暗殺者のうちが何でハンターにならなあかんねん   作:幻滅旅団

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#62 イガイ×ナ×デアイ

 サラッとコキシメ王国を通り過ぎたラミナ達は、ようやくヨルビアン最東端の国【アカルル王国】に入った。

 

「何事もなく抜けたな」

 

「そやな。頑張ってくれたマフィアさんに感謝しとこか」

 

 ラミナ達が街で停まらなかったこともあり、タラチュネラファミリーはラミナ達に気づくことはなかった。

 と言っても、今現在も敵対マフィアとの抗争が続いており、それどころではなかっただろうが。

 

「まぁ、油断は出来んけどな~。なんや懸賞金跳ね上がっとったし、A級首になってもうたしな~」

 

「気にすることないんじゃないか? クモもすでに同じだしな」

 

「A級首2人に、ゾルディック家の子供。アホな物好きなら手ぇ出してくるかもしれんやろ?」

 

「ふっ」

 

「次の街で買い物するの?」

 

「そやな。コキシメは田舎町ばっかやったし」

 

 その数日後、ラミナ達は久しぶりに大きめの街に立ち寄った。

 食料を買い込み、ネットカフェで情報収集を行った時、クロロがこの街の事を調べてあるところに興味が引かれていた。

 

「この街は骨董市や骨董屋が結構あるようだな」

 

「行くか?」

 

「……そうだな。面白いものが見つかるかもしれん」

 

 コキシメ王国ではあまり外に出られなかったこともあり、ラミナはクロロの気晴らしに付き合うことにした。

 もちろんカルトも黙って後ろをついてきている。

 

 まずは骨董市に向かったラミナとカルトは、クロロの気が済むまで周囲をさりげなく警戒していた。

 

「どうや? 気になる気配は見つかったか?」

 

「……強そうなのが2つ。こっちを注目してる視線が3つくらい」

 

「惜しいなぁ。要注意な気配は3つ。視線は合うとるけど、ねちっこいだけやから単純に女好きか、幼女趣味の変態ってところやな。まぁ、気配の方もうちらのことに気づいとらんから、近づいてこん限り無視でええやろ」

 

「……」

 

 カルトは僅かに顔を顰めて、改めて気配を探り直す。

 それにラミナは苦笑して、

 

「ま、この2か月くらいでそこそこ成長したんちゃうか? 後は【絶】で隠れた奴の視線を感じられれば、合格やな」

 

「……分かった」

 

 やはりゾルディック家の子供だけあって、この2か月でカルトは大分成長していた。

 もちろん、まだまだ幻影旅団の中の順位は変わらないが、ヨークシン時のゴンとキルアに圧勝は出来なくとも、絶対に負けることはないくらいまでにはなっている。

 

(まぁ、あの2人は今頃もうちょい強くなっとるやろうけどな)

 

 しかし、ゴンとキルアはカルト以上に念を使っての実戦経験はないはずだから、それでもそう簡単に負けることはないだろうとも思う。

 まだ【蛇活】や【肢曲】【身体操作】などは甘いが、それでも当初に比べればラミナとの組み手も続くようになってきていた。

 

 骨董市ではあまりいい物は見つからなかったのか、今度は骨董屋が集まっている通りに移動しようとした時、ラミナが近くの露店の老人に声を掛ける。

 

「なぁ、爺さん」

 

「ん? なんだい?」

 

「この街の裏通りとかにも骨董屋とかってある?」

 

「……ないこたぁないね。ただ、かなり物騒だし、いわく付きの品を扱ってるらしいから、下手なモン買うと後で襲われたりするって噂があるな。だから、余り近づかん方がいい」

 

「やっぱそうやんな。気ぃ付けるわ。おおきに。あ、これ買うわ」

 

「あんがとよ」  

 

 ラミナは小さな茶器を購入して、クロロ達の元に戻る。

 

「や、そうやで」

 

「ふっ。そっちに行ってみるか」

 

 クロロ達は骨董屋が集まっている表通りの裏通りに足を進める。

 通りを1本ズレただけだが、かなり薄暗く、物が散乱していた。スラムなどの雰囲気に近いものがあり、一般人には近づきがたい雰囲気を醸し出していた。

 もちろん、クロロ達がそんなものに怯むことはない。

 堂々と裏通りを進んでいく。

 

