暗殺者のうちが何でハンターにならなあかんねん   作:幻滅旅団

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2回連続でこの時間になってしまいました(ーー;)


#46 シュウゴウ×ノチ×ハッカク

 ラミナ達がそれぞれの占いを始めていた頃。

 

 クラピカは重い足取りながらも、デイロード公園に足を踏み入れた。

 広い公園の芝生には多くの人が思い思いに過ごしており、昨日のセメタリービル周辺の殺伐さが嘘のようだった。

 

 ネットではクロロやマチ達の死体(偽物)の解体動画がアップされており、世間を騒がしているが、それもほんの一部だ。

 

 クラピカも話では聞いているが、そこまで辱めたかった気持ちはないので見てはいない。

 死んだ者にまで恨みをぶつける気はなかった。

 それにやはりラミナのことが頭に過ぎるのもある。

 

 その時にゴンから『デイロード公園で待ってる』とのメールがあったのだ。

 旅団への復讐が終わったと考え始めているクラピカは、センリツ達が「少し休め!」と言ってくれたことにより、余裕が出来たので会いに行くことにしたのだ。

 

 そして、公園内を見渡すと、ゴンとキルアがピザやパイ、アイスやポテトなど大量に広げて、早食い競争を始めていた。

 相変わらずな2人の様子に心が温かくなった気がしたクラピカはゆっくりと歩み寄る。

 

 すると、頬を膨らませていたゴンが、クラピカに気づいて口の中のものを吐き出しながら声を上げる。

 

「ぶぁはピカ!!」

 

 吐き出されたものは盛大にキルアの顔にかかる。

 ゴンはそんなことなど気づきもせずに、クラピカに駆け寄っていく。

 クラピカは何か問い詰められるかと覚悟したが、

 

「終わったね!」

 

 と、ゴンが笑みを浮かべながら言ってきて、一瞬固まってしまった。

 

「クモが死んで、これでやっと一番やりたかったことに集中出来るね! 早く見つけてあげなきゃ! 仲間達の眼」

 

 ゴンの言葉にクラピカが呆気にとられる。

 

「俺達にもてつだぶ――」

 

 ゴンが言葉を続けようとした時、キルアが背後から近づいてゴンの顔にアイスクリームを叩きつける。

 ゴンはキルアに飛び掛かって、キルアは笑いながら躱す。

 

 クラピカは唖然とその様子を見つめていたが、再びキルアがゴンの顔にパイを叩き込んだのを見た時、どこか気が抜けてしまう。

 

「……ふふっ」

 

 そして、笑みを浮かべて、久しぶりに心の底から笑うことが出来たのだった。

 

 

 

 その後、ホテルでレオリオとも合流する。

 

「久しぶりに4人揃ったね!」

 

「……ラミナには連絡してないのか?」

 

 ゴンが明るく言うが、クラピカの言葉で一瞬にして明るい雰囲気が霧散する。

 しかし、避け続けられる話題でもない。

 キルアが肩を竦めて、

 

「連絡はしたんだけどさ。やっぱ……会える状況じゃないってさ」

 

「そうか……」

 

「けど、あれだろ? 昨日の旅団に関してはクラピカじゃないんだろ?」

 

「まぁ……な」

 

「親父達、来てなかった?」

 

「……ああ。シルバとゼノと言う者が来ていたな」

 

「やっぱ親父と爺ちゃんか……」

 

 人気がないラウンジの奥に向かいながら、話すゴン達。

 

「それにしても……」

 

「? なんだ?」

 

「何かオメー、威圧感つーか迫力みてぇなもんが出た気がするな」

 

「君は……大して変化もなさそうだな、レオリオ」

 

「ムカつく度も増したな、オイ」

 

 軽口を言い合うも、半年前のように話せることにどこかホッとする4人。

 

 ラウンジ奥のソファに座った4人は、ゆっくりと話を始める。

 

「これからどうするの?」

 

「まだマフィア続けるのか?」

 

「……そのつもりだ。今の雇い主は人体収集家でな。【緋の眼】の情報は集まりやすいと考えている」

 

 ゴンとレオリオの問いに頷きながら、理由を答える。

 そこにキルアが鋭く切り込む。

 

