暗殺者のうちが何でハンターにならなあかんねん 作:幻滅旅団
ラミナ達はゾルディック家が用意したリムジンに乗って、街を抜け出していた。
ラミナはゼノと行動していた執事に傷の手当てをしてもらい、執事からシャツなどを借りて着替えていた。
「……儂らもおるんじゃがの」
「女の下着姿くらいで恥ずかしがる歳でも、職業でもないやろうに」
ラミナは呆れながらシャツのボタンを留めていく。
カルトはもう
そして、アマネもまた携帯でどこかに連絡を取っていた。
「先に脱出していた執事全員の無事の確認が取れました。全員、サヘルタ合衆国を経由して屋敷に戻る予定です」
「……クヘンタシティでの情報操作もある程度は終了していますが……。やはり完全にラミナ様とカルト様の情報を隠蔽するのは難しいかと……」
アマネとゴトーが報告し、それにゼノが頷く。
「まぁ、あれだけ派手に暴れれば仕方あるまい。警察に捕まった奴らの手下共からもラミナの情報も出るじゃろうしの」
「やろなぁ。まぁ、どうせプロハンター共にはもう情報が流れとるやろ。ヨークシンのことも、もうバレとるしな。マフィアンコミュニティーはこれでしばらく黙るやろうし、そろそろ十老頭が死んだことの混乱が出てくると思うで?」
ラミナもジャケットを羽織り、肩を軽く回しながら言う。
マフィアンコミュニティーはタラチュネラファミリーに大きな貸しが出来た形になる。
パスイダ達が死んだ今、タラチュネラファミリーの戦力はガタ落ちする可能性が高い。
タラチュネラファミリーがマフィアンコミュニティーに所属していれば、そこまで問題はなかった。しかし、今回はマフィアンコミュニティーが外部のマフィアに依頼した形なので、依頼失敗とはいえある程度の補償をしなければならないはずだ。
恐らく成功報酬は十老頭の一席だったのだろうと、ラミナは推測する。
しかし、パスイダ達を失ったタラチュネラファミリーにどこまで力が残っているのかは不明だ。しかも、今回の騒動で警察やらの捜査の手も伸びるだろうから、それの対処も行わなければならない。
恐らく十老頭などになっている場合ではない。下手したらコキシメ王国の裏の勢力図が変わる可能性がある。
タラチュネラファミリーの勢いが衰えるのを待っていたマフィアがいるはずだからだ。
そして、マフィアンコミュニティーもそろそろ十老頭が死んでいることを隠しきれなくなってきているはずだ。
流石に1か月近く姿が見えなければ、疑っていたマフィア達が声を上げ始めるだろう。
「そやなぁ……。ゴトー、パソコン貸して」
「はい」
ゴトーからパソコンを受け取ったラミナは、素早く操作していく。
「何してるの?」
「手頃な情報サイトや情報屋連中に、十老頭がオークション中に殺されとったことをリークしとる。あ、ゾルディック家の名前は出しとらんで」
「何故そんなことを?」
「これでマフィアンコミュニティーの中堅以下は、それ以降の十老頭の命令は直系組連中が偽って出しとったと思うやろな。流石にそれをツッコまれれば、直系組連中も押さえ込みに全力を注がなあかん。しかも、新しい十老頭を決めるんも、そう簡単ちゃうやろうしな」
カルトとアマネの質問にパソコンを弄りながら答えるラミナ。
ついでにクヘンタシティの情報も集める。
「……お~、大騒動になっとるなぁ。まだタラチュネラの連中、暴れ回っとるわ。大人しく捕まっとったらええもんを」
暴れれば暴れる程、罪が重くなる。そうなればコキシメ王国に移送すらも許されなくなるだろう。
大人しく捕まって、大人しく供述しておけば祖国に移送され、すぐに王国とタラチュネラファミリーの関係で釈放される可能性は高いとラミナは思うのだが、現在進行形で逃げ回っていた。
「まぁ、おかげでこっちに目が向くんは時間かかりそうやからええか。おおきに、ゴトー」
「いえ、とんでもございません」
「コキシメ王国の方は大丈夫なの?」
「そこはもうちょい時間かけて情報を集めんとな。パスイダ達はあくまで実行部隊。母体にどれだけの影響が出るんかは未知数やでな」
