暗殺者のうちが何でハンターにならなあかんねん   作:幻滅旅団

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5/25:ハンター試験スタートを『18時』に変更しました(__)
18時って書いたつもりだったのですが(-_-;)
12時スタートって24時間走り続けたことになりますよね。
申し訳ございませんでした。



#6 シケン×ハジマリ×ハシリマス?

 翌朝、午前5時。

 ラミナはザバン市の大河にある船着き場に到着した。

 街はまだチラホラ程度にしか人影は見当たらない。

 

 ラミナは案内人の後に付いて歩き、ある場所に案内された。

 

「……ここか?」

 

「ああ、ここだ」

 

 訝しむラミナの目の前にあるのは立派なビル……ではなく、小さな定食屋だった。

 この街に似つかわしくない『24時間営業』と書かれた店。

 とてもではないが、毎年数万人受けに来るハンター試験の会場の入り口には見えなかった。

 

「……いや、だからこそのナビゲーターか」

 

「そういうことだ。それっぽいビルでやってたら、ふるいにかける意味はねぇ。見た目じゃ分からないからこそ、毎年数百人規模にまで減らすことが出来る」

 

「しかもナビゲーターがおるかどうかも重要か。運も絡んどるんやな」

 

 ラミナの乗ってきた船とて、見た限り一艘しかなかった。なので、ラミナの後にスラムに来た者達は認められても、もう間に合わないだろう。

 何故なら今日が試験開始当日なのだから。

 

(ゴン達は間に合ったんやろか?)

 

「入るぞ」

 

「はいな」

 

 ゴン達の事が頭に過ぎったラミナだが、案内人の言葉で我に返って店の中に入る。

 中も普通の定食屋で数名の客もいた。

 

「いらっしゃーい! ご注文は?」

 

「ステーキ定食1つ」

 

「……焼き方は?」

 

「弱火でじっくり」

 

「あいよ! 奥の部屋入んな」

 

 どうやら今のは合言葉だったようだとラミナは理解して、奥の部屋に入る。

 奥の部屋には鉄板が設置されたテーブルが置かれており、店員が肉を焼き始めていた。

 

「座って、食ってりゃ会場に着く。頑張りな」

 

「おおきに」

 

「もし落ちて生き残ったら、また来な。まぁ、ナビゲーターやってるかどうかは分からんがな」

 

「止めといたほうがええと思うで?」

 

「俺もそう思う。じゃ、達者でな」

 

 店員と案内人が出て扉を閉める。

 すると、下に下りて行く感覚がした。

 

「……ホンマ変な所に金掛け取るわ」

 

 ラミナは無駄に大げさな仕掛けに呆れながら、焼けた肉を食べ始める。

 思ってたより美味かったのが、また何とも言えないシュールさを実感させる。

 食べ終えたラミナはのんびりとしながら到着を待つ。

 5分ほど過ぎた所でポーン!と地下100階に到着したことを示す案内板が光る。

 

 扉が開き、ラミナは足を進めると、巨大な地下に大勢の人が溢れていた。

 

(おぉおぉ。流石に船やドーレでグダグダしとった連中とは少しちゃうなぁ)

 

 一斉に近くにいた者達がラミナを見定めるように目を向ける。

 それを涼しい顔で無視したラミナはゴン達の姿を探すも、どうやらまだ到着していないようだ。

 

(まぁ、しゃあないか)

 

「ようこそ、ハンター試験へ。はい、これがあなたの番号札になります。無くさないように」

 

「おおきに」

 

 緑色の顔をした豆みたいな小柄な男から、番号が書かれた丸いプレートを受け取る。

 番号は『399』と書かれており、つまりラミナは399人目ということである。

 

「ふ~ん。多いんか少ないんか、分からんなぁ」

 

「よぉ、新顔だね」

 

 ラミナがプレートを胸元に着けていると、茶髪で鼻がデカい小柄の中年男が声を掛けてきた。

 

「俺はトンパ。よろしく」

 

「どうも」

 

「俺、ハンター試験のベテランなんだ。よかったら、色々教えてやるよ」

 

「いや、ええわ。変な先入観植え付けられるん嫌いやねん」

 

「そ、そうかい? まぁ、気が向いたら聞いてくれ。これ、お近づきの印だ。飲みなよ」

 

 トンパは人受けがよさそうな笑みを浮かべながら缶ジュースを差し出してきた。

 ラミナはそれを受け取ると、トンパも缶ジュースを取り出して飲み始める。

 

「どうした? 遠慮しなくていいぜ」

 

「……なんか薬入っとるな」

 

「!?」

 

