暗殺者のうちが何でハンターにならなあかんねん   作:幻滅旅団

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#47 アメ×ノ×コウボウ

 外は雨が降っていた。

 

 ラミナは再びカツラを被って、雨の中を移動する。

 

「ヒソカがどう言うかはともかく、旅団が生きとることは伝わっとると考えるべきやな」

 

 その時、ラミナの携帯が鳴る。

 

「はい?」

 

『マフィアンコミュニティーが俺達の懸賞金を解除した。まぁ、奴らは俺達が生きてる事を知らないから当然ではあるが、死体を確認していないはずのウボォーとノブナガの懸賞金も消えたことから、連中は俺達が流星街出身であることを知ったんだろう』 

 

「つまり、マフィアは完全に手を引いたっちゅうことか。ほな、仕事までにクラピカを仕留めればええんやな」

 

『ああ』

 

「了解。ほな、リラ駅に向かう」

 

『いや、ホテルの前で待機してくれ。鎖野郎やノストラードの者が現れたら、追跡で留めろ。1人で突っ走るな』

 

「努力はするわ」

 

 ラミナは電話を切って、移動を再開する。

 ヒソカやゴン達からアジトの場所を聞いてバレている可能性が高いので、短刀を具現化して姿を消して一気に駆け出して、街中に向かう。

 

(雨っちゅうんがなぁ……。【朧霞】は姿と気配を隠すだけで、透過するわけやないからなぁ)

 

 雨の中では【朧霞】の弱点が特に露出する。

 雨がラミナの体に当たって輪郭が見えてしまうのだ。なので、雨の中では常に動き回るか、人込みの中に紛れるしかない。

 それでも姿を消せるだけ有利ではあるが、実力者の前ではその違和感が見事に看破されてしまう可能性が高いので、一切油断は出来ないのだ。

 

(ヒソカには【朧霞】の見抜き方はバレとるし、うちが姿を消して動いとることは予想しとるはず。かと言って……変装程度やとクラピカやヒソカに近づくのは厳しいしなぁ)

 

 ラミナは顔を顰めながら走り続け、駅近くで【朧霞】を解除する。

 そのまま電車に乗って、リラ駅に移動する。

 駅から外に出て、一度周囲の気配を出来る限り探る。もちろん【円】は使わない。

 

(…………特に視線は感じん。さて、ここからが勝負やな。どこでホテルを見張るか……)

 

 屋上がベストではあるのだが、この雨では【朧霞】は逆に目立つ。

 しかし、下では雨に傘、人混みで見えにくい。

 【朧霞】で姿を隠せて、周囲を見渡せる場所を探さなければならない。

 

「ホテルの近くで非常階段みたいなんがあるビルがあればええけど……」

 

 とりあえず、ホテルに足を進めるラミナ。

 ホテル正面入り口の近くまで移動して、周囲を見渡す。道路を挟んで反対側の4階建てビルに、外付けの非常階段を見つけた。

 ラミナはその3階部分踊り場まで上がり、【朧霞】を発動しながら周囲を見渡す。

 

(ん~……やっぱ見渡しは悪いなぁ。しゃあないか……)

 

 そのビルの屋上まで上がり、さらに隣の7階建てビルの壁をよじ登って屋上に上がる。

 屋上の縁へと進んで一度下を覗き込み、すぐ下の窓上に出っ張りがあるのを見つけた。

 出っ張りは何とか足を乗せられるくらいだった。

 

(ないよりはマシやな)

 

 ラミナは迷わず出っ張りに下りて、落ち着く位置を探す。

 背後は諦めるしかないが、ここからならばホテル正面玄関と左右の大通りも見ることが出来た。

 

(車の出入り口が見にくいか……。けど、反対側は動くには細い道ばっかやし、こっちに出てくるはず)

 

 そして、ラミナは監視を続けるのであった。

 

 

 

 一方、その頃。

 旅団アジトがある廃墟を監視に来たキルアは、離れたビルの屋上で眉間に皺を寄せていた。

 

「大量のビルまで具現化出来るとかアリかよ……」

 