「……旅団の残党は? どうするんだ?」

 

「……奴らの頭が死んだ以上、無理をするつもりはない。……ラミナの事もある……」

 

「そうだな……。まさか旅団と親しかったとはなぁ。……ホントに旅団の1人を倒したのか?」

 

「……ああ」

 

 レオリオの問いかけにはっきりと頷くクラピカ。

 それにキルアとレオリオは顔を顰め、ゴンは真剣な顔で見つめていた。

 

「……どうやって倒したの?」

 

「……クモの残党を捕まえたいならやめておけ。私の話は参考にならない」

 

「それだけじゃないよ。俺達だって念を極めたいと思ってるし……それにラミナを止めたいんだ。もちろんクモも止めたい気持ちもあるけど……」

 

「……」

 

「なぁ、クラピカ」

 

 キルアがクラピカの前に紙を広げて、差し出す。

 それは地下リングでもらった旅団の顔写真だった。

 キルアはその中の1人、マチを指差す。

 

「こいつさ、ラミナの姉みたいな存在だってよ。旅団の連中も……ラミナの事を妹を見るみたいな目だった」

 

「……」

 

「こいつはクラピカが殺したわけじゃないけどさ。俺の親父だってあいつの家族を奪った仇になったわけだし。でも、これでラミナは一気に家族を失ったことには変わりはない。クラピカと同じように」

 

「……そうだな」

 

「このままじゃ復讐の連鎖だ。出来れば、俺達の手で止めたい。……俺とゴンはあいつに念を教わったし、俺はあいつに色々と恩がある」

 

「うん」

 

「……」

 

「けど、今の俺達じゃ旅団にもラミナにも、手も足も出ない。だから、少しでも参考にしたいんだ」

 

 キルアは真剣な表情でクラピカに言い放つ。

 ゴンも力強く頷き、クラピカをまっすぐ見据える。

 クラピカは顔を俯かせて数秒考え込み、そして覚悟を決めて顔を上げる。

 

「なら、余計に私の話は参考にならない」

 

「え?」

 

「私の能力は旅団以外の者には使えない」

 

「「「!!」」」

 

 クラピカの暴露にゴン達は目を見開いて固まる。

 

「制約と誓約は知っているか?」

 

「ああ」

 

 クラピカは右手を3人の前に出して、鎖を具現化する。

 

「念は精神が大きく影響する能力。覚悟の量が力を上げる。私は能力の大半をクモ打倒に使うことを『誓った』。そして、その制約が『クモでない者を鎖で攻撃した場合、私は命を落とす』というものだ」

 

「「「!!」」」

 

 クラピカは左胸を指差す。

 

「私の心臓には念の刃が刺さっている。私の能力は憎悪が生んだ恨みの産物だ。クモ以外には全く通用しない能力だ」

 

「ま、待てよ!? それじゃあ、もしラミナに襲われれば……!!」

 

「……恐らく勝ち目はないだろうな。だから、他言しないでくれ」

 

「っ!! マズいんだ!! 生き残った団員の中に記憶を読む能力者がいる! 恐らく触れるだけで欲しい記憶を読み取れる能力だ!」

 

「けど、前はバレなかったよ?」

 

「あの時は俺達もクラピカが鎖野郎だと知らなかった。けど、今はもう知ってる」

 

 キルアはパクノダの能力とその危険性に気づいていた。

 なので、またパクノダに記憶を読まれれば、すぐさまラミナに情報が渡り、ラミナはクラピカを殺しに来るだろうことは想像に難くない。

 

「しかしよ、こっちから近づかなけりゃ安全だろ?」

 

「……俺達が鎖野郎をクラピカだって予想出来たんだ。ラミナが予想してないはずがない……!」

 

「そりゃあ……そうだけどよ……」

 

「けど、ラミナが予想してても確かめようがないんじゃない? 確かめるために俺達を襲いに来るとは思えないし……」

 

「今のあいつがいつも通りの判断能力があるとは限らないだろ? 俺達を人質にして、クラピカを誘い出そうとする可能性はある。……俺を捕まえれば、親父達も誘い出せるしな……」

 

「あ!」

 

