暗殺者のうちが何でハンターにならなあかんねん   作:幻滅旅団

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#29 デート?×ノ×オサソイ

 翌日、ラミナとマチは約束通り街へと買い物に出ていた。

 

 フェイタンとフランクリンは別行動で街をぶらついている。

 

『金、渡しとくわ。下手に暴れんなや。家がバレたら面倒なんやからな』

 

『分かたね』

 

『ああ』

 

 盗みや殺しをされると面倒なので、お小遣いを渡しておいた。

 妹にお小遣いをもらうのはどうかと思うが、金を持っていないのも事実なので諦めてもらうしかなかった。

 

 ラミナとマチは早速和服を扱う店に向かう。

 

「ここやな」

 

「ふぅん」

 

 入ったのは二階建ての店。

 店内には様々な着物や小袖、帯などが並べられている。

 

「ようこそ、おいでやす」

 

 着物を着た店員が声を掛けてくる。

 

「ここって袖なしの半着とか作務衣とかあるか?」

 

「お二階に揃えとります。オーダーメイドも承っておりますので、どうぞお気軽に言ってください」

 

「おおきに」

 

「お客さん、ジャポンの方?」

 

「いんや、親がこの喋り方やってん」

 

「そうどすか~。それではどうぞ、ごゆっくり」

 

 2人は2階に上がる。

 

「あんたの訛りって、やっぱジャポンだったんだね」

 

「みたいやなぁ」

 

「まぁ、あの街でどこの訛りとか何もないけどさ」

 

 人種の坩堝と呼ばれる流星街に訛りなどあってないようなものだ。

 ラミナはもちろん旅団のメンバーとて、人種はバラバラだ。そもそも自分の祖先がどこの出身か分からない者もいるし、親や誕生日、生まれがどこか知らない者もいる。

 なので、今更気にすることではない。

 

 2人は並べられている半着や作務衣に目を通していく。

 

「柄物が多いね」

 

「そら、着物やしなぁ。ん~……赤や緑はパッとせんしなぁ」

 

「派手過ぎるのは嫌だからね」

 

「わぁっとる」

 

 マチの好みは把握しているので、ラミナは頷いて何着を選んでいく。

 

「そういえば、ラミナって和服着ないの?」

 

「ん~……別に嫌いってわけやないで。やけど、髪と合わせると目立ちそうでなぁ」

 

 ただでさえ紅い髪は注目を浴びる事が多い。

 

「別に仕事の時まで着ろなんて言わないけど、今みたいな時くらいはいいんじゃないの?」

 

「まぁなぁ……」

 

「って言うか、アタシも大して髪の色変わんないし。あんたが思うほど目立たないかもよ?」

 

 マチは垂れ流したピンクの髪を摘まみ上げる。確かにマチの髪もかなり目立つ方ではある。

 少なからず納得はするラミナ。

 

「それに目立たないような着物にすればいいでしょ。せっかくだし、あんたも何か選びな」

 

「へいへい……」

 

 その後、マチは白を基調とした半袖の半着に、紺色の帯に紅色の帯紐を購入し、ラミナは黒を基調としたノースリーブの半着、紫の帯に紅色の帯紐を購入した。

 その他にも何着か購入し、更にはマチの部屋に置く家具などを見て回り、気に入ったものがあれば家まで即日配達してもらう手続きをする。

 もちろん、全てラミナの支払いである。

 

 更には食材や酒も買い足して、帰宅する。

 まだフランクリン達は帰って来ておらず、マチは買ったばかりの着物に着替えに行き、ラミナはリビングに荷物を置いて、先に皿洗いと買い足した食材の片づけをする。

 

 皿洗いが終わったところで家具が届き、受け取ってマチと共に部屋へと運ぶ。模様替えを素早く終わらせて、ラミナは続いてマチの服の洗濯をして干し、干しておいたフランクリン達の服を回収する。

 

「携帯、鳴ってたよ」

 

「ん?」

 

 マチに携帯を投げ渡されて、ラミナは確認する。

 メールが届いており、送信元を確認すると知らないアドレスからだった。

 

