暗殺者のうちが何でハンターにならなあかんねん   作:幻滅旅団

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#30 プロハンター×ノ×リュウギ

 仕事内容も聞き終えたので作戦を詰めようとメンチが提案した時、モラウが待ったをかける。

 

「なに? まだ何かあんの?」

 

「何ってまだ俺らとそいつの自己紹介してねぇよ」

 

 モラウは呆れながら言い、ラミナに顔を向けて親指を立てる。

 

「俺はモラウ・マッカーナーシ。シングルハンターで専門は海だ。まぁ、今回みたいに動物関係にも手を広げることもあるがな。で、こいつらが俺の弟子の――」

 

「ナックル・バインだ。ビーストハンターをやってる」

 

「シュート・マクマホン。UMAハンターだ」

 

 ナックルは腕を組んで顔を顰めながら名乗り、シュートは無表情に名乗る。

 どっちも頬が腫れているので、全く締まっていないが。

 

「ラミナ。暗殺者兼業の新人ハンターや。特に分野はまだ決めてへんけど、強いて言うなら武器ハンターやな」

 

「武器?」

 

「そ」

 

 ラミナはベンズナイフとククリ刀を指差す。

 

「特に刃が付いとる武器を中心に集めとるな」

 

「……この前の時は違う武器を使ってたよな?」

 

「こいつらのことか?」

 

 ラミナが両手を広げ、ソードブレイカーとレイピアを具現化する。

 モラウやメンチ達は僅かに目を見開く。

 

「こんな感じで武器を具現化するでな。やっぱホンモン集めなあかんやろ?」

 

「……具現化系ってそんな何個も具現化できないわよね?」

 

「そこは制約次第やろ。うちは武器と相性ええみたいでな」

 

「俺の煙を解除したり、姿を消したり、遠くから殺したりしたのも、その武器か?」

 

「そやで。ま、どれがどんな能力かは教えんけどな」

 

「……。(腰の武器も具現化したモノだとしたら、一体こいつはどれだけの武器を隠し持っていることになるんだ? それに武器ごとに能力が違うなら、こいつ1人で軍隊を相手に出来ちまうぞ……)」

 

 モラウは背中に冷や汗が流れる。

 

 正直ラミナは武器ごとの能力を話すくらいならば、特に問題はない。もちろん制約までは話さないが。

 今、出している武器の能力をバラしたところで、まだ見せていない武器を使えばいいだけだし、バレても防げるかどうかは別問題だからだ。

 

 ラミナは武器を消して、メンチに顔を向ける。

 

「密猟者がおもろい武器持っとったら、もろてええ?」

 

「そこは取引次第ね。盗まれた物の可能性があるしね」

 

「それで十分や」

 

 オーラを纏うほどの武器が下請け密猟者の元にあるとは思えないので、文句はない。あったらラッキーくらいに考えているだけだ。

 

 その後は特に荒れることもなく、作戦を詰めていく。

 ラミナとモラウが攻めるところは街外れにある大型倉庫。周囲も倉庫で囲まれているが、それは無関係であることが確認されている。

 なので、他の倉庫に被害を出さないように制圧する必要がある。

 

「1時間以内に潰してちょうだい」

 

「まぁ、うちは暴れるだけやでな。雑魚だけやったら問題ないと思うで」

 

「銃も持ってると思うから、気を付けなさい」

 

「暗殺者のうちにそれ言うか? マフィア相手にしとったら銃なんざもう珍しないで」

 

「それもそっか」

 

 ラミナは呆れながら言う。

 メンチも納得して、苦笑する。

 ラミナはモラウに顔を向ける。

 

「あの煙は倉庫を覆えるんか?」

 

「余裕だ。倉庫を丸々覆っても、まだおつりが出るぜ」

 

「ほな、逃げられることはないか」

 

「ああ、そこは宝船に乗ったつもりでいてくれていい」

 

「助かるわ」

 