 ラミナは蓋を開けたときに漏れ出た匂いから混入物があることを見抜いた。

 見抜かれたトンパは一瞬目を見開いて、汗を流し始めながらも笑みを浮かべる。

 

「そ、そんなわけないだろ? 俺も目の前で飲んだじゃないか?」

 

「じゃあ、これ飲んでみ?」

 

「い、いや! ひ、人にあげたものに手を付けるわけにはいかないさ」

 

「分かりやすいやっちゃなぁ。新人を見下すんが好きなタイプか」

 

 グシャ!とラミナは飲み口をトンパの顔に向けて、缶を握り潰す。

 プシャア!と中身が噴き出て、トンパの顔にかかる。

 

「うわっ!?」

 

 トンパは慌てて下がって、顔を拭う。特に口周りを入念に。

 それだけで何かが入っていたことは十分わかる。

 

「無味無臭に近くて、今の手口からすると下剤か痺れ薬の類やろうな。もう少し胡散臭さ消す努力しぃや。目が気色悪ぅてなんか企んどるって見抜きやすいわ」

 

 ラミナは空き缶をビー玉サイズまで握り潰して、トンパの前に投げ捨てる。

 そして、背を向けて歩き出しトンパの前から去る。

 トンパはその後ろ姿を見送りながら、顔を歪める。

 

「……くそ! また失敗かよ。今年の新人はどうなってやがんだ?」

 

 トンパの異名は『新人潰し』。

 新人の受験者をあの手この手で邪魔することが楽しみになっている目的が変わってしまった男である。

 自分も命がけのスリルにいる中で、新人が絶望に顔を染めながら死んでいくのを見る事が生きがいになってしまった。

 最初は見ているだけだったが、何回も受けるにつれて自ら仕掛けるようになった。

 

 もちろん今年もそれ目的で受験した。

 しかし、今の所その目論見はほとんど成功していない。

 

「ちっ! まぁいいさ。試験が始まったら、嫌でも巻き込まれる瞬間が来る。覚えてやがれよ」

 

 トンパは歪んだ笑みを浮かべて、次の標的を待つ。

 すでに死へと片足を突っ込んだことには、まだ気づいていない。

 

 

 

 

 ラミナは壁際にもたれ掛かって立ち、ボケ~っとする。

 すると、受験者の中に手練れの念使いを見つけた。

 

 1人は髪を後ろに流して右目の下に星、左目の下に涙のマークを描いている奇術師風の男。

 もう1人は顔中に針を刺している男。

 

(……どっちもかなりの念使いやな。クロロやフェイタン達にも負けてへん。それに両方とも殺し慣れとる。要注意やな)

 

 ラミナは2人を要注意人物として覚え、他にも変な人物がいないか探る。

 次に目に付いたのは銀髪の少年と、坊主頭の男。

 

(念使いやないけど……あの2人もかなりの手練れやなぁ。あんなガキがって……あの雰囲気、ど~っかで見たことあるなぁ)

 

 少年に目を向けて首を傾げるラミナ。

 すると、背筋に寒気が走った。

 

「!!」

 

 目を向けると、奇術師風の男がラミナを見て、笑みを浮かべていた。

 そして、ゆっくりと歩み寄ってきた。

 

「……マジかい」

 

「ちょっといいかい?」

 

「……なんや?」

 

「君の名前ってラミナ?」

 

「……何で知っとんねん」

 

「くくく♦ やっぱりね♥ 僕はヒソカ♣ それで分かるだろ?」

 

「……お前が4番か……」

 

 マチの話に出ていた3年前に入った旅団のメンバー。

 それが目の前の男だった。

 

(確かに……何考えとるんか分からんなぁ……)

 

 マチの言葉に納得し、担当に選ばれたことに内心でマチに同情したラミナ。

 ヒソカはラミナの隣に立ち、話を続ける。

 

「君の話は団長やマチから聞いたよ♥ 強いんだってね♦ 戦ってみたいね♣」

 

「遠慮しとくわ。あんたとやると怪我じゃすまなさそうやし。この試験かて団長から言われて受けとるし」

 

「それは残念♠ 君との戦いは面白いと思うんだけど♣」

 

(……こいつ、バトルジャンキーか。厄介なタイプやな)

 

 ラミナはヒソカの性格に僅かに顔を顰める。

 それと同時にある疑問が浮かぶ。

 

(なんで幻影旅団に入ったんや? こいつからすれば捕まえる側の方が喜びそうやが……)

 

 幻影旅団は私闘を禁じている。

 これは流星街の特性を引き継いでいると言っても過言ではない。だから旅団の中では時々腕相撲大会なども開かれている。

 どう考えてもヒソカの思考は旅団とは合わない。

 盗みに興味があるようにも見えない。

 

