暗殺者のうちが何でハンターにならなあかんねん   作:幻滅旅団

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再び遅くなりました(__)
少し疲れが出たのか、風邪をひきまして(-_-;)

そんな中でモンハンアイスボーンが出るとは……。時間が足りん!


#65 アネ×イモウト?×サンシマイ?

 12月31日。

 シャルナーク達と別れたラミナ達は、【ソウフラビ】という街に移動していた。

 

「マサドラじゃダメなのかよ?」

 

「今のマサドラは呪文カード売り切れで滞在するメリットがないねん。1週間おっても見つからんかったしな」

 

「で、なんでここなの?」

 

「指定ポケットの1枚でな。『一坪の海岸線』っちゅうカードがこの街にあるらしいんやけど、まだ誰もゲットできたことないらしいねん」

 

 ノブナガとマチの質問に答えるラミナ。

 

「バッテラに雇われとろうが関係なかろうが、ゲームクリアを目指すならここに必ず来なあかん。やから、マサドラよりもここらへんでおる方がまだ見つけやすい……かもしれん」

 

「かもかよ」

 

「除念師がホンマにおるかどうかも分からんのやから、しゃあないやろ?」

 

 ノブナガの言葉に顔を顰めながら言い返すラミナ。

 占いに合致しているのは間違いないが、絶対ではない。

 そもそも本当に『待ち人』が除念師なのかどうか、確信がないのだから。

 あくまでクロロとラミナの推測と願望でしかない。

 

 そこにマチが腕を組んで呆れながら口を開く。

 

「とりあえず、探さないとどうにも判断できないよ」

 

「そうね。で? どう動けばいいの?」

 

「そうやなぁ……。まずパク姉で確かめたいことがあんねん」

 

「私?」

 

「このゲームのキャラクター達からも記憶は読み取れるんかっちゅうことや。このゲームのキャラクター達は念獣に近い存在やからな」

 

「……なるほど。確かに念獣相手じゃ私の能力は微妙なところね」

 

「読み取れる場合と出来ない場合があるんだったか?」

 

「ええ。特に遠隔操作型は駄目ね。自立型なら少しは読み取れることはあるのだけど……」

 

 パクノダは物の記憶を読み取れる内容は、人と比べて遥かに少ない。

 その物に触った人物だったり、その物が深く関わっている事件などでピンポイントで読み取れるわけではない。

 しかも、それが念獣や具現化された物になると、更に読み取れる記憶は少ない。

 

 理由は『念獣や具現化武器は、基本的に必要時に具現化されるため』である。

 一度消されると、その時の記憶が消えてしまうのだ。

 更に念獣は通常の人体の構造とは全く別物なので、原記憶という概念そのものが通じない。

 ノブナガは腕を組んで、街を歩く人々を見る。

 

「ここの連中は自立型っぽいけどなぁ~。ここまで数が多いとなると、微妙かも知んねぇなぁ」

 

「ええ。あまり期待はしないほうがいいかもしれないわね」

 

「とりあえず、試してみてんか? 駄目なら駄目で指輪をしとる連中だけ声かけていけばええやろし」

 

「分かったわ」

 

「で、新入りの探し方はどんなものだ?」

 

 ボノレノフがカルトを見ながら尋ねる。

 カルトはラミナに顔を向け、ラミナは頷く。

 カルトは袖から紙きれと人型の紙を取り出す。

 

「こっちの小さい紙を相手に貼り付けると、こっちの人型の紙から声が聞こえるようになる。ある程度、居場所も分かるよ」

 

「なるほど。それでそれっぽい会話を盗み聞きするわけか」

 

「うん」

 

「っちゅうわけで、まずはパク姉の能力がどこまで通じるかの確認やな」

 

「了解」

 

「けど、この人数で行っても目立つだけやな。ノブナガ、ボノレノフが護衛役な。うちらは少し離れた所でカルトの能力で探しとるわ」

 

「しゃあねぇな」

 

「分かった」

 

 パクノダ、ノブナガ、ボノレノフの背中を見送ったラミナ達は建物の屋上から捜索をすることにした。

 

