暗殺者のうちが何でハンターにならなあかんねん   作:幻滅旅団

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前回お話させて頂いたクラピカの鎖の設定。
どうやら私が知らなかった公式設定があったようです(__)

『クモの刺青を確認していること』『クラピカが強く確信していること』。

この2点が大きいようですね。

そして、少し上記2点を含んで構成を考えましたが、特に影響がないと判断しました。
なので、上記2点も含めてストーリーを進めさせていただきます(__)

『縛られた者の認識が作用する』は【律する小指の鎖】では引き続き適応させて頂きます。


#48 イッシュン×ノ×クラヤミ

 スクワラが車に乗り、ラミナがそれを追いかけ始めた頃。

 

 クロロ達は引き続き、猛スピードでホテルへと目指していた。

 しかし、

 

「……尾けられてるな」

 

 と、クロロが背後の気配に気づいた。

 

「!! いつから!?」

 

「やば。追うのに夢中で気づかなかった」

 

「ちっ!」

 

 マチとシズクが目を見開いて、ノブナガが鞘袋から刀を取り出す。

 クロロは素早く指示を出す。

 

「ノブナガ、パクノダ、コルトピ。前を追え!」

 

「了解!」

 

 ノブナガ達がスピードを上げた直後、クロロ、マチ、シズクは背後を振り返りながら警戒態勢を取る。

 直後、2つの人影が物陰に隠れるのが見えた。

 

「見えたか?」

 

「姿は見えなかった。路地に1人」

 

「ゴミ箱の後ろに1人」

 

「OK。【凝】を怠るな」

 

「「了解」」

 

 シズクは【デメちゃん】を具現化し、マチも両手に念糸を生み出しながら頷く。

 そして、一切の油断なく、人影が隠れた場所を見据える。

 

 完全に気配を捉えられたことを、ゴミ箱の裏に隠れているゴンと路地裏に隠れたクラピカは感じ取った。

 クラピカは右手に鎖を具現化して、完全にこの場で戦闘を行う構えを取る。

 しかし、ゴンはその姿を見て、内心慌てる。

 

(駄目だ、クラピカ……! こんな警戒された状況で、しかもこんな人通りが多いところで3人相手に勝ち目はない!!)

 

 3人同時に縛れるわけもないし、能力も分からない。

 1人でも逃せば、ゴンではクラピカを守り切れない。

 

 その時、クラピカがいる路地の奥に人影が見えた。

 それが見えた瞬間、ゴンはゴミ箱裏から飛び出して、クロロ達の前に出て両手を上げる。

 

「ごめんなさい! もう追いかけないから許してください!」

 

 ゴンの姿にシズクは首を傾げ、マチは目を細める。

 

「? またこの子?」

 

「ってことは……。出てきな、ゾルディックのガキ」

 

 マチは路地を睨みつけながら言う。

 すると、キルアが顔を顰めて路地から現れる。

 

「ほう……こいつらがあいつの弟子か」

 

「……どうする、団長? 殺す?」

 

「でも、この子達、鎖野郎の仲間なんだよね?」

 

「「!」」

 

 クロロは興味津々にゴン達を見つめる。

 マチは僅かに殺気を漏らしながらクロロに訊ね、シズクが首を傾げる。

 クラピカの仲間と言う言葉に、ゴンとキルアは一瞬目を見開く。

 

(やっぱ、俺達のこともバレてるか……!)

 

(マズイ……! 更に警戒引き上げただけかも……) 

 

 キルアとゴンは悔し気に顔を歪め、クロロはそれを見逃さなかった。

 

「捕まえろ。まだ殺すな」

 

「……ここで殺した方がいいと思うけど」

 

「鎖野郎への人質になるかもしれん。まぁ、ならなかったらその時は殺せばいい。それと、逃げようとすれば殺していい」

 

「……了解」

 

 マチは顔を顰めたまま、2人の両手を縛る。

 クロロは携帯を取り出して、電話を掛ける。

 

『もしもし』

 

「フィンクス。俺だ。ベーチタクルホテルまで来てくれ」

 

『了解』  

 

 電話を切ったクロロはマチ達に顔を向ける。

 

「ホテルでフィンクスやノブナガ達を待つ。鎖野郎や他の仲間もいるかもしれん。警戒を怠るな」

 

「「了解」」

 

 歩き始めたクロロに、ゴンが唐突に問いかける。

  

「ねぇ、1つ聞きたいんだけど……」

 

「ん?」

 

「何故、自分達と関わりのない人を殺せるの?」

 