 ここまで言うのであれば大丈夫なのだろうと、ラミナは信用することにした。

 担当の拠点が終わり次第、アマチュア達が担当している拠点に増援に向かうことも決めて、場所やルートを確認する。

 段取りを決めたメンチ達はすぐに活動を開始し、アマチュアハンター達と顔合わせをして、所定の位置に向かうことになった。

 

 ラミナとモラウは並んで、道を歩く。

 2人はかなり目立っており、周りからチラチラと視線を向けられている。

 

「よぉ、1つ聞いていいか?」

 

「ん?」

 

「お前さんは殺しをする時は、無関係な人間を巻き込むことをどう思ってるんだ?」

 

 モラウは口元は小さく笑みを浮かべてはいるが、纏う雰囲気は鋭い。

 ラミナは横目でモラウを見て、すぐに前を見て口を開く。

 

「うちは基本的に無駄な殺しはせん。金にならんことするなんざ面倒やしな」

 

「……お前が依頼を受けるのはどんな連中なんだ?」

 

「基本的にはマフィアや闇商売をしとる連中。金次第では国の要人も殺す事もあるけどな。もちろんターゲットもそれなりに後ろめたいことをしとる連中がメインや。なんもしてない一般人や善人を安い金で殺すなんざ、アホらしいでな」

 

「……へぇ」

 

「ただ、うちを殺しに来たなら話は別やで? 殺気や銃を向けられて、手加減なんざする気はない」

 

「そこまで文句は言わねぇさ。殺しに来る奴は殺されてもしょうがねぇ」

 

 今度は本心から笑みを浮かべるモラウ。

 

「で、満足したんか?」

 

「ああ、十分だ。お前さんを今すぐ叩き潰す気はなくなった」

 

 モラウは頷いて、上機嫌に足を進める。

 ラミナは小さくため息を吐きながら、その背中に付いて行く。

 

(まぁ、無駄に殺すんが面倒なんはホンマやけど。別に知らん奴が死のうがどうでもええんやけどな)

 

 自分に不利益が降りかかる可能性が無いのであれば、特に気にしない。

 なので、マチ達が誰を殺し回ろうが気にしないし、クラピカに関しても「運が悪かったな」くらいにしか思っていない。

 流星街では人の生き死になど日常的に目にするので、そこらへんはラミナも比較的ドライである。

 

 その後、ラミナとモラウは倉庫街に足を踏み入れる。

 密猟者は基本的に夜間に活動する。なので、恐らく今は倉庫内で捕まえた動物達を確認したり、搬送する準備をしていると考えられる。

 

 2人は目的地の2つ隣の倉庫の前で足を止める。

 倉庫の前には見張りらしき警備員服を着た厳つい男が2人立っていた。

 

「……あれで隠しとるつもりなんやろうか」

 

「つもり、なんだろうよ」

 

 物凄く浮いている。

 

 他の倉庫には警備員はいない。この倉庫街はほぼ寂れており、不要なものを一時的に保管する物置のような感じになっているらしく、わざわざ警備員を雇ってまで守るものはここに保管しない。なので、泥棒が入ろうが気にもしない。

 スラムのように住みこまれるのは困るようだが。

 

「ほな、行こか」

 

「おう」

 

 ラミナはベンズナイフを抜いて、勢いよく駆け出す。

 

「ん? っ!? 誰だ!!」

 

「止まれ!!」

 

 警備員の男達は拳銃を抜いて、ラミナに向ける。

 ラミナはベンズナイフを男達の間を狙って投擲し、パチン!と指を鳴らす。

 

 ラミナはテレポートしたように男達の間に現れ、男達は目を見開く。

 男達が動く前に、ラミナは素早く男達の首に手刀を叩き込んで気絶させる。

 それを確認したモラウが巨大な煙管を咥えて息を吸い、一気に大量の煙を吹き出す。

 

 煙は猛スピードで倉庫を覆っていく。

 

「ほぉ」

 

「【監獄ロック(スモーキージェイル)】。この煙からは出られねぇし、物理攻撃で壊すことも出来ねぇ」

 

 不敵に笑みを浮かべて歩み寄るモラウ。

 

「まだ戦えるんか?」

 