 所々に人相の悪い男共が座り込んでおり、クロロ達を鋭く睨みつけていた。

 これまたもちろん、クロロ達がそんなものにビビることはなく、堂々と歩いて行く。

 

「待ちな」

 

 しかし、それが気に食わなかったのか、男達は立ち上がってラミナ達に声を掛けてきた。

 クロロ達は足を止めて、男達に目を向ける。

 男達はクロロ達の前に立ち塞がる様に移動し、更にラミナ達の背後にも路地裏から男達が現れて挟み込まれる。

 

「何か用か?」

 

「ここはおめぇらみてぇなガキが来るところじゃねぇ。痛い目を見る前に帰りな。まぁ、出すもん出したら……な」

 

 クロロの目の前に立っている坊主の男がニヤニヤしながら言う。

 それにクロロは鼻で笑い、肩を竦める。

 

「あぁ!? てめぇ、なめて――!」

 

 坊主男はそれに怒鳴りつけようとした瞬間、クロロが鋭く右アッパーを男の顎に叩き込む。

 男は顎を砕かれて、大きく仰け反らせて後頭部から地面に倒れる。

 

「なっ!? て、てめぇ!!」

 

「カルト、殺すなよ」

 

「分かってる」

 

「このっ! ふざけやがってぇ!!」

 

「ぶっ殺してやらぁ!!」

 

「うっさいわ」

 

 ゴロツキ達が怒鳴りながらカルト達に殴りかかろうとした時、ラミナが無造作に前蹴りを繰り出して、目の前の男の鳩尾に叩き込む。

 

「ごぇ!?」

 

 男はくの字に体を曲げて後ろに吹き飛び、嘔吐しながら地面を転がって倒れ伏す。

 その隣ではカルトが他の男の脚に手刀を叩き込み、男は一回転して背中から地面に叩きつけられる。

 

「がっ!? あああ!? あ、足がぁ!!」

 

 男の右足は折れ曲がっており、痛みに悶える。

 

 クロロは殴りかかってきたゴロツキの顔面にカウンターパンチを叩き込んで、男の顔を軽く陥没させる。そのまま男の襟元を掴んで振り回し、近くにいた仲間に投げつける。

 

「ぎゃ!?」

 

「ぐえ!?」

 

「な、なんだよ!? お前らっぺぇ!?」

 

 慄く男の顎をラミナが蹴り上げて、男は顎が砕けて倒れる。

 

「今更遅いわ、阿呆」

 

 ラミナは呆れながら、倒れた男を見下ろす。

 あっという間にゴロツキ達は全滅し、3人の周囲には呻き悶えているゴロツキ達が倒れていた。

 

「はぁ……弱すぎると逆に手加減がしづらいわ~。クロロはどうや? 久しぶりに暴れたけど」

 

「ふむ……そうだな。まぁ、この程度の連中だからな。特に問題ないさ」

 

「そらそうか。念使いやなければ、あんま問題なさそうやな」

 

 ラミナは苦笑して、クロロは肩を竦めて笑う。

 カルトはつまらなげに倒れている男達を見下ろしていた。

 

「ほれ、行くで」

 

「うん」

 

 クロロ達は男達をほったらかして歩き出す。

 何店か骨董屋を見て回っていると、

 

「ん?」

 

「どうした?」

 

 ラミナはある物にふと目が止まる。

 クロロはその様子に気づき、ラミナの視線の先に目を向ける。

 カルトは店の外に並べられた掛け軸を眺めていた。

 

 商品が所狭しと並べられているショーケースの奥の壁に、『それ』は立て掛けられていた。

 

 銀色の刃に黒紫の剣身と柄を持つ両手剣。

 

 古びてはいるが、妙な存在感を放っていた。

 

「あの剣か?」

 

「……みたいやなぁ」

 

 ラミナは店の奥で座っている眼鏡をかけた胡散臭い老店主に顔を向ける。

 

「なぁ、店長。この剣、なんか知っとる?」

 

「ん? ……ああ、それかい。かなり古い剣ってのは確かなんだがのぉ。詳しい事は知らん」

 

「ふぅん……。いくら?」

 

「そうじゃの……。200万ジェニーでどうじゃ?」

 

「……買うわ。布巻いて、なんか入れ物に入れてんか?」

 

「構わんぞ。バットケースにでも入れてやろう」

 

 老店主が立ち上がって、ショーケースに歩み寄っていく。

 その様子を見ていたラミナにクロロが声を掛ける。

 

