暗殺者のうちが何でハンターにならなあかんねん   作:幻滅旅団

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お待たせしました。

ちなみに拙作では、ラミナさん介入により、ツェズゲラとゲンスルーはカード交換を行っていません。お互いに警戒し合って、直接会うことを避けた感じですね。
ご了承ください。


#72 レンシュウ×ノチ×カチコミ

 ゴン達は『一坪の海岸線』ゲットに向けて、各々得意な競技を決めて練習を始めていた。

 更にレイザーの不安はあるものの、これ以上は実力者を集めてもカードの取り合いになる可能性が高いので、残りは現実に帰りたい連中で固めることにした。

 

 ちなみにラミナは、

 

「まだ7競技も分からんの残っとるんやろ? やったら、知らん奴が来た時のために選ばんでおくわ。まぁ、一番は2,3競技目あたりでレイザーを引っ張り出すことやけどな」

 

 と言って、メンバー集めや練習を終えるまでの間、のんびりしていた。

 マチやシャルナークにはすでに連絡を入れており、注意するように伝えている。

 

 マチはまたキルア達と行動すると聞いた瞬間、「あ?」と背中に怖気が走るほど低い声を出したが、カルトの事と除念師探しの事を念押しして何とか引き下がってもらった。

 

 今はツェズゲラとゴンがバレーボールの練習をしている様子を、樹の根元に座って昼食の準備をしていた。

 料理をしているのは単純に手持ち無沙汰だからである。

 ゴンから「念を見てよ!」と言われたが、「ビスケの前で言うなや阿呆」と拳骨を叩き込んでビスケの前に放り投げた。

 

 その後、ビスケが笑っていない笑みを浮かべて、キルアを巻き込んで2人がぶっ倒れるまで修行という名のお仕置きを受けていたが。

 

 今はシチューを作りながら、他に何の料理を合わせようか考えている。

 そこにビスケやキルア、ゴレイヌ、ロドリオットが近づいてきた。

 

「おお、美味そうだな」

 

「なんか意外だな。料理が出来るとは……」

 

「助かりますね。他の方々は料理できませんから」

 

「別に出来んでもええやろ。金が稼げれば外食でええし、うちはあくまでガキの頃の延長線なだけや」

 

 そう言いながらシチューを温めるだけの段階まで仕上げ、次にステーキを焼き始めるラミナ。

 その手際は流れるように淀みがなく、相当料理慣れしていることが窺える。

 キルア達は鍋を囲むように座り、料理の出来上がりを待っていると、

 

「そう言えば、ゲンスルー達はどれくらい集めとるんや?」

 

 と、ロドリオットに訊ねる。

 

「朝に確認した時は95種だな。『一坪の海岸線』『奇運アレキサンドライト』『浮遊石』『身代わりの鎧』。後半の2つは俺達が独占してる。で、俺達が欲しい『闇のヒスイ』はゲンスルー達が独占してるな」

 

「……それってどっちにしろゲンスルー達と戦り合わんといかんのとちゃうか?」

 

「だろうな。連中は『闇のヒスイ』のゲイン待ち対策もしてるはずだ。どうにかして連中からカードを奪わないといけない」

 

「『奇運アレキサンドライト』は別に誰かが独占しとるわけやないんやろ? 他の奴から奪っとったら、後はゲンスルーにお前ら狙われて終わりちゃうか?」

 

「そこは対策次第だな。戦闘になったら確かに苦しいが、やり様は色々ある」

 

「……なんや、もう少し報酬上乗せして今のうちにゲンスルー達を狙た方がええ気がしてきたわ」

 

「そうなったら、ゴンは確実に怒ると思うぜ」

 

「やろな。相変わらず面倒で偏屈な考え方しとるやっちゃ」

 

 キルアの言葉にラミナは肩を竦めて、調理に意識を戻す。

 ステーキも焼き上がって、サラダを用意したら完成である。

 

「ゴン達も呼んできて、好きに食べぇ」

 

 ということで、ゴンとツェズゲラも特訓を中止して、ラミナが作った料理を食べる。

 

「凄い美味しいよ!」

 

「そらよかった」

 

「いや、マジで美味いな。ステーキの味付けとか店で食べても違和感ないぞ」

 

 ゴンやゴレイヌは手放しで褒め、キルアは感想は言わないがおかわりをしてひたすら食べ続けていた。

 ゼノの『意外と家庭的』という言葉を思い出して、妙に感想を言うのが恥ずかしくなっていたのだ。

 

 食事を食べ終えたゴン達は、再び特訓を再開し、仲間集めに街へと向かった。

 キルアはゴンがバレーボールの練習をしているので、ビスケに念の修行をつけてもらうのも気が引けたので、1人で修行をしていた。

 ビスケとラミナは各々のんびりとしていた。

 

 1時間ほどしたところで、キルアがラミナに歩み寄ってきた。

 

「なぁ?」

 

「ん?」

 

「今、カルトってどれくらい強くなったんだ?」

 

「そうやなぁ……。まぁ、筋力や体術はまだキルアが上やけど、身のこなしや念は大分伸びたな。念はキルアよりも間違いなく上や。お前の【発】は知らんから、戦ったら分からんけど」

 

「……俺とあいつ。戦ったらどっちが勝つと思う?」

 

「……ん~……今ならカルトやろな」

 

「っ! ……理由は?」

 

