暗殺者のうちが何でハンターにならなあかんねん 作:幻滅旅団
ヨークシンを出た翌日の9月5日。
ラミナ達はヨークシンシティとカゴッシシティの中間にある街で1泊することにした。
モーテルに車を停めたラミナは、ふとカルトを見て、
「カルトって男でええのん? 女がええのん?」
「……男でいいよ。この格好は見た目に合ってるからってだけだし」
「ふぅん。じゃあ、クロロと相部屋でええか」
カルトは僅かに眉を顰めて言う。
ラミナはそれに頷いて、クロロとカルトを相部屋にする。
クロロはその間、新聞を購入してフロントの椅子に座って読んでいた。
部屋を取ったラミナ達は部屋に入る。
「クロロは部屋でちょっと大人しくしとれや。情報とお前の護身用の武器とか集めてくるから」
「ああ。すまんな」
「カルトもクロロの護衛。その間、クロロに旅団のことでも聞いとき」
「分かった」
「クロロ、なんか欲しいもんあるか?」
「……いや、今は特にないな」
「分かった。早めに戻るから、ちょっと待っとき」
ラミナは部屋を後にして、街中のネットカフェに向かう。
パソコンの前に座り、さっそく情報収集を始める。
まずはヨークシンでの旅団や地下競売の情報。
昨日暴れたので、マフィアンコミュニティーにも死体が偽物だとバレた可能性がある。
(……地下競売は中止しとったんか。旅団の残党の復讐を警戒したか……。それ以外での旅団に関しては特に反応なし。まぁ、十老頭の指令に背く度胸はないっちゅうことか)
続いて、自身の事を調べる。
やはり仲介屋や情報屋にはラミナと旅団の関係はバレていた。
(お~……。がっつりバレとるな。こら、マフィアと太く繋がっとる仲介屋はもう使えんな。まぁ、ゾルディックの方が金払い良さそうやからええけど)
引き続いてハンターサイトに移動して、自分と旅団の情報について調べる。
やはりハンターサイトには、ラミナと旅団の関係も、旅団が生き延びているのもバレている。
流石にクロロの状況まではバレていないし、ラミナ達がヨークシンを抜け出したことは載っていない。
(全く……クラピカやノストラードは全然情報出さんかった癖に、こっちは1日かいな。選り好みしよってからに……)
ラミナはため息を吐いて、パソコンの前から立ち上がる。
ネットカフェから出たラミナは、携帯ショップに向かい、新しく携帯を一台購入する。
そして、郊外にある武器屋に顔を出して、クロロが使えそうな武器を適当に購入する。
その後も細々と買い物をして、モーテルへと戻る。
「戻ったで」
「ああ」
クロロは椅子に座って未だ新聞を読んでおり、カルトはテレビを見ていた。
「ほれ」
「ん?」
ラミナは購入してきたものをベッドの上に広げる。
クロロは新聞から目を放して、ベッドへと目を向ける。
ベッドの上には拳銃やナイフ、暗器などが広がっていた。
「念を使えん以上、銃も視野に入れんとな。服も何着か買うて来たから、それと合わせて武装しぃ」
「やれやれ……。あまりゴチャゴチャしたのは好きじゃないんだがな」
クロロは拳銃を手にして、ジロジロと眺めながら愚痴る。
ラミナはベッドに腰掛けながら、呆れたようにクロロを見る。
「贅沢言うなや。今のお前はその拳銃の弾で簡単にお陀仏するんやぞ? まぁ、素人の発砲やったら避けれるやろうけど」
「そうだったな。全く……当たり前に使えていたものが使えなくなると不便なものだな……」
「それと新しい携帯とお前の財布。口座に関しては早めに手続きしときや」
「ん? 俺の携帯はアジトにあったはずだが?」
「ド阿呆。今までの携帯やと、下手にマチ姉達から連絡が来たら死ぬかもしれんやろうが」