カルトの問いに肩を竦めるラミナ。
コキシメ王国側がタラチュネラファミリーを切るならば、もはや敵ではないだろう。しかし、まだ関係を続けるならば用心すべきではある。
なので、もう少し情報を見極めなければならない。
「まぁ、うちらの車がバレとらんかったら、そのまま突っ切ればええやろ」
「そっか」
その後、小さな町でゼノ達と別れたラミナとカルトは、翌日到着したクロロと合流する。
「……おい、クロロ」
「なんだ?」
「この冷蔵庫に入っとる見た目が気持ち悪い魚や果物はなんや?」
「ああ、それか。店員に勧められたから、買ってみた。美味いらしいぞ?」
「やから、せめて味見かなんかしてから買えや!! 見たこともない魚や果物渡されても、調理に困るやろが!!」
「魚は揚げ物、果物はシャーベットが美味いらしいぞ?」
「メンドくさっ。どっちもメンドくさっ」
と、一悶着ありながら、再び東へと目指すのだった。
グリードアイランド内のある荒野。
ゴンとキルアは荒野の真ん中で穴を掘っていた。
シャベルと一輪車を使って、掘っては土を出し、掘っては土を出しを繰り返していた。
そして、すぐ傍にはもう1人いた。
ビスケット・クルーガー。
二つ星のプロハンターで、ゴン達同様バッテラ主催の選考会に合格した齢57歳の見た目少女な実力者である。
ビスケは最初はゴンとキルアを揶揄うつもりでいたが、2人の戦闘での動きや対応があまりにも中途半端だったことに我慢が出来なくなり、揶揄うどころかコーチを始めたのであった。
ビスケはストーンハンターであるため、宝石のような才能を持つ人物を見ると磨きたくなる性格をしているのだ。
もちろん最初はゴンとキルアは拒絶したが、直後他のプレイヤーに襲われて、そこでビスケの実力を目の当たりにしたことで教わる決意をしたのだ。
襲ってきたプレイヤーも、ゴンやキルアよりも実力者であったこと、そしてウイングの師匠であることも理由である。
こうしてゴンとキルアは新たな師を迎えて、修行を開始したのであった。
今、2人が行っているのは【周】を使い、シャベルで穴を掘りながらまっすぐ【魔法都市マサドラ】へと向かう修行である。
「そういえば、あんた達に念を教えたラミナってどんな奴なの?」
修行の休憩中にビスケが訊ねる。
ゴンとキルアは僅かに息を乱しながら、顔を見合わせる。
それにビスケは首を傾げる。
「なに? なんか言いにくいことでもあるの?」
「そういうわけじゃないよ」
「ちょっと色々あってさ。そういえば、今どうしてんのかなってさ」
「ふぅん。で? どんな奴なの?」
ゴンとキルアはラミナのことを話す。
出会いからハンター試験、ククルーマウンテン、天空闘技場、そしてヨークシンシティと幻影旅団のことを。
「なるほどねぇ~。それにしても幻影旅団とは、あんた達よく無事だったわねぇ。ホント、その子に感謝しときなさいよ」
「分かってるさ」
「けど、納得もしたわさ。あんた達がなんで中途半端なのか。あくまで基本技はともかく、応用技は簡単に指導されただけで、念での戦闘に関してはほぼ全くってわけね」
「うん」
「まぁ、四大行に【堅】。それに天空闘技場での教わり方を聞く限り、非常に丁寧で真っ当に教えてくれてるわ。戦闘も教えてもらえていれば、ここらへんのモンスターくらいなら楽勝だったでしょうね」
ビスケは納得したように頷く。
聞いただけでもラミナの実力はかなりのものだと推測できる。
(間違いなく実力と経験はプロハンターの中でも上位側に入るわね。この前のビノールトとは格が違う。しかも、聞いた感じ頭も切れる。私も元の姿じゃないと厳しいだろうね)
ビスケはそう考えながら、目の前のゴンとキルアを見る。
(旅団のことがなければ、ホントに良い師弟関係だったろうに。まぁ、だからこそ深くこの2人に教えなかったのかもしれないけど)
実際ヨークシンでは敵対関係になった。
今はどうか分からないが、前のように教えてもらえるとは限らない。