「で、カルトはどれくらい同時に声を聞けるの?」

 

「え?」

 

 マチの言葉にカルトは目を見開いて、マチを見上げる。

 それにマチは訝しむように眉間に皺を寄せて、

 

「なに?」

 

「いや……」

 

「くく! 急に名前呼ばれて驚いたんやろ」

 

「はぁ?」

 

「さっきまで新入りとしか呼ばれとらんかったしな。なんだかんだでまだ団員として認められとらんとでも思っとったんやろ」

 

 ラミナは苦笑しながら、カルトの心情を推測する。

 それにカルトは恐る恐る頷き、マチは不貞腐れたようにそっぽを向く。

 

「ふん……。団長が認めて、ラミナが鍛えてるならアタシが文句を言うことはないよ」

 

「……」

 

「それに駄目ならアタシも鍛えてやればいいしね」

 

 そう言いながらマチはニヤリと笑って、カルトを見下ろす。

 カルトは一瞬背筋に寒気が走る。

 

「アタシの扱きはラミナみたいに甘くないけどね」

 

「……」

 

「まぁ、マチ姉は『とりあえず実戦。限界を超えろ』やしな」

 

「いちいち理論立ててメニュー考えるなんて面倒だろ? とことん追い込んだ方が嫌でも強くなるもんだよ」

 

 マチは呆れた顔を浮かべて、ラミナを見つめる。

 ラミナは肩を竦めて、唖然としているカルトを見る。

 

「カルトはどっちがええんや?」

 

「……今はまだ……ラミナでいい……」

 

「や、そうやで」

 

「ふん」

 

「さて、カルト。そろそろ仕事しよか」

 

「分かった」

 

 カルトは5枚ほど小さい紙きれを放り投げて、下の通りにいるプレイヤーと思われる人達に紙きれを貼り付ける。

 そして、人型の紙人形を取り出す。

 

 紙人形から声が聞こえ始め、周囲の会話や独り言などが入り乱れる。

 カルト、ラミナ、マチは耳を傾けて、情報を聞き逃さないように注意する。

 しかし、聞こえてくるのはやはり攻略の事などゲームに関することばかりだった。

 

「……やっぱそう簡単に能力の話なんざせんわなぁ……」

 

「流石にこれじゃ見つからないんじゃない?」

 

「……これは元々追跡・諜報のための能力なの」

 

「それは見れば分かるよ。別にあんたを責めてるわけじゃなくて、これで探そうと思ったラミナに言ってるの」

 

「しゃあないやろ? これくらいしか探しようないやないか。仲間集めのフリして声を掛け回って、余計な連中ばっか釣れても邪魔なだけやないか」

 

「まぁね」

 

 ラミナとて、この方法が下策中の下策であることは分かっている。

 しかし、それ以外に最善と言える方法がなかっただから、しょうがなかったのだ。

 ラミナの能力の中には人を探し当てるものは一切ない。

 

 なので、地道に探っていくしかなかったのだ。

 

「うちら盗賊やのに、人や物探すん下手くそやんな」

 

「全くだね」

 

 ラミナとマチはため息を吐く。

 クロロやシャルナーク、ラミナによる入念な下調べの下で、これまで仕事を遂行してきた。

 マチやノブナガ達は実行部隊として動くことが多いため、人探しなどになると一般人レベルのやり方しか出来ない。

 

「ここやとハンターサイトも情報屋もないでなぁ……。手間と時間をかけて探し回るしかないか」

 

「全く……面倒だね」

 

「まぁ、地道にやっていくしかないでな」

 

 その後も何人もの会話を盗み聞きしていく。

 残念ながら除念師は見つからなかったが、

 

『おい。呪文カードを大量に集めてた連中のこと、聞いたか?』

 

『ああ。全員、ボマーに殺されたらしいな』 

 

『マサドラに大量の呪文カードが納品されたからな。まず間違いないだろうぜ』

 

『ってことは連中の集めてた指定ポケットカードも……』 

 

