暗殺者のうちが何でハンターにならなあかんねん   作:幻滅旅団

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#67 ソイツ×ハ×ボマー

 ゲームに戻ったラミナは、最初の平原に足を踏み入れる。

 

「なるほど。最初は必ずここに戻るっちゅうわけか。フリーポケットのカードは消えたから、呪文カードで目的地に戻ることも、仲間に連絡取ることも出来ん……。中々に厄介やな」

 

 『離脱』を手に入れられる者は、ゲームクリアをするために滅多に外には出ない。

 なので、あくまで最終離脱手段としてキープされ続けるだろう。

 場合によっては、トレードの対象になるかもしれないが、命のやり取りがある状況になった今では、手放し辛いだろう。

 

 それによって、更にゲームから出たい連中にとって『離脱』が手に入らない状況になってしまっている。

 しかし、港まで行く実力もない。マサドラから出るのも一苦労。

 そして、引き当てたレアカードと交換してもらいたくても、殺される可能性があるから自分から声を掛ける勇気もない。ただでさえ巷では【ボマー】がプレイヤー狩りをしているのだから。

 見事なほどリタイア希望プレイヤー達は、袋小路に追い詰められていた。

 

「さて……まだソウフラビにおるか? それともマサドラか集合場所で待っとくんがええんか……」

 

 ラミナはとりあえず、ルビキュータを目指しながら今後の予定を考える。

 誰かからカードを奪うことも出来るが、何も持っていなかったら無駄でしかない。

 

「……はぁ……。マチ姉達がうちが帰ってきたかどうか確認するとは思えんでなぁ。カルトは多分それどころやないやろうし」

 

 恐らくマチやノブナガにそこそこ追い詰められているはずだ。

 むしろ、ちゃんと除念師探し出来ているのかさえ不安である。パクノダがサボるとは思えないので、何もしていないわけではないだろうが。

 

 そして、森の中に入って街を目指していると、

 

「ちょっといいかい?」

 

「ん?」

 

 突如、声を掛けられて振り返るラミナ。

 

 そこには眼鏡をかけた面長の男が、にこやかな笑みを浮かべて立っていた。

 

「なんか用か?」

 

「君、初心者だろ? このゲームのこと、教えて欲しくないか?」

 

「なんで、そんな親切なんや?」

 

「実はちょっと人手が足りなくてね。正直、慣れたプレイヤーを仲間に引き入れるより、初心者の方が揉めなくていい」

 

「ふぅん……。で、()()()()()()()()2()()()はお前の仲間なんか?」

 

「!! ……まいったな」

 

 眼鏡の男は一瞬目を見開き、眼鏡を直しながら小さくため息を吐く。

 そして、合図を送るとラミナの背後の木陰から、額に刺青を入れた男2人が現れる。

 

(……そこそこ出来る連中やな)

 

 静かに現れ、3人揃って隙が少ない。

 それなりの実力者であることを見抜いたラミナは、3人を視界に捉えられるように位置を変える。

 

「それで? ホンマの用はなんや?」

 

「……死にたくなけりゃ、大人しくしな。せっかくこのゲームを始めたんだ。もう少し楽しくプレイしたいだろ?」

 

 眼鏡の男がガラリと雰囲気を変えて、ラミナを脅し始める。

 しかし、ラミナにそんな脅しが効くわけもなく、

 

「お断りや。それに……死ぬんはそっちかもしれへんでぞ?」

 

 ラミナは【練】を発動する。

 それを見た3人組も【練】を発動しながら、距離を取る。

 

「こいつ……!」

 

「こっちは3人だぜ? 勝てると思ってんのかよ?」

 

「……はっ。数が多いくらいで勝てると思とるんか? 随分と生温い勝ち方しかしてこんかったんやな」

 

「てめぇ……!」

 

「落ち着け、サブ。……ただのハッタリじゃなさそうだ」

 

 眼鏡の男は油断せずにラミナを見据える。

 その言葉に他の2人も苛立ちを抑えて、ラミナを睨みつける。

 

 それにラミナも内心で警戒心を上げる。

 