 旅団アジトがある廃墟のビルの数が増えていた。

 もちろんすぐに旅団の仕業であることを見抜き、一度近づいたもののすぐに撤退した。

 今はクラピカに『援軍が行くから待て』と言われて、待機している。

 

(……雨のせいで音も気配もはっきり感じ取れない。けど、下手に近づくと向こうに感づかれちまう……)

 

 悔しいが、実力は向こうが上。

 念についても未熟でしかないキルアでは警戒しようにも、警戒しきれない。【円】も使えないし、感じ取れる自信もない。

 最大限の警戒がこの場所だったのだ。

 

(けど、この場所もラミナならすぐにバレそうなんだよな……)

 

 元殺し屋のキルアの考え方や動き方など、同じ殺し屋のラミナなら簡単に思いつくことが出来るだろう。

 なので、キルアにとって最善な場所は、ラミナにとっても警戒すべき場所になるのだ。

 今にもラミナが隣に現れそうで、心臓のバクバクが止まらない。

 

ブルルルル、ブルルルル

 

 携帯が鳴り、キルアは携帯を取り出す。

 

「もしもし」

 

『あ、キルア君?』

 

「ああ。あんたは?」

 

『クラピカの仕事仲間。左の方を見てくれる?』

 

 言われるがままに左を見ると、2,3個先のビルの屋上に帽子を被った小柄な人、センリツが立っていた。

 

『ケータイ、切って。すっごい小声で私に何か命令してみて』

 

「? 右手上げて

 

 携帯を切りながら、小声で呟くキルア。

 すると、センリツが右手を上げる。

 

(おお! すっげー地獄耳。こいつは使えるね)

 

 その後、センリツと合流する。

 

「よろしく」

 

「ええ」

 

 センリツは早速廃墟に顔を向けて、耳に集中する。

 

「……! 足音がするわ。声も聞こえる」

 

「!」

 

 キルアは目を見開いて、自分でも耳を傾ける。

 

「……雨音で内容までは無理だけど……。足音からして5,6人ね。女も混ざってる。こちらとは反対方向に向かってるわね」

 

「………すげーな。全然聞こえねー」

 

「そう言う能力だから。さ、急ぎましょ」

 

「ああ」

 

 2人は急いで、移動を開始する。

 街中に入って、センリツ先導の下、旅団を追う。

 

「……ねぇ、あなた……まさか殺し屋さん?」

 

「? 元だけど。なんで?」

 

「足音よ。こんなに近くにいてもエスティントだから」

 

「エ……? ああ……癖になってんだ。音殺して動くの」

 

「今まで会った人の中で一番静かよ。凄い技術だわ」

 

「……これくらいの音だったら、どれくらいの距離まで聞こえる?」

 

「? そうね……。流石にこの雨じゃ50mが限界かも」

 

「……相手にもこれくらい音を消して動ける奴がいる。殺し屋の女で、俺やクラピカの顔見知り」

 

「……そう。だから、あなた達は協力してるのね」

 

「ああ。ちょっとそいつには貸しがあってさ。クラピカと殺し合いになってほしくないんだよね」

 

「そう……。なら、頑張らないとね」

 

「……ああ」

 

「っ! ストップ!」

 

 センリツが突然止まる。

 キルアも足を止めて周囲を素早く見渡すも、旅団の姿はない。

 

 目の前は人通りが多い大通りだった。

 センリツはすぐに左方向を指差して、

 

「この道を曲がって、さらに100mくらい先に奴らがいるわ」

 

「……他の奴の足音と区別つくの?」

 

「癖があるのよ。それぞれ微妙にね」

 

「……よし。ちょっとここで待っててよ。上に登って本命がいるか確認してくる」

 

 キルアは素早くビルの壁をよじ登って、ビルの屋上に上がる。

 上がったキルアは双眼鏡を取り出して、覗き込む。

 すると、

 

「いた……! げっ……!?」

 

 パクノダの姿を確認したキルアは、その周囲にノブナガとマチの姿を目にして顔を顰める。

 しかし、その中に初めて見る男がいた。

 