『ボマーが独り占めしたんだろうな。急にゲンスルーって奴がランキングに出てきたし』

 

 という会話が聞こえてきた。

 

 ラミナは腕を組んで顔を顰める。

 

「ふむ……。ちょっと厄介なことになったんかもしれんなぁ」

 

「どういうこと?」

 

「呪文カードを集めとる連中がな、このゲームで最大のプレイヤー集団やったはずやねん。除念師がおるとしたら、そこにおるかもと考えとったんやけど……」

 

「そいつらがボマーって奴に全滅させられたと……」

 

「これでまた除念師の手がかり0やな」

 

「マサドラに戻る? 呪文カードが買えるようになったんでしょ?」

 

 カルトがラミナとマチに訊ねる。

 ラミナは首を横に振って、

 

「いや。もう今ある分は買い占められたやろ。ここまで噂が流れとるんやからな。そこそこ呪文カードを押さえとった奴らがマサドラに行かんわけがない。多分シャルナーク達も動いとるやろ。なら、シャルナークが買いに来とる連中に声を掛けるはずや。やから、うちらはわざわざマサドラに戻るんは無駄手間になるかもしれん。やったら、それ以外の街で探しとる方がまだええと思うで?」

 

 ラミナの言葉にマチとカルトは特に異論は唱えなかった。

 2人は呪文カードに興味は一切ないからだ。

 

 そういうことはラミナに任せておけばいい。

 

 2人はそう考えていた。

 

 ラミナが顎に手を当てて今後の作戦を考えていると、パクノダ達が合流してきた。

 マチが顔を向けて、

 

「どうだった?」

 

 パクノダは肩を竦めて、

 

「残念ながら収穫なし。やっぱりNPCからはまともな記憶が読み取れなかったわ」

 

「ま、それはしゃあないでな。覚悟はしとったし」

 

「っていうか、ここにいる連中。本当に念使いなのか? 雑魚ばっかじゃねぇか」

 

「念が使えるだけの連中もおるやろうな。ゲーム感覚で来て、出れんようになった阿呆な連中もわんさかおると思うで?」

 

「そうね。記憶を読んだ連中の半分は、ここから出る事をほとんど諦めてるわ。中にはこの中で結婚してる奴もいたわよ」

 

「結婚? ゲームの中で? 現実とはいえ?」

 

 ラミナの推測をパクノダが後押しし、その内容にマチが思わず聞き直す。

 パクノダも理解出来ないとばかりに右手で額を覆って頷く。

 

「ええ。プレイヤー同士でね。仕事にも就いてるみたいよ。まぁ、そいつらはここが現実だってことは知らないみたいだったけど」

 

「尚更救えんやないか」

 

「ホントにね」

 

「まぁ、それはいいわ。この後はどうするの?」

 

「もう2日くらい、ここで情報集めよか。他の街に行くにしても、その街の情報も集めなあかんし」

 

「了解。あぁ……そういえば、例の坊や達に会った奴もいたわよ」

 

「それは今はどうでもええわ。……あぁ、カルトはその記憶が欲しいかもしれんけど」

 

「え!?」

 

 突然話を振られて目を見開くカルト。

 パクノダ達はカルトに目を向ける。

 

「そういえば、ゾルディックの坊やはこの子のお兄さんだったわね」

 

「なんだ? 兄貴の顔知らねぇのか?」

 

「知ってるよ! ……ここ数年会ってないけど……」

 

「家出中やしな、あいつ。っちゅうか、ホンマにキルアがゾルディック家に帰った時、会っとらんのか?」

 

「……会ってない。お母様に止められてたから……」

 

 カルトは少し寂しそうにそっぽを向く。

 それにラミナは憐れみの目を向けながら、慰めるように頭を撫でる。

 

 その様子にマチ達は呆れた目で見つめ、

 

「随分と懐かれてるみたいね」

 

「ラミナは面倒見いいからね」

 

「ま、こいつが指導役なんだし、いいことじゃねぇか」

 

「マチは寂しくなりそうだな」

 

