暗殺者のうちが何でハンターにならなあかんねん   作:幻滅旅団

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#33 サマザマ×ナ×デシ

 翌日。

 ラミナはコロロルク、ザーニャと共に森の中を調査することになった。

 

「かなりの広さやぞ。奥までとか無理ちゃうか?」

 

「奥はいいさね」

 

「なんで?」

 

「コルゴ樹林の奥地は巨大な魔獣の住処なのですよ。密猟者程度では拠点を作る前に食い潰されるでしょうね」

 

「へぇ~。それでもまだまだ広いで? モラウみたいな能力ならともかく、うちは【円】は100mが限界やし、広範囲を探る能力は流石に持ってへんわ」

 

「広いよ、十分」

 

 コロロルクは呆れた表情を浮かべる。

 100m以上の【円】を使える者など熟練ハンターですら中々いない。それを小さいと確信しているかのような言い方をした。

 一体ラミナはどれだけの化け物と戦ってきたのかとコロロルクは呆れを通り越して、恐ろしくすらある。

 

(まぁ、だからこそあの実力ってことかねぇ)

 

 昨日の戦いを思い出して、コロロルクは1人で勝手に納得する。

 

「大丈夫だよ。モラウさんほどじゃあないが、ザーニャの能力も便利なもんさ」

 

 自慢げなコロロルクの言葉を受けて、ラミナはザーニャに顔を向ける。

 ザーニャは力強く頷くと、胸元に手を入れてあるモノを取り出す。

 

「……アクセサリーか?」

 

 ザーニャの右手に乗っているのは、樹で彫られた鷹の顔に本物の羽が付いており、その首元からシルバーのチェーンと戦闘機と思われるシルバーのミニチュアが繋がっているアクセサリーと思われるものだった。

 

「はい。私はアクセサリー作りが趣味でして。もっとも、これはアクセサリーとしては実用的ではないですがね」

 

 ザーニャは苦笑しながらアクセサリーにオーラを注ぎ込む。

 

「【銀を纏う精霊軍(オーバーソウル・シルバーアーミー)】」

 

 ザーニャの右手に銀色の翼をもつ鷹が出現する。

 

「具現化系か……」

 

「はい。具現化したい動物の一部を組み込んだ自作のアクセサリーにオーラを注ぐことで、再び命を与えることが出来ます。この子達が視たものや感じたものは私も知ることも出来ます。もちろん、居場所も常に把握出来ます」

 

 ザーニャが右手を掲げて、鷹が羽ばたいて空へと舞い上がる。

 

「けど、あいつ一羽だけやと厳しないか?」

 

「ええ。ですから……」

 

 ザーニャのポンチョマントの下から、銀色の毛を持つ犬、猫、猿、鷲、兎、狐。さらに銀色の鱗を持つ蛇やトカゲが出現する。

 動物達は森の中へと散らばっていく。

 

「この子達にもお願いします」

 

「ほぉ……」

 

 ラミナは小さく目を見開いて、動物達を見送っていく。

 

 ここまで多種多様な動物を具現化するのはかなり高度な技術が必要で、かなり面倒な制約が設定されているはずだ。

 

「制約は多そうやな」

 

「確かに多いですが、使用に関してはそこまでではありません」

 

「そうなん?」

 

「はい。この能力は具現化するまでが一番重要なんです」

 

 ザーニャは具現化しなかったアクセサリーを取り出す。

 

 亀の甲羅とシルバーの盾を組み合わせたバッジのようなものだった。

 

「私が具現化した動物達は、私がお世話をしていた子達なんです。私の父がビーストハンターで、母が獣医でして。その関係で私も生まれた時から動物達と一緒に暮らしてきました」

 

「つまり、その甲羅やさっきの羽は……」

 

「はい。私がお世話していた子達の遺骸です。それを趣味だったアクセサリー作りで形見として所持していました」 

 