「言っただろ。余裕だぜ」

 

 再び煙管を加え、今度はゆっくりと途切れ途切れに吹き出していく。

 すると、煙が人型に変わり、あっという間に30人ほどの煙人形が並ぶ。

 

「お~」

 

「【紫煙機兵隊(ディープパープル)】。オートでもリモートでも操れる。俺はこいつらと捕縛を進めて行く。お前は好きに暴れろ」

 

「時間は?」

 

「一度出せば、数時間は楽に保つ。気にする必要はねぇ」

 

「了解。ほな、行くで」

 

「おうさ!!」

 

 ラミナは蹴りを、モラウは煙管でシャッターを吹き飛ばす。

 

「な、なんだ!?」

 

 突然、破られたシャッターの中にいた密猟者達が慌てふためく。

 倉庫の中には50人ほどいた。倉庫の奥には数十個の檻が重ねられており、中には動物達が弱っている様子で横たわっていた。

 

 

「すぅ……。ハンターだ!!! 大人しくすれば命は保証するが、抵抗・逃亡した場合は容赦しねぇぞ!!

 

 

「ハ、ハンター!?」

 

「くそっ! 撃て!! 殺せぇ!!」

 

 リーダー格と思われる髭を生やした男が叫びながら拳銃を構える。

 それに部下と思われる者達もライフルやナイフを取り出して、ラミナやモラウに向ける。

 

「おぉおぉ。言うてしもたなぁ」

 

「ったく、バカな奴だ」

 

「あれはあかんよな?」

 

「そうしてくれるとありがたいな」

 

「しゃあないなぁ」

 

 ラミナは左手でククリ刀を抜き、右手にブロードソードを具現化する。

 その直後、密猟者達が一斉に発砲を始める。

 

 モラウは【紫煙機兵隊】の数体を盾にし、ラミナは【シルフィード・シックル】を発動して高速で剣を振り、銃弾を叩き落としていく。

 

「「「なぁっ!?」」」

 

「はっ! やるじゃねぇかよ……!」

 

 密猟者達は目を見開いて、思わず発砲を止める。

 モラウも笑みを浮かべてはいるが、冷や汗を流して慄く。

 

「次はこっちの番や。頑張って避けてみぃ」

 

 ラミナはククリ刀を勢いよく投擲する。

 

 ククリ刀は高速で回転しながら飛び、急にスピードが上がったと思ったら、なんと突如火を纏って炎の円盤となる。

 

「はぁ!? ぎゃっ!?」

 

「ひぃっ!?」

 

「な、なんで火が!?」

 

「驚いとる場合ちゃうで」

 

 ラミナの目の前にいた男は避ける事も出来ず、右肩から胴体を抉られたように斬られる。

 ククリ刀は更にスピードを上げながら、ブーメランのように弧を描いて戻ってきた。

 

「う、ウソッ!? ま、待っじぇ!?」

 

 ナイフを握っていた女が慌てて背を向けて逃げようとするも、炎を纏ったククリ刀は無慈悲に女の体を胸辺りで上下に分かつ。

 ククリ刀はラミナの左手に戻る瞬間に火が消え、ラミナは難なくキャッチする。

 

「おいおい……」

 

「すまんなぁ。うちは女やでな。男女差別はせん。年寄りとガキはすこ~し配慮したるけど」

 

「まぁ……武器を向けてたから仕方がねぇけどよ。やっぱ、いい気分じゃねぇな」

 

「なら、早よ捕縛せぇ」

 

「だよな。行け!」

 

 モラウは【紫煙機兵隊】に指示を出す。数十体の【紫煙機兵隊】は一斉に広がる様に飛び出して、軽やかに倉庫内を移動する。

 それに密猟者達は標的を定められずに、視線や銃口が右往左往する

 ラミナもそれに合わせて駆け出し、ブロードソードを消して、レイピアを具現化する。

 

「このっ!」

 

「【啄木鳥の啄ばみ(ピアス・ビーク)】」

 

「がっ!?」

 

