暗殺者のうちが何でハンターにならなあかんねん   作:幻滅旅団

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#70 ブンサン×ト×ソウグウ

 2月中旬。

 

 幻影旅団はルビキュータに集まっていた。

 

「全っ然見つかんねぇじゃねぇか。お前ら、真面目にやってんのか? あぁん?」

 

 フィンクスが苛立ちを隠さずに、腕を組んでラミナ達を睨みつける。

 それにノブナガも青筋を浮かべて、

 

「そっちだって見つかってねぇだろうが。カードだって57枚って、まだ半分じゃねぇかよ」

 

「んだとぉ……!」

 

「んだよ……!」

 

「やめなよ、2人とも」

 

「そうやで。んなこと言い合ったって状況は変わらんで」

 

「それに団員同士のマジ切れご法度だよ」

 

 一触即発状態のフィンクスとノブナガに、シャルナークとラミナが呆れながら止め、シズクは掟を口にして宥める。

 マチやフランクリン達もため息を吐く。

 

「でも、実際にこっちは手詰まりだね」

 

「こっちも今以上にペースが早められそうにねぇしな」

 

「だから、ささと90種類以上も持てる連中からカード奪えばいいね」

 

 フェイタンが気だるげに言う。

 ラミナもため息を吐いて腕を組み、

 

「それは最終手段や。まずはやっぱ除念師を見つけんと話にならん」

 

「だな」

 

「けど、もう私の力じゃ見つけられないかもしれないわ」

 

「どうして?」

 

 顔を顰めたパクノダの言葉に、コルトピが首を傾げる。

 ラミナも顔を顰めて、

 

「アベンガネの名前は知っとっても、顔を知らん奴ばっかでな。どうやら、ゲームに入ってすぐ例の集団に参加したみたいで、ゲンスルーに仲間をやられたせいで顔見知りがほぼ皆無の状態や。それと流石にパク姉のことがプレイヤー内で広まって来とる」

 

「それが何の問題があるんだよ?」

 

「ゲンスルーがボマーっちゅうことも広がってきとってな。なんでも、ゲンスルーも妙に馴れ馴れしく声をかけてきて、体に触れてきたらしいで? それで怪しんどる連中が出始めて、パク姉も警戒され始めとる」

 

 ニッケス達がほぼ同時期に一斉に殺されたことから、ゲンスルーの能力が広範囲、または相手に直接付与する能力であることは予測出来る。

 それに思い至った何人かが、『ならば、標的の体に触ることが能力発動条件の1つなのではないか?』ということにも思い至るは当然のことだろう。

 

 それが広がっていき、多くの攻略を進めているプレイヤー達は相手に触られることを忌避するようになってきていた。

 そのため相手の記憶を読むために相手の身体に触る必要があるパクノダも、警戒対象となってしまったのだ。

 

「なるほどな……」

 

「ちなみにお前らも好戦的なプレイヤーとして、目立ってきてるぞ」

 

 シャルナークが顎に手を当てて考え込むと、ボノレノフがフィンクス達を手で指して言う。

 正確にはフィンクスとフェイタン、フランクリンの3人が、であるが。

 

 しかし、それでも各グループがゲーム内で目立ち始めているのは事実だ。

 普通ならば、別に知ったことではないのだが、

 

「もしアベンガネって奴が除念師だった場合、俺達やパクノダから身を隠す可能性があるか……」

 

「そうなると、ちょっと面倒だね」

 

 フランクリンが面倒気に眉を顰め、シズクが顎に指を当てて言う。

 それにマチ達も同意するように頷く。

 

「っちゅうても、これ以上は更にチームを分けるくらいしか手がなぁ」

 

「そうだな」

 

 ラミナとシャルナークが悩まし気に顔を顰めて、考え込む。

 マチ達も悩まし気にするが、ラミナとシャルナーク以上の案が出るわけもない。

 

「少しチーム分けよか」

 

「どう分けるの?」

 

「シャル達は引き続き、指定ポケットのカード集め。ただ、出来る限り2チームに分けて行動してんか? 出来ればすでに目立ってきとるフィンクス、フェイ、フランで組んでほしいわ」

 

「3人を陽動……というか暴れさせて、俺達は別組として指定ポケットカードを集めながら情報収集ってわけだな」

 

「そ。んで、うちらも分かれる。ただ、抜けるんはうちだけや。残りは引き続き5人で行動してほしい」

 

「理由は?」

 

