミナはジト目を向けながら通路を進み、ゴン達も続く。

 

「200階クラスへようこそ♥ ラミナがいるなら洗礼は受けずに済みそうだね♣」

 

「そこは相手次第やろ。まだ【発】まで行ってへんし」

 

「君はまだゴン達をここで戦わせる気はないんだろ?」

 

「そらな」

 

「なら、やっぱり問題ないね♦ けど……まだ駄目だね♣」

 

 ヒソカはゴンに顔を向ける。

 

「ラミナが許可を出さないだろうし、僕もまだ君と戦う気は全くない♠」

 

 ヒソカは両人差し指を立てる。

 すると指の間でオーラが蠢き、オーラで♠マークを作り、さらに髑髏マークへと変える。

 

「しっかりと念を学びなよ、ゴン♦ ラミナが許可を出して、かつこのクラスで1勝出来たら相手になろう♥」

 

 そう言って、ヒソカは背を向けて歩き出す。

 それを見送ったラミナ達は登録をするために受付に向かう。

 

「200階クラスへようこそ! こちらに登録の署名をお願いします」

 

 受付嬢から用紙を受け取って登録する3人。

 

「ありがとうございます。それでは、早速参戦の申し込みもなさいますか?」

 

「え? 申し込むの?」

 

「はい。このクラスは申告戦闘制と言いまして、90日間の戦闘準備期間を用意して御座います。その間であれば戦いたい日に戦っていただけるシステムなのです。毎日でも構いませんし、期限ギリギリまで戦わなくても構いません。一度戦闘を行えば、また90日間の戦闘準備期間が与えられます。ただし、期限内に戦わなければ即失格となり、登録抹消となります」

 

「一度戦えば?」

 

「このクラスをクリアするには10勝が必要となります。ちなみにこのクラスからはファイトマネーは発生せず、名誉のみの戦いとなりますのでご了承ください。更にこのクラスからは武器の使用も認められております。怪我、死亡などは自己責任となりますのでご注意ください。そして、10勝する前に4敗してしまいますと、これまた失格となります」

 

「ふ~ん……」

 

「まだ申し込みはせんでええで。うるさそうなハイエナがおるみたいやけどな」

 

 後ろを振り向くと、そこには車椅子に乗った男、左腕がない能面顔の男、そして一本足の義足で杖を突いている者がいた。

 

「……なんか用?」

 

「いいや? 俺達も申し込みたいから並んでいるだけさ」

 

「ほな、すぐ退くわ」

 

「せっかく来たんだからさー。いつなら戦えるか教えてよ。君らと戦ってみたいからさー」

 

 能面顔の男がいやらし気に笑みを浮かべて言う。

 その言葉でゴンとキルアもこの3人が洗礼を受けた者達で、自分達がされたように新入りに標的を定めて勝ち星を稼ぐ連中なのだと理解した。

  

 ラミナは無表情で3人を順に上から下まで観察する。

 

「……ええで。ほな、1人選びぃ。うちが相手したるわ」

 

 ゴンとキルアは目を見開いて、ラミナを見る。

 男達はニヤリと笑みを深めて、顔を見合わせて相談を始める。

 キルアが近づいてきて、小声でラミナに問いかける。

 

「大丈夫なのか?」

 

「別に問題ないわ。小物狙いしか出来ん雑魚やしな。それにお前らに一度念能力者同士の戦いを見せとかんとな。まぁ……参考になる戦いになるんかは怪しいけどな」

 

 ラミナは肩を竦めて、つまらなげに3人を見る。

 キルアも3人に目を向ける。

 正直、キルアの目にも全員が自分達より格下に見える。しかし、それを覆しかねないのが念であると、ズシとの試合でキルアは実感していた。

 なので、念に関しては向こうが上である以上、自分達ではまだ危険だと判断していた。

 

「お待たせ。俺が相手をさせてもらうよ」

 

 声を掛けてきたのは能面顔の男。

 

 ラミナは頷いて、申込用紙に『いつでもオーケー』の欄にチェックを入れる。

 

「これでええな」

 

「ああ」

 

「では、ラミナ様は2234号室となります。戦闘日は決定次第お知らせします」

 

 ラミナ達は鍵を受け取って、部屋へと向かう。

 部屋は100階の時とは違って、かなり豪華で広くなっていた。

 

 荷物を置いたラミナは、ふとテレビに目を向けると画面に通知が表示されていた。

 

『戦闘日決定! 225階闘技場にて、3月11日午後3時スタート!』

 

「明日か」

 

 ラミナはそう呟いて、ゴンの部屋へと向かう。

 そして、今日も【纏】【練】【絶】の修行をやらせながら、明日の予定を話した。

 

「はやっ! 明日かよ」

 

「準備は大丈夫?」

 

「いらんいらん。いつでも戦えるようにしとくんがプロやぞ? それより、明日はしっかりと試合を見ときや」

 

 ラミナはゴンの部屋に備え付けられていたワインを傾けながら、余裕全開で言う。

 ゴンとキルアはラミナがそう簡単に負けるとも思っていないが、あまりにも油断しているように見えて不安になる。

 

「それより、そろそろ次の段階に行こか」

 