(……こいつがリーダーか……。けど、ラミナがいない)

 

 キルアはラミナがいないことを確認して、携帯を取り出す。

 ゴンに電話を掛ける。

 

『……キルア?』

 

「ああ。あの女がいたぜ」

 

『!』

 

「だけど仲間と一緒だ。6人で行動中。チョンマゲにピンク頭もいるぜ」

 

『げっ』

 

「ただ、ラミナはいない。それとあと1人、俺達が昨日見てない奴がいる。多分、リーダーだ」

 

『どんな奴?』

 

「背中に逆十字の黒いコート着てる。黒髪オールバック、顔は見えない。てかな、隙なさすぎ。正面なんて怖くて回れねぇよ」

 

 背中を見ているはずなのに、今にも目が合いそうな気がする。

 それなのに、その周囲を更にノブナガ達が囲んでいて、更に隙が無い。

 

 あと数m近づけば、全員がこっちに気づくだろう。

 

「相当警戒慣れしてるぜ。あいつらが固まっている限り、微塵の隙も出来ねぇと思うぜ?」

 

 あの6人相手に、同時に、出来れば1秒、注意を引きつけなければならない。

 

(……逃げることも考えたら……絶望的だな)

 

 姿を見せないようにすればいいのかもしれないが、それでも全員の注意を引けるのかは怪しい。

 特にクロロの注意を引き付けるのはかなり困難のように感じた。

 すると、電話の相手がクラピカに変わる。

 

『今、どのあたりだ?』

 

「モトバビル前コンチネンタル通りを西の方へ歩いてる」

 

『……駅があるな。同じ電車には乗れそうか?』

 

「状況によるね。混雑していなければ何とか」

 

『分かった。奴らが電車に乗ったら連絡をくれ』

 

「了解」

 

 キルアは電話を切って、センリツの所に戻る。

 そして、バレないように駅を目指す。

 

 顔がバレていないセンリツにお願いして、旅団と同じ車両に乗ってもらい、キルアは最後尾の車両に乗る。

 クラピカにカスツール方面であることを伝え、旅団が降りるまで待つ。

 

 その時、マチは携帯を取り出して、電車に乗ったことをラミナにメールで知らせる。

 それをクロロ達は黙ったまま、見つめていた。

 

 クロロはアジトを出る前に、

 

「ここを出ればラミナへの連絡はメールで、基本はマチがしてくれ。そして、ラミナの名前は一切出すな」

 

 と、厳命していたからである。

 すぐにラミナから『特に変化はない』と返信が来た。

 マチは携帯を仕舞い、クロロに顔を向けて首を横に振る。

 

 そして、クロロ達はリパ駅で電車を降り、ホテルに近い出口へと向かう。

 外へ出て、シズクがホテルの場所を確認していると、

 

「!! 動いてる」

 

 コルトピはコピーが動き始めたのを感じとる。

 

「下にゆっくりと動いてる」

 

「エレベーターだな。出かける気か」

 

「急ごうぜ、団長」

 

 マチは携帯を取り出して、ラミナに素早くメールを打つ。

 

「これから全員で捕獲に入る。互いに互いをフォローできる間合いを保て。パクノダ、捕まえたらウボォーの事を聞き出せ」

 

「了解」

 

「後はノブナガ、お前の好きにしろ」

 

 ノブナガは鋭い顔で頷く。

 そして、クロロ達は一斉に走り出す。

 

 それを離れた所の車内で見ていたクラピカ、ゴン、キルアは目を見開く。

 

「ホテルの方向だ! 速い!」

 

「レオリオ! 車で先回りは!?」

 

「そろそろラッシュの時間だ! 奴らの方が早いかもしれねぇ!」

 

「くっ!」

 

「クラピカ!?」

 

 変装しているクラピカが助手席から飛び出していく。

 ゴンも慌てて飛び出して、後を追う。

 

 クロロ達は人混みの上を飛び越え、壁を走って高速で移動する。

 

「! 2時の方向へ、時速40kmほどで移動中」

 

「車に乗ったな。マチ」

 