 旅団のリーダーを殺したのはシルバとゼノとなっている。

 なので、ラミナや旅団の復讐対象はゾルディック家も含まれる。キルアを捕まえれば、クラピカとシルバを同時に誘い出せると考える可能性は高い。

 そうなれば、クラピカはともかく、ゾルディックとの戦争は止められない。

 

「他にノブナガって奴がゴンに執着してる。多分、ゴンを探すのを諦めてない。ラミナが俺達とクラピカの事を話せば、あいつらが俺達を探し回る可能性が高い……! それにヒソカもいるしな」

 

「いや……ヒソカはもうクモとは動かないだろう。奴は私と協定を結んでいるからな」

 

「「「!!」」」

 

「ただ、奴は私が鎖野郎だと知っている。旅団のリーダーが死んだ今、話す可能性はある」

 

 ヒソカからはまだラミナと交戦した連絡は来ていなかった。

 ちなみにこれは昨夜ゴン達に電話した後から、クラピカがずっと携帯の電源を切っていたからだ。

 

 その時、

 

ピルルルル! ピルルルル!

 

 クラピカのポケットから着信音が響く。

 クラピカは携帯を取り出し、画面を見る。

 

「っ! ヒソカ……!」

 

「え!?」

 

 何とヒソカからの電話だった。

 クラピカは素早くゴン達を見回して、

 

「スピーカーで通話する。しばらく黙っていてくれ」

 

 ゴン達は顔を引き締めて頷き、クラピカはスピーカーモードにして電話に出る。

 

『……やぁ♥ 忙しいのかな?』 

 

「……いや、問題ない。何かあったのか?」

 

『ちょっと、ね♦ 困ったことになってさ♠』

 

「困ったこと? 旅団のリーダーが死んだことか?」

 

『くくく♣ それについても報告があるけどね♥ まずは1つ目♦ 僕と君の繋がりがバレた♠』

 

「!!」

 

『昨晩、ラミナに襲われちゃってさ♠ 命からがら逃げ出したけど、僕はもう旅団には戻れない♣』

 

「……私のことは……」

 

『もちろん♥ ラミナは君が鎖野郎だと気づいてた♦ どうやら、廃屋で会ってたところを見られてたみたいでね♠』

 

「……そうか」

 

 だが、バレることは覚悟していたことだ。

 今も話していたところなので、そこまで動揺はない。

 

「他には……」

 

『ラミナから逃げて団長達の死体が出た後に、イルミから電話があったんだ♥』

 

「……イルミから?」

 

 クラピカやゴン、レオリオは思わずキルアを見る。

 キルアは盛大に顔を顰めるが、続きを促す。

 

「……それがどうした?」

 

『くくく♥ そこで面白い話を聞いたんだ♦ きっと君が喜ぶと思ってね♥ いや、それとも残念なのかな?』

 

「ふざけるなら切るぞ」

 

『残念♠ じゃあ……団長を殺したはずのゾルディック家当主なんだけど♦』

 

「ああ」

 

()()()()()()()()()って言ってたらしいよ? この意味、君なら分かるだろ?』

 

「っ!!」

 

 クラピカとキルアは目を大きく見開く。

 ゴンとレオリオはまだ意味が分からずに、2人の顔を交互に見る。

 

『ちなみにイルミや他のゾルディック家の者はクモを狙ってはいない♠ そして、僕がラミナに襲われる直前まで、クモはノブナガを除く全員が大暴れしながらビルに向かっていた……♦ マフィアの銃で死ぬような連中じゃないのは、君は目撃してるはずだろ? じゃあ、見つかった死体は何でしょう? くくくっ!』

 

「……死体は……偽物っ!」

 

『クモはまだ死んでいない♥ さぁ、どうする?』

 

ブツッ ツーツーツー

 

 ヒソカは挑発するような事を言って、電話を切った。

 クラピカは弾かれるように立ち上がる。

 

「死体は偽物って……! マジかよ……!?」

 

「……確かに同じ具現化能力者なら可能だ……! くそっ!」

 

「そーか!! 天空闘技場の……!」

 

「カストロ! 自分の分身を作り出した人!!」

 

 キルアとゴンも、旅団の能力をようやく理解する。

 念は人の体すら作りだす瞬間を2人は目の当たりにしている。なので、死体を作り出すことなど難しくはない事も理解できた。

 キルアは顔を顰めて、事態が急変したことを悟る。

 