(……戦い慣れしとるな。()()()()の人間か)

 

 幻影旅団と同様に、明確に『殺し』を手段として受け入れている連中。

 ラミナは目の前の3人をそう判断した。

 

「こいつはここで殺す。まぁ、運よく生きていたら、好きにしていいだろ」

 

 眼鏡の男がその場で構え、他の2人がラミナを左右から挟み込むように移動する。

 その瞬間、ラミナはブロードソードと圏を具現化しながら、黒髪の男の方へ飛び掛かる。

 

「っ!!」

 

「ふっ!!」

 

 ラミナが剣を高速で振り、黒髪の男は慌てて後ろに下がってギリギリで躱す。

 

「速ぇ……!?」

 

「くっ!」

 

「こいつ!」

 

 眼鏡の男とサブはラミナに向かって飛び出す。

 ラミナは両足にオーラを籠めて、一気にサブに向かって突っ込んでいく。

 

「なっ!?」

 

 サブは目を見開いて足を止めようとするも、すでにラミナは目の前まで近づいていた。

 ラミナはブロードソードを振ろうとするが、そこに眼鏡の男が右手を伸ばして来て、ラミナは左足だけで方向転換して攻撃を中断して躱す。

 

(……殴るやなくて、掴みに来た?)

 

 ラミナは眼鏡男の攻撃に疑問を感じる。

 普通ならば、ここは殴る場面だ。

 両手に武器を持っている人間の体を掴んだところで、反撃されるリスクしかない。

 

(つまり、こいつの能力は『触れるか掴むことで発動する』能力)

 

 もちろんあくまで可能性の段階だが、それだけでも予測出来れば十分である。

 

 ラミナは圏を消して、ククリ刀を具現化する。

 

「……3つも武器を具現化する能力だと……?」

 

「変な能力があるとしても、そんな無駄な能力考えるか普通?」

 

「つまり、普通じゃないってことだ」

 

 男達はラミナの警戒度を更に高める。そして、突出しないようにゆっくりとにじり寄る。

 ラミナはククリ刀を手の中で回して、威嚇する。

 そして、黒髪の男に向かってククリ刀を投げる。

 

 黒髪の男は危なげなく躱して追撃を警戒するが、ラミナが斬りかかったのはサブの方だった。

 眼鏡男も黒髪のフォローに回るつもりだったので、一歩反応が遅れた。

 

「くそっ!!」

 

 サブは慌てて後ろに下がりながら、反撃の隙を探る。

 すると、次にラミナは更に方向転換して、3人から離れるように駆け出した。

 

「なっ!?」

 

「しまっ!」

 

「バラ、サブ、追え!!」

 

 眼鏡男達はラミナを追いかける。

 囲う様にラミナを追い詰めようとするが、

 

「くそっ!! 速ぇ!!」

 

 ラミナとの距離が詰まらなかった。

 すると、ラミナはブロードソードを消して、レイピアを具現化する。

 

「!? また武器を!?」

 

「具現化じゃなくて、出し入れする能力か!?」

 

「だったらいいが……っ!? バラ、後ろだ!!」

 

「なにっ!?」

 

 眼鏡男の言葉にバラは背後を振り返る。

 すると、背後から炎の円盤が勢いよく飛び迫ってくるのが見えた。

 

「ちっくしょ……!!」

 

 バラは横の茂みに跳び込んで、直後炎の円盤が通り過ぎる。

 炎の円盤はラミナの目の前で勢いを弱めて炎を消し、ラミナの左手に戻る。

 

「やっぱ能力付きの武器だったか……!」

 

 ラミナはすぐさま眼鏡男にククリ刀を投擲する。

 そして、次にレイピアを構えて、サブに切っ先を向ける。

 

「【啄木鳥の啄ばみ】」

 

 能力を発動しながら、勢いよく突き出す。

 サブは足を止めるが、直後右肩に穴が空いて血が噴き出す。

 

「がぁ!?」

 

「サブ!?」

 

「くそっ! っ!! サブ!! 横に跳べぇ!!」

 