 メールを開くと、なんとメンチからだった。

 

『やっと見つけたわ! で、今暇? 仕事手伝ってほしいのよね。連絡頂戴。今日中!!』

 

(……面倒やなぁ。けど、無視したらしつこそうやしなぁ。断ってもしつこそうやけど……)

 

「誰から?」

 

「ハンター試験で知り合うたハンターからや。仕事手伝わんかってな」

 

「ハンターから?」

 

「試験官しとった美食ハンターでな。うちは別に食材に興味ないねんけど」

 

「ふぅん」

 

 とりあえず場所、仕事にかかる期間、仕事内容、報酬を尋ねる。

 それと8/20以降すでに仕事が入っていると書き、それに合わせて例え途中でも離脱することも伝える。

 

 すると、1分もせずに返信が来た。

 

(……【バルトア共和国】の【コルゴ樹林】。内容は『密猟者の摘発と捕縛』。期間は約1~2週間。報酬は活躍次第……か)

 

 バルトア共和国は今いるサヘルタ合衆国の隣。飛行船で約3日ほどの距離だ。バルトア共和国からヨークシンまでは約5日。

 十分間に合う日程ではある。

 8/20と期限を定めたのは、単純に早めにヨークシンに入りたいからである。クロロからの依頼をこなすためには、場合によってはマフィアンコミュニティーと接触する必要があるからだ。なので、旅団が動き出す前にヨークシンのマフィアンコミュニティーの動きと戦力を把握しておく必要もある。

 他にはゴン達やクラピカの動向も目を配っておきたいので、出来る限り準備期間を設けたいのだ。

 

 その時、再びメンチからメールが届く。

 

『断っても逃がさないから』

 

「……」

 

 何故ここまで気に入られているのか。

 ラミナは顔を顰めて疑問に思うが、こう言われてしまうと行くしかない。

 ため息を吐いて、到着予定日を連絡する。

 

「はぁ~、メンド……」

 

「なに? 行くの?」

 

「行った方がヨークシンでの仕事に響かんでな。さっさと終わらせてくるわ」

 

「団長、なんでハンター証取らせたんだろうね?」

 

「全くやで……」

 

 マチの隣に座り込んで、背もたれにもたれ込む。

 

「いつ出るの?」

 

「明日の昼には出るわ。そっちはどうするん?」

 

「そうだね……。こっちもそれに合わせて出るわ。ノブナガ探さないといけないし」

 

 ノブナガがどこにいるのかはまだ知らないマチ達。

 あまりのんびりしすぎて、集合日に間に合わなかったら目も当てられない。

 

「ほな、買った食材使い切らなあかんなぁ」

 

「テンプラ食べたい」

 

「げ」

 

 突然の変化球オーダーに頬を引きつかせながら、夕飯の準備を行うラミナ。

 

 そして、今日も食いしん坊達の注文に答えるのに必死になるのだった。

 

 

 

 

 その頃、バルトア共和国。コルゴ樹林近くの都市にあるホテルのスウィートルーム。

 

「ふっふ~ん♪ ラミナ、ゲット~♪」

 

 上機嫌に鼻唄を歌いながら、人差し指で携帯を回して遊ぶメンチ。

 そして、背後を振り返る。

 

「上手くいったわよ」

 

「おう。助かったぜ」

 

 豪華なソファに座っていたのは、サングラスをかけた男。その背後にはリーゼントの男と紫の和服を着たコーンロウの細身の男が立っていた。

 メンチは男の向かいに座って、足を組む。

 

「別にいいわよ。あたしもラミナとは仕事したかったしね。けど、仕事が終わるまでは手出し無用よ。報酬もしっかりと払うわ」

 

「分かってるさ。ハンターとして呼んだ以上、暗殺者だからって問答無用で叩き潰すなんて真似はしねぇよ」

 

「なら、いいけど」 

 

 メンチは半目で男を見つめる。

 

「それで、密猟者共の拠点は見つかったのか?」

 

「数か所は確認したわ。けど、まだ全部じゃないでしょうね。あんた達が追ってたマフィアだけじゃなくて、他にも繋がりがあるみたい」

 