「あ?」

 

「別に何も」

 

 ボノレノフがマチを揶揄うが、マチに睨まれてすぐに黙る。

 マチはふん!と鼻で息をして、ラミナ達に視線を戻す。

 

 カルトがラミナの手を払い退けるのを見て、マチは流星街でラミナと暮らしていた頃を思い出した。

 マチは小さく笑みを浮かべて、2人に声を掛ける。

 

「で、今日はどうするの? もう日が暮れるよ」

 

「そうやなぁ。宿探すか? それとも野宿するか?」

 

「食事は?」

 

「一応マサドラで食材とかは仕入れとるで」

 

「じゃあ、野宿。っていうか、あんたの飯」

 

 ラミナが料理の用意をしているのを知ったマチが即答し、パクノダが苦笑する。

 ノブナガとボノレノフも久々のラミナの料理なので、文句はない。

 

「ここってジャポン酒とかあんのか?」

 

「流石にないんじゃないか?」

 

 などと、飲む気満々な会話をしていた。

 カルトももちろん文句はないので、何も言わない。

 

「じゃあ、ちょっと離れた森の中でも行こか」

 

 ラミナは苦笑しながら提案し、一同はさっさと移動する。

 

 森の中で開けた場所を見つけて、思い思いに座って料理が出来上がるのを待つことにしたマチ達。

 ラミナは早速本から調理器具やら食材をゲインしていく。

 

「肉ある?」

 

「あるで」

 

「私はカルパッチョとかが食べたいわ」

 

「いけると思うで」

 

「俺はパスタが食いたい」

 

「まぁ、ええけど……」

 

「俺はテンプラかスシ」

 

「野宿で作る料理ちゃうわ!!」 

 

「ボクはシチューかハンバーグがいい」

 

「……あ~……うん。ハンバーグは出来るわ」

 

 相変わらずの好き放題な注文になんだかんだで律義に答えるラミナ。

 それを眺めながら、マチはカルトに顔を向ける。

 

「カルトって今、いくつなの?」

 

「10歳」

 

「あのクソ兄貴は?」

 

「……ミルキ兄さんのこと?」

 

「違う。ラミナの婚約者の方」

 

「……キルア兄さんは12歳になったと思うけど……」

 

 カルトは尊敬してる兄をクソ兄貴と呼ばれて顔を顰めるが、怒らずにマチの質問に答えて行く。

 マチはそれを無視して、

 

「ふぅん……。あいつは【発】とか使えないみたいだったし、殺しも渋ってたのに、あんたは【発】を覚えてるんだね」

 

「ボクはキルア兄さんほどの才能はなかったから。だから、早めに念を教えて貰えただけだよ」

 

「けど、今ならオメェの方があの兄貴より強いんじゃねぇか?」

 

「どうなの? ラミナ」

 

 パクノダがラミナに訊ねる。

 ラミナは調理の手を止めることなく、

 

「ん~……微妙なところやろなぁ」

 

「あ? そうなのか?」

 

「キルアは身体面がカルトより圧倒的に上やからな。念の方もヨークシンで最後会った時は、キルアの方が【堅】の維持時間長かったでなぁ」

 

「今は?」

 

「身体面はまだまだキルアが上やろうな。念に関してはどっこいどっこいくらいにはなったやろうけど、最終的にキルアの【発】次第やな」

 

「ふぅん……」

 

「ちっ。やっぱあん時逃がさなきゃよかったぜ」

 

 酒瓶を傾けながら、ノブナガはゴンとキルアを逃がしたことを今更ながらに悔やむ。

 

 それをラミナやマチ達は呆れながら、『どうせクラピカ(鎖野郎)のこと思い出したら、許さんとか言うくせに』と思っていた。

 

「まぁ、キルアもそうやけど、カルトもまだ10歳やで? うちらやってその頃は念を覚えたばっかくらいやったことを考えれば、十分過ぎるやろ。まだまだ体は成長するし、その分オーラも増えるはずや。今のペースで行けば、20歳くらいになる頃には今のうちらでもかなり手こずるくらいの実力はつくやろ。まぁ、後10年もうちは面倒見る気はないけどな」