「環境と思い入れ故の能力っちゅうことか」

 

「その通りです。裏試験に合格した後に父から聞かされたのですが、私はアクセサリーを作る時は無意識でオーラを込めていたようで。動物達の遺骸を使ったアクセサリーは特にオーラが強かったそうです」

 

「ほぉ~」

 

「私が定めた制約は『私が1年以上世話をした動物の遺骸を使うこと』『自分で作ったアクセサリーであること』『動物が私の事を記憶していること』『寿命、または病気で死んだ動物であること』『私が最期を看取っていること』『壊れたアクセサリーは二度と使えない』『いかなる理由であろうとも、私が殺した動物は具現化出来ない』『具現化出来るのは、私が世話した日数まで』。これを全てクリアした場合のみ、あの子達の力を借りることが出来ます」

 

(……借りる、か。魂が戻ってきとるわけでもない。それでも、二度目の生を与えたっちゅうことか) 

 

 しかし、だからこそ具現化に成功した際の性能は段違いだろう。

 能力への思い入れも強く、それを為すための制約の数も多い。

 しかも、今挙げたのはあくまで能力を発現するための制約。発動中の制約などもあると考えられるので、ポテンシャルは計り知れない。

 

「戦えるんか?」

 

「最低限の自己防衛は出来ます。だからって貴女方に勝てるわけはありません。基本的に逃げることに特化させてます」

 

「だから、あたいと組んでるってわけさ。基本的に荒事はあたいの仕事さね」

 

 コロロルクは背中の剣を親指で示す。

 

「なるほどなぁ」

 

「だからアンタが組んでくれると、あたいも楽なんだけどねぇ」

 

「金払いが良ければな」

 

「月3億だっけ? それは暴利じゃないかい?」

 

「それくらいマフィア連中は毎月払ってくれるでな」

 

「しかし、ラミナさんならば賞金首ハンターでもすぐにシングルになれるのでは?」

 

「暗殺者も賞金首ハンターも大した差はないやろ。ターゲットが変わるくらいで、殺すんは変わりないでな。別に殺しで星とか興味ないし」

 

 ラミナは肩を竦める。

 コロロルク、ザーニャは小さく首を傾げる。

 

(殺しで名誉が欲しいわけでもない。しかし、金のためには殺しが手っ取り早いからやめる気もない、ということなのでしょうが……)

 

(暗殺者に拘る理由がピンと来ないねぇ……。別に賞金首ハンターだけに拘る必要もないし、この子の才能なら結構幅広く仕事出来ると思うけど)

 

 実力もメンチが「あたしじゃ勝てない」と言い切るほどで、昨日のナックルの決闘でもコロロルク達より上であるのは動きを見ただけでも明らかだった。

 これまでの仕事の話を聞いても頭が悪いわけでもないし、判断力も優れている。

 十分暗殺者を辞めても生きていけるだろうと2人は思う。

 

(流星街出身が関係してんのかねぇ。けど、流星街で金がいることって何かなんて分からないし……)

 

 しかし、そこまで踏み込んだところでラミナは答えないだろう。

 それに強く勧誘するのも悪手そうだ。

 ラミナとは本人も言う通り、その時その時で誘う方がいい関係を築けそうだとコロロルク達は理解した。

 

「で、なんかあったかい?」

 

「特には何も。人が動き回っている気配もないですね」

 

「じゃあ、こっちは外れかね」

 

「戻るか?」

 

「メンチさんに連絡を入れます」

 

 ザーニャが携帯を取り出して、メンチと連絡を取り始める。

 ラミナとコロロルクは近くの樹の根元に座って、のんびりすることにした。

 

「聞き辛いこと聞くけどさ」

 

「ん?」

 

「アンタの能力って『武器が主体』なのかい? それとも『能力が主体』なのかい?」

 

 武器を作ってから、能力が決まるのか。

 

 能力を作ってから、武器を決めているのか。

 