「!!? くっそがぁ!!」

 

 サブは右肩を押さえながら、眼鏡男の声に迷うことなく横に跳ぶ。

 背後から炎の円盤が襲い掛かり、サブの背中を僅かに掠って服を焼いて、皮膚を焦がす。

 

「づぁっちぃ!?」

 

「サブ!」

 

「バラ!! 女から目を放すな!!」

 

 眼鏡男の言葉にバラはすぐにラミナに目を戻す。

 ラミナはレイピアをバラに向けて突き出そうとしていた。

 

「あの剣の先からズレろ!!」

 

 眼鏡男が叫んで、すぐさまバラは動き回る。

 サブは痛みを耐えて、木陰に隠れる。

 

 ラミナはレイピアを突き出しながら、眉を顰める。

 

(残りの2人……一切能力見せんな。強化系か? それにしても何の能力を使う素振りすらも見せん……)

 

 ノブナガのようにタイマンで威力発揮する能力ならば理解できるが、それが2人もというのは普通ありえない。

 目の前の3人組はかなり長い期間行動を共にしている雰囲気だ。

 眼鏡男がリーダー格であり、他の2人はそれを一切疑問に思っていない様子だった。

 

 そんなグループで能力が被るなど、まずあり得ない。

 

(なら一番考えられるんは……相互協力型能力者!!)

 

 ラミナはサブとバラの役割を判断して、【円】を発動して手負いのサブの居場所を確認する。

 

「!? サブ!! ここから離れろ!! 狙われてる!!」 

 

「逃がさん」

 

 ラミナはククリ刀を投擲して、眼鏡男達を牽制する。

 そして、すぐさまサブがいるところに向けて、レイピアを勢いよく連続で突き出す。

 

 茂みや木の幹に何個も穴が空く。

 サブは勢いよく木陰から飛び出すも、躱し切れずに右脇腹と左脚に穴が空く。

 

「があああ!!」

 

「サブ! くそっ! バラ、撤退だ!!」

 

「分かった!!」

 

「やから、逃がさん」

 

 ラミナは戻ってきたククリ刀をキャッチし、再び投擲しようとしたが、

 

「「ブック!」」

 

 眼鏡男とバラが本を具現化する。

 それを気にせずラミナはククリ刀を投げる。

 

「『左遷』オン! ラミナ!」

 

「『同行』オン! マサドラへ!」

 

 眼鏡男の呪文カードを唱え、光がラミナに当たる。

 すると、ラミナは体が浮かび上がるのを感じた。

 

「ぐっ!」

 

 ラミナはククリ刀を消し、その直後勢いよく空へと舞い上がる。

 

 そして、どこか別の森へと移動させられた。

 

「……ちっ。強制移動の呪文カードか。場所が分からんくなってしもたな……」

 

 ラミナはレイピアを消して、周囲を見渡す。

 もちろん目印など一切ないので、場所など分からない。

 

 ラミナは小さくため息を吐いて、先ほどの連中を思い出す。

 

「1人は確実にしばらく戦線復帰は無理なはずやけど……。中々厄介な連中やったな。ゴンとキルアは見つかっとったら、ヤバかったかもしれんなぁ」

 

 サブとバラの能力は結局分からなかったが、それでもオーラ量や【流】の動きはかなりのものだった。

 ゴンでは間違いなく誰にも勝てないだろう。キルアでも、念を使った戦いの場合は厳しいと言わざるを得ない。

 

「あいつらが何モンか確かめようにも呪文カードはなし。けど、向こうはうちの名前も確認しとったし、あの呪文カードの使い方からして、攻略組なんは間違いなさそうやなぁ」

 

 ラミナは腕を組んで、小さく眉間に皺を寄せる。

 とりあえず、ラミナは再び周囲を見渡して、高い樹を探す。

 

 見つけた樹の一番上まで登って、周囲を見渡す。

 

 辺り一面、森と山で、少し離れた場所に海も見える。

 

「……街は一切見えんなぁ。まいったなぁ……」

 