「……ところで、もしかしてあの針人間とも知り合いか?」

 

「そうだね♦ 君と同じ穴の貉さ♥ もっとも、あれは変装で偽名だけどね♣」

 

「なるほどな。ほな、やっぱあいつにも手ぇ出さんようにしとくわ」

 

「それがいいよ♥ あ、これ♦ 僕のホームコード♠」

 

「……後で送るわ。仕事用のしかないけどな」

 

「残念♦ 仲良くなりたかったのに♥」

 

 ヒソカの名刺を受け取って、嫌そうに答えるラミナ。

 ヒソカは残念そうに肩を竦めて去っていく。

 ラミナはため息を吐いて、登録だけさっさと済ませる。地下で圏外なので送れないので、時間が出来たときにすることにした。

 

「……目立ってもうたなぁ……」

 

 ヒソカと話していたせいで、妙に注目を浴びてしまったようだ。

 あまり印象に残りたくはなかったのだが、どっちにしろヒソカとは話すことになっただろうから仕方がないと思うことにした。

 その後も新たな受験者がやって来る。

 そろそろ18時になるが、ゴン達はまだ来ない。

 

(……そろそろタイムアップちゃうか? あかんかったか……)

 

 そう考えていると、再び扉が開いて、そこからゴン達が現れた。

 

「お、間に合いよったわ」

 

 感心するように呟いたラミナの視界に、トンパの姿が目に入る。

 トンパはゴン達にも缶ジュースを渡した。

 ラミナはまたかと呆れていたが、ゴンは口に含んだ瞬間吐き出したのを見て、吹き出しそうになるのを耐える。

 

(くくく! 裏の人間でもないのに、ホンマ鋭い感覚持っとるわ)

 

 ゴンの反応を見て、クラピカとレオリオもジュースを捨てる。

 クラピカは初めから疑っていたようだが。

 

 すると、ゴンがラミナに気づいた。

 

「あ! ラミナ!」

 

「おお! やっぱ来てたかぁ!」

 

 レオリオも笑みを浮かべて近寄ってくる。

 ラミナは苦笑してゴン達に歩み寄る。

 

「ゴン達は一本杉の方からか?」

 

「うん! って、なんで知ってるの?」

 

「情報屋からな。ナビゲーターの居場所聞いたんや」

 

「情報屋か。なるほど……」

 

「流石、あんさ――」

 

「しっ!」

 

 レオリオが余計なことを言おうとしたので、鋭く声を発して止める。

 

「余計なこと言うたらあかん。ここにおるんは正真正銘ライバルやぞ」

 

「……そうだった。悪ぃ」

 

「分かってくれたらええわ」

 

「ぎゃあああ!!」

 

 すると、悲鳴が響き渡った。

 目を向けると、そこには両肘から先が無い男と楽し気に笑うヒソカの姿があった。

 

「な、なんだよ。あいつ……」

 

「あいつには気ぃつけとき。あれは息をするように人を殺せる人種や。近づいてもええことないで」

 

「お前がそう言うならそうなんだろうな……。あんな奴まで受けれるのかよ~」

 

「それもうちが受けれるんやから、そらそうやろ」

 

「ああ……そりゃそうだ」

 

 レオリオはラミナの言葉に慄いたり呆れたりと忙しかった。

 

「まぁ、ここにおる連中はほぼ全員、人を殺す術を持っとるやろうけどな」

 

「っ! ……そうだよな。ハンターが自衛の術を持たなかったらすぐに死んじまうか」

 

「そういうこっちゃ」

 

 ハンターは未知で危険な仕事をする者達。

 どんな仕事であろうとも命の危険があるのが基本である。

 

 

ジリリリリリリ!!

 

 

 今度は目覚まし時計のような音が響き渡る。

 するとエレベーターの反対側の壁が上に開き始め、壁の向こう側にスーツを着た口髭が特徴的な紳士が立っていた。

 紳士は音を止める。

 

「只今をもって、受付時間を終了いたします。それではこれより、ハンター試験を始めます」

 

 妙に響き渡る紳士の声。

 試験開始の言葉に受験生全員に緊張感が走る。

 

「さて、一応確認致しますが、ハンター試験は大変厳しいものもあり、運が悪かったり、実力が乏しかったりすると怪我したり、死んだりします。さらには先ほどのように受験生同士の争いで再起不能になることも多々あります。それでも構わない……という方のみ付いてきてください」

 

 紳士は注意事項を伝え、今ならば棄権も可能とも伝える。

 もちろん誰も引き返す者はいない。先ほどヒソカにやられたもの以外は、であるが。

 