 ライフルを構えた男に、レイピアを突き出して額に風穴を空ける。そのまま、武器を構えている近くの男にククリ刀を投げ、直後に新しいククリ刀を具現化して、また別の男に投擲する。

 

 2本のククリ刀は高速で回転しながら飛行し、火を纏う。

 

「投げると火が着くのか」

 

「正確には一定以上回転すると、やな。【太陽より飛び立つ鷲(ジャアマ・デ・アギラ)】。標的を完璧に追えんのが難点やけどな」

 

「本当にいくつ具現化出来るんだよ……」

 

「さぁなぁ。ところで、そっちは?」

 

「さっき叫んでた男は捕らえた。他にも逃げようとしている連中も随時捕えてるぜ。後は証拠となる資料も集めさせてる」

 

「思ったより色々出来るんやな」

 

「まぁな」

 

 ニッ!と不敵に笑うモラウ。

 ラミナは【紫煙機兵隊】の動きを感心するように見ながら、銃を向けてくる密猟者達を素早く殺し、ククリ刀をお手玉のようにキャッチしては投げ、キャッチしては投げを繰り返す。

 その時、運よく生き残っていた男が武器を捨てて、両手を上げる。

 

「も、もうやめてくれ!? 投降する! 投降するから!!」

 

「やったら、早よ周り止めんかい。うちはお前らが武器を捨てんから、殺される前に殺しとるだけや」

 

「わ、分かった!! 全員、武器を捨てろ!! 無理だ! このバケモンには勝てねぇ!」

 

 男の叫びに他の者達も次々と武器を捨てる。

 目に見える範囲の者達が武器を捨てたのを確認したラミナは、ククリ刀の1本を消してレイピアを下ろす。

  

「捕縛の余裕は?」

 

「問題ない。全員一か所に集めれば、もっと余裕も出来る」

 

「ほな、さっさと集めよか」

 

 ラミナとモラウは【紫煙機兵隊】に捕まった者達や降伏した者達を一か所に集める。

 モラウは【紫煙機兵隊】を解除して、オーラを回収する。

 

(放出したオーラを回収できるんか。それなら確かにかなりの数と時間動かすことは可能やな。しかもさっきの動きからすれば、物にも触れるし、相手を捕まえればオーラを消さん限り振り払うことも出来ん。かなり厄介な能力やな)

 

 モラウは回収したオーラを使って再び煙を吐き、密猟者達を煙の縄で纏めて縛り上げる。

 

「な、なんだこれ……!?」

 

「煙の縄だ。言っとくが、お前ら程度の力やナイフとかじゃあ千切れないぜ」

 

(煙ゆえにその形に制限もない。……ホンマ【脆く儚い夢物語(フラジャイル・ホープ)】創っといて良かったわ……)

 

 モラウの能力を分析しながら、ラミナは【円】を使って他に隠れている者がいないかを探る。

 

「……ここはこれで終わりみたいやな」

 

「よし。【スモーキージェイル】を解除して、人を呼ぶ。お前は先に他の場所に行ってくれ」

 

「了解」

 

 ラミナは頷いて、アマチュアハンターが攻め込んでいる拠点に向かう。

 レイピアを消して、短刀を具現化し、姿を消して全速力で次の場所を目指す。

 10分ほど走ると、銃声が響いてきた。まだ戦闘中だと確信したラミナは、スピードを落とさずに足を動かす。

 

 次の拠点は倉庫が併設されている2階建てのビル。

 

 目的地に到着したラミナは姿を消したまま倉庫に突入する。

 アマチュアは黄色のベストを身に着けているので、判別は容易だった。

 ラミナは短刀を消してベンズナイフを抜き、ククリ刀を腰に仕舞い、ファルクスを具現化する。

 

「援軍に来たでー」

 

「助かる!!」

 

「いっぺん銃撃やめろや!」

 

 上手いこと密猟者とアマチュアは分かれていたので、ラミナはアマチュアに発砲を止めるように指示を出す。

 アマチュアハンター達はすぐに銃撃を止める。ラミナはベンズナイフを投擲する。

 ナイフは猛スピードで、密猟者達の間をすり抜けて背後の壁に突き刺さる。

 