「そうなるとマズい……! 旅団もだけど、ラミナがクラピカに対して動きを見せないのはおかしい……!」

 

「なんでだよ?」

 

「親父達がいなくなった以上、旅団とラミナにとって一番の邪魔者はクラピカだ。今日も地下競売を狙うにしても、まだ時間がある。先にクラピカを排除しようとしないのは不自然なんだよ!」

 

「けど、ヒソカと繋がってたのも分かってんだろ? もうバレてると思うのが普通じゃねぇか?」

 

「だったら、余計にクラピカを狙う! ここで無視しても、クラピカが競売で待ち構えてることくらい簡単に想像できる! 連中からすれば今のうちにクラピカさえ倒せば、悠々と地下競売を狙える!」

 

「そ、そうか……!」

 

 ゴンとレオリオも、事態が最悪に近い事を理解する。

 その時、再びクラピカの携帯が鳴る。

 

「! またヒソカ?」

 

「……いや、違う」

 

 クラピカは首を横に振り、3人から離れる。

 

「私だ」

 

『クラピカ? あたしよ』

 

「センリツか。どうした?」

 

『コミュニティーが旅団の残党狩りを断念したわ』

 

「な!?」

 

『奴らが流星街の出身だと分かったそうなの』

 

「流星街……!? 旅団が……!?」

 

『十老頭が直々に終戦命令を下したらしいわ』

 

「……分かった。競売は?」

 

『まだ何も連絡はないわ』

 

「……分かった。また何か分かったら連絡をくれ」

 

『ええ』

 

 クラピカは電話を切って、ゴン達の元に戻る。

 

「大丈夫?」

 

「ああ。それよりも、コミュニティーが旅団の追跡を諦めたらしい。懸賞金も白紙に戻したそうだ」

 

「え!?」

 

「一体なんで……!?」

 

「……旅団が、流星街出身だと判明したそうだ」

 

「流星街……!? そうか、それで……」

 

 今度はレオリオだけが、意味を理解した。

 ゴンとキルアは顔を見合わせて問いかける。

 

「リュウセイガイって?」

 

「社会的には存在していないとされる連中の街さ」

 

「存在しない?」

 

「国際人民データ機構にも登録されず、国民番号も持たないってことさ」

 

「紆余曲折を経て、流星街は政治的干渉を全く受け付けない空白地帯となった。投棄される廃棄物を再利用して、1000万近い人間が暮らしていると言われているが……。実はゴミと称して、彼らに大量の武器と貴金属を援助する連中がいる。それが、マフィアンコミュニティーだ」

 

「「!?」」

 

 レオリオとクラピカの説明にゴンとキルアは目を見開く。

 

「どういうこと? だって旅団はマフィアと……あれ?」

 

「見返りとして、マフィアは貴重な人材を得る。社会的に存在しない連中。犯罪にはうってつけだ」

 

「ああ……ラミナのような者が、な」

 

 クラピカがラミナの名前を挙げる。

 ゴンは一瞬何故ラミナの名前が出たのかと思ったが、旅団との関係を思い出した。

 

「あ……そうか。ラミナは旅団と家族みたいだって言ってたから……」

 

「ああ。ラミナも流星街出身なのだろう。それならば、殺し屋になったことにも説明がつく」

 

「マフィアの依頼を受けてたみたいなことも言ってたしな。けど、本来なら流星街とコミュニティーは蜜月の関係で、ラミナは旅団と利害が合わないはずなんだがな」

 

「……それでも家族との関係を選んだ、ということなのだろう。旅団がコミュニティーに喧嘩を売った時に覚悟はしていたはずだしな」

 

「旅団に入るつもりだって言ってたし。コミュニティーと縁が切れても問題ないってことだろ」

 

「だよなぁ……」

 

 キルアの言葉に、レオリオはラミナとはもう前のように会えないという予感が頭を過ぎる。

 キルアはクラピカに顔を向ける。

 

「どうする? マフィアは手を引いた。今にもラミナや旅団がここに現れてもおかしくないぜ」

 

「……」

 

 クラピカはキルアの言葉に考え込む。

 