 目的地も定められず、仲間に連絡する手段もない。

 ラミナは小さくため息を吐いて、とりあえず山に向かって移動することに決めたのだった。

 

 

 

 その頃、マサドラ近くの森。

 

「サブ、どうだ?」

 

「……ああ、問題ない。悪い、ゲンスルー。独占してた『大天使の息吹』を……」

 

「構わんさ。別になくなったわけじゃない」

 

 サブの怪我は完治していた。

 『No.17 大天使の息吹』は対象者の怪我や病を完治させることが出来る。

 カード化枚数制限はたった3枚で、ゲンスルー達は例の呪文カードを集めていた集団を皆殺しにして奪ったカードを『複製』で独占していたのだ。

 

 それを今回、1枚使用してしまったのだ。

 

「バラ、どうだ?」

 

「駄目だ。『複製』出来ねぇ」

 

「……可能性があるのはツェズゲラか。くそっ!」

 

「こればっかりは仕方ない。これは決めてたことだ。『俺達の誰かが瀕死の怪我を負えば使う』っていうのはな。それに他にも独占してるカードもある。大きな問題はない」

 

 ゲンスルーは自責の念に駆られるサブを慰める。

 事実、3人は『大天使の息吹』を独占した時に、話し合いで決めていたことだった。

 

 なので、使ったことにゲンスルーとバラに後悔はない。

 

「それにしてもあの女……何者だ?」

 

「さぁな。ただ、俺達も少し油断していたな。ここは念使いが揃う場所だ。手練れがいてもおかしくはない。ニッケス達や他の雑魚共ばかり相手にしてからな。勘が鈍っていたかもしれん」

 

「確かにガチな戦闘なんて、ここ数年やってなかったからな」

 

 ゲンスルーの言葉にバラとサブも頷く。

 このゲーム内では念を使った戦闘は、あくまで最終手段。

 

 女1人で、カードも全く持っていなかったラミナを『ゲーム初心者』としてしか見ておらず、実力を度外視していたゲンスルー達のミスである。

 これまで会ったプレイヤー達もほとんどがゲンスルー達より弱い事も、慢心した要因でもある。

 

「とりあえず、あいつにお礼するのは後だ。あいつに拘って、ツェズゲラ達に先を越されたらたまったもんじゃないからな」

 

「だな」

 

「ああ、分かってるさ」

 

 サブとバラも頷いて、再びゲームクリアに向けて動き出したのであった。

 

 

 

 その翌日の夜。

 ラミナはようやく街に辿り着いた。

 

「……変な街やなぁ」

 

 街の真上に巨大なハートが浮かんでいる。

 街の名は【恋愛都市アイアイ】。

 なんでも出会いに溢れている街らしい。

 

 ラミナが周囲を見渡すだけでも、悪漢に襲われている女、貧しい格好で花を売っている女性、泣き崩れている男、ケンカしているカップルなど、ベタなシチュエーションがたっぷりとあった。

 

「……これのどれかが指定ポケットカードになるんか? 面倒やな~」

 

 もちろん大半は大したことないアイテムカードやトラップなのだろうが。

 しかし、それを確認するには関わりを持たないとならない。

 

 ラミナはそれは面倒だと、呆れながら情報屋に向かう。

 途中で倒したモンスター達を換金して、マサドラなどの情報を得るためだ。

 

「マサドラはここから南東に120km。ソウフラビはマサドラから更に南東に200kmだ」

 

「おおきに」

 

 情報屋から出て、飯屋を見つけて食事を摂りながら情報を整理する。

 

「マサドラだけでも、余裕を持って移動して1日くらいか……。ソウフラビは更に2日はかかる、か」

 

 大盛の料理を食べながら、ラミナは思ったより時間がかかることに眉を顰める。

 すると、

 

「お嬢ちゃん、大食いだなぁ! どうだい? 俺と勝負しねぇか?」

 

「飯食う前に言えや、阿呆。帰れ」

 

「君、1人? 一緒にどう?」

 

「いらん。帰れ」

 

「レディ。私ともっといい店で飲み直さないかい? おしゃれなバーがあるんだ」

 