殺し合う可能性もある。だからこそ、その時に互いに手が鈍らないように出来る限り最低限の指導をしたのだろうと推測する。
「さぁ、そろそろ再開するわよ」
「「押忍!」」
キルアとゴンは立ち上がって、スコップを手に取って穴へと潜っていく。
ビスケはそれを見送りながら、
(けど、最低限教えられている分、成長も早い。【堅】が30分以上維持できるのはありがたいわね。しかも、次の目標設定もすでにしてくれている)
ゴンとキルアはビスケに教わりながらも、ラミナから教わった【纏】【練】【堅】【凝】の修行方法だけは譲らなかった。
【周】に関しては修行方法が思いつかず、【流】は【堅】の時間を伸ばすことに重きを置いていた。
なので、【流】に関してはビスケが教えることを伝えた。
ラミナの教え方が一般的なものであったため、ビスケが教えようとしている方法とほぼ似通っていたので、ゴンとキルアも否はなかった。
こうして、ゴンとキルアは日々進歩を続けていたのであった。
10月下旬。
ノストラードファミリー本邸。
クラピカは未だノストラードファミリーに所属していた。
理由は『緋の眼』の所有が未だネオンであること。そして、現在ノストラードファミリーが大きく揺れているからだ。
「まだ……まだネオンの力は元に戻らないのか!?」
ライト・ノストラードが目を血走らせながら叫ぶ。
その様子にクラピカとバショウは小さくため息を吐く。
「……現在、原因を調査中です」
「いつまで調査をしているんだ!? もうすぐ1か月になるぞ!!」
「……お嬢様にはオーラが確認出来ていますので、念能力そのものを失ったわけではないと考えています」
「じゃあ、何故占えない!?」
「そこが問題なのです。何故か
「攻撃!? ネオンが!?」
「相手の能力を封じるもの、と私は考えています」
「誰だ!? 誰がネオンを攻撃した!?」
ライトは更に目を血走らせて、今にもクラピカを襲いそうなほどだった。
占いでここまでのし上がってきたライトにとって、占いが無い状況はもはや耐えられない。
現在も顧客から催促の電話が何度もかかって来ている。
「それを現在調査中です。恐らくはヨークシンシティで攻撃を受けた可能性が高く、例のお嬢様を会場まで連れて行った者と考えていますが……。なにぶん日にちが経っていますので、調査が少し難航しています」
「くっ!! あの時か……!! くそぉ!! 何としても見つけ出せ!! いいな!!」
「はい」
クラピカ達は頭を下げて、ライトの部屋を後にする。
そして、自分達の待機部屋まで戻ると、バショウが大きくため息を吐いた。
「はぁ~……簡単に言ってくれるぜ……」
「仕方ないだろう。唯一の商品を失ったのだからな」
他の収入源はネオンの占いに比べれば、ないに等しかった。
そして、顧客もネオンの占い以外に興味はない。
なので、このままではノストラードファミリーは衰退するのは確実だった。
「あの子の能力もそうだけど……。十老頭が全員死んだことはいつ伝えるの?」
少し前に十老頭が全員死亡していたことがマフィアンコミュニティーに所属している組全てに知らされた。
そのため、今は新しい十老頭になろうとマフィアンコミュニティー内部はドロドロ状態である。
「……今の状態では伝えたところで、あまり意味はないだろう。今まで何をするにしても、占いに頼ってきていたからな」
「それもそうだな。けど現実問題、あの嬢ちゃんの能力を封じてる奴なんて、どうやって探すんだ? さっきは怪しい奴がいるたぁ言ってたが、そいつが犯人かどうかなんて確証はねぇんだろ?」
「確証はないが……確信はある」
「は? マジかよ?」
「……まさか……!?」
センリツは目を見開く。
クラピカは眉間に皺を寄せながら、小さく頷く。
「幻影旅団だ」
「……本気で言ってんのか?」
バショウは顔を鋭くして、クラピカを睨みつけるように見る。
クラピカやセンリツはもちろん、バショウにとっても旅団の話題は非常にデリケートなものになっていた。