「了解」

 

 マチがまた携帯を取り出すが、それと同時にメールが届く。

 

「!」

 

『ノストラード リスト者 追跡』 

 

「もう動いてる」

 

「ふっ。流石だな」

 

 

 

 ラミナはマチから『コピーが移動開始』とメールを確認して、目に全神経を注ぐ。

 5分ほどした時、ホテルすぐ横の路地裏から車が一台出てきて、運転手の顔を見た瞬間、ネオンのボディーガードリストにあった顔であることを見抜いた。

 ラミナは素早くメールを打って、車の追跡を始める。

 

 車を運転しているのはスクワラという褐色肌の男。

 ボディーガードの1人で、犬を操る操作系能力者である。

 つい先ほどクラピカから旅団が迫っているとの電話があり、犬と【緋の眼】だけを持ち出して、車に飛び乗ったのだ。

 

「ふぅ……たまんねぇぜ。次の仕事が見つかるまでとか思ってたが、とてもじゃねぇ! 今日で最後だ!」

 

 スクワラはプロハンターではなく、ただ犬と恋人を養えるだけの給料が出る仕事だからとボディーガードに就いたのだ。

 ただの我儘娘の護衛のはずだったのに、何故か幻影旅団に追われるようなことになっている。

 すでに仲間が何人も死んでいる。そんな世界だとは分かってはいるが、たった3日で半分以下に減れば嫌にもなるだろう。

 

「くそっ! ラッシュとかついてねぇな!」

 

 車で逃げれば大丈夫だと思っているが、少しでも早くホテルから離れたかった。

 まだ動いてはいるが、少しずつスピードは落ちていっている。

 徐々に日が暮れていき、雨足も強まっている。

 それがまた不気味で、嫌な予感が強まる。

 

 そして、それは的中する。

 

 

ドォン!!

 

 

 突如、車のボンネットに何かが落ちてきて大きく凹む。衝撃が走り、フロントガラスにヒビが入る。

 

「うおお!?」

 

 スクワラは悲鳴を上げて、咄嗟にブレーキを踏む。

 車が停まった直後、腕がヒビ割れたフロントガラスを突き破ってきて、スクワラの胸倉を掴む。

 

「ぐぅ!? がっ!!」

 

 スクワラは振り解く暇もなく、フロントガラスを完全に突き破りながら引っ張り出される。

 そのまま持ち上げられる。

 

「ぐっ……!」

 

「……ノストラードの人間やな?」

 

「っ!!」

 

 茶髪のカツラを被ったラミナが右腕一本で、スクワラを持ち上げながら問いかける。

 スクワラは両手でラミナの腕を掴むがビクともしない。

 

 スクワラのピンチに犬達が歯を剥き出しにして唸り、飛び掛かろうと構えた瞬間。

 犬達の額にスローイングナイフが突き刺さった。

 

「ギャウン!?」

 

「ガッ!?」

 

「や、やめ……!?」

 

「もう遅い」

 

 すでに犬達は全滅していた。

 スクワラが念使いであることを見抜いていたラミナは、この犬達がただのペットでもないと考えていた。

 わざわざ犬を連れ出した以上、操作系能力者であることは想像に難くなかった。

 

「こ……のヤロ……!!」

 

「野郎ちゃう。……なぁ? クラピカがどこにおるんか知らん?」

 

「……知らねぇよ。誰だ?」

 

「……ま、そらそうやんな」

 

 ラミナはスクワラを横に放り投げて、道路に落とす。

 スクワラは背中から道路に落ちて、素早く立ち上がる。

 

「ぐっ! くっ……!」

 

「オイ。動くな」

 

「!!?」

 

 逃げようとしたスクワラの背後から、恐ろしい殺気と共に鋭い声が突き刺さる。

 スクワラは顔だけで後ろを向くと、そこにはノブナガ、パクノダ、コルトピが立っていた。

 

「……こいつだけか?」

 

「残念ながら、な」

 

「ちっ。パク」

 

「ええ」

 

 パクノダはスクワラの背後に回りながら、右腕を取り関節を極める。

 スクワラの左をラミナが、右をコルトピが立ち、正面にノブナガが立つ。

 

「少しでも動けば、斬る」

 

「いくつか質問するから、正直に答えて」

 

「っ……!」

 

「あんたの仲間に鎖を使うクラピカって奴がいるでしょ? 今どこ?」

 

「だから、誰だよそいつは!? てめぇら誰だ!?」

 

ゴギッ!