 正直なところ、キルアとしてはもう懸賞金もなくなったので旅団を狙う理由はない。

 しかし、ラミナとの関係をこのままにしておくことも出来ない。

 その時、キルアの頭にある可能性に思い至る。

 

「クラピカ」

 

「なんだ?」

 

「旅団って新しい団員入れるのに、なんかルールあるの? ラミナは団長次第って言ってたけど」

 

「……入団希望者が在団員を倒せば交代で入れる。もしくは、今言っていたように団長が選ぶ。この2つのはずだ」

 

「ってことはさ。ラミナはもう入団した可能性があるんじゃないか? クラピカが倒した1人分欠番が出たし、ヒソカを追い出したのもラミナだ。旅団としてはここでラミナを引き入れない理由はない」

 

「そう言われればそうだな……」

 

 キルアの推測にレオリオは頷く。

 クラピカも顎に手を当てて、考え込む。

 

(確かにその可能性は高い。ヒソカも私の制約はもちろん知らないし、他人に話したのはゴン達とイズナビだけ……)

 

 なので、ラミナや旅団に制約がバレている可能性はない。

 キルアの推測通り、ラミナが旅団員入りしている可能性は高い。ここでラミナと旅団がバラバラに動く理由はないし、入団したかどうかなど本人達しか分からないのだから、マフィア側にスパイとして入り込んでもそう簡単にバレはしないだろう。

 ウボォーギンと戦い、ヒソカを退けるだけの実力があり、家族のような間柄であるラミナを旅団が歓迎しない理由はない。

 

(あの11番を倒した事実は、ラミナやクモ達には十分私の能力を警戒させているはず。ラミナ1人で突っ込んでくる可能性は……低い)

 

 ならば、旅団と共に動くはず。そうなると、尚更入団しない理由はない。

 

 クラピカとキルアはそう判断した。

 

 ラミナが謎のプライドを発動して、入団を拒否していたなど夢にも思わず。 

 

 

 

 クラピカ達は作戦会議を始めた。

 クラピカは心の底ではゴン達を巻き込みたくはないが、パクノダとラミナを無視することは出来ない以上、協力者は多い方がいいと判断したのだ。

 

「まず奴らのアジトを張る役。中継係が1人」

 

「俺がやるよ」

 

 キルアが立候補する。

 

「ターゲットは最優先がパクノダ、次鋒でラミナ。それ以外は無視していい」

 

「了解」

 

「くれぐれも慎重に」

 

「分かってる。無理はしない。っつーか、出来ない。ラミナ相手に俺の考え方なんて、すぐに見抜かれるだろうし」

 

 キルアは肩を竦める。

 クラピカは頷いて、次にレオリオに顔を向ける。

 

「私と共に行動する運転手が1人。レオリオ、頼めるか?」

 

「い!? お、おう」

 

「運転できるのはクラピカを除けばレオリオだけだし、仕方ないよ」

 

「まぁ、そうだけどよ……」

 

「それでクラピカ。俺は?」

 

「敵の目を眩ます役。撹乱係だ」

 

「っ!? ちょっと待った! それはかなりヤバイ役だろ! また奴らと直接対峙しなきゃなんないじゃん!」

 

「それはやり方次第だ」

 

「? 一体どんな作戦だよ?」

 

「いたって単純だ。敵がゴンに気を取られている隙に、私がパクノダを捕えて車で連れ去る。不確定要素が多すぎて、これ以上細かな作戦は立てられない。方法はゴンに任せるが、最低0.5秒、出来れば1秒。相手の注意を引きつけてほしい」

 

「……あの連中から1秒……」

 

 前回は2人相手に全く逃げる暇を与えられなかった。

 さらに今回はラミナまでいる可能性がある。

 非常に厳しいと言わざるを得ないだろう。

 

 しかし、やらねばならない。

 

「……ゴン。お前が鍵だ。出来そうか?」

 

「……まだ分からない。考えてみるよ」

 

 流石にゴンも簡単に出来るとは言えない。

 自分の命はもちろん、クラピカの命もかかっているのだから。

 

 だからゴンはある覚悟を決める。

 

「ねぇ、クラピカ。俺にも念の刃、刺してよ」

 

「「「!?」」」

 