仲間の半分以上が旅団に殺されたのだから、当然ではある。
特に最後に殺されたスクワラに関しては、ネオンのお付きだったエリザという恋人がいたのだから、尚更胸糞悪かった。
「旅団のリーダーと……ラミナが、ネオンに占ってもらったようなことを話していた。それが出来たタイミングは一度しかない」
「空港から逃げ出した時……。気絶させた時に何かしたってわけね」
「確かに……辻褄は合うか……。ってこたぁ、どうにかすんには旅団のリーダーを見つけねぇといけねぇのかよ……」
「「……」」
バショウの言葉にクラピカとセンリツもただただ黙り込むしかなかった。
ちなみにバショウにも旅団との間に起こったことは説明していた。
もちろん大まかにではあるが。
しかし、クロロに【律する小指の鎖】を刺して、念の使用と団員との接触を禁じたことは話している。
「問題は見つけることが出来たとしても……」
「ああ。能力を解くためには、私の能力を先に解かなければならない」
「……流石にそれは勘弁願いてぇな。せっかくお前らが命がけで封じたのによ」
「それに正直なところ、あの子にとってはこのままの方が幸せになれるかもしれないしね」
「見つけるにしても、まずはそれまで組を維持する収入源が必要だ。今の状況で我々が手っ取り早く出来ると言えば……」
「ま、用心棒だろうな」
「後は賭博だな。この2つはこの国では合法だ。まずはこの2つの事業を確立する。それと並行して情報収集を行っていく」
「果てしねぇなぁ」
「ボスはそれを認めるかしら?」
「あの状態ではまともな判断は出来ないのは、誰が見ても分かるだろう。だったら、無視してでも行わなければ収入以前に不信感で組が空中分解する。そうなれば、探すどころじゃない」
「そうだな。他の組の連中が、今までの憂さ晴らしに仕掛けてきたら面倒だしな」
「ああ。十老頭がいない今、マフィアンコミュニティーの繋がりなんて全く信用できん。ならば、まずはこの国での立ち位置を確立することを最優先にすべきだ。用心棒の方はバショウとリンセンに頼みたいのだが……」
「構わねぇぜ。流石にこの状況で一抜け出来る程、薄情になれねぇしな」
「ふっ……助かる」
クラピカはバショウの言葉に、ホッとして小さく笑みを浮かべる。
もはや念を使える者はクラピカ、センリツ、バショウ、リンセンのたった4人。
全員がプロハンターであることはある意味幸いでもあるが、逆に言えばノストラードファミリーに固執する理由もないのだ。
だから、ここでバショウ達が「組を離れる」と言っても、止めることは出来ない。
「センリツはボスとお嬢様の警護を頼む。特にボスが荒れ始めたら、音楽で宥めてほしい」
「努力してみるわ」
「で、クラピカが賭博か?」
「ああ。それと旅団の追跡も行う」
「見つけられんのか?」
「旅団は難しいだろうが、ラミナの方を調べればある程度情報が見つかる可能性はある」
クラピカはそう言いながら、部屋に設置されているパソコンの前に座る。
そして、ハンターサイトを開く。
「そのラミナって奴は旅団と一緒にいるのか?」
「リーダーに刺した鎖が外されれば、私はそれを感じることが出来る。今の所、それを感じてはいない。だから、別れ際の言葉からラミナはまだリーダーと共にいるはずだ」
「まぁ、除念師なんて簡単に見つからねぇよな」
バショウとセンリツもクラピカの横からパソコンを覗き込む。
クラピカはラミナの項目を開く。そして、すぐに目を見開く。
「……っ!! A級首に指定されている……!?」
「はぁ?」
「懸賞金は……10億ジェニー……」
「何かあったのかしら? ヨークシンで1億まで上がったのに、一月でその10倍だなんて……」
「…………これだ。1週間ほど前、バルトア共和国クヘンタシティで殺人騒動を起こしている……」
「それで10億まで上がるか?」
「相手はクヘンタシティに本拠地を置くマフィア、グスヌシファミリー。そして……コキシメ王国を裏で牛耳る一大マフィア、タラチュネラファミリーだ」
「「!?」」