「……それもそうか」
クロロは顎に手を当てて、考え込む。
ラミナは小さくため息を吐く。
「お前が逃げ出したことはまだバレてへん。まぁ、うちとお前らが繋がっとるんは仲介屋や情報屋、ハンターサイトにはバレたけどな」
「追手は来そうか?」
「今の所、大丈夫そうやな。マフィアンコミュニティーはまだ十老頭のことを隠しとるんか、気づいとらんのか知らんけど、動く気配はなし。一番可能性があるんは、うちが利用しとった仲介屋やな。まぁ、その場合ターゲットはうちやろうけどな。クロロはしばらく大丈夫やろ」
「なら、出歩いても、そこまで問題はなさそうだな」
「それはええけど。額の刺青だけでも隠して、うちかカルトを連れて行きや」
ラミナは立ち上がって、カルトに顔を向ける。
カルトはつまらなそうに武器を眺めていた。
「うちもちょっと着替えてくるわ」
「ああ」
ラミナはクロロ達の部屋を出て、隣の部屋に入る。
着ている服を脱ぎ捨てる。そして、体の調子を確かめる。
(ん~……左腕は明後日。アバラは【絶】で休めて1,2週間。左腕が治れば戦闘に支障は出んな)
ラミナは赤のクロスホルタータンクトップを着て、茶色のホットパンツを履く。
(問題は【刃で溢れる宝物庫】の方か……。メインで使っとった武器のほとんどが、ストックが残り3つ以下になってもうた。補充しようにもなぁ……補充したら壊れる武器も多い。けど、また【月の眼】を使うような相手といつ出会うか分からんし……。武器のストックは多い方がええんやけどなぁ……)
【刃で溢れる宝物庫】に武器を補充するには、【月の眼】を使わなければならない。
つまり、新しく補充すると同時に、すでに収納している武器のストックが最低1つ減る。
せっかく補充したのに、また減ってしまうのだ。それでは意味はない。
なので、武器を補充するタイミングは非常にシビアなのである。
今回のヨークシンでは【月の眼】を短期間で2回も使ってしまった。そのしわ寄せが襲ってきていた。
(今の武器達は能力と合っとるからな~。しばらくは【月の眼】を使わんようにせんとな)
紺色のミニGジャンに袖を通し、ブーツサンダルを履く。
そして、髪紐を解いて手櫛で軽く整える。
ラミナはサングラスや携帯をジャケットのポケットなどに入れていく。
そして、再びクロロの部屋に戻る。
クロロも着替えていた。髪を下ろして額に包帯を巻いている。
紺色のシャツに、薄手の黒いジャケット。そして、灰色のスラックスを履いていた。
ベッドの上に残っている武器を見て、何を装備したのか確認する。
「拳銃の手入れは?」
「ある程度は知ってる。ゆっくり慣れていくさ。早めに止めれるようになりたいがな」
「そうは言うてもなぁ。除念師なんざ、そう簡単に見つからんで? 流星街におったんはくたばったし、ハンター協会公認はたった1人やし。他は見事に雲隠れ。ハンターサイトでも数百億の情報料で、その情報も数年前とかなんやろ?」
「そうだな。ヒントは俺とお前の占いだけだ。『東』と『実現する幻』という2つ。全く持って答えが分からん」
「占いって?」
カルトが首を傾げる。
それにクロロとラミナが説明して、2人に出た内容を伝える。
説明しながらラミナは地図を広げる。
そして、ヨークシンから東に向かって、指を滑らせていく。
しかし、もちろん地名が連なるだけで、ピンとくるものはない。
「続きにもヒントなかったの?」
「なかったなぁ」
「ってことは、今月は絶対見つからないってことじゃないの?」
「だろうな」