 どっちが主体かというのは、かなり差がある。

 

「……ん~。どっちも、やな」

 

「色んな武器を出せるって聞いてるけど、それってザーニャみたいにかなり厄介な制約があるんだろ?」

 

「そら、もちろん」

 

 ラミナは当然とばかりに頷く。

 

 

 【刃で溢れる宝物庫(アルマセン・デ・エスパダ)】の制約は11個。

 

 『【月の眼】発動時のみ、本体となる武器収納が可能。ただし、必ず刃を持っている武器であること』

 

 『一度収納すると、壊れるまで本体を取り出すことは出来ない』

 

 『収納できるのはオーラを纏っている武器のみ。ただし、他者の念により具現化された武器は収納できない』

 

 『形状が80%以上一致している武器は収納できない。ただし、長さが1m以上、および大きさが3倍以上の差があれば認められる』

 

 『具現化した武器が10回破壊されると、収納している本物も砕ける』

 

 『ストック数はいかなる手段をもってしても回復しない』

 

 『同じ能力は2つ以上の武器には付与できない。付与したい場合は、現在その能力を付与されている武器を破棄しなければならない』

 

 『具現化した武器は、5分以上ラミナの手から離れていると砕けてストックが減る』

 

 『【月の眼】を一度発動すると、必ず武器のストックが最低1つ減る。発動後3分経過ごとに、ストック減少数が1つずつ増える』

 

 『武器に付与できる能力は、収納した武器が持っているオーラの量、質によって限界がある。【月の眼】状態でなければ発動できないかどうかは、作ってみなければ分からない』 

 

 『【刃で溢れる宝物庫】に収納されている武器が0になると、二度とこの能力は使用できない』

 

 上記の制約+武器ごとの制約をクリアしなければならない。

 

 

 特に厄介なのは『武器に付与できる能力は、収納した武器が持っているオーラの量、質によって限界がある』、『【月の眼】を発動すると、必ずストックが減る』である。

 

 例えば、【妖精の悪戯】を付与しているベンズナイフのストックが0になって本体が砕けた場合。

 またナイフに付与したくても、必ずしも付与できるとは限らないのである。もしかしたら、槍にしか付与できないかもしれないのだ。

 

 今、現在切り札としている武器もいつか必ず使えなくなる。なので、ラミナは地下倉庫に大量の武器を集めたり、優秀な鍛冶職人を探している。

 

 そして、【月の眼】を発動しなければ武器を収納できないので、新しい武器を収納して能力を作る度に、すでに収納されている武器のストックが減ってしまうこと。

 なので、常に全ての武器のストック数を把握しておかねばならず、下手なことで【月の眼】を発動できない。

 

 ラミナの切り札は、全て時限付きなのだ。

 そして、この能力故にマチやヒソカのように恒久的に使える能力を作るメモリの余裕はない。

 

「ま、流石に話せへんけどな」

 

「話されても困るさね。大変だねぇ。厄介な能力を作っちまうと」 

 

「そう言うっちゅうことは、コロロルクの能力はシンプルなんか?」

 

「まぁね」

 

 コロロルクは立ち上がり、【練】を発動する。そして、その場で軽くジャンプして、両足裏にオーラを集める。

 そのまま着地するかと思ったら、両足裏のオーラが潰れるように形を変えてコロロルクの体を空中で支えた。

 

 直後、全く踏み込んでいなかったコロロルクが10m以上高く跳ね上がる。

 

「ほぉ……」

 

「これがあたいの能力。【何でも弾く美女の肌(クイーン・ホッパー)】さね。オーラをバネにするだけだよ」

 

「怖いやろ、十分」

 

 ヒソカの【バンジーガム】ほどではないが、先ほどの跳躍力を見れば十分脅威である。

 軽く跳ねただけで10mも跳ぶのであれば、本気で踏み込めば何十mの距離を一気に跳び上がることが出来るはずだ。

 