「「!」」

 

 次の段階と言う言葉にゴンとキルアは一瞬で意識が切り替わる。

 

「遂に【発】か」

 

「いや、ちゃう」

 

「「え?」」

 

「これから教えるんは【凝】っちゅう技や」

 

 ラミナはメモ用紙に【凝】【隠】と書いて、2人に見せる。

 

「え? でも、四大行で残ってるのって……」

 

「【発】やけどな。どっちかと言うと【凝】の方が重要やから、先に教える」

 

「【隠】って方は?」

 

「それはまだ名前だけ覚えとけばええわ。まぁ、説明聞いたら分かるやろうけどな」

 

 そう言いながらラミナが左人差し指を立てる。

 ゴンとキルアは首を傾げる。

 

「よぉ~く目ぇ凝らしてみぃ」

 

「「……」」

 

 言われるがままに2人は目を凝らすが、何も見えるものはない。

 

「一体何なんだよ?」

 

 キルアがそう訊ねた直後、ラミナの指の上に髑髏マークが突如現れる。

 

「「!?」」

 

「これが【隠】。【絶】の応用技で、オーラを消すんやなくて見えにくくする技や」

 

「応用技……」

 

「【隠】の利点は、オーラを保ったまま【絶】のように気配を消せること。そして、今みたいに形を変えたオーラで不意打ちすることが出来る。例えば、うちがお前らに見せた短刀。あれはオーラで具現化したモンやから、【隠】を使えば無手のように見せる事も出来る」

 

 キルアとゴンは【隠】の恐ろしさを理解して、冷や汗が流れる。

 目に映るオーラだけに注意するだけでも厄介なのに、見えないオーラまであるとなると一体どれだけ注意を払わなければいけないのか。

 

「そして【隠】を見破るために使うんが、【練】の応用技の1つ【凝】や」

 

「見えなくなったオーラを見えるようにする技ってこと?」

 

「そうや。両目にオーラを集中して、視力を強化する。まぁ、【凝】は正確には『オーラを集中させる技』や。目だけやなくて拳や脚にも使えるけど、まずは目で使うことを意識することやな。実力者と思われる相手に出会ったら、【纏】の次に【凝】を使うんが鉄則。もちろん定期的に【凝】を使って相手を探る癖も身に着けなあかん」

 

「……もちろん【纏】や【練】を維持してだよな?」

 

「当然やろ」

 

「うがーー!! やっと動きながら数秒【練】を維持できるようになったばっかだってのにぃ!!」

 

 キルアが髪を掻き乱しながら嘆く。

 その様子をゴンは苦笑して見ているが、気持ちは同じだった。

 

「少なくとも【纏】【練】【凝】の3つを戦闘中に素早く使えんと【発】どころやない。今、教えとるんは『相手の念から身を守る技』ばっかや。今のお前らは、まだ念能力者相手に逃げ回ることしか出来んっちゅうことを理解せぇ」

 

 ラミナの言葉にキルアとゴンは顔を引き締めて頷く。

 事実、ラミナとの追いかけっこでは、今のところ必死に気配を探って逃げ回ることで精一杯だからだ。

 

「まずは【練】。そこから全てのオーラを目に集中するんや」

 

 ゴンとキルアは【練】を行い、オーラを目に集めるように意識する。

 

「ぐ……! (きっつ……!)」

 

「う……。(体より小さい所に凝縮するのがこんなに辛いなんて……!)」

 

「ほれ、何が見える?」

 

 ラミナが再び左人差し指を立てる。

 2人は必死にオーラを目に集中させたまま、目を向ける。

 ラミナの指の上に薄っすらと何かが見えた。

 

「……丸?」

 

「いや、0じゃないか?」

 

「残念。8や」

 

「「ぷっはぁ!! きっつー!!」」

 

 ゴンとキルアは【凝】が解けて、息を吐く。

 初めて【練】を使った時と同じくらいの疲労感に襲われる。

 

「ぼんやりとしか見えなかった……」

 

「まだまだ集中させたオーラが足りんっちゅうことやな。【隠】も使い手が強ければ強いほど見えにくくなる。【凝】が下手やと、どんな能力に襲われるか分からんで。しかも、念にはトラップや物を遠隔操作できる能力もある。基本、それらは【隠】で隠されとることが多い。【凝】を使う癖がないと、何をされたか分かる前に死ぬで?」

 

「……聞けば聞くほど暗殺向けじゃん」

 

「そうでもないで。例えば、傷を癒す箱を生み出す能力があるとする。それを戦場に【隠】を使って隠せば味方の援護も出来る。他には偵察機みたいな能力に特化させれば、暗殺者や動物などの動向を探る事も出来る。使い方次第っちゅうことや」

 

「……」

 

「っちゅうことでや。これからは【纏】【絶】【練】【凝】の順で1セット。それを1日20セット。出来る限り素早くな。追いかけっこでも【凝】を使っていくように」

 

「「げっ!」」

 

「ほれ、さっさと始めんかい。朝になってまうで」

 

「「ひぃ~!」」

 

 ゴンとキルアは悲鳴を上げて、修行を再開する。

 

 2人の修行はまだまだ終わりが見えないのだった。

 

 

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