 直後、雷が轟いて、稲光がクロロを照らす。

 その照らされた顔があまりにも無機質だったため、ゴンは一瞬ゾクッと怖気が走る。

 

「……ふ。白旗を上げた割に敵意満々だな。……何故だろうな? 関係ないからじゃないか?」

 

 クロロは顎に手を当てて、急に1人で考え始める。

 

「改めて、問われると答え難いものだな。動機の言語化か……。あまり好きじゃないしな。しかし、案外……いや、やはりと言うべきか。自分を掴む鍵はそこにあるか……」

 

 ゴンに明確に答える事もなく、自問自答するクロロにゴンとキルアはやはり普通な奴ではないと理解する。

 そして、このタイミングを利用して、キルアはもう1つ問いかけた。

 

「……ラミナは今、どこにいるんだ?」

 

「お前には関係ない」

 

「ぐっ……」

 

 クロロではなく、マチが即答する。

 全く取り付く島もない答えに顔を顰めるが、クロロは小さく笑みを浮かべる。

 

「婚約者が気になるのか?」

 

「なっ!? ちげぇよ!!」

 

「婚約者!?」

 

 クロロの言葉にキルアは慌てて否定し、ゴンは状況も忘れて驚く。

 キルアは、よりによって何故このタイミングで!と憤りを覚えるが、元はと言えば言わなかった自分も悪いのでクロロを睨みつけるだけしか出来なかった。

 

「なんだ? 言っていなかったのか?」

 

「……俺達は認めてない。親父達が勝手に言ってるだけだ」

 

「ふっ、なるほどな」

 

「……で?」

 

「さぁな。昨日の夜から会ってない。ヒソカとの戦いで大分痛めつけられたらしい」

 

「ふぅん……ぐぇっ!?」

 

 肩を竦めるクロロの表情を、キルアは鋭く見つめて真偽を見極めようとしたが、首に念糸が巻き付けられて締め付けられる。

 

「とっとと歩きな」

 

「ぐ……!」

 

「キルア!」

 

「マチ」

 

「殺さないよ。けど、無駄なおしゃべりする必要もないだろ?」

 

「……ふっ。それもそうだな」

 

 クロロ達は歩く速度を上げる。

 キルアは息が出来ないほどではないので、息苦しさを感じながらもなんとか歩く。

 首を絞め付けられたのと危機的状況のおかげか、ゴンはキルアの婚約者話は頭から吹き飛んでいた。

 

 その100mほど後ろから、クラピカとセンリツは追跡を継続していた。

 

「この距離が限界ね。奴らの警戒網に引っかかるわ」

 

「……くそっ!」

 

 クラピカが苛立ちを露わにする。

 それを見たセンリツは言い聞かせるように声を掛ける。

 

「幸い2人は今すぐ殺されないみたい。焦りは禁物よ、クラピカ!」

  

「分かってる!」

 

「分かってないわよ! あなたの無謀な追跡のせいで2人がまた危険な目に遭ってるのよ!」

 

 センリツは苛立ちを抑えられないクラピカを叱責する。

 

「どうして2人が自ら捕まりに行ったのか分からないの? あなたがここで見つかったら、もう誰も旅団を止められないからよ!」

 

 その言葉にクラピカは深呼吸して、頭を冷静にしようとする。

 

 事実、ゴンとキルアはまだ【発】を完成させていない。

 そもそも旅団と因縁があるわけでもない。

 なのに、クラピカやラミナがいるから、命を懸けてくれている。

 その事実をクラピカの一時の感情で無意味にするところだったのだ。

 

「……すまない」

 

 素直に謝ったクラピカに、センリツはホッとする。

 しかし、依然状況は最悪に近いのは変わらない。

 

(婚約者って話は、今はしない方がいいわね)

 

 センリツ自身も全員の関係を理解しているわけではないので、どこまで伝えていいのか判断できないのもある。

 だが、キルアやゴンの反応からすると、間違いなく今言うことではなさそうだとセンリツは考えた。

 

「奴らはベーチタクルホテルに向かうみたいね。スクワラはどうなったの?」

 

「携帯に出ない。どうやらホテルに置き忘れたみたいだな」

 

「そう……。どうするの? ホテルに入られたら、流石に奴らの隙を突くのは不可能に近いわよ」

 

「……先回りする。準備をしないといけない」

 

「準備?」

 

「ゴンが考え付いた作戦だ」

 

 クラピカは携帯を取り出して、電話を掛ける。

 

『クラピカか!? 無事か!?』

 

「レオリオ。今どこだ?」

 