 

「言われてみればそうね」

 

「それにキルアやゴンの才能が異常なだけで、カルトもうちらに負けん才能持っとるわ。マチ姉達かて、クロロの才能と比べられても困るやろ?」

 

「そりゃね」

 

「確かにな」

 

 ラミナの言葉にマチ達は納得するように頷く。

 確かにカルトはまだまだ未熟だが、歳を考えれば十分異常な実力者の範囲に入る。

 成長期であることも考えれば、伸びしろはここからだと見てやるべきだろう。

 

(まぁ、だからこそゴンとキルアの行く末なんざ想像もしたぁないけどな)

 

 あの2人が今のままで20歳になった時の実力など、ラミナやクロロはもちろん、シルバやゼノをも凌駕しているだろうことは想像に難くない。

 ラミナはそう思いながら、出来た料理を続々とマチ達に出していく。

 

「お~、久しぶりだなぁ! ラミナの飯は!」

 

「ヨークシンでは食べられなかったものね」

 

「腕は落ちてない様だな」

 

「そらぁ、ここ最近はクロロとカルトの飯作っとったしな」

 

「で、カルトもしっかりと餌付けされたってわけね」

 

「……だって美味しいし」

 

「ふふっ、そうね。私達も昔からよく食べさせてもらってたしね」

 

「団長から無茶振りはされてないのか?」

 

「されたに決まっとるやろ。人が必死に商売敵と殺し合っとる間に変な魚とか買って、疲れて帰ったら『フライが美味いらしい』とかのうのうと言ってきよったわ」

 

「ぶわっはっはっはっ!! 相変わらずだな、団長の奴!」

 

 ノブナガ達が笑い、ラミナが顔を顰める。

 その後はチマチマと酒のツマミのような料理を作りながら、ヨークシン後のそれぞれの活動を語り合う。

 と言っても、マチにほとんど伝えており、マチからほとんど聞いていたので、そこまで目新しい情報はなかったのだが。

 

 それでもちょこちょこ知らない話が出て、それに笑い合うラミナ達。

 それをカルトはラミナの横でお茶を飲みながら聞いていた。

 

 カルトは初めて見る幻影旅団の姿に、内心で意外感を覚えていた。

 

(もう少しうちみたいな感じなのかと思ってたけど……。全然和やかな雰囲気だ)

 

 誰もが知っている極悪犯罪集団。

 もう少し殺伐とした雰囲気なのかと思ったが、普通にそこらへんにいるゴロツキみたいな雰囲気で会話をしていた。

 それでも意識の隅っこで周囲の警戒を怠っていないのは、カルトはなんとか理解出来た。

 

 もちろん仕事の時はまた違うのだろうと、カルトはなんとなく察してはいる。

  

「そういやぁ、カルト」

 

「なに?」

 

「おめぇ、なんでまた旅団に入りたいって思ったんだ? ぶっちゃけ、俺達よりゾルディックにいる方が儲かるし、安全だぜ?」

 

 ノブナガがカルトに訊ねる。

 

「確かに家にいても問題なかっただろうけど、余り仕事は任せて貰えなかったと思う。今まで1人で仕事したことないし」

 

「だから、旅団に?」

 

「お爺様やお父様達からラミナと旅団の関係は聞いてたから。キルア兄さんに念を教えたり、暗殺技術も高いってのも聞いてたから、せっかくならラミナにも会えて、お父様達が警戒していた旅団も見てみたいなって」

 

「それで本当に来たの?」

 

「……まぁ、他にもあったけど。ラミナに出会ってすぐに挫かれたから」

 

「あ? うちが?」

 

「……正直、そこまで実力差があるとは思ってなかったから……」

 

「あぁ……そういやぁ、最初うちや旅団に勝つ気でおったな。まぁ、夢物語にもほどがあったけど」

 

「何だ? ラミナと戦ったのか?」

 

「そらぁ、カルトの実力を知らんかったら鍛えようがないでな」

 