 移動だけではなく、攻防にも使える。

 牽制で軽く殴っただけでも距離を取られて追撃が難しくなり、コロロルクの攻撃を防いでも大きく弾かれる可能性もある。

 戦う相手にとっては、やり辛いことこの上ない。

 

 そこにザーニャが戻ってきた。

 

「一度戻って来て構わないそうです」

 

「ほな、戻ろか」

 

「もう森にはいないかもしれないねぇ」

 

「と言っても、私達が探したのはコルゴ樹林の3分の1程度ですがね」

 

「動物達はええんか?」

 

「まだ数時間は保ちます。1時間ほどしたら一か所に集めて、鷹以外の子をアクセサリーに戻して運ばせれば大丈夫です」

 

「なるほど」

 

 ラミナ達は森を出て、集合場所に指定された場所へと向かう。

 そこは押収した倉庫とは違う大型倉庫で、中からは動物の鳴き声が大量に聞こえてくる。

 

「おい、ケンカすんじゃねぇよ。お前の分もあるっつってんだろ!?」

 

 ラミナ達が中を覗くと、ナックルが保護した動物達に囲まれていた。

 餌をあげているようだが、もちろん言うことなんて聞くわけはない。

 

「お~……懐かれとるなぁ」

 

「ナックルさんは見た目や言葉遣いはアレですけど、根は優しいから動物に好かれるんですよね」

 

「まぁ、ちょっと構い過ぎるらしいけどね」

 

「そうですね。決して悪いわけではないのですが……」

 

「森に帰す事を考えたら、困りもんやな」

 

「ええ。餌をもらうことに慣れてしまうと、中々戻れないですからね。下手したらここに戻ってくるかもしれないですし……」

 

 同じビーストハンターであるザーニャは眉尻を下げて、動物に囲まれるナックルを見つめている。

 

 ザーニャは近いうちに森に帰す動物は最低限の接触を心掛け、食事も住んでいた環境に合わせるのを信条としている。

 懐かれるのは嬉しいが、人間に慣れ過ぎても困るのだ。人が近づいてくるのに慣れてしまえば、再び密猟者などに出会ってしまう可能性があるからだ。

 餌をもらうのが当たり前になり、狩りをしなくなって森から出てくるようになれば、今度は害獣扱いされかねない。

 もちろんザーニャはそのような動物を保護する活動もしているが、住む環境が変わればストレスで体調を崩すことも多い。

 

 なので、最大限故郷で暮らせるように配慮すべきと言うのが、ザーニャの方針なのだが……。

 

「がっつり市販の餌やって、がっつり撫で回して、がっつり構い倒しとるで?」

 

「だねぇ」

 

「はぁ~……ナックルさんが責任を持つなら、私が文句を言うことではないんですよね」

 

 ハンターは互いの流儀に口を出すことは基本タブーとされている。もちろん仕事に大きく関わるならば、別であるが。

 今回の仕事に関しては、ザーニャはあくまでメンチの手伝いなので、大きく口出しすることはしたくない。

 ナックルはメンチとは別口で今回の任務に就いており、メンチ達とは協力体制にあるだけなので、先ほども言ったようにナックルが責任を持てるならば問題はない。

 

 しかし、やはり目の前で自分のやり方と違う手段を見ると、ツッコみたくてウズウズするようでザーニャは眉間に皺が寄ったり消えたりで、ソワソワしている。

 

「どうしたの?」

 

 そこにメンチ、モラウ、シュートも合流する。

 

「ザーニャがナックルの世話に不満があるみたいでな」

 

「あぁ、そういうこと。あいつが世話してる動物は元の住処には帰せそうにないのよね。だから、どっかの保護区に送る予定なのよ」

 

「そうなんですか?」

 

「ええ、だからザーニャ。あんたも後で動物達の移送先探しといて」

 

「お任せください……!」

 