「パク姉が目立って来とる以上ノブナガとボノも少なからず噂になっとるやろ。やから基本的にカルトの能力で探していくしかない。パク姉達は囮。マチ姉はカルトのお守り」

 

「ちょっと」

 

「まぁ、カルトも大分強ぉなってきたから、そこまで一緒におらんでもええけどな」

 

「ラミナはなにすんだよ?」

 

「アベンガネがパク姉の情報を知っとったら、パク姉を見つけたらすぐに街から逃げ出す可能性がある。やから、うちは他の街で待ち構えて、探す。フィンクス達やゲンスルーからも逃げると考えれば、攻略にあんま関係ない街や村に来る可能性が高いでな」

 

「なるほど」

 

 ラミナの提案にパクノダや他の者は頷く。

 マチは不服そうに腕を組んで、眉間に皺を寄せているが。

 

「うちもゲンスルーに会っとるしな。正直、今ここで一番バレたらあかんのはカルトや」

 

「カルトの能力が最後の砦だものね。これまで対抗されたら、本当にプレイヤー狩りに従事するしかないわね」

 

「出来れば、それは避けたいんよな。絶対ゴン達が出しゃばってくるし」

 

 パクノダの言葉に、ラミナが頷いてうんざりした表情を浮かべる。

 

 プレイヤー狩りを本格化すれば、間違いなくゴン達が文字通り飛んでくるだろう。

 ゴンはともかく、キルアは殺せないし、ビスケという不確定要素がいるので出来れば面倒事は避けたい。

 正直、今もゴン達の耳にフィンクス達の情報が届いてそうで気が気でない。

 

 カルトもいる以上、キルアは殺せない。

 カルトがキルアを本当に止められるのかも定かではない。

 なので、まだゴン達とぶつかり合うのは避けたいのだ。

 それに他のプレイヤー達とも結託されたら、それもそれで厄介である。

 

「カルトのプレイヤー名を変えさせたから、ゴン達が接触して来るのはうちのはずや。やから、うちが離れとる方がまだカルトの邪魔にならんと思う」

 

「ああ、そっちもあったか」

 

「まぁ、そっちはあくまでそうなればええなっちゅう感じやけどな。お前らが先に見つかったら、意味ないでな」

 

「確かにそうね」

 

「見つけても殺さんとってや。うちやカルトに押し付けてくれてええからな」

 

「分かった。じゃあ、早速行動再開だ」

 

 シャルナークの号令と同時に動き出す旅団。

 

 ラミナはマチ達とも別れ、1人でルビキュータを出る。

 本を具現化して、呪文カードを取り出す。

 

「『再来』オン! リーメイロ」

 

 呪文カードを発動して、ラミナは【城下都市リーメイロ】へと移動する。

 

「……さて、こことその周囲の町や村が狙い目やな。ここらへんの指定ポケットカードはAランク以下ばかり……。手に入りやすいモンばっかりや。ゲンスルーはもうすでに手に入れとるはずやし、他にも手に入れとる連中はぎょーさんおるはず。なら、ゲンスルー達がここに現れる可能性は低い」

 

 なので、アベンガネが隠れる理想的な環境でもあるはず。

 そして、今は噂になっていたパクノダもいなくなっているので、ここに再び現れる可能性は十分にある。

 

 と言っても、ラミナはアベンガネの顔も知らないのでどうしようもないが。

 とりあえず、ラミナは大通りに移動して、料理屋の外に置いてある席に座って料理を食べながら周囲の気配を探る。

 

 1時間ほどそこで過ごし、代金を払って店を出る。

 路地裏に入って本を取り出し、『念視』を嵌めてプレイヤーリストを確認する。

 

 残念ながらアベンガネの名前はなかった。

 

「……デカい街は避けとるんかもしれんな」

 

 そう考えたラミナは、情報屋に行きリーメイロ周辺の小さな町や村の場所を訊ねる。

 

「リーメイロ周辺には3つの村と町がある。北東に6km、東に7km、北西に9kmだ」

 

「おおきに」

 

 場所を確認したラミナは東を目指してリーメイロを出る。

 駆け足で移動して、30分もせずに村へと到着する。

 

 村はありふれた農村で、泊まる宿がある様には見えない。

 

「……逆に言えば、潜める場所には最適とも言えるな」

 