「まぁ、下手したらこの大陸を横断することになるでなぁ。1か月じゃ無理やろな。行く先々調べなあかんし」
ラミナはうんざりしながら地図を放り投げる。
村や町に街。それだけでなく山や森なども探索する必要性があるかもしれないのだ。
村や街にいる人間を虱潰しに調べる必要もある。
とてもではないが、1,2か月で終わる話ではない。
「まぁ、占いの雰囲気からすれば、この大陸を出る感じやないけど……」
「果てしない話だね」
「全くだな」
「誰のせいや」
「鎖野郎だろ?」
「……」
カルトもうんざりするように言い、クロロも同意するように頷く。
ラミナはそれに若干イラつきながらクロロに文句を言うが、言い返されて黙り込む。
その後、3人で夕食に食べに出る。
モーテル近くのファミレスに入り、思い思いに料理を頼む。
ラミナは1人で5品ほど注文して、カルトに呆れられる。
「……昨日もだけど、よく食べるね」
「怪我を治すためや。食わんと治すだけの体力が保たん」
「ふぅん」
「っちゅうか、お前ももっと食べた方がええんちゃうか? 体、デカぁならんし、兄貴らみたいに強ぅなれんぞ?」
「大きなお世話だよ」
カルトは眉を顰めて、そっぽを向く。
人形のような見た目だが、思ったより感情豊かなカルトに苦笑するラミナとクロロ。
すぐに料理が届き、食べ始めるラミナ達。
クロロはパスタ、カルトはドリア。ラミナはステーキにピザ、ドリアなどを食べる。
さっさと食べて、モーテルへの帰路に就くラミナ達。
「そう言えば、シルバからお前を鍛えろと言われとるんやけど」
「……別にいい」
カルトはまたも拗ねたようにそっぽを向く。
ラミナは肩を竦めて、
「まぁ、無理強いはせんけど……。旅団に入りたいんやったら、もうちょっと力付けんと仕事任せて貰えんで?」
「仕事って?」
「盗みに殺し。盗みはともかく、殺しは任せてもらえんやろうなぁ。せやろ?」
ラミナはクロロに顔を向ける。
クロロはカルトに目を向けて、すぐに前を見る。
「……そうだな。今回の仕事だったら、アジトで待機させてただろうな」
クロロの言葉にカルトは顔を顰める。
ラミナは苦笑して、
「まぁ、お前の能力がどんなもんかにもよるやろうけどな。今まで見とる感じやと、下から3番目くらいちゃうか?」
「……その下の2人って?」
「情報処理や隠蔽作業メインの団員や。やから戦闘はそこまで得意やない」
「……僕じゃ他の団員には勝てない?」
「無理やな」
「……」
はっきりと断言されたことに納得出来ない表情を浮かべるカルト。
確かに自身が未熟であることも理解している。
しかし、それでも弱いとも思っていない。
「納得出来ないようだな」
クロロが前を向いたまま言う。
カルトは不貞腐れた顔で頷く。
「なら、ラミナと戦ってみるといい」
「……まぁ、そうなるわな~」
ラミナは話の流れからそうなることは想像出来た。
あれだけ「お前は弱いよ」発言すれば、誰だってイラつく。
カルトはゾルディック家の者とは言え、まだまだ子供なのだから感情を制御できないのが普通である。
ラミナはため息を吐いて、
「じゃあ、車で少し離れたところにある湖畔に行こか。流石に街中で暴れれば目立つ」
と、言うことでラミナ達は車で1時間ほどの所にある湖に向かう。
周囲に人の気配は一切なく、明かりすらない。
湖の傍にラミナとカルトは向かい合って立つ。
クロロは車にもたれ掛かって、全力で観戦状態である。
「そっちは全力でええで」
ラミナは右手にブロードソードを具現化して、言い放つ。
カルトはず~っと不機嫌顔で扇子を口元に当てて、ラミナを睨みつけている。
「……死んでもいいの?」