「……もしかして、そうなのか?」

 

「うちの記憶が正しければ、な……。オーラも見えた」

 

「どれなんだ?」

 

 ラミナは布に包まれていく剣を見つめたまま、頭に浮かんだ名前を口にする。

 

 

「ブリュセリア王国終焉のきっかけを作った不義の男。『湖の騎士』と呼ばれたランスロッドの剣……【血の湖に浸かる無毀の剣(アロンダイト)】」

 

 

 

 剣を収納したバットケースを肩に担いだラミナは、支払いを終えて店を出る。

 

「思わぬ出会いだったな」

 

「まだ本物か分からんけどな。まぁ、オーラも他の二振りほどやないけど似通っとるし、多分当たりやろ」

 

「これで3本目か。何か繋がりでも出来たのかもな」

 

「……あんま嬉しないなぁ」

 

「呪いかもしれんがな」

 

「うっさいわ」

 

 ラミナが呆れながら言い、クロロは苦笑する。

 カルトは首を傾げるが、未だ何を買ったのか教えてもらっていない。

 

 ラミナの買い物で、クロロも掘り出し物を見つけようとその後も色々と店を回っていく。

 

 そして、ふとクロロがある店で目を止める。

 『色物中古屋』という看板の横に、地下へと下りる階段があった。

 

「また直球っちゅうか……」

 

「胡散臭い……」

 

「だからこそ、面白いものがありそうだろ?」

 

 ラミナとカルトは店名に呆れるが、クロロは足取り軽く階段を下りて行く。

 それにラミナ達は大人しく付いて行き、店に入店する。

 

 中は骨董屋以上に多種多様な品物が並べられている。

 店の中にはブツブツと呟きながら棚を眺めているガリ眼鏡の男や頭に布を巻いた無精ひげを生やした男など、他にも客の姿があった。

 

「……これまた色んなもんがあるなぁ」

 

 古書に武器、壺や茶器、さらに人形や絵画、電化製品、ゲーム、スポーツ用品、衣服など、目を向けただけでも数えきれないほどの種類が乱雑に並べられている。

 

「ま……これだけあったら、確かに掘り出しもんの1、2個くらい見つかりそうやな」

 

 横を見れば、ホルマリン漬けの心臓まで置かれている。

 

(……違法品も堂々と置いとるな。……あ?)

 

 ラミナは更にその近くに置かれている仏像を見て、訝しむ。

 

「おい、クロロ」

 

「ん?」

 

「あれ、お前らが()()()()()()()ちゃうか?」

 

「……そのようだな」

 

 クロロは仏像を少し見つめて頷く。

 間違いなくそれは旅団が以前盗み、売り払った物だった。

 

「っちゅうことは……ここは『闇市』なんか」

  

「闇市って、こんな店でやるものなの?」

 

「堂々と店をやってるからこそ、逆にバレにくいのさ。ここまで堂々と置いておけば偽物とでも思うだろう。恐らくこの店が本命で、他の闇市は囮なんだろうな」

 

 クロロはカルトの疑問に答えながらも、周囲の品物を見渡していく。

 

 そして、クロロは気になった古書などを手に取っていると、カルトが声を上げる。

 

「あ」

 

「ん? どした?」

 

「これって……」

 

 カルトが手に取ったのは、『グリードアイランド』だった。

 歩み寄ったラミナは呆れた表情を浮かべて、

 

「……マジかい……」

 

「……まぁ、可能性はあったな」

 

 クロロも苦笑するしか出来なかった。

 

「……で? 買うとくか?」

 

「……そうだな。一応持っておこう」

 

「オークションで89億やったなぁ……」 

 

 ラミナはカルトからグリードアイランドを受け取って、小さくため息を吐きながらレジへと向かう。

 

 レジには胡散臭そうな眼鏡をかけたチョビ髭の男がいた。

 グリードアイランドをレジに置く。

 

「ほぉ、そのゲームか。ん~……そうだねぇ……。100億でどうだい?」

 

「……あ?」

 

 明らかに相手を見てから値段を決めている言い方に、ラミナは一瞬目を細めて殺気を男にだけ飛ばす。

 男は一瞬で顔から血が引いて顔色が白くなり、大量の冷や汗が噴き出す。目が合った瞬間に体が金縛りにあって目が離せなくなり、首が斬り飛ばされる光景が頭に浮かんだ。

 