バショウとセンリツはタラチュネラファミリーの名前に目を見開く。
流石に2人もノストラードファミリーにいれば、世界のマフィアの情報など嫌でも耳に入る。
そして、タラチュネラファミリーは広く名が知られたマフィアなのだから、マフィア社会にいれば知らない方が難しい。
それに今、コキシメ王国の裏社会情勢はちょっとした話題である。
「グスヌシファミリーはボスとその側近が全滅。そして、タラチュネラファミリーはボスの愛人の娘で実働部隊を率いていたパスイダ・タラチュネラ、通称【アラクネー】とその幹部に部下数十名が殺されたようだ……」
「おいおい……マジかよ……」
「けど、何故タラチュネラファミリーの実働部隊がそんなところに?」
「……恐らくはマフィアンコミュニティーから依頼でもされたのだろう。マフィアンコミュニティーはラミナに引っ掻き回されたからな」
「それで返り討ち、か……。だから、コキシメ王国は荒れてんのか」
現在、コキシメ王国ではタラチュネラファミリーと他のマフィア同士での権力闘争が勃発中なのだ。
王族はそれに不介入を貫いており、勝ち残ったマフィアと繋がりを持つつもりのようだ。しかし、タラチュネラファミリーに対するバルトア共和国の警察の捜査はしっかりと妨害しており、移送されたタラチュネラファミリーの構成員達はすぐに釈放していた。
現状はやはりタラチュネラファミリーがやや優勢らしい。
パスイダ達が殺されたのは痛手だったが、ボスやパスイダは【アラクネー】が死んだ時の対策はしっかりと準備していた。
他にも念を使えるプロハンターや傭兵を雇っており、パスイダはしっかりと後継者を育て上げていた。しかし、【百蜘蛛夜行】や【我らはお嬢の手足なり】のような能力ではないので、やはり今までのような情報収集力や殲滅力は失っている。
その埋め合わせが間に合っておらず、そこを他のマフィアに突かれている状況である。
「それでも、ここまで上がるモノかしら?」
「そうだな……。ん? ……なっ!?」
クラピカはセンリツの言葉に眉を顰めながらも、情報を読み進めていき、更に目を見開く。
「今度は何だよ?」
「ラミナの傍にゾルディック家の五男と執事の姿が確認されている……」
「ゾルディック家だとぉ!? あの伝説の暗殺一家のか?」
「……そうか。ラミナはゾルディック家と婚約関係にあったな。それでか……」
「は? 婚約?」
「ああ。ラミナはゾルディック家の三男と婚約している。それでマフィアンコミュニティーから、仕事を受けられなくなった今、ゾルディック家から仕事を貰っているんだろう……。幻影旅団とゾルディック家の両方と関わりがあるならば、この懸賞金の額にも納得出来る」
「最悪の盗賊集団と伝説の暗殺一家とかよ……」
バショウは頬が引きつるが止められなかった。
誰が考えても最悪の組み合わせである。
「こりゃあよぉ……。近づくの無理じゃねぇか?」
「……そうね」
(……ヨークシンで出てきたのはキルアがいたから。この場合では、ラミナの味方をする可能性が高いか……)
クラピカもリスクが高すぎるという結論に達する。
クラピカはため息を吐き、
「……お嬢様の能力に関しては、引き続き情報収集に留める。……占いについては、もう取り戻せないものと考えて動く」
「だな」
「分かったわ」
クラピカの言葉に頷くセンリツとバショウ。
クラピカは立ち上がって、
(……今は仲間の眼を取り戻す体制を整えることに集中すべきだ)
そう決心して、クラピカは動き出すのであった。
同時期。
とある場所にて。
マチ達、旅団はヨークシンから本拠地に戻っていた。
「シャルの奴、まだ調べものしてるの?」
「ああ。流石に島の特定は簡単じゃねぇってことだろ」
シャルナークはグリードアイランドから戻ってから、ずっと調べものをしていた。
といっても、グリードアイランドを行ったり来たりしており、石や植物の葉を持ち帰って調べている。
マチやパクノダ、ボノレノフ、フランクリンは本拠地でのんびりとしていた。