「殺せるならな」
「……ふん」
ラミナの挑発に、カルトは完全に目が据わる。
そして、扇子を広げ、その上に小さな三角形の紙きれを散らしていく。
カルトが勢いよく扇子を振り抜くと、紙きれがオーラを纏って宙を舞う。
(操作系か……)
ラミナは僅かに目を見開いて、紙吹雪を見据える。
カルトが扇子を振ると、紙吹雪が蛇のようにうねりながらラミナに迫る。
ラミナは横に跳んで躱す。
素早くカルトが扇子を振ると、ラミナを囲う様に紙吹雪が動く。
ラミナは囲まれる直前に囲いを抜けて、カルトに迫る。
「ちっ……!」
カルトは舌打ちをして、扇子を振る。ラミナの真後ろから紙吹雪が襲い掛かる。
ラミナは一瞬で高くジャンプして、紙吹雪をまた躱す。
(自動追尾はなし。細かく枝分かれする様子もなし。あくまで風とオーラを混ぜ合わして飛ばし、操作する能力)
ラミナはブロードソードを消し、薙刀を具現化する。
そして、湖のすぐ傍に立つ。
カルトは目を細めて、警戒を強める。
ラミナは不敵に笑みを浮かべて、薙刀の刃を湖面に突き刺す。
「【乱弁天】」
勢いよく薙刀を振り上げると、水柱が立ち上がる。
そして、その水柱はカルトの紙吹雪同様、蛇のようにうねって紙吹雪に襲い掛かる。
紙吹雪は水に呑み込まれて動きを止める。
「っ!!」
「紙ゆえに水には弱いわなぁ」
「具現化系で、水を操る能力……!」
「一番ええんは雨の日に使うことなんやけどな。こいつは、操る水は刃で触れなあかんでな」
「……なんでわざわざバラすの?」
「ん? バラしても問題ないからに決まっとるやないか」
「っ!! 舐めるな……!」
カルトは殺気を全開にして、袖から新しい紙キレを取り出して、撒き散らして操る。
ラミナは刃を湖に突き刺す。そして、再び振り上げて水を操る。
操られた水は、今度は10個ほどのバスケットボール大の水弾となってカルトに向かって飛ぶ。
カルトの紙吹雪は再び水弾に食い破られて、カルトは後ろに跳び下がって躱そうとするが、
「こっちでええんか?」
ラミナがいつの間にか背後に回り込んでいた。
「っ!?」
カルトは目を見開く。
ラミナは左掌底をカルトの背中に叩き込む。
「ぐっ!」
「操作系に多いんよなぁ。操るモノに依存しすぎて、体術が疎かになる奴が」
「っ!!」
「それにまだまだ【流】が遅いし、【堅】も未熟や」
カルトが歯を食いしばって扇子を振ろうとするが、ラミナは一瞬でカルトに詰め寄って、左手で扇子を握っているカルトの腕を弾く。
「なっ!?」
「操作系はその性質上『操るための操縦桿』が必須。相手に刺すか、自身で振るうか、またはその両方やな。お前の場合は自分で直接振るうタイプやんな。やったら、その動きを止めてやれば、お前の今の能力は簡単に封じられる」
「ぐっ……!」
カルトはラミナから離れようとするが、ラミナはピッタリとカルトに引っ付いたままで付いて行き、振り切ることが出来ない。
「無駄や無駄。お前の体術はイルミどころかキルア以下。それじゃあ、うちからは逃げられんで」
カルトは扇子を刃のように振るい、ラミナに斬りかかる。
しかし、容易くその腕は掴まれてしまった。
「!!」
「うちがどんな武器が得意か知っとるやろ。うちに斬撃が届くと思うなや、未熟モン」
ラミナの殺し屋の二つ名は【リッパー】。
あらゆる刀剣槍類を使いこなす戦闘スタイルゆえに付けられた名前だ。
その形状を見れば、どんな太刀筋で振るわれるかなど、簡単に予測できる。
更にはカルトの体術は、ラミナより下。
予測できている以上、見切って腕を掴むなど簡単に決まっている。
パン! パン!