 ザーニャはフンス!と力強く頷く。

 

(……やっぱ見た目と中身が合うとらんなぁ)

 

 身長も高く、体つきもガッシリしており、雰囲気はクールな傭兵。

 しかし、会話をすればするほど、乙女チックなところがある女の子であることが良く分かる。

 本当にコロロルクとザーニャの中身を入れ替えれば、一切違和感はなくなるだろう。

 

 ちなみにザーニャが口元をマスクで隠しているのは『恥ずかしいから』らしい。

 目元の傷が原因で昔イジメられたことがあるそうで、『かわいい』『美人』などと言われ慣れていないようで、昨夜素顔を見たラミナが「美人な顔やな」というと、顔を真っ赤にしてフリーズした。

 更に寝る時は黄色のパジャマらしく、「中身は本当に年頃の乙女」とメンチとコロロルクが言っていた。

 

 もちろんコロロルクはメンチとラミナ同様、豪快な性格である。

 酒も飲むし、寝るときは下着または全裸である。

 昨夜はメンチ、ラミナ、コロロルクの3人で遅くまで酒盛りして、コロロルクはソファで寝ていた。

 

「で、今後はどう動くんや?」

 

「森の調査が終わるまではこのままね。街中や近くの街にも調査の手を伸ばしてるけど、ほぼ撤退したみたいで拠点だけが残されてるわ」

 

「国外の方も調査が進んでいるが、やっぱダミー会社だったり、シッポ切りで見捨てられた連中ばっかだな」

 

「まぁ、そうやろな」

 

「報復の可能性は?」

 

 シュートが訊ねる。

 メンチやモラウは腕を組んで考える。

 

「少なくともデカいマフィアはせんやろうな。可能性があるんは今回で潰れる可能性がある後戻りできへん底辺マフィアか、同じく後がないここしか縄張りがないアホな密猟者集団くらいちゃうか?」

 

「なるほどねぇ」

 

「密猟者に関しては、どのグループも少なからず被害は出てるから可能性は低いと思うけど?」

 

「グループ同士が手を組むかもしれねぇぜ」

 

「ああ……なるほど」

 

 コロロルクの疑問にモラウが答え、ザーニャが納得したように頷く。

 メンチはザーニャに顔を向ける。

 

「動物達はどう?」

 

「駄目ですね。何も見つけられませんでした。すでにここに戻しています」

 

「まぁ、あの広さじゃ仕方ないわよね」

 

「森に関しては、俺とザーニャで調査を続けよう」

 

「……なぁ、うちいる?」

 

 もういらない気がしてならないラミナ。

 調査に関してはラミナは護衛以上のことは出来ないし、戦闘に関しても密猟者程度ならばメンチ達でも問題ないだろう。

 もう仕事は終わった気がしてならない。

 

 一週間どころか3日しか経っていないが。

 

「付き合い悪いわね」

 

「うちは潜入偵察か戦闘がメインやねん。待機するだけなら、他の仕事探す方がまだ有意義やないか」

 

「一度引き受けた仕事は最後までやるもんだぜ」

 

「うちはあくまで手伝いに来ただけやでな」

 

「昨日も言ったけど、せめて森の調査が終わるまではいなさい。マフィアの動向でも探って、あんたの同業者が来ないかどうか警戒しといてよ」

 

「……しゃあないなぁ。まぁ、暗殺者来たところで大した奴ちゃうと思うで?」

 

「アマチュアとかが狙われるかもしれないでしょ? 暗殺者の行動なんてあたし達じゃ読めないし」

 

 ラミナはため息を吐いて項垂れる。

 モラウは苦笑して、話を纏める。

 

「じゃあ、森の調査は俺とザーニャ、護衛にコロロルク。マフィアや暗殺者に関してはラミナとシュート。ナックルはあのままで、メンチは統括と手が足りないところへの応援って形でいいか?」

 