 住民を説得さえすれば、隠れ住むことは出来る。

 農業の手伝いなどをすれば、住民に紛れ込むことも出来るだろう。

 このゲームの厄介なところはNPCであっても、想像以上にやりとりは人間臭いところがあるということだ。仕事を紹介してくれるし、家も提供してくれる。

 基本的に攻略に関わらないNPCでないかぎり、会話は比較的自由なのだ。

 そのせいで攻略も脱出も諦めたプレイヤー達も問題なく仕事に就けて、住むことが出来る。

 

 なので、人探しが非常にめんどくさいことになっている。

 

「ここまで自由度高いんやったら、独自にネット環境作り上げそうな奴出そうやけどなぁ」

 

 誰1人パソコンに詳しい者がいないというのも、違和感がある。

 もちろん島中にネット環境を整えるのは無理だろうが、街の一角程度なら作り上げていてもおかしくはないとラミナは考える。

 

「……流石にそこまではジン達も許さんか。それに部品も揃わんか。ケーブルとかに関しては、この島にあるとは思えんし。外に出て持ち込めるなら、別にネットなんぞ造らんでええもんな」

 

 すぐに自分で否定して、ラミナは除念師探しに意識を戻す。

 

 村を一通り回って再びプレイヤーリストを確認するが、やはり名前は出なかった。

 

「ハズレか……。まぁ、しゃあないわな。頭が切れる奴なら、ここに来る可能性も考えとるやろうしって、あ~……」

 

 ラミナはあることに思い至って、右手で顔を覆う。

 

「……ゲンスルー達はすでにアベンガネをプレイヤーリストに登録しとる。っちゅうことは、アベンガネからしたら別にマサドラやドリアスにおっても見つからんかったらええだけやないか……」

 

 サブとバラは分からないが、サブとバラは例のグループにいなかったようなので、そもそもアベンガネの名前や顔を知らない可能性が高い。

 つまり、アベンガネにとっては知り合いに会わないようにすることが最も注意すべき点となる。

 しかし、知り合いとなると、すでにプレイヤーリストに登録されているはずだ。なので、近くにいようと見つからなければ、問題はない。

 

 『追跡』のカードは近距離呪文カード。なので、目の前にいなければ効果はない。

 遠距離の呪文カードで他のプレイヤーの居場所を探すものはない。

 つまり、身を隠せば比較的逃げられる可能性は高くなる。

 

 『同行』『磁力』『交信』を使われれば、逃げようがないが。

 しかし、そこまでして追いかけるのはゲンスルーくらいだろうし、ゲンスルーも気づいていたとしても『あの程度の雑魚ならば放置していてもいい』と考えるかもしれない。

 普通ならば、どうやって能力から逃れたのか確認するために追い詰めて、話を聞いたら殺すだろうが。

 

「変装は……出来るか。このゲーム、ある程度の服は手に入るし」

 

 ブランド物は無理だが、このゲーム独自の服屋は営業している。

 変装しようと思えば、問題なく出来る。

 金さえどうにかすれば、であるが。 

 

「とりあえず、他の町も見て回ろか」

 

 ラミナは他の町にも素早く移動して、アベンガネを探しに行く。

 しかし、やはりアベンガネは見つからず、ラミナは他の街へ行くことにした。

 

「呪文カードはないから徒歩で移動やけど……。ここから一番近いんがアイアイっちゅうんがなぁ」

 

 【恋愛都市アイアイ】。

 ラミナはあの街は出来る限り避けたかったが、行かないわけにもいかない。

 あの街はパクノダやカルトの能力とは相性が悪い。

 

 街は常に騒がしく、人が入り混じる。

 あれだけ(ムカつく)出会いに溢れた街だ。

 必要なカードを手に入れれば、さっさと出て行くプレイヤーも多いだろう。

 なので、隠れ場所に適していると言えば、適している。

 

「……はぁ~……」

 

 ラミナはため息を吐いて、徒歩でアイアイに向けて移動を始めるのであった。

 

 

 

 その頃、ゴンとキルアはソウフラビにいた。

 

「しかし、勧誘って言っても難しいな……」

 

「呪文カードはあまりないぜ。引き入れに失敗は許されないと思った方がいい」

 

 そう言うのは、ゴレイヌというゴリラ顔のプレイヤーである。

 

 ゴンとキルア、ビスケは他のプレイヤーから声をかけられて、ある集まりに参加した。

 それはクリアしそうなゲンスルー達をどうにかして阻止したいという名目で、情報交換をするものだった。

 集まりに参加したゴン達は、『ゲンスルーの能力』と『No.75 奇運アレキサンドライト』の情報を提供し、カード交換をしたりしてゲンスルー達への対策を考えることになった。