「……」

 

「もう一度、聞くで? なんぼやって?」

 

「……ご、50億ジェニー……です……」

 

「……元々が58億やったな。……ま、ええやろ」

 

 ラミナはレジに提示されている口座に金を振り込む。

 男は体を震わせながら、振り込まれたのを確認して、手を震わせながらグリードアイランドを袋に入れてラミナに渡す。

 

「……ここで店長気取りたいんやったら、相手の力量を見極められるようになるか、あの程度の殺気くらい耐えれるようになれや」

 

 ラミナはそう言い放って、背を向けて歩き出す。

 男はようやく金縛りから解放されて、椅子に座った状態で崩れ落ちる。

 そこにクロロが何気なく歩み寄って、商品をレジに置く。

 

「これも頼む」

 

「ひっ!? は、はい……」

 

 店長はラミナと一緒に入ってきた男だということに気づき、先ほど同様大きく値下げした金額を提示した。

 クロロは笑みを浮かべて代金を支払う。

 

「行くか」

 

 ラミナ達は店を出て、キャンピングカーに戻ることにした。

 そして、裏通りを歩いていると、

 

「ちょっといいか?」

 

 背後から声を掛けられて、クロロ達は足を止めて振り返る。

 

 そこには先ほどの店にいた客の1人である頭に布を巻いた男が両手をポケットに入れて立っていた。

 

「なんや?」

 

 ラミナは飄々と訊ねながら、クロロとカルトをいつでも庇えるように備える。

 ラミナは店に入った時から、ずっとこの男を最大限の警戒をしていたのだ。

 

 だから、あの店主に軽く八つ当たりしてしまったのだ。

 後3分でもあの店に滞在していれば、殺気を抑え切れない自信があった。

 

 それほど、目の前の男は強い。

 

(……くそっ。隙だらけのくせに、全く攻撃が届くイメージが湧かん……! これ以上間合いを詰めて、一瞬でも殺気漏らしたら戦闘開始やな……。クロロとカルトを逃がせる時間をどんだけ稼げるか……)

 

「落ち着け。お前らとやり合うつもりはねぇよ」

 

「っ!? ……ちっ……」

 

 男はラミナの様子を見抜いており、声を掛けてきた。

 ラミナは一瞬目を見開くも、すぐに舌打ちして男を睨みつける。

 

「……バケモンが……。何モンや?」

 

「俺はジン。ハンターだ」

 

「……。(ジン……? どっかで……)」

 

「そう警戒すんなって。別に俺は賞金首ハンターじゃねぇし、お前らの懸賞金にも興味ねぇよ」

 

「……うちらのことも知っとるわけか……」

 

「そりゃな。ヨークシンにクヘンタで、あんだけ暴れりゃあ情報くらい仕入れるさ。幻影旅団団長、ゾルディック家五男、そしてその両方と関りを持つ殺し屋リッパー。そんな連中、プロハンターがほっとくかよ」

 

 ジンは肩を竦めて、クロロ、カルト、ラミナを指差しながら言う。

 それにカルトが目を細めるが、

 

「やめとき、カルト。お前じゃ勝てん。悪いけど、戦いになったら、うちはお前を気にかける余裕はないで」 

 

「っ!? ……分かった」

 

 ラミナの言葉にカルトは目を見開いて、殺気を収める。

 クロロがラミナの肩を叩いて、ジンに訊ねる。

 

「それで……何の用なんだ?」

 

「そいつが背負ってるバットケースの中身を見せてほしいってだけさ。なんか妙なオーラを感じてよ」

 

「だ、そうだぞ?」

 

 クロロとカルトはラミナに顔を向け、ラミナは盛大に顔を顰める。

 

「……見せるだけやで」

 

「おう、それで十分だ」 

 

「なら……どっか個室行こか」

 

「それなら、俺が用意しよう。こっちが頼んだしな」

 

 ジンが携帯を取り出して、どこかにメールを送る。

 

 そして、ホテルの一室を確保したジンは、ラミナ達を案内する。

 

「ここでいいだろ?」

 

「ああ」

 

「じゃ、早速見せてくれよ」

 

「……はぁ」

 

 ラミナはため息を吐いて、バットケースから布に巻かれた剣を取り出す。

 そして、テーブルの上に置き、布を外して剣の姿を晒す。

 