 メンチはハンター試験が終わってから数か月、ここで密猟者達を追っていた。

 コルゴ樹林には特有の動物が多く、その内の数種は絶滅危惧種に指定されている。その指定されている動物達は珍味と言われている無精卵を産むことで有名で、美食ハンターとして保護活動を行っていた。

 

 ここ最近密猟者が増え、絶滅危惧指定されていないが食材としては有名な動物達なども狩られている。

 想像以上に密猟者の規模が大きく、また複数の組織が関わっているため一網打尽にしないとイタチごっこになってしまう状況になっていた。

 

「アマチュアや保護団体じゃ手が足らないのよね~。暇な美食ハンター共は保護活動には興味ないとか言うし、全く腹立つわ~」

 

「美食ハンターには『未知の食材を見つける事が使命!』って勘違いしてるモドキ共が多いからな」

 

「ホント、自分が美味いものを見つければいいって思ってるんだから、呆れるにも程があるわ」

 

 メンチはため息を吐く。

 美食ハンターは確かに未知の食材を見つけ、新しい料理を作りだすのが一番有名で最も名誉とされている。

 しかし、その食材が食べられなくなったら意味がない。なので、メンチやブハラなど名のある美食ハンターは環境保護、動物保護にも力を注ぐのが当然の仕事としている。

 だが、そこを理解しない者達もいる。そして、意外とその数は多い。

 

 メンチは若くしてシングルハンターに認められるほどの功績を残しており、それを妬む者も多い。

 そのせいか、今回のような仕事の場合、足を引っ張ろうとする者がいたこともある。

 

「まぁ、変な奴に頼るくらいなら新人の方がまだマシよね。ラミナがどれくらい強いのか、楽しみだわ」

 

 メンチはペロリと唇を舐めて、ラミナの到着を楽しみに待つのだった。

 

 

 

 翌日。

 皿洗いなど諸々の後片付けを終えたラミナは、仕度をする。

 

 昨日購入した黒の生地に縁が赤いノースリーブの半着に、紫の帯と紅の帯紐を締める。その上に深紅のショート丈の革ジャンを着て、下は黒のミニデニムを履く。

 さらに腰の後ろ側にベンズナイフとククリ刀をクロスするように収めたベルトを身に着ける。

 

「へぇ、似合うじゃない」

 

「派手だな」

 

「まぁ、今回は別に暗殺の仕事ちゃうし」

 

 マチは白の生地に縁が赤い半袖の半着に、紺の帯と紅の帯紐を締める。下は今まで通り黒のスパッツで、薄紫のレッグウォーマーに白の足袋である。

 

 フランクリン達も来た時の服に着替えており、すでに出立の仕度を終えていた。

 

「なにで移動するんや?」

 

「歩き」

 

「私用飛行船一機くらい出したろか?」

 

「別にいいよ。一度ホームに戻るつもりだから」

 

 家を出て、ラミナは空港を目指しながら付いてくるマチ達に訊ねる。

 マチはラミナの申し出を断り、そのままカゴッシの外に出る道で別れることになった。

 

「ほな、ヨークシンでな。まぁ、会えるかどうか分からんけど」

 

「ああ」

 

「世話になたね」

 

「またね」

 

 サラっと別れて、ラミナは空港に足を向ける。

 空港でチケットを取り、バルトア共和国へと飛ぶ。

 

 3日でバルトア共和国に到着したラミナは、指定されたホテルの部屋に向かう。

 エレベーターを降りた直後、ラミナは足を止める。

 

「……」

 

 フロントとの空気が違う。

 肌がピリつき、肩にのしかかる空気が重く感じる。

 

 ラミナは目を鋭くして、ベンズナイフを抜く。

 そのまま数分周囲の気配を探る。

 

(……堂々と気配を晒しとるんは1人。けど、妙に変な視線も混ざっとるな)

 

 最低で2人。

 そう判断したラミナは携帯を取り出しながらエレベーターのスイッチを押す。

 

『騙し討ちをする連中が待ち構えているようなので信用できない。この仕事から手を引く』

 