 

 そこで一番手っ取り早いのは、ゲンスルー達が持っていないカードの独占だった。

 しかし、ほとんどのカードはすでに他のグループが所持しているモノばかりで、唯一残っていたのは『No.2 一坪の海岸線』だった。

 

 集まった者達全員でソウフラビに移動し、情報収集を行おうとした。

 すると、なんとあっという間に情報が集まり、それどころかイベントが発生したのだ。

 

 今まで誰も見つからなかったのが不思議でしょうがなかったが、メンバーの1人が『15人以上で『同行』を使ってソウフラビに訪れるのが条件なのでは?』と推測した。

 そして、海賊の拠点へと向かい、レイザーという頭目と出会う。

 

「1チーム15人。1人1勝で、先に8勝した方の勝ち。バトル形式はスポーツだ」

 

 ということで、早速始めたがキルア達はメンバーの実力不足を即座に見抜いて、再度挑戦するための情報収集へと切り替えてわざと負けることにした。

 

 敗北して追い出されたメンバー達だが、『むしろこのまま放置していた方が、ゲンスルー達への対策になる』と言って解散することになった。

 そうして残ったのは、ゴン達3人とゴレイヌの4人となったのだった。

 

 今は作戦会議でソウフラビの飯屋にいた。

 

「確かにゲンスルー達はこのままじゃ手にいられないだろうが、だからって放置してたら俺達だってクリア出来ないし、手に入れた瞬間ゲンスルーに襲われちまう」

 

「だよな。むしろ、ゲンスルー達がまだ他に手に入れるカードがある今のうちにゲットしとくべきだ」

 

 ゴレイヌとキルアはお互いの意見に同意する。

 

「悪いが、俺の方には心当たりはない……と言うと語弊があるか。強い奴はいるが、多くても2,3人のチームだ。確実にカードの取り合いで揉める」

 

 ゴレイヌの言葉にゴン達は頷くも、すぐに眉間に皺を寄せて唸り始める。

 

 『一坪の海岸線』のカード化限度枚数は3枚。

 15人以上のグループでは絶対に分けられない。

 

 仲間割れをほぼ確実に誘発するイベントと言えるのだ。

 なので、仲間集めは慎重な人選と交渉が求められる。

 

「って言っても、俺達もそこまでプレイヤーと関わってきたわけじゃないしな」

 

「顔と名前が一致しないプレイヤーって多いよね」

 

「となると……やっぱラミナだよなぁ」

 

 キルアはラミナの顔を思い浮かべて顔を顰める。

 ラミナがゲーム内にまだいるのは、毎日確認していた。カルトに関してはずっと名前の横が暗いままなので、ゲームにいないと考えられるが、何故かラミナはずっとゲーム内にいた。

 

「強いのか?」

 

「かなりね。俺とゴンが束になって挑んで、ようやく互角ってとこ」

 

「なら、誘うだけ誘ってみればどうだ?」

 

「ん~……けどなぁ……」

 

「どうしたんだ?」

 

「ラミナは幻影旅団の団員なんだよ」

 

「げ……!!」

 

 ゴレイヌは旅団の名前に目を見開いて固まる。

 

「な、なんでそんな奴と知り合いなんだよ……?」

 

「会った時はまだ違ったんだよ。団員になったのは最近。まぁ、ずっと前から旅団とは知り合いだったけどさ。同郷だって言ってたし」

 

「旅団がこのゲームになんで参加してるんだよ……」

 

「知らねぇよ。それを聞いて答えてくれるとも思えないし」

 

「だけど、仲間にすれば凄く心強いよ。知らない人を誘うくらいなら、まずラミナに声をかけるべきだよ」

 

 ゴンはラミナを誘うことを提案する。

 しかし、キルアとゴレイヌは顔を顰めて、やや難色を示す。

 

 そこにビスケ(猫被りモード)が声を上げる。

 

「彼女は殺し屋でもあるのでしょう? ならば、報酬や取引を持ち掛ければ可能性はあるのでは?」

 

「……そうかもだけど……」

 

「とりあえず、そいつの目的がゲームクリアかどうか確認したい」

 

「どうやって?」

 

「それが出来ねぇから困ってんじゃん」

 

 ビスケの言葉にキルアは渋り、ゴレイヌがラミナの目的を探ることを提案する。

 ゴンやキルアが首を捻り、それにゴレイヌが少し呆れた表情を浮かべて、

 