 

「がぁ!!」

 

 スクワラの右手が容赦なく折られる。

 パクノダは涼しい顔で、今度は左腕を掴む。

 

「質問に答えてね。次は左手を折るわよ」

 

「それに動くなって言ったろうが。直立不動で聞かれたことだけに答えろ、ボケが」

 

「っ……!」

 

「ウボォーギンはどうしたの? あんた達が攫った大男よ」

 

「あ!? 逃げたよ、そいつは! その後は知らねぇな!」

 

「他の仲間はどこ?」

 

「一足先にシマに帰ったよ! 俺も帰るところだったんだ!」

 

「……嘘はいけないわね」

 

「本当だって!! こんな状態でデタラメ言うわけねぇだろ!?」

 

「もう一度聞くわよ。クラピカはどこ?」

 

「だから知らねぇよ! そんな奴、俺の仲間にはいねぇ!!」

 

「……最後の質問。あなた、大切な人はいる?」

 

「……そんな奴がいたら、こんな仕事してねぇよ」

 

 今までの質問とは明らかにトーンが変わったスクワラ。

 それだけでラミナでさえも嘘だと分かったが、パクノダ相手にはもっと酷い結果が待っている。

 

「……へぇ、エリザって言うのね、その子。美人ね」

 

「っ!!!」

 

 名前を告げられた瞬間、スクワラは完全に動揺し、目を大きく血走らせてパクノダに振り返る。

 

「テメェら!! もしもエリザに指一本――」

 

 その瞬間、スクワラの首に一陣の風が走る。

 そして、ノブナガがキィンと鍔を鳴らして、スクワラの背後に一瞬で移動する。

 

「触れてみやがれ!! ……?」

 

 スクワラの首は叫びながら宙に舞い、直後不思議そうな顔して地面に落ちる。

 

「動くなっつったろぉが。二度もよぉ」

 

 ノブナガがつまらなげに言う。

 突然の大惨事に周囲で停まっていて目撃した一般人達は悲鳴を上げる。

 しかし、ラミナやノブナガ達は一切気に留めない。

 

「クロロ達は?」

 

「俺らの後をつけてる奴らがいてな。そっちの対応をしてる」

 

「また馬鹿な連中がおったもんやな」

 

「で? 情報は引き出せたのか?」

 

「もちろん。口で説明するのも面倒だから、3人にも記憶を撃ち込むわ」

 

「「撃ち込む?」」

 

 ラミナとノブナガが首を傾げると、パクノダは拳銃と3発の弾丸を具現化する。

 弾丸を弾倉に装填し、銃口をノブナガに向ける。

 

「撃つけど、怖いならやめるわよ」

 

「アホか。早くやれ」

 

 パクノダが挑発するように言うが、ノブナガは特に構えもせずに早く撃つように言う。

 コルトピとラミナも頷く。

 パクノダは笑みを浮かべて、直後3連射してノブナガ達の額に銃弾が直撃する。

 

 僅かに頭が仰け反った3人だが、頭の中に次々と映像と音が浮かび上がっていく。

 

 どこかの屋敷で重り付きの鎖を振り回して銃弾を防いだり、鎖でウボォーギンを縛っていたり、拘束したウボォーギンの顔を殴りつけたり。

 

 様々な光景と声が浮かび上がっては消えていく。

 

「……おい、ラミナ。こいつか?」

 

「……ああ」

 

「なるほど、こりゃあ便利だ……。こんな面してやがったか、クラピカさんよぉ……!」

 

 ようやく仇の顔が分かったノブナガは、両手を握り締めてこみ上げる怒りを抑え込む。

 

「てめぇの面と名前! 殺すまで忘れねぇぜ!!」

 