『もうすぐホテルだ! そっちは?』

 

「……すまない。奴らに気づかれて、ゴンとキルアが旅団に捕まった」

 

『はぁ!?』

 

「奴らはホテルに向かっている。そこで奴らを待ち構える」

 

『待ち構えるって……』

 

「レオリオはホテルに着いたら、準備してほしいものがある!」

 

『用意してほしいもの?』

 

「ホテルスタッフの制服と、発電室の場所の確認だ」

 

「何をする気なの?」

 

 小走りでホテルに向かいながら、指示を出すクラピカにセンリツは首を傾げる。

 

「確かに奴らの警戒を突破するのは難しい。しかし、いくら奴らでもいきなり視界が闇に覆われれば、対応が遅れるはずだ!」

 

「視界を闇に? ……まさか……!?」

 

『なるほどな。確かに被害を最小限にして、連中全員を同時に注意を逸らすにはそれがベストか……』

 

「問題はタイミングだ。ゴンとキルアにどうにかして伝えなければならない」

 

 未だ状況は流動的だ。

 2人に知らせずに作戦を決行して旅団の誰かを拉致しても、それでは意味はない。

 暗闇に乗じて2人も脱出できるようにしなければならない。

 

『けど、旅団相手に確実に逃げれんのかよ?』

 

「……ターゲットを変える」

 

「え?」

 

「2人が逃げ切れなかった場合の人質をこちらも手に入れる」

 

『人質って言ったって……』

 

「旅団の頭を狙う」

 

「『!?』」

 

「いくら奴らとて、リーダーが攫われればゴン達をすぐには殺せない」

 

『けど、それじゃあ結局旅団に返すだけじゃねぇか』

 

「【律する小指の鎖】で『念の使用』と『団員との会話・接触』を封じる。そうすれば、奴らはもう一緒にはいられなくなる」

 

『……なるほどな』

 

 旅団を壊滅することは出来ないが、今まで通りの活動も出来なくなる。

 どれだけ効果があるかは不明だが、それでもしばらく活動に支障は出るはずだと考える。

 

「そして、ゴン達が上手く脱出すれば……ただ始末すればいい」

 

 向こうに人質がいなくなれば、クラピカは遠慮する理由はない。

 頭を潰して、同じく活動に支障が出た残りの団員を一網打尽にすればいい。

 

 クロロを捕えられれば、最低でも最高でも旅団の動きを封じることは出来る。

 ならば、この作戦に全力を注ぐべきだとクラピカは覚悟を決めた。

 

 その時、センリツがクラピカを止める。

 

「待って!」

 

 センリツは耳に手を当てる。

 それにクラピカは通話を止める。

 

「……あなたのことがバレたみたい。ホテルのロビーで待ち合わせをするみたいよ」

 

「ロビーならば、逃げ道も確保しやすいし、紛れ込みやすい。後は時間だけだな」

 

『分かった。とりあえず、準備するぜ!』 

 

「頼む。それとレオリオ。お前がゴン達にメッセージを伝えてくれ」

 

『お、俺が!?』

 

「私とセンリツはバレた可能性が高い。お前がマフィアの真似でもすれば、まだ誤魔化せる可能性がある」

 

『けど、俺のことだってラミナからバレてる可能性はあるぜ?』

 

「かもしれんが、可能性は低い。名前は分かっても、顔までは全員知ってることはないはずだ。後は……ラミナがいないこととパクノダに記憶を見せていないことを祈るだけだ」

 

『博打にもほどがあんだろ!?』

 

「元々すでに博打だ。ゴン達が捕まった以上、危険は覚悟しろ」

 

『だよな……。時間は?』

 

 クラピカは時計を確認する。

 現在は18時45分。

 

「……7時ジャストだ」

 

『分かった。急げよ!』

 

 通話を切り、クラピカ達は足を速める。

 作戦の準備を整えるために。

 

 

 

 ホテルに到着したクロロ達は、正面入り口すぐ前の柱で待機することにした。

 

「ここで待つ」

 

 マチはゴンとキルアを縛った念糸を握ったまま、柱を背に立つ。

 クロロはその隣に、クロロを挟むようにシズクが立つ。そして、ホテルに入ってくる者、奥から現れる者に注意を払う。

 

 常に死角を減らすように視線を動かしていくクロロ達の気配に、キルアは顔を顰める。

 

(隙は一切なし。今から入ってくる奴、近づいてくる奴は最優先で警戒されちまう。それに……もし作戦を決行しても、この首の糸をどうにかしないと……!)