「……へぇ。【死後に強まる念】のオーラを纏った剣、ってところか?」

 

「多分な」

 

「……かなり強いオーラだな」

 

 ジンはギリギリまで顔を近づけて、剣を観察する。

 

「少なくとも1000年は経ってるな……」

 

「ちょいとええか? 確かめたいことあんねん」

 

「確かめたいこと?」

 

 ジンはラミナの言葉に顔を上げ、ラミナはそれに答えずに剣の柄を握る。

 

 直後、ラミナの頭の中に膨大な映像や声が一気に駆け抜けていく。

 

 戦争に、国王と言い合う光景、どこかの女性と逃げだす光景、そして後悔に苦しみながら自害する姿。

 

「ぐっ……!」

 

 剣から手を放して、ラミナは右手で額を覆いながら軽くふらつく。

 クロロがすかさずラミナの体を支える。

 

「見えたのか?」

 

「……ああ。当たりやな」

 

「なんだ? お前、物の記憶でも読み取れるのか?」

 

「ちゃうちゃう。アルサー王国時代の剣は触ると、使い手の記憶が見えるんや。理由は分からん」

 

「へぇ……。俺も触ってみてもいいか?」

 

「……まぁ、柄やったらええで」

 

「サンキュ」

 

 ジンは笑みを浮かべて、柄に触れる。

 

「…………なるほどな。確かに本物みてぇだな」

 

「見たことあるんか?」

 

「いや、前に仕事でアルサー王国時代の城や遺跡を調べたことがあってな。同じモンが見えた」

 

「ほぉ……」

 

「で、お前は他の剣も持ってんのか?」

 

「あ?」

 

「さっき『アルサー王国時代の剣』って断言したじゃねぇか」

 

「言ってたな」

 

「……しもた」

 

 ラミナは目元を覆って項垂れる。

 記憶を見た衝撃で、完全に気を抜いてしまっていた。

 

「で? これ以外にどれ持ってんだ?」

 

「……」

 

「アルサー王の【エクスカリバー】に、モーグレッドの【クラレント】だ」

 

「おい!?」

 

 ラミナが言い渋っていると、面白がっていたクロロがバラす。

 

 明かされた名前に、流石のジンも目を見開く。

 

「……マジで? 持ってんの?」

 

「ああ、こいつがな」

 

「お前なぁ……!!」

 

 クロロがまた暴露して、ラミナが額に青筋を浮かべる。

 

「どこにあるんだ?」

 

「言うかい、ド阿呆」

 

「だよな。じゃあさ、覚えてるだけでも剣の見た目とか見た記憶教えてくれねぇか?」

 

「剣の見た目はともかく、記憶は量が多すぎるわ」

 

「じゃあ、メアド教えとくからよ。そっちのペースでいいから、送ってくれ。もちろん報酬は出す」

 

「……まぁ、それならええけど」

 

「あと、ネテロの爺に剣のこと伝えといてやるよ」

 

「なんでやねん」

 

「本物の【エクスカリバー】【クラレント】【アロンダイト】だぜ? 剣の記憶についての情報を俺を通して公表すれば、十分シングルハンターになれる功績になる。ネテロの爺に伝えれば、先んじて星は貰えるさ。本部に行かなくてもハンター証は届くように手配もしとく」

 

「別にいらん。っちゅうか、なんでそこまですんねん」

 

「まぁ、そう言うなよ。これに関してはちょっとした打算と礼だよ」

 

「打算に礼? 報酬は金で出してくれるんやろ?」

 

「息子のことだよ。世話になったみてぇだしな」

 

「息子ぉ? ……ああ!? お前、ゴンの親父か!?」

 

 ラミナはようやくジンの事を思い出して、目を見開く。

 カルトは首を傾げ、クロロはラミナに顔を向ける。

 

「あの黒髪の子供か?」

 

「そうそう。念を教えてくれたんだろ? これでゴンがシングルハンターになれば、お前はダブルハンターになれる。シングルやダブルになっとけば、今よりは出来る事も増えるぜ? 旅団の団員でも、そう簡単に手出しできなくなると思うぜ」

 

「ほぅ。それはありがたいな。ラミナ、せっかくなんだ。貰っておけ」

 

「……はぁ。分かった」

 

 クロロの言葉に、ラミナはため息を吐いて頷く。

 ジンからメアドを貰ったラミナは剣を丁寧に包んでバットケースに仕舞う。

 