「で、手も足も出なかったってわけ?」

 

「……」

 

 マチのトドメの言葉に、カルトはそっぽを向く。

 それにノブナガとボノレノフ、ラミナが笑い、パクノダは苦笑して内心同情する。

 ノブナガはツマミを口に放り込みながら、上機嫌にラミナを見ながら言う。

 

「それにしても、ラミナが弟子を持つたぁな~。成長したもんだな、おめぇも」

 

「あのガキ共も弟子になるのか?」

 

 ボノレノフの言葉に、マチが眉間に皺を寄せる。

 それにラミナが苦笑しながら肩を叩いて宥める。

 

「キルアとゴンは念だけやからな。それも【流】や【硬】は見せただけで、自分達でやらせるようにしたし。カルトに比べれば、弟子とは言えんなぁ。カルトは今のところ間違いなくうちの弟子やな。暗殺術や戦闘技術も教えとるし」

 

「じゃあ、仕上がるのも時間の問題か?」

 

「ん~……こいつの体がどう成長するかやなぁ。あんまり身長伸びんのやったらフェイタンに少し任せたいし、伸びるんやったらクロロやノブナガ達にも手伝ってほしいところやな」

 

「俺達が?」

 

「男の体の動かし方は、うちじゃ教えきれん。今はそこまで関係ないけど、成長したらそうもいかんやろうし」

 

「なるほどな」

 

「まぁ……カルトが成長しても女っぽい体つきがええっちゅうんなら、話は別やけどな」

 

 ラミナは酒瓶を傾けながら、カルトに目を向ける。

 カルトは眉間に皺を寄せながら、

 

「……まだ決められない。ボクがどこまで成長するのか分からないし」

 

「いや、お前。男がええんやったら、男らしさを目指せや」

 

「アルケイデスの爺みたいな術って出来ねぇのか?」

 

「アルケイデスって、あの?」

 

「そ。あいつ、流星街出身の殺し屋やねん。うちらも流星街出た時に少し世話になってな。あいつ、ゼノ爺より年上のくせに見た目がカルトと同じくらいガキやからな。あれも多分、念やと思うんやけど……」

 

「あれってなんかメリットあるの?」

 

「見た目で油断させられるっちゅうくらいちゃうか?」

 

 ラミナも試したことはないので、どこまでメリットがあるのか判断できない。

 正直殺し屋稼業で『見た目が子供』にメリットの方が強いとは思えない。

 しかも、どのような能力なのかもはっきりと知らないので、他の者が出来るのかどうかも分からない。

 

「まぁ、あれはあんま参考に出来んと思うで?」

 

「そうね。それにカルトはそのまま成長しても女っぽさは残るんじゃないかしら?」

 

「そう?」

 

「ええ。だって……どことなくラミナやマチに似てるもの」

 

 パクノダは並んで座っている3人を見比べ、笑みを浮かべながら言う。

 それに真ん中に座っていたラミナが、マチとカルトを交互に見比べて、首を傾げる。

 

「……似とるか?」

 

「顔というよりは雰囲気かしらね」

 

「あぁ、確かにそうかもな」

 

「なんだ? ってこたぁ、三姉妹ってわけか? ぶわっはっはっはっ!! そりゃあいい!!」

 

 ボノレノフとノブナガもパクノダの言葉に同意する。

 それにラミナは呆れ、マチとカルトは顔を顰める。

 

「妹って……こいつは男だろ? あいつの弟なんて御免だね」

 

「……」

 

「まぁ、好きに思えばええわ」

 

 ラミナはすでにクロロとの旅の間に何度も姉妹やら親子やらに間違われてきたので、もうどうでもよくなっていた。

 

「見た目だとラミナが長女で、マチが次女だな」

 

「は?」

 

「身長か」

 

「殺すよ?」

 

「冗談に決まってんだろ!?」

 

 こうして、和やかな?夜を過ごしていくラミナ達。

 

 なんだかんだでカルトは問題なく旅団に迎え入れられるのであった。

 

 


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