「きもい。帰れ」

 

 何度も声を掛けてくる男連中。

 

 最後には女まで絡んできた。

 

「あんたね! あたしのカレを誑かしたの!!」

 

「盗られる女が悪いし、その程度で靡く男もクズやしいらん。っちゅうか、知らん。誰のことやねん」

 

「あなた! 男達に声を掛けられたくらいでいい気になるんじゃないわよ!」

 

「なっとるように見えるんやったら、目の手術してもらってこいや」

 

「ねぇ、聞いてよ! 私の彼氏が酷いの!」

 

「なら、とっとと殴れや。帰れ」

 

 額を引きつかせ、苛立ちを抑えながら全て撃退していく。

 食べ終えたラミナはさっさと店を出る。

 

「さっさと街出よ……」

 

「おいおい、嬢ちゃん。俺の前をタダで通ろうって――」

 

「じゃかぁしい!!!」

 

「ぶへぇ!?」

 

 ラミナは後ろ回し蹴りを繰り出して、立ち塞がった男の腹に叩き込む。

 男はくの字に吹き飛んで、建物の壁に穴を空けて、建物の中に叩き込まれる。

 

 ラミナはふん!と苛立たし気に鼻で荒く息を吹き、ポケットに両手を突っ込んで歩き出す。

 

 そのまま街を出て、森の中で野宿することにした。

 

「……ジンの奴、どんな街考えとんねん……」

 

 大樹の太い枝に寝転びながら、製作者のジンに恨み言を呟く。

 恋愛都市とは言え、あそこまで出会いが多すぎるとウザイだけである。

 

「あそこに除念師がおらんことを願うだけやな……」

 

 あんな街に滞在できる者などと関わりたくはない。

 絶対に変態か変人だと確信するラミナであった。

 

「問題はマサドラまで行って、どうするかやなぁ。……呪文カードでも買うてみよか」

 

 どうにかして、マチ達に連絡を取りたい。

 

「……マサドラで少し様子見るか。シャル達も来るかもしれんし。……ゴン達に会わんように気をつけないかんな」

 

 そう判断したラミナは夜明けを待って、マサドラを目指すのだった。

 

 

 

 それから更に数日後の1月8日。

 

 ゲームの外では、キルアがハンター証をビーンズから受け取っていた。

 

「おめでとうございます」

 

「サンキュ」

 

 ハンター証を受け取ったキルアは、すぐに建物を出る。

 

「さてと……またここからバッテラの城まで戻らないといけないのか……」

 

 ここからヨークシンまで数日かかる。そこからバッテラの城まで1日近く。

 帰るだけでも手間も金もかかる。

 

「まだ兄貴から頼んだモンも届かないし」

 

「それならここにあるぞい」

 

「!!? じ、爺ちゃん!?」

 

 背後に突然現れたゼノに、キルアは反射的に飛び退く。

 

「久しぶりじゃのぅ、キル。………ふむ。中々に成長したようじゃの」

 

「……まぁね」

 

「ほれ、これがミルキに頼んでいた物じゃ」

 

 ゼノはポケットから2つのヨーヨーを取り出して、キルアに渡す。

 キルアはやや混乱したままでヨーヨーを受け取る。

 

「あ、ありがとう……」

 

「1個50Kg弱はあるらしいぞ。鳥での運搬はちと厳しかったようじゃ」

 

「だからって、なんで爺ちゃんが?」

 

「せっかくじゃからお前の顔を見ようと思っての。ハンター試験も合格したようじゃし、祝いに飯でもどうじゃ?」

 

「うん……いいけど……」

 

 ゼノの提案に大人しく付いて行くキルア。

 

 2人は高級アイジエン料理屋に入って、料理を頼む。

 

「どうやら【発】の方向性が決まったようじゃの」

 

「うん。まぁ、まだまだ実戦じゃあ使えないけどね」

 

「確か……ラミナからの報告では、お前は儂やシルバと同じ変化系じゃったの」

 

「爺ちゃんと親父も?」

 