「あたしはそれでいいわよ」

 

 メンチが頷いたことで、他の者達も文句は言わない。

 

「ほな、今日の夜から見回りでもするわ。シュートは昼の見回り頼むわ」

 

「昼か?」

 

「別に暗殺者だけちゃうかもしれんしな」

 

「あ~……悪いが出来れば2人で動いてもらえるか?」

 

「は?」

 

 ラミナがシュートと役割分担しようとすると、モラウが口を挟んでくる。

 ラミナが首を傾げると、シュートが眉間に皺を寄せて顔を背ける。

 

「こいつも実力はあるんだが……」

 

「だが?」

 

「弱気というか、好機とか危険な時に二の足を踏んじまうんだよ。流石に暗殺者やマフィアなら問題ないと思うんだがな……」

 

「じゃあ、ええやん」

 

「だが、1人だと対応が遅れるかもしれねぇんだよ。それだと困るだろ?」

 

「……ハンターやろ?」

 

「ハンターだな」

 

「……ナックルも動かしぃ。今日の夜はうちとシュートで見回る。明日の昼はナックル動かせや」

 

「そうだな。分かった」

 

「あたいも参加しようか?」

 

「それやとコロロルクの負担が大きすぎるわ。まぁ、見回りくらいなら大丈夫やって」

 

 ラミナは肩を竦めて、シュートを見る。

 シュートは少し居心地が悪そうに、体をソワソワさせる。

 ラミナはそれを呆れたように見つめて、小さくため息を吐く。

 

 実力はあるという言葉を信じて、ラミナは夜の見回りに備えることにしたのだった。

 

______________________

 

・ザーニャの能力!

 

 【銀を纏う精霊軍(オーバーソウル・シルバーアーミー)

 具現化系、放出系、操作系の複合能力。

 

 動物の遺骸を組み合わせた自作アクセサリーを媒介にして、動物を具現化させる。

 基本的に『遠隔操作』。複雑な命令は出来ない。

 

 動物達の視覚を共有することが出来る。

 『戦闘形態』があり、それは組み合わせたアクセサリーやミニチュアによって異なる。

 

 例:鷹《シルバーホーク》の場合。

 付属させたミニチュアは『戦闘機』。戦闘形態に移行すると、翼の下にミサイルが出現する。攻撃力はそこまで高くはない。

 

 元の姿を具現化させるだけならば10体以上可能だが、戦闘形態に移行させた場合は2体までが限界。

 

 制約は『1年以上世話をした動物の遺骸を使うこと』『自分で作ったアクセサリーであること』『動物がザーニャの事を記憶していること』『寿命、または病気で死んだ動物であること』『ザーニャが最期を看取っていること』『壊れたアクセサリーは二度と使えない』『いかなる理由であろうとも、ザーニャが殺した動物は具現化出来ない』『具現化出来るのは、ザーニャが世話した日数まで』。

 

 元ネタは【シャーマンキング】。パッチ族シルバのオーバーソウル。

 

 

 

・コロロルクの能力!

 

 【何でも弾く美女の肌(クイーン・ホッパー)

 変化系能力。

 

 オーラに『バネ』の特性を持たせる。

 

 跳躍力を上げることで機動力、速度、攻防力をまさしく跳ね上げる。

 相手の攻撃を利用して簡単に距離を取る事も出来るし、自分の攻撃で相手を吹き飛ばすことも容易になる。

 

 作り上げた念弾を、バネのオーラで押し出して高速で発射することが出来る。

 

 あくまで『バネ』なので、銃弾を跳ね返したりすることは出来ず、剣や槍の突きなども貫かれる。

 ヒソカの【バンジーガム】のように、他の物に引っ付けることは出来ない。

 

 元ネタは【ワンピース】の『バネバネの実』、【僕のヒーローアカデミア】のオール・フォー・ワンの『《筋骨発条化》で空気を押し出す技』。

 

 


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