「けど、ウボォーの最期と鎖野郎が今どこにいるのかは分からないね」

 

「やけど、クラピカがこいつに逃げるように伝えとったっちゅうことは、クロロ達の方が本命かもしれんな」

 

「確かにね。団長に電話するわ」

 

「うちは一足先にホテルに戻るで。大分騒ぎになってきたしな」

 

「ええ」

 

 ラミナは短刀を具現化して姿を消しながら、移動を開始する。

 そして、パクノダ達もクロロに電話しながら、歩き出すのであった。

 

 

 ラミナはホテル前に戻りながら、先ほどの記憶を思い起こしていた。

 

(右手で鎖を操る能力。それも指ごとに用途が違う感じやったな)

 

 薬指が迎撃用、中指が拘束用と考えたラミナ。

 しかし、それでウボォーギンを殺せるとは思えない。

 

(残りの3本のどれかがトドメ用っちゅうことやとしたら……厄介やなぁ)

 

 指と鎖を組み合わせることで、能力を細かく振り分ける事を可能にしている。

 基本的に具現化系でラミナなど複数の能力を持っている者は、能力によって具現化するモノが変わることが多い。

 そのため、具現化したモノによってオーラの消費量や能力の内容や精度はバラつきが大きい。

 

 しかし、クラピカはそれを『指』に主体を置くことで、同じ鎖でもそれぞれ独立したモノとして具現化することに成功したのだ。

 

 それによって、鎖それぞれに能力を設定し、制約も細かく定めることが出来る。

 

(どれか1本だけに命がけの誓約と制約を決めれば、確かにウボォー相手でも一発逆転は全然ある……! しかも旅団はクラピカにとって不俱戴天の仇。その力は計り知れん。精神面では最大限のパフォーマンスを発揮できる状態になる、か)

 

 ラミナは再びホテル前のビルに戻る。

 すでにクロロ達が中に入っているはずだが、流石にここからは見えなかった。

 

(なんも連絡ないっちゅうことは、クラピカやなかったんかな。残りのノストラードファミリーか?)

 

 そう考えていたラミナ。

 

 

 しかし、ホテルの中では、

 

 

「ぐっ……! がっ……!?」

 

「キルア……!」

 

「騒げばホントに殺すよ」

 

「っ! ぐ……!」

 

「いいんですか? 団長」

 

「……殺さなければな」

 

 

 キルアとゴンが、再びマチに首(キルアのみ)と両手を締め付けられていた。

 

 




感想である質問がありました。

『まだ旅団入りしてはいないラミナを、旅団員だと思い込んでいるクラピカが【束縛する中指の鎖】でラミナを攻撃した場合、制約は発動するのか?』

というものです。

これに関して、拙作での私の解釈についてご説明させていただきます(__)

答えは『発動する』です。

原作にて【律する小指の鎖】の効果にて、パクノダが死亡した際。
クラピカがパクノダに課したのは『クラピカについて一切の情報を漏らさぬこと』。
それを破って、パクノダはアジトにて亡くなりました。

もしクラピカの認知が大きく影響するのであれば、【記憶弾】をルール違反と判断したのは少しおかしいからです。
クラピカは【記憶弾】の存在を知りませんし、クラピカから切り離された鎖がどうやってそれを判断したのかという疑問が湧きました。

そこで考え付いたのが、『クラピカの鎖は【縛られた者の認識】を読み取って作用する』というものです。

操作系は相手の思考を奪いますし、パクノダが記憶を読み取りますからね。
可能性はあると思っています。

なので、【束縛する中指の鎖】は縛り付けた瞬間に、その者の記憶や認識を読み取って旅団かどうか判断しているという設定で拙作では話を進めさせて頂きたいと思います。

実際の所、制約と誓約はどのように判断されるんでしょうね?(-_-;)
クラピカが「あいつは旅団だ!」って思っていれば問題ないとなると、自分としては『命懸けた意味なくね?』と思ってしまったのです(-_-;)

なので、拙作では上記の設定でクラピカを行動させる予定です(__)

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