「うむ。まぁ、オーラ量が増えれば、出来る事も増えよう。変化系能力はオーラ量に大きく依存するでな」

 

 届いた料理を食べながら、キルアが家を出てからの事を聞くゼノ。

 キルアもゼノから色々ヨークシンでの裏話やヨークシンを出てからのラミナの話を聞かせてもらう。

 残念ながら、今どこにいるかは教えてもらえなかったが。

 

「カルトの旅団入りなんて、よく許したね」

 

「あいつが自分から言い出したことじゃしの。良い経験になると思うてな。あ奴も伸び悩んでおったし、家におっても儂らじゃ甘やかしそうじゃからな。ならば、ラミナがおる今の旅団なら、そこまで問題ないと判断した」

 

「また依頼が出たらどうするの?」

 

「その時はその時じゃ。まぁ、少し前にラミナと儂らが繋がっておるとバレたからな。儂らにはもう依頼はこんじゃろ」

 

「ふぅん」

 

 食事を終えたキルアとゼノは店を出る。

 すぐにでもヨークシンに戻りたいと言ったキルアにゼノは、

 

「最後に少し儂と遊んでいかんか? どれだけ成長したか、見せてみろ」

 

「いいの?」

 

「どうせ今は暇じゃしの。せっかくじゃし、儂の念も少し見せてやろう」

 

 そして、街外れで模擬戦を始めたキルアとゼノ。

 

 しかし、やはりキルアは躱すだけで精一杯で、【発】を試す暇もなくゼノの【発】を必死で躱し続けるのだった。

 

「じ、爺ちゃん!! ちょ、ちょっとタンマ!?」

 

「なんじゃ情けない。それではラミナに追いつけんし、カルトに追い抜かれるぞ?」

 

「ぐっ……!」

 

「ほれ、次行くぞ。【龍星群】」

 

「げっ!!!」

 

 そして、キルアは1時間もせずにオーラが尽きて倒れ伏す。

 

「まだまだじゃの。念ばかりでなく、体術の方も修行を怠るでないぞ。本当にカルトに追い抜かれてしまうぞ? あ奴はラミナの暗殺術も間近で見て、直接鍛えてもらっとるからのぅ」

 

「……ぐ……」

 

「じゃ、儂は帰るぞ。小遣い、ここに置いとくからの」

 

「……」

 

「ちなみにラミナじゃったら、今のでも余裕で反撃してくるじゃろうな。あ奴の能力は中々に厄介じゃぞ? イルミから聞いた話では、更に希少な能力を持っとるようじゃしの」

 

「希少……?」

 

「なんでも瞳の色が変わると特質系になるらしい。しかも、相手の【発】を無効化し、【練】や【堅】を貫けるらしい」

 

「なっ……!?」

 

「あ奴も旅団団長並みに手強い。……団長が念を使えるようになって2人で組まれたら、儂とシルバの2人でも勝てるかどうか分からん」

 

「っ……!」

 

「じゃから、しっかりと精進せぃ。婚約者に腕っぷしで勝てぬと、とことん尻に敷かれてしまうぞ?」

 

「ぐっ!? だ、だから、俺はあいつと結婚する気はないって!!」

 

「もったいないことを言うのぉ。実力も含めて、あれだけ良い女はおらんぞ? 見た目もいいし、家事も出来る。面倒見もいいし、執事達からもすこぶる評判も良い。別に殺しに飢えてもおらん。ゾルディック家とか関係なく、あ奴は嫁としても引く手数多になるぞ?」

 

 ゼノの言葉にキルアは黙り込むしかなかった。

 ゼノはその様子に苦笑して歩き出す。

 

 その背中を見送ったキルアは、置かれた小遣いを手に取って小さくため息を吐く。

 

「はぁ……。変化系ってあんな能力まで作れんのかよ……」

 

 キルアは立ち上がって、体の汚れを落とす。

 

「……良い女、か。……分かってるっつぅの」

 

 そうボヤいて、キルアは街に向かって歩き出す。

 

「……今日は泊まろ」

 

 そう、呟いて。

 

 

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