「『念視』を使えよ」

 

「「「?」」」

 

「そいつがゲームクリアが目的なら、カードをそこそこ集めてるはずだ。違う目的ならカード集めには興味はないはずだ」

 

「なるほど……。ゴン」

 

「うん」

 

 キルア達は納得して、早速『念視』を本に嵌める。

 プレイヤーリストが表示されて、ラミナがまだゲーム内にいることを確認して呪文を発動する。

 

 ラミナのカードデータがすべて表示される。

 

「指定ポケットは0だよ」

 

「フリーポケットは食料、着替えに金。後は移動用の呪文カードと『念視』だけか……」

 

「なら、まだ誘いやすいな。クモってところは不安だが、顔見知りのお前達が問題ないって言うなら任せるさ」

 

「とりあえず、会ってみようよ。なんでここにいるのかも知りたいし」

 

「教えてくれるとは思えないけどな」

 

「そうかもしれないけど、聞かないと分かんないんだから。会うしかないじゃん」

 

「まぁ、そうだけどさ……」

 

「とりあえず、他の候補者も考えようぜ。そいつは1人なんだろ?」

 

「流石に他の団員がいたら無理だな。けど、もう俺達じゃ他に思いつく奴はいないぜ?」

 

 キルアは腕を組んで、顔を顰める。

 そこに再びビスケが声を上げる。

 

「会ってない人でなら、心当たりあります」

 

「誰だ?」

 

「ツェズゲラさん」

 

 ツェズゲラの名前にゴン達は納得の表情を浮かべる。

 しかし、ゴレイヌが眉間に皺を寄せて、

 

「あいつらもボマー組と同じくらいのカードを集めてる。あまり仲間にしたくはないな」

 

 ゲンスルー達のゲームクリアを阻止するためでもあるのに、ツェズゲラがゲームクリアしてしまったら意味がない。

 

「と言っても、俺達誰もツェズゲラと会ってないから交渉しようがないんだけどな」

 

「あはは……そうだね」

 

 キルアの言葉にゴンは苦笑いを浮かべるしかなかった。

 

 そして、翌日。

 

 ゴン達はラミナに会いに行くことにした。

 

「じゃ、行くよ」

 

「ああ」

 

「『同行』オン! ラミナ!」

 

 呪文カードを発動して、ゴン達は空を飛ぶ。

 

 

 

キュイイイイィィン!!

 

「……ん?」

 

 ラミナは近づいてくる音に、空を見上げる。

 

 すると、ラミナから5mほど離れた湖の傍に光が墜落する。

 

 そこから現れたのは、ゴン達だった。

 ゴン達はラミナの姿を捉えた瞬間、大きく目を見開く。

 

 

 ラミナはパンツ1枚のほぼ全裸姿だった。

 

 

「なぁ!?!?」

 

「わ、わぁ!? ゴ、ゴメンナサイ!!」

 

「す、すまん!!」

 

 キルア、ゴン、ゴレイヌは顔を赤らめ、慌ててラミナに背を向ける。

 

「な、何で裸なんだよ!?」

 

「水浴びしとったら悪いんか」

 

 ラミナは見られたことなど意にも介さず、顔を顰めて腕を組む。

 

「で? いきなり揃いも揃って、何の用やねん?」

 

「いいから先に服を着なさい、服を。少年達には目の毒だわさ」

 

 ビスケが呆れながらラミナに言う。

 

「そっちから押しかけてきといて、随分な言いようやな。たかが裸ぐらいで騒ぎ過ぎやっちゅうねん」

 

 ラミナは小さくため息を吐きながら、足元に置かれていた服を手に取り身に着けて行く。

 

 赤のタンクトップに黒の短丈革ジャン、同じく黒のホットパンツにブーツを履き、まだ水気を帯びた髪を靡かせたままにする。

 

 着替え終わる頃には、ゴンはすでに平常に戻り、ゴレイヌはまだ少し気まずそうに視線を逸らし、キルアは未だ顔を赤くして思いっきり顔を逸らしている。

 

 

「そんで? 知らん顔が増えたみたいやけど、今更なんの用やねん?」

 

 

 ラミナは訊ねると同時に雰囲気が刃のように鋭くなり、ゴン達は一瞬で気を引き締め直される。

 

 ゴン達は僅かに冷や汗を流しながら、ラミナに交渉を持ちかけるのだった。

 

 


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