「はっ! どこ狙ってやがる!」

 

「ここや」

 

「「「「なっ!?」」」」

 

 密猟者の1人が鼻で笑うが、突如背後から声が聞こえて目を見開く。

 いつの間にか背後にラミナがおり、何が起こったのか分からず密猟者達は口を開いたまま固まってしまう。

 

「さいなら」

 

「「「ぎゃあああ!?」」」

 

 ラミナは【狂い咲く紅薔薇(クレイジー・ローズ)】を発動して、密猟者達を一瞬で殲滅する。

 返り血を浴びる直前に【妖精の悪戯(チェンジリング)】を再度発動して、アマチュアハンター達の元に戻る。

 

「ビルの方は?」

 

「問題ない。これで終わりだ」

 

「ええ、助かったわ。やっぱプロって凄いわねぇ」

 

「他の拠点はどうなったんか分かるか?」

 

「連絡取ってみるわ」

 

「頼むわ~」

 

 連絡を任せたラミナは、ファルクスを消して、ベンズナイフを腰に仕舞う。

 

「ん~……! ふぅ……」

 

 伸びをして、深呼吸をする。

 倉庫の中に目を向けると、ここは特に動物などはいなかった。

 

「何もおらんのやな」

 

「ここは檻の保管と取引先と密会する場所なんだ。隣のビルには暗号化されてるが、帳簿や売り先がごっそり残ってるぜ」

 

「ほぉ~……なら、ここを使っとった連中は廃業確定か」

 

「多分、だけどな。こいつらのスポンサーが誰かによる」

 

「それもそうか」

 

 ラミナはアマチュアハンターの男と話しながら、他の現場との連絡が終わるのを待つ。

 

「今年は試験受けんかったんか?」

 

「受けたかったんだが、メンチさんが試験官になったって聞いて止めたんだよ。あの人の試験なんて絶対厄介なんてもんじゃない。そうだったんだろ?」

 

「ええ勘しとるな。ってか、うちのこと知っとるんか?」

 

「メンチさんがご機嫌に君のこと話してたからね」

 

「……たまたまスシを知っとっただけで、なんでそこまで気に入られたんやろなぁ……」

 

「スシを知っていただけじゃなくて、その時の調理の姿勢が気に入ったそうだぞ? まぁ、実力も気に入ったんだろうけどな」

 

 男は苦笑しながら言い、ラミナは呆れるしかなかった。

 すると、連絡を取っていた女性がラミナに声を掛ける。

 

「今回の作戦は完了よ! あと、あなたはメンチさんが呼んでるから、ホテルに戻ってちょうだい」

 

「了解や」

 

 ラミナは頷いて、男達に別れを告げて、再び走ってホテルに戻る。

 部屋にはすでにモラウやナックル達も戻っていた。

 

「お疲れ」

 

「おう。で、これで終わりなんか?」

 

「残念ながら、まだよ」

 

「むしろ、これからが本番だぜ」

 

 メンチとモラウがニヤっと笑う。

 ラミナは首を傾げて、先を促す。

 

「あたし達が担当した3つの拠点にいた密猟者を何匹かわざと逃がしたの。拠点を潰された密猟者は、まだ見つけてない拠点に逃げ込むと思ってね」

 

「アマチュアに追わせとるんか?」

 

()()()()()()()()()

 

「……念能力か」

 

 ラミナの呟きに、メンチはペロォと舌を出す。

 

「そうよ。あたしの力、【強欲なる女帝の舌(テイスト・オブ・ロイアル)】」

 

 【強欲なる女帝の舌(テイスト・オブ・ロイアル)】。

 【周】で強化した包丁で傷つけた生物、または植物の『味』を覚え、居場所を随時把握する放出系能力。

 相手の傷が完全に癒えてしまうと効果が切れてしまうが、傷がある間は最大10個の『味』を覚えておくことが出来る。

 

「まさに美食ハンターやな」

 