 メンチにそう送信するのと同時に、到着したエレベーターに乗り込む。

 扉が閉まる直前にドバン!と荒く扉が開く音がしたが、その前に扉は閉まり、エレベーターはゆっくりと下に下りて行く。

 

 直後にメールが届く。

 

『戻ってきなさい! あたしはそんな指示は出してない!』

 

 すぐさま返信する。

 

『信用できない』

 

『そいつらを一発ずつ殴っていいから!』

 

『信用できない』

 

『そいつらに出る報酬、全部あんたにやるわ!』

 

『信用できない』

 

『もう、分かったわよ! 奴らの報酬プラスあたしのフルコース、タダで御馳走するわ!』

 

『世の中の信用は、飯より金』

 

『あんたねぇ!! いいわよ! あたしの報酬もやるわよ!!』

 

「……こんなところか」

 

 ラミナはこれ以上は引き出せないと判断して、また戻る。

 指定された部屋の前に立って、ノックする。

 

「開いてるわよ」

 

 明らかに不機嫌なメンチの声が聞こえてきて、ラミナは呆れながらドアを開ける。

 

 中に入ると目に入ったのは、試験の時のように不機嫌全開の顔で脚を組み、ソファにふんぞり返っているメンチ。

 その足元に2人の男がラミナに向かって土下座しており、その横でどこかで見たサングラスの巨漢が腕を組んで呆れた顔で立っていた。

 

「……」

 

「悪かったわね。ったく! 因縁があるのかどうか知らないけど、仕事が終わるまで手出し無用って言わなかったっけ?」

 

 メンチはドスン!と白い服を着たリーゼントの男の背中に、両足を乗せながら言う。

 

「ぐぅ……!」

 

「ふん! ちょっとオッサン。弟子にどういう教育してんのよ。おかげであたしの印象最悪じゃない! 元々はあんたがあたしにラミナを呼べって持ち掛けたのよ!」

 

 メンチは鼻を鳴らして、サングラスの男ことモラウに苦情を言う。

 モラウは右手で頭を掻きながら、

 

「分かってるよ。だから、お前さんがあいつに渡すって言った報酬分を俺が払うって言ってんじゃねぇか。もちろん俺やこいつらの報酬もあいつに払う」

 

「んなもん、当ったり前でしょ! もっと出すもん出せって言ってんの!」

 

「いや、それで十分やけど」

 

「甘いわよ! こういう馬鹿共はとことんすり身にしないと覚えないんだから!」

 

「うちからすれば金と今後狙うなっちゅう約束して貰えば、それでええねん。どうせ因縁ってゼルンロサスでのことやろ?」

 

「そうよ。あんたにしてやられたのが悔しかったみたいね。ちっこい男よねぇ~!!」

 

「ぐっ……!」

 

 足を乗せられたリーゼントの男、ナックルは悔し気に声を上げる。

 ラミナは呆れながら、ナックルの隣で土下座している男に目を向ける。

 

「そっちのは初めて見るはずやが……」

 

「あ~……そいつらは俺の弟子だ。シュートは前はいなかったから、関係ないんだが……。ナックルの奴に押し切られたんだろ」

 

「……申し訳ない」

 

 シュートが土下座したまま弱々しく謝罪する。

 ラミナはため息を吐いて、モラウに目を向ける。

 

「ほんで? 約束してくれるんか?」

 

「ああ、約束する。依頼とかでぶつかり合うことにならない限りは、お前を狙わねぇ。こいつらにも襲わせねぇ」

 

 モラウが誓いを述べ、ラミナはメンチに顔を向ける。

 メンチは「証人として確かに聞いた」という意味を込めて頷き、ナックルから足を退ける。

 

「じゃ、早速仕事の話をするわ。座って」

 

 メンチに促されて、ラミナは大人しくソファに座る。メンチも座っていた椅子を元の位置に戻して、ラミナと向かい合う。

 ナックルとシュートも立ち上がろうとするが、

 

「あんたらは正座!!」

 

「「はい!!」」

 