 

 両手は関節を外せば、逃げられる。しかし、首はどうにも出来ない。

 

(ゴンは両手の関節は外すなんて出来ない。どうにかして、この糸を解かないと……!)

 

 しかし、その手段が思いつかない。

 今、暴れたら間違いなく何も出来ずに殺される。

 一番逃げられる可能性がある作戦は浮かんでいるが、それを伝えられていない。ゴンとクラピカがどのような会話をしたのかも聞けていない。

 クラピカ達が同じ作戦を考えられていることと、すでに準備を終えていることを願うしかなかった。

 

 その時、

 

「何時だと思ってんだ、てめぇ!!」

 

 ロビーに怒鳴り声が響き渡る。

 目を向けると、待合のソファに座っている男が新聞を叩きつけながら携帯を耳に当てていた。

 

「バーカ! ベイロークじゃねぇよ、ベーチタクルホテルだよ!!」

 

((レオリオ!?))

 

 ゴンとキルアは目を見開いて、声を出さないように必死に抑える。

 すると、レオリオがクロロ達に顔を向ける。

 

「ん? 何見てんだコラ、あ? 勝負すっか? お?」

 

「……消します?」

 

「ほっとけ。目を合わすな」

 

 シズクがクロロに訊ねるが、クロロは無視することを決めた。

 それはラミナからレオリオのことまでは伝わっていないということを示していた。

 

「ったく、間抜けな手下を持ったおかげで、俺のお先『真っ暗』だぜ! いいか!? 『目ぇつぶる』のは今回だけだ! 次、ヘマしたら分かってんな!? よく聞けよ、『7時きっかり』だ!! それまでにホテルに来い!! 1秒でも遅れたら速攻クビだ!!」

 

 レオリオの言葉を聞いたゴン達は、それがメッセージだと気づく。

 そして、レオリオは苛立ちを浮かべる演技を続けて、ラジオをつけて再び新聞を広げて顔を隠す。

 ゴンとキルアはそれぞれに小さく笑みを浮かべる。

 

(クラピカもこっちに気づいてる! 7時決行!)

 

(こいつらだって突然停電すれば、闇に慣れるまで時間がかかるはず! 後の問題は、俺達がどうやって逃げ出すか……)

 

 キルアはチラリと背後にいるマチに目を向ける。

 やはりマチに隙は見えず、そう簡単に逃げ出せそうにはない。

 

(……こいつがそう簡単に糸を緩めるとは思えない。生半可な攻撃じゃ殺されるだけだ。暗闇になった一瞬で……殺るしかない……)

 

 自分とマチとの実力差を客観的に判断したキルア。

 しかし、それは、

 

(……俺自身がラミナの仇になる……)

 

 ラミナをどうにか止めたくてクラピカに協力したはずなのに。

 このままでは完全にラミナと決別して、敵対することになってしまう。

 ただでさえマチは旅団の中で、ラミナと最も親しい間柄だ。

 間違いなくここで殺せば、決定打となる。

 

 決行時間まで、あと5分。

 あまり考える時間はない。

 

(……最優先は……クラピカがリーダーかパクノダを捕獲すること……。いや、リーダーを捕縛すること。クラピカなら、それを考えているはず。……なら、俺達が取るべき行動は……)

 

 キルアは歯を食いしばって、ある決断をする。

 

 その時、ホテルの正面入り口からノブナガ達が現れる。

 ゴンとキルアはノブナガを見て、顔を顰める。

 ノブナガもゴン達を見つけて、僅かに目を見開く。

 

「お!? なんだオメェら。まぁた捕まったのか?」

 

「懲りない子達ね」

 

 パクノダは呆れながら、クロロ達に合流する。

 

「それとも入団する気になったのか?」

 

「ふん。あんた達の――」

 

「まぁ、お前らがクラピカの仲間だって分かった以上、そんな気はねぇがな」

 

「「っ!!」」

 

 ノブナガの表情が鋭くなり、キルアとゴンは喉元に刃を突きつけられた感覚に襲われた。

 一瞬にして息苦しくなり、キルアとゴンは冷や汗が流れ出す。

 

「言え。クラピカはどこだ?」

 

「知らないよ。ハンター試験から会えてないし、ヨークシンにいるかどうかも知らないんだ」

 

「ウボォーを捕えたのは奴だ。ノストラードファミリーの奴からパクノダが聞き出したから間違いねぇ。そいつはクラピカから俺達が近づいてることを知らされて逃げ出した。そして、このタイミングでお前らが現れた。偶然にしちゃあ出来過ぎてる」

 

(っ!? くそ……!)