「そういえば、グリードアイランド買ってたけど、なんかお目当てでもあるのか? 正直、お前らが欲しいもんはないと思うぜ?」

 

「やったことあるのか?」

 

「製作者の1人だ」

 

「は?」

 

「ほぅ」

 

 グリードアイランドの製作者という言葉に、ラミナとカルトは目を見開き、クロロも流石に小さく驚きを露わにする。

 

「じゃあ、1つ聞いていいか?」

 

「攻略に関わらねぇことならな」

 

「そのゲームの中には除念が出来るアイテムのようなものはあるか?」

 

「除念? いや、そんなもんはない。治癒だったり、若返りの薬とかはあるけどな。流石に他者の念能力に直接関わるものは無理だ」

 

「そうか……」

 

「お前がオーラを出さないことに関係してんのか?」

 

「直球だな」

 

「別にお前をどうこうする気はないからな。ハンターなんてしてれば盗賊みたいなこともするし、殺しもする。敵対しなけりゃ別にお前らがどこでどうしようが構わねぇよ」

 

「なるほどな」

 

(……確かにところどころでゴンを感じさせるなぁ。……実力も地位もあるゴンって厄介でしかないな)

 

 動きが読めないし、止められない。しかも間違いなくラミナより場数は踏んでいる。

 今は戦う気はないと言っているが、もし敵対する気になったら勝ち目は低い。

 旅団全員揃っていても五分五分なのではないかと、ラミナは考えてしまう。

 

「最後に……グリードアイランドがある島は、ここから東か?」

 

「……さぁ、どうだかな」

 

 ジンはとぼけるが、その顔には笑みが浮かんでいる。

 それにクロロとラミナは、合っていると理解する。

 

「では、俺達はこれで失礼する」

 

「ああ、ありがとよ。楽しかったぜ。っと、そうだ。ゴンには俺の事は黙っといてくれ」

 

「ん? なんでや?」

 

「俺を探してんだろ? なら、人伝いじゃなくて、自分で痕跡を見つけて貰わねぇとな」

 

「……まぁ、ええけど。こっちもうちらのこと黙っといて欲しいでな」

 

「交渉成立だな。じゃ、例の記憶の方、頼むぜ」

 

「へいへい。ほなな」

 

 ラミナは肩を竦めて、クロロ達と共に部屋を後にする。

 

 キャンピングカーに戻る間、追跡されていないか、ラミナは全力で警戒していた。

 そして、何事もなく、キャンピングカーに戻ると、ラミナは倒れ込むようにソファに横たわる。

 

「はぁ~~~……。心臓に悪いわぁ……」

 

「運が良かったな」

 

「全くやで……」

 

「どれくらい強かったの?」

 

「シルバとゼノを同時に相手にして、互角以上に戦えるやろな」

 

「!!」

 

 カルトはジンの評価を聞いて、目を見開く。

 カルトでは実力差が大きすぎて、見極められなかったのだ。

 

「まぁ……色々と収穫があったんが救いやなぁ」

 

「だな」

 

「結局グリードアイランドはどうするの?」

 

「やるで。うちとお前でな」

 

 ラミナは起き上がって、カルトに告げる。

 

「場所は合っとったから、占いは間違いなくグリードアイランドの事を示しとる。んで、ゲームのアイテムでは除念は出来ん以上、ゲーム内で探すんはプレイヤーで参加しとるであろう除念師その人やな」

 

「なんでそんなこと言い切れるの?」

 

「占いでは『待ち人』と出ていたからな」

 

「……なるほど」

 

「アイテムではない以上、ゲームに関係する人物ではないということだ。しかし、グリードアイランドが目的地。ならば、残るはゲームに参加するプレイヤーということだな」

 

 クロロの説明にカルトは納得する。

 

「正直、今カゴッシの家に帰るんは嫌な予感しかせんから、どっかの街でホテルかアパートでも借りよか。クロロだけにするんは不安やけど、うちとカルトよりはバレにくいやろうし」

 

「そうだな」

 

「体制を整えてジンからの仕事済ませたら、マチ姉達にも連絡して動こか」

 

「ああ。俺も剣の記憶を読みたいしな」

 

「……まぁ、頑張るわ」

 

「頼んだ」

 

 方針を決めたラミナ達は、移動を再開して準備を始めるのだった。

 

 

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