「そこまでだな」
そこにクロロが手を叩いて、試合終了を告げる。
ラミナはカルトの腕を放して、カルトは素早く後ろに下がる。
カルトは悔し気に歯を食いしばって、ラミナを睨みつける。
ラミナは腰に両手を当てて、息を整える。
「おもろいし、強い能力やとは思うけどな。それにかまけ過ぎや。操作系は体術が優れとる方がもっと余裕が出来るで?」
「……」
「で、どうするんや? 今の感じでも、そのままでええんか?」
「……嫌だ」
「なら、修行するっちゅうことでええな」
カルトは不貞腐れた顔で小さく頷く。
その雰囲気がどことなくキルアに似ており、ラミナはやはり兄弟だと思って苦笑する。
「まぁ、能力に関してはお前が自分で改良するなりすればええ。うちはお前の基礎部分に手ぇ出すで」
「……分かった」
「じゃあ、早速で悪いんやけど、【纏】【練】【凝】【流】の順で見せてんか」
カルトはぶすっとした顔のまま、言われた通りに【纏】【練】【凝】【流】を見せる。
ラミナは腕を組んで、僅かに眉を顰める。
「【堅】はどれくらい維持出来る?」
「40分くらい」
ラミナは憐れみの表情を浮かべて、思わずカルトの頭を撫でる。
「なっ!? なにするんだよ!?」
カルトは目を見開いて、感情的に叫びながらラミナの手を払い退ける。
「おぉ、すまん。カルトって念を覚えてどれくらいや?」
「……1年くらい」
「……うん。まぁ……頑張ろか」
「なに、その同情的な目は!?」
「いやぁ……念を覚えて半年くらいで、まだ【発】も出来とらんキルアにも負けとるんがなぁ……」
そして、ゴンにも負けている。
【流】はまだカルトが上ではあるが、【纏】【練】【凝】は昨日見た限りではキルア達の方が上だった。
もちろん、これが一般的な修得状況ではあるのだが、旅団やゾルディック家からすれば、普通では邪魔なだけだ。
「……兄さんと比べられても……」
「その友達にも負けとんで」
「っ……!!」
「まぁ、そいつもキルアに負けん才能の持ち主やからしゃあないけどな。とりあえず、明日からゆっくりやっていこか」
ラミナは苦笑しながら、再びカルトの頭をポンポンと軽く叩く。
カルトは扇子で払おうとしたが、ラミナは素早く手を引っ込めてクロロに顔を向ける。
「オーラは見えたか?」
「見ることは出来る。あくまで使えないだけだからな。精孔が閉ざされているわけじゃない」
クロロは腕を組んで車にもたれ掛かったまま肩を竦め、その言葉に頷くラミナ。
オーラが見えるならば、少しは自分でも警戒することが出来るということだ。
「まぁ、【纏】が出来んから無防備なんは変わらんか」
「そうだな」
「厄介なこっちゃ」
ラミナはため息を吐きながら、車に歩み寄る。
その後ろにカルトも不貞腐れた顔のまま、付いてきていた。
「帰り運転してんか?」
「ああ」
車のキーをクロロに投げ渡し、ラミナは助手席に乗り込む。
クロロが運転席に乗り、カルトが後部座席に乗って走り出す。
しばらく走ったところで、
「随分とあっさりと指導することを決めたな」
「ん?」
「あの婚約者の弟だからか?」
「む……」
クロロがキルアの事を口にして、カルトが眉を顰める。
その反応をクロロとラミナは無視する。
ラミナはゾルディック家に行った時から、クロロはこの前のイルミ達の話から、ゾルディック家が『キルア大好き!』なのは十分理解していた。
「んなわけあるかい。お前がわざわざ『戦ってみるか?』なんざ言うから、お前がカルトを旅団入りさせることに前向きやって思ったからや」
「え?」
ラミナが助手席に浅く座ってもたれ掛かった状態で、呆れた表情でクロロに目を向けながら言う。
その内容にカルトが僅かに目を見開いて驚く。
「ヨークシンのことで、ゾルディックとの繋がりを太くしとく方がよさそうやからなぁ。けど、今のまま入れても死ぬ確率高そうやし。シルバの言う通りにうちが鍛えたらゾルディック家に恩も売れるし、戦力にもなるっちゅうことやろ?」