「承知しました。第一次試験404名、全員参加ですね。それでは参りましょう」

 

 紳士はくるりと身を翻し、手足を大きく振り上げて歩き出す。

 それに受験生達も続く。

 

「当たり前だが誰も帰らねぇな。ちょっとだけ期待したんだけどな」

 

 レオリオが緊張を紛らわせるように言う。

 ラミナやクラピカ達はそれに肩を竦めたり、苦笑するだけで答える。

 しばらくすると、

 

「ん?」

 

「おかしいな」

 

「?」

 

 レオリオ以外の3人は変化を感じ取った。

 すると、前方の者達が走り出し始めた。

 

「おいおい、なんだ? やけに皆急いでねぇか?」

 

「あの試験官のスピードが異常に上がったんや」

 

「ああ、だんだん速くなっている」

 

「前の方が走り出したんだ!」

 

 完全に周囲はランニングペースになっている。

 それに対し紳士は未だにスキップするかのような歩き方で先頭にいる。

 

(やっぱり試験官に選ばれるだけのハンターやな。【纏】も乱れもせん)

 

 ラミナは小走り気分で付いて行き、紳士の動きを観察していた。

 

「申し遅れました。私、一次試験担当官のサトツと申します。これより皆様を二次試験会場にご案内します」

 

「? 二次……? ってことは一次は?」

 

「もう始まっているのでございます。二次試験会場まで私に付いてくること。これが一次試験でございます」

 

「「「「!!」」」」

 

「場所や到着時間はお伝え出来ません。ただ私に付いてきていただきます」

 

 サトツの言葉に試験の意味を理解したり、首を傾げたりなど受験生の反応は様々だった。

 

「なるほどな……」

 

「変なテストだね」

 

「さしずめ持久力試験ってことか。望むところだぜ! どこまでも付いて行ってやる!」

 

「……そう簡単なもんちゃうと思うでぇ」

 

「ああ、どこまで走ればいいのか分からないのはかなりの精神的負荷となる。精神力も試されているな」

 

「他には周囲への注意力や。体力が減って酸素が回らんくなってくると、足元や周りへの注意が散漫になる。このままこの通路をずっとっちゅうわけやないやろ。気を付けんと……死ぬで」

 

 クラピカとラミナの言葉にレオリオがゴクリと唾をのむ。

 

(ハンターは獲物を狙って、時には何時間も走り続け、追い続けなあかんっちゅうことやな。それに危険な場所から離れるために足を止める事が許されん時もある。それを想定しとるわけか)

 

 暗殺者であるラミナも似たようなことを体験した事もある。

 もっとも走り続けるだけではなく、隠れ続ける事も必要とされたが。

 

(ハンターになるための試験や。そこらへんもどっかで試されるはずや。恐らく本試験会場まで来るんは、情報収集能力と突発的な事態への対処能力を試すためのもんやな)

 

 ラミナは走りながら、今後どんな試験があるのを考えていた。

 すると、ラミナ達の横を銀髪の少年がスケボーに乗って通り過ぎる。

 それにレオリオが噛みついた。

 

「おい、ガキ! 汚ねぇぞ! そりゃ反則じゃねぇか!」

 

 レオリオの言葉に少年が不思議そうな顔をして振り返る。

 

「なんで?」

 

「なんでって、こりゃ持久力のテストなんだぞ!?」

 

「違うよ。試験官はついて来いって言っただけだもんね」

 

「ゴン!! てめぇ、どっちの味方だ!?」

 

「どなるな、体力を消耗するぞ。それにうるさい。テストは原則持ち込み自由なのだよ」

 

「むしろスケボー持っとることは褒めるべきやろな」

 

「~~!!」

 

 レオリオは味方が誰もおらず悔し気に歯軋りをする。

 少年は既にレオリオに興味を無くし、ゴンとラミナを交互に見ている。

 

「ねぇ、君いくつ?」

 

「俺? もうすぐ12歳!」

 

「ふ~ん……。やっぱ俺も走ろ!」

 

 突如少年はスケボーを蹴り上げて、ゴンの隣で走り出す。 

 スケボーをキャッチして脇に抱える。

 

「俺、キルア」

 

「俺はゴン!」

 

「あんたは?」

 

「ラミナや」

 

「ゴンにラミナね。おっさんは?」

 

「おっさんじゃねぇ! 俺はまだ10代だ!!」

 

「「ウソォ!?」」

 

 ゴンとラミナが目を見開いて驚く。

 クラピカも声を上げなかったが、目を大きく開いている。

 