 ゴンの言葉にクラピカ達は目を見開く。

 

「念の刃をって……」

 

「オイ、ゴン。話を聞いてたか!? 旅団以外の人間を攻撃したらクラピカは死ぬんだぞ!?」

 

「声がデカい!」

 

 レオリオが思わず声を荒らげ、クラピカが若干イラつきながら怒鳴る。

 

「でもさ、だったらなんでクラピカの胸には念の刃が刺さってんの?」

 

 ゴンの疑問にキルアとレオリオはハッ!として、クラピカに顔を向ける。

 

「……ここからの話は更に私のリスクを上げる」

 

「……分かったよ」

 

 レオリオは立ち上がって、キルアに顔を向ける。

 キルアはゴンに顔を向けて、よく見る『絶対に譲らない表情』のゴンを見て、ため息を吐いて席を立つ。

 

 2人が離れたのを確認したクラピカは早速、本題を語る。

 

「結論から言おう。それは確かに可能だ」

 

 クラピカは自分の能力について説明していく。

 まずは【束縛する中指の鎖(チェーンジェイル)】について説明する。

 そして、

 

「【律する小指の鎖(ジャッジメントチェーン)】にも使用条件がある。『緋の眼の時にしか使えない』」

 

 クラピカは両眼を緋の眼に変える。

 自力で発動できるようになったことにゴンは僅かに驚く。

 

「自分の力で出せるの?」

 

「訓練した。緋色になるまでかなり時間がかかるがな。そして、私は緋の眼の間のみ特質系に変わり、覚えた能力であればいかなる系統でも100%の精度と威力で使用できる」

 

「……つまりは俺にも念の刃は刺せるってことだね?」

 

 ゴンは結局クラピカの説明をほとんど理解出来なかった。ここらへんはラミナもしっかりと説明していたのだが。

 もしラミナがいたら、アイアンクローではなく、飛び蹴りが飛んで来たことだろう。

 

 クラピカはそこにはツッコまず、しっかりと頷く。

 

「いいよ。ルールは任せる」

 

 ゴンはクラピカとしっかりと目を合わせて言う。

 クラピカもしっかりと見つめ返し、

 

「……お前の覚悟、確かに受け取った」

 

 その時、クラピカの背後にキルアとレオリオが顔を出す。

 

「!」

 

「その刃ってさ、3本出せる?」

 

「任務終了後にはそのルール、ちゃんと解除できるんだろうな?」

 

 キルアとレオリオがクラピカに問いかける。

 

 その内容から2人も念の刃を刺してもらうつもりであることが分かる。

 

「「答えは?」」

 

 クラピカは目を閉じて、

 

「……両方とも、可能だ」

 

 しかし、目を開けたクラピカの両眼は普段の色に戻り、右手の鎖も消す。

 

「私はお前達に剣を刺す気など、最初からないのだよ?」

 

「え? でも……もし俺がパクノダに捕まったら……」

 

「私の能力はバレるだろうな。かと言って、秘密を守るルールをどう決める? 『パクノダに触れてはいけない』とでもするか? それでは反撃のチャンスをむざむざ潰すことになるぞ」

 

「あ……」

 

「パクノダに触れられても、すぐ記憶を読まれるとは限らないし、仮に捕まっても記憶を他の者に話す前に倒せばいい。触れられた瞬間にルールで死んで、反撃の可能性を0にすることはないだろう?」

 

「……まぁ」

 

「そりゃそーだ……」

 

 キルアとレオリオも納得はする。

 

「でも……だったらなんでリスクが増すだけなのに、俺たちにこんな話を?」

 

「……お前達の覚悟に対する私なりの礼だよ。お前達から秘密が漏れたとしても、私はもう何1つ後悔しない。そして……ラミナと戦うことになったことへの懺悔でもある」

 

 クラピカはどこか胸が軽くなった気がした。

 

 

(私は……いい仲間を持った) 

 

 

 だからこそ、ゴン達をラミナと敵対させることを償わなければならない。

 

 だからこそ、この作戦で死んでも後悔だけはしないようにしたかった。

 

 仲間に託したことを恨まないように。

 

 

「……では、準備を始めよう」

 

 

 これで全てを終わらせるために。

 




明日はお休みです
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