 メンチの一喝ですぐさま正座するナックルとシュート。

 2人の左頬は僅かに腫れており、すでにメンチに殴られていたようだった。

 ここまで来ると流石に哀れに思うラミナだが、特に庇うことはしない。

 

「あんたがゼルンロサスで殺したキタカバファミリー覚えてる?」

 

「そら、最近の仕事やし、そいつらの顔見れば嫌でも思い出すわ」

 

「そいつらが密猟してた動物達の大半が、コルゴ樹林の動物達。で、マフィアが使ってた密猟者グループがまだ残っててね。あたしはここの動物達の保護が目的で、こいつらはその仕事の延長戦で手を組んだってわけ」

 

「うちが選ばれた理由は?」

 

「俺がお前に興味を持って、メンチに提案したんだ」

 

 モラウが説明を引き継ぐ。

 

「手練れの紅い髪の女で調べたら、今年受かった新人の中にお前の写真があってな。ネテロの爺さんに話を聞いたら、暗殺者だって言うからビンゴってな。そしたら、試験官をしたメンチが気に入ってるって爺さんが言ってたし、丁度俺達の仕事とメンチの仕事が繋がったから、メンチに頼んでお前を呼んでもらったってわけだ」

 

「事情は分かったけど、理由にはなってへん」

 

「言ったろ? お前に興味が湧いたんだよ。あの能力と実力にな」

 

「それで捕まえようと?」

 

「お前の暗殺者としての考えを聞いて、判断しようと思ってたんだよ。けど、馬鹿弟子共が突っ走ったせいで失敗しかけたがな」

 

「「う……」」

 

 モラウの話を聞いて、ラミナは眉間に皺を寄せる。

 

「今はその話はいいの! 先にあたしの仕事よ!」

 

「分かってる。俺らも一番はそれが目的だしな」

 

 メンチが再び苛立ちながら話題を戻す。

 

 その後メンチは不機嫌なまま、ラミナに仕事内容を説明する。

 仕事内容は『密猟者グループの一斉摘発と捕縛』。まだ全てを特定できてはいないが、現在分かっている拠点だけで5か所。少しでも先に密猟者の勢力を減らしたいとのこと。

 

「……ここにおる5人でそれぞれ1か所か?」

 

「いえ、アマチュアハンター達にも手伝わせる。小さい拠点3か所はアマチュアに任せて、残りの2か所があたし達」

 

「敵の戦力は?」

 

「念能力者は確認出来てないわ。だから、純粋にマフィアの下っ端構成員レベルと考えてる」

 

「制圧は全員捕縛か?」

 

「流石に規模が規模だけに、そこまでは言わないわ。リーダー格はともかく、下っ端は殺しても問題ないわ」

 

「……ふむ」

 

「ただ、降参した奴らは流石に見逃しなさい。あくまで抵抗した奴だけよ。殺してもいいのは」

 

「逃げ出した奴らは?」

 

「もちろん捕らえる」

 

「……ん~……」

 

 ラミナは眉間に皺を寄せて、悩まし気に唸る。

 メンチは意外そうに首を傾げる。

 

「あら……自信ないの?」

 

「殺さずっちゅうんがなぁ。うちの能力は殺しに特化しとるから、大人数相手で殺さずとなると使えるんがかなり制限されんねん」

 

「あぁ、そこね。まぁ、そこは組む奴を考えればいいだけよ」

 

「俺がそいつと組もう」

 

 モラウが名乗り出る。

 

「モラウが?」

 

「俺の【紫煙拳(ディープ・パープル)】なら、捕縛する奴と殺してもいい奴を選別できる。俺が捕縛を優先して、そいつには邪魔者の排除を任せる」

 

 モラウの言葉にメンチは納得する。

 ラミナは前回の戦い時の煙の能力を思い出す。

  

「じゃあ、あたしはそこの馬鹿共ね。迷惑かけられた分、こき使ってやるわ」

 

 メンチはナックル達に目を向けて言う。

 ナックルとシュートは腫れた頬を引きつらせる。

 

 ラミナは本当に大丈夫なのかと不安になりながら、使う武器を考えるのだった。 

 

 


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