「当然でしょ? 食材の為にその力の全て費やす。それが本物の美食ハンターよ」

 

「密猟者の殲滅も、か」

 

「そうよ。別におかしくないでしょ? ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 未知の食材を探すのも、それを邪魔する密猟者を絶滅させるのも、『美食ハンター』の仕事。

 

「あたしの食生活の邪魔をする奴は、残らず狩り尽くしてやるわ」

 

 舌なめずりをしながら、目を据わらせるメンチ。

 それを見たラミナは、獲物(密猟者)に僅かな憐れみを覚えた。

 

 追跡している獲物は3人。

 1人は街内に、残りの2人はコルゴ樹林の中に入っていったようだった。

 

「森の中に拠点か。まぁ、当然だろうな」

 

「捕まえた動物達をすぐに倉庫や街の中に運べるわけないっすからねぇ」

 

「っちゅうことは手練れがおる可能性が高いか……」

 

 抵抗し逃げ惑う動物を捕まえ、拠点に運ぶまでの護衛をする必要があるので、それだけ手練れがいるはずだ。

 更にもうすぐ夜になる。

 襲う側からすればやや不利ではある。

 

「と言っても、そこまで大人数ではないはずよ。森の中にそんなデカい拠点があれば、あたし達が誰も知らないはずないし」

 

「では、今後の方針は?」

 

 シュートが訊ねる。

 

「言っただろ? これからが本番だってな」

 

「当然、これから潰しに行くわよ」

 

 モラウとメンチが豪語する。

 今度はラミナが訊ねる。

 

「街の方にもおるし、どう分けるんや? アマチュア達はまだ制圧した場所の調査で動けへんやろ?」

 

「街の方はナックルとシュートに任せるわ。森はあたしとモラウ、ラミナで行くわ」

 

「……俺らが市内っすか?」

 

 ナックルが不満そうに顔を顰める。

 シングルハンター2人が行く現場に弟子の自分が行けず、新人が行く。プライドが刺激されても仕方がないことかもしれない。

 

「お前らの能力は森の中じゃ使いにくいだろうが。ラミナの能力の方が色んな状況に対応できるんだよ。適材適所だ」

 

「……うす」

 

 ナックルは渋々だがモラウの言葉に引き下がる。

 ラミナは別に市内の方でも良かったのだが、依頼主のメンチとベテランのモラウが決めたことに文句を言うのも面倒だったので黙っていた。

 

「じゃ、さっさと狩るわよ」

 

 メンチが締めて、ラミナ達は動き出す。

 

 ハンター達の本格的な狩りが始まる。

 

 

______________________

ラミナ’s ウエポン!!

 

・【脆く儚い夢物語(フラジャイル・ホープ)

 具現化したソードブレイカーに付与された能力。

 

 斬りつけた相手の【発】を強制解除する。 

 相手のオーラに直接触れる必要があるので、体内に仕込まれている能力や遠距離攻撃能力は砕けない場合がある。

 

 

・【太陽より飛び立つ鷲(ジャアマ・デ・アギラ)

 具現化したククリ刀に付与された能力。

 

 投擲し、一定の回転数に達すると発火する。

 ブーメランのように手元へ戻ってくる。その軌道に大きく外れない程度であれば操作可能。

 

 

 

 

メンチの念能力! *拙作オリジナル

 

・【強欲なる女帝の舌(テイスト・オブ・ロイアル)

 放出系能力。

 

 【周】で強化した包丁で傷つけた生物の体液、皮膚などの肉片、植物の樹液、果肉、表皮などの『味』を覚え、居場所を随時把握することが出来る。

 

 相手の傷が完全に癒えてしまうと効果が切れてしまう。

 最大10個まで『味』を覚えておくことが出来る。

 

 これにより動物の巣を見つけたり、偶然見つけた果物の場所を記録したり、密猟者を追跡したり、樹林などで迷わないように目印にしたりと応用力は高く、ハンターらしい能力である。

 




食べた味を決して忘れないメンチらしい能力になったかなと思います。
ネーミングはお許しを(__)

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