 

 キルアは歯軋りをし、ゴンも顔を顰める。

 最悪のバレ方だ。

 作戦決行直前で、クラピカとの協力体制が疑われるのはマズイ。

 

「……パク、この2人を調べろ」

 

 キルアとゴンの表情の変化を、クロロはやはり見逃さなかった。

 

「OK。何を聞く?」

 

「『何を隠している?』かだ」

 

 クロロのその言葉にキルアは再び歯を食いしばる。

 情報を引き出すには最善の問い方だった。

 特にこの場合、間違いなくクラピカの事や作戦のことが頭に浮かんでしまう。

 

(くそっ……! どうすればいい!? あと2分弱……! それだけの時間が稼げれば……!)

 

 パクノダがキルア達に手を伸ばす。

 なので、キルアは何とか足掻いて時間を稼ぐ。

 

「……無駄だね」

 

 キルアはパクノダと目を合わせて、はっきりと言い放つ。

 

「俺達だって捕まったのは予定外なんだ。今、クラピカが何をしてるかなんて知るわけないよ」

 

 キルアはあえてクラピカとの関りを口にする。

 ゴンは目を見開いて、キルアを見る。

 

「確かに俺達はクラピカに会ったさ。ラミナのこともあったしね。けど、物別れだよ。俺達じゃ旅団に敵うわけない、力にならないってね。実際、俺達はまだ【発】も完成させてないし」

 

 ゴンもキルアがわざと事実も織り交ぜて、時間を稼いでいることを理解し、すぐに追随する。

 

「けど、俺達はラミナとクラピカを戦わせたくなかったんだ。だから、先に俺達で捕まえようってキルアと決めただけだよ」

 

「そう……。でも、あんた達の言い分なんてどうでもいいの」

 

 パクノダはゴンとキルアの首を掴む。

 

「「っ!!」」 

 

「私が引き出すのはあんた達の創り出すイメージじゃなくて、原記憶って言うものよ。記憶の底にある最も純粋な記憶なの」

 

 レオリオはその様子を顔を食いしばって、新聞の陰から見つめていた。

 19時まで、まだ1分半はある。

 このままでは、記憶が読まれて作戦がバレてしまう。

 どうすべきかと考えていた時、

 

 

ガッッシャアアァン!!!

 

 

 突如、正面入り口のガラスが割れた。

 

『!!?』

 

 全員が目を向ける。

 そこには、

 

「ぐっ! んのっ! バケモンが……!!」

 

「くくく♥ 酷いなぁ♠」

 

 ククリ刀とハルバートを握っているラミナが床を転がりながら顔を顰め、ラミナを追いかけてヒソカがトランプを左手に構えて不気味な笑みを浮かべて迫っていた。

 ラミナは起き上がりながら背後に跳び下がり、ヒソカはそれを追う。

 

「ラミナ!」

 

「ヒソカ!! っのヤロォ!!」

 

 ゴンとノブナガが叫ぶ。

 ラミナとヒソカは空中で目だけ向ける。

 

「っ!? キルアにゴン……!?」

 

「おやおや♦ 面白い組み合わせだねぇ♥」

 

「テメェ……!」

 

「待て、ノブナガ!」

 

「っ!? 団長!?」

 

「奴は鎖野郎と手を組んでいた。鎖野郎が来る可能性がある。お前と俺でコルトピ、シズク、パクを守る。マチはそいつらの糸に集中しろ。ヒソカはラミナに任せる」

 

「ちぃ!」

 

「全員、警戒しろ」

 

 クロロはクラピカを警戒して、ラミナの援護を止める。

 それにゴンとキルアは目を見開くが、動けないのでラミナを助けに行けない。

 マチは顔を顰めて、クロロの指示を無視しようとするが、

 

「いらん!! こいつはうちだけでええ!!」

 

「っ!!」

 

 マチの動きを悟ったラミナが鋭く叫ぶ。

 マチは動きを止めて、歯軋りする。

 ヒソカはクロロに目を向けて、口を吊り上げる。

 

「させるかい!!」

 

 ラミナがククリ刀を消し、レイピアを具現化して素早く突き出す。

 ヒソカは体を捻って剣筋から外れて、攻撃を躱す。

 

 そして、ヒソカは()()を構える。

 ラミナはヒソカの攻撃に備えながら、床に着地する。

 

 その直後、

 

 

バツンッ!!

 

 

『!!?』

 

 突如、ラミナ達を暗闇が包み込んだのだった。

 

 


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