「は!? 10代!? レオリオ、いくつなん!?」

 

「19だ!!」

 

「同い年!? 嘘やろ!?」

 

「「同い年ぃ!?」」

 

 今度はレオリオとゴンが驚いた。

 レオリオとゴンはもう少し年下だと思っていた。もちろんクラピカも。

 意外な年齢暴露にゴン達は混乱に陥った。

 

「見た目詐欺すぎるやろ」

 

「お前に言われたくねぇよ!」

 

「女が若く見られて何が悪いねん」

 

「うっ……!」

 

 女の正論にレオリオは閉口するしかなかった。

 ラミナはジト目を向けていると、キルアから見られているのを感じた。

 さりげなくキルアの隣に移動するラミナ。

 

「うちがどうかしたか?」

 

「……いや。あんたさ、殺し屋だろ? 足音全くしないし、かなり強いね」

 

「そう言うお前さんもその手の仕込みされとるんやろ? その歳で【暗歩】使いこなすとかどんだけやねん」

 

「まぁね。ちょっと家が特殊でさ。親父に叩き込まれたんだよね」

 

 肩を竦めるキルアを見て、ラミナはようやく誰に似ているか気づいた。

 

「……お前さん、もしかしてゾルディックか?」

 

「……へぇ。よく分かったね」

 

 キルアは一瞬呆気に取られたが、隠すこともなく笑みを浮かべて頷いた。

 それにラミナはようやく納得した。

 

「なるほど。顔は親父さん、髪は爺さんに似とるんやな」

 

「会ったことあんの?」

 

「殺されかけた間柄や」

 

「はぁ!? 親父とじっちゃんから逃げ切ったのか!?」

 

「ちゃうちゃう。殺される前に依頼主の方殺してもろたんや。後5分遅かったら厳しかったやろなー」

 

「いや、それでもおかしいから」

 

「まぁ、向こうもまだ本気ちゃうかったからや」

 

 ちなみにこの間、ゴンは静かに聞いていたが半分も理解出来ずに首を傾げ、レオリオは走るのに必死でそれどころではなく、クラピカは内心戦々恐々としていた。

 

(ゾルディックは私でも聞いたことがある伝説の暗殺者……。そこの息子と、伝説から逃げ切った者か。……私の想像を超えた実力の持ち主だったようだ)

 

 今も涼しい顔で走っている。

 それも未だにランニング気分ですらなさそうだった。

 

(ハンターになるには、これくらいにならなければいけないというわけか。……幻影旅団はこの2人以上だと考えると……私ではまだ捕らえることは出来ないのだろうな)

 

 クラピカは自分が目指している場所の遠さを感じさせられたのだった。

 

 

 

 そのまま走り続けて、数時間が経過した。

 

(……4時間と37分か。走った距離は大体60kmくらいやな)

 

 ラミナは携帯で時間を確認する。そして、大体の距離を確認する。

 前方はまだまだ地下通路が続いており、分かれ道すらない。

 つまり、最低でも今まで走った距離の倍は走る覚悟をしておくべきだとラミナは考える。

 

 ちなみにラミナは未だに汗を掻いていない。

 隣に目を向けるとキルアとゴンもまだ涼し気な顔で走っている。

 クラピカは僅かに汗ばんでおり、レオリオは汗だくだった。

 

(レオリオは、そろそろ厳しいか……)

 

 かなり息も上がっており、徐々に遅れてきている。

 そして、レオリオの手からトランクが落ちて、遂に足が止まる。

 

「レオリオ!」

 

 ゴンも足を止めて呼びかける。

 

「ほっとけよ。遊びじゃないんだぜ、ゴン」

 

 キルアが冷たく言い放つが、ラミナもそれに同意する。

 まだ一次試験。手を差し伸ばして引っ張り続けるには早すぎる。

 

 

「ざけんなよ……。絶対にハンターになったるんじゃ! くそったれーー!!

 

 

 レオリオは吹っ切ったように猛烈な勢いで走り出す。

 ラミナ達の横を通り過ぎて、さらに前へと進む。

 

「うおおおおお!!」

 

「おぉおぉ。まだまだ若いやないか、おっちゃん」

 

「俺はまだ10代だああああ!!」

 

 ラミナの軽口に叫び返しながら、レオリオは走り抜いて行く。

 後ろを振り向くとゴンが釣り竿でトランクを回収していた。

 

「上手いもんやな。さて、うちもスピード上げよか」

 

  

 現在60km通過。

 

 脱落者未だ0。

 

 




未だに一次試験開始時間と、二次試験会場到着までの時間経過が分からないんですよね(-_-;)
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