「ふっ……」
クロロは笑みを浮かべるだけで肯定も否定もしなかった。
しかし、雰囲気から正解だとラミナは理解する。
「まぁ、後は……またキルアがクラピカと旅団を攻めてきたら、カルトをぶつければ兄弟喧嘩に出来るかもしれんしな~」
「え゛」
カルトは頬を引きつかせて固まる。
ラミナは「くっくっくっ!」と笑いながら、
「今回の件で、婚約者とは言えその気になればうちがキルアを殺す可能性があるんをゾルディックも理解しとるやろ。やったら、まだカルトの方がキルアも止めるには適任やろな」
「ちょっ! ちょっと待って!? ボ、ボクが兄さんと戦うの!?」
「そら、家族のことは家族に任せるんが一番やんな」
「そうだな」
クロロも笑みを浮かべて、ラミナの言葉に同意する。
カルトは唖然とした顔で固まる。
「っちゅうわけやから、頑張って強ぅなりや~。そしたら、キルアにも認めて貰えるかもな~」
「……兄さんに……」
カルトは閉じた扇子を口に当てて、黙り込む。
少しすると、何を妄想したのか少しうっとりし始める。
ラミナはその様子を、バックミラーで見て呆れる。
(……ゼノ爺からなんや電話来たけど……兄弟関係も思ったより歪んどるなぁ)
実は買い物に出ている時にゼノから電話が来ていたのだ。
『カルトはキルに憧れとるし、好いておるんじゃがな。カルトが物心つく頃には、キルはイルミの針が埋め込まれたこともあって、カルトに構わなくなってしもうたんじゃよ。そのせいでカルトはキルに対して、少~し歪んだ親愛と承認欲求を持っておる』
『それがなんで旅団に入るって考えになんねん』
『恐らくじゃが……シルバと儂、イルミと戦って生き延びたお前さんと団長がおるからじゃろうな』
『あ~……』
『それともう1つ』
『ん?』
『カルトにとっての理想のキルは、『針が刺さった頃のキル』じゃ。つまり、今のキルは認めておらん可能性が高い』
『……操り人形っちゅうか、冷酷冷徹で殺しを厭わん暗殺者のキルアがええと?』
『そういうことじゃな。キキョウやイルミと仲がええからのぅ。嗜好もあの2人に似とるところがある』
『あ~……納得。雰囲気はイルミ寄りやんなぁ』
『まぁ、それはそれで構わん。しかし、今のカルトではキルの目には留まらんじゃろうからな。軽くでもええから面倒見てやってくれんか?』
『流石に命の保証はせんで? キルアに念を教えるんとは意味がちゃうし』
『分かっとる。そこらへんは儂らが鍛えても同じじゃしの』
という、やり取りをしていたのだ。
なので、ぶっちゃけクロロが言わずとも、ラミナはカルトの実力を測るつもりでいたのだ。
(この家族。見た目と系統で父親似か母親似かはっきりしとるなぁ)
操作系は間違いなく母親であるキキョウの血筋なのだろう。
ラミナは未だトリップをしてるカルトを見つめながら、
「……最悪フェイタンにでも押し付けるか」
と、呟くのだった。
それにクロロも笑みを浮かべて、
「ああ……それも面白そうだ」
トリップしたままのカルトは、2人の言葉を聞き逃した。
カルトは己がどんな集団に近づいているのかを理解するのは、まだまだ先の事であった。
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ラミナの武器情報!
・【
具現化した薙刀に付与された能力。
刃に触れている水分を操ることが出来る。
蛇のように操る場合は刃から水を切り離せない。水弾のように切り離すと、遠隔操作は出来ない。
高圧水流で切れ味を上げる事も出来る。
体を斬りつければ血も操ることも出来るが、あくまで操れるのは刃が触れた血液だけなので、失血死するまで血を引き抜くこと出来ない。
そのため、水辺の傍か、雨の日でもない限り、本領発揮は出来ない。