シズクとコルトピはゲーム攻略には興味はなく、占いからも解放されたのでシャルナークの調べものが終わるまでのんびりしていた。
フィンクスとフェイタンは未だゲーム内で遊んでおり、ノブナガは近くの街までふらりと出かけている。
ヨークシンから戻ってから、やはりクロロとラミナのことが気になり、あまり他の仕事に動く気にならなかった。
ラミナから連絡があれば、すぐに動けるようにしたい気持ちがあるからだ。
「ラミナ達は今どうしてるの?」
「のんびり東を目指してるみたいだよ」
パクノダがマチに訊ね、マチは肩を竦めて答える。
それにフランクリンは腕を組んで、
「まぁ、もう占いは頼れねぇしな」
「分かってる占いでも、除念師が見つかるかどうかも分からないしな」
ボノレノフも頷いて、缶ビールを傾ける。
パクノダは小さくため息を吐いて、
「せめて、ある程度目途が立てば、私達も余裕が出来るんだけどね……」
「除念師なんてそんな簡単に見つからないと思うよ?」
「まぁ、まだ二か月も経ってないんだ。あまりかっかしてたら、もたないぞ?」
「それにヨークシンまでは2,3年は皆バラバラで仕事してたしね」
「それもそうね」
コルトピとボノレノフ、シズクの言葉に、パクノダは笑みを浮かべる。
そこに体を伸ばしながらシャルナークが現れる。その右手には紙を持っていた。
「あ~……!」
「おう。終わったのか?」
「いや、もうちょっと時間かかるな。今度は具体的な島の位置を推測しないと」
「ご苦労様」
「好きだねぇ、あんたも」
パクノダとマチはやや呆れた表情を浮かべる。
シャルナークは肩を竦め、
「お宝の為だからな。ああ、それとラミナの事だけど。面白いことになってるみたいだよ」
「は?」
「ラミナが?」
「なんかあったのか?」
「気分転換がてらハンターサイトで調べたらさ、こんな情報が出たんだ」
シャルナークは持っていた紙をマチ達に配る。
中身を読んだマチ達は、
「……へぇ。A級首に懸賞金10億か……」
「随分と有名になったもんだ」
マチが少し嬉しそうに笑みを浮かべ、フランクリンも感心するように言う。
そこにパクノダがカルトの情報を見つけて、
「それにゾルディック家と随分と仲良くなってるみたいね」
「婚約者だからだろ」
「それに仕事は今ゾルディック家から貰ってるって言ってたしね」
ボノレノフが揶揄うように言い、マチは肩を竦めてラミナから聞いた話を言う。
「っていうか、これ。団長は大丈夫なの?」
「今の所、団長の情報は出てない。ラミナならそこら辺の気配りは出来るだろうしね」
シズクが首を傾げながらシャルナークに訊ね、シャルナークは肩を竦める。
フランクリンはマチに顔を向けて、
「そういえば、この五男って奴。旅団に入りたがってるんだったか?」
「らしいよ。だから、ラミナが鍛えてるってさ。ってことだから、団長もオッケー出したってことでしょ」
「なら、こいつが4番。ラミナが11番って感じか」
「それにしても……一昨日電話した時は何も言われなかったの?」
今度はパクノダがマチに訊ねる。
それにマチは少しだけ不機嫌そうに顔を歪めて、
「どっかのマフィアと殺り合ったのは聞いた。ゾルディックのガキの事もね。けど、それくらいだよ。一応何かしら目的が出来たらしいけど、下手にアタシ達が手伝おうとして、団長に鉢合わせになったらマズいからってさ。詳しくは聞いてない」
「ああ……なるほど」
「今はこの紙に書いてあるコキシメ王国を抜けたとこらしいよ。コキシメ王国では寄り道せずに突っ切ったみたい」
「まぁ、だろうね。タラチュネラファミリーはそれどころじゃなさそうだし、流石に俺達やゾルディック家と繋がっていることが分かった今、ラミナには手を出しにくいだろうな」
マチの言葉にシャルナークは苦笑しながら頷き、他の者達も納得の表情を浮かべる。
「じゃ、もうしばらくは待つしかないんだね」
「そういうことね」
シズクの言葉にパクノダが同意する。
クロロの復活を今か今かと待ち焦がれる団員達なのだった。