「念アリやったら、実戦経験がカルトの方が多いでな。うちや団員とも組み手しとるし。うちらは【発】無しやけど、それでも2人同時に相手して15分は戦えるようになってきよったしな」

 

 キルアは歯軋りして、悔しさを露わにする。

 ラミナはその様子に小さくため息を吐く。

 

(眼中になかった弟が、自分より強くなったことに納得出来んってところか? 念無しやったら、キルアの方が上やけどな)

 

 だからと言って念は人によって能力も得意分野も違うのだから、変な対抗心を燃やしてもあまり意味はないのだが。

 ラミナはそう思いながら、未だに悔し気に顔を顰めているキルアを見つめる。

 

 すると、

 

「俺と組み手してくれない? 【発】も使っていいからさ」

 

「なんでやねん」

 

「暇だろ? 別に念を教えてもらうわけじゃないし」

 

「だからって、なんで【発】まで使わなあかんねん」

 

「俺の方が体術上だし、それくらいじゃないと緊張感でないだろうからさ」

 

 明らかにカルトへの対抗心と強がりにしか聞こえない。

 聞き耳を立てていたビスケですら呆れを浮かべており、ラミナも同じく呆れていた。

 

(まぁ、今のキルアの実力を見るんはええ機会ではあるか。カルトもキルアと比べようとするし)

 

 ヨークシンから半年も経っている。

 念の熟練度や、あわよくば【発】も確認できるかもしれない。

 

「まぁ、軽くならええやろ。そっちも【発】を使うてええし、なんやったら殺す気でええで」

 

「……ああ」

 

「場所変えよか。ゴンが気になって、特訓に集中出来んようになるやろうし」

 

 そう言ってラミナとキルアは、近くの開けた草原に移動する。

 ビスケもさりげなくついてきており、ラミナが視線を向けるが肩を竦めて躱されてしまう。

 ラミナはため息を吐くも、本気でやる気はないので無視することにした。

 

(うちの実力も含め、キルアの動きも把握したいっちゅうところか)

 

 キルアと向かい合ったラミナは、ビスケの目論見をそう判断する。

 

 そして、意識を切り替えて、両手に武器を具現化する。

 

 右手には白い剣身の片刃の短剣。鍔はなく、柄元には太極図が刻まれている。

 左手には右手と同じ形の短剣が握られているが、剣身は黒く、赤い網目状の線が描かれていた。柄元には同じく太極図が刻まれている。

 

「っ! (天空闘技場の時とは違う武器……! 本当に複数の武器を具現化できるのか)」

 

 キルアは素早く構え、油断なくラミナを見据える。

 

 ラミナが一対の短剣を手の中で回し始めたかと思うと、ラミナの姿がブレる。

 

「!!」

 

 キルアは一瞬目を見開くも、すぐに視線を左に向ける。

 そこにはラミナが短剣を構えていた。

 

 キルアは右に跳んでラミナに体を向けようとするが、直後背中に衝撃が走る。

 

「がぁっ!?」

 

 キルアは前方に勢いよく吹き飛び、ラミナへと飛んでいく。

 そして、飛んで来たキルアにラミナは右脚を振り上げて、キルアの左頬を蹴り飛ばす。

 

「っっ!!!」

 

 キルアはガードも間に合わず、横に吹き飛んで地面を転がる。

 両手で地面を押して空中に跳び上がり、体勢を立て直して着地する。

 

「っつぅ……! !?」

 

 キルアは頬を拭いながらラミナに目を向けて、その光景に目を見張る。

 

 そこには2人のラミナが存在していた。

 

(あれは……【ダブル】……!?)

 

 天空闘技場で見たカストロの能力。

 

(けど、この能力には弱点がある。戦いで負った傷までは再現できないことと、高い集中力がいること。いくらラミナが具現化系だからって、放出系と操作系が不得意なことには変わりはない。武器の具現化まで含めると、かなりの容量を使うはず……。前に見た短刀、クラピカが見たって言ってた武器、更に爺ちゃんが言ってた能力を考えると……ありえない。絶対的に容量が足りないはず……!)

 

「ぺっ……」

 

 ラミナの能力が分からずに思考が混乱する。そこに口の中で鉄の味を感じて、血が混じった唾を吐く。

 口元を拭って、構え直す。

 

「……ダブルってかなり高度な技術なんじゃなかったっけ?」

 

「そうやな。ただ、これは天空闘技場で見た【ダブル】とは少しちゃうし、もちろん絡繰りがあるで」

 

「へぇ、どんな?」

 

「さぁな。頑張って考えてみぃ。まぁ……」

 

 2人のラミナは同時に姿がブレて、キルアを挟み込むように移動する。

 左に現れたラミナは左手の短剣を振り下ろし、右のラミナは右手の短剣を逆手に握って振り抜く。

 

 キルアは慌てて後ろに下がって躱して距離を取るが、右のラミナはそれを読んでいたかのように振り抜いた勢いを利用して、キルアに詰め寄る。

 

「ぐっ!」

 

 キルアは逃げ切れないと悟って右ストレートを繰り出して、ラミナの顔を狙う。

 しかし、その拳は顔をすり抜けて、ラミナの顔が煙のように霧散する。

 

「なっ!? (オーラで創った偽物!? じゃあ、本物はもう1人の方!)」

 

 キルアは左に回り込もうとしてるラミナに顔を向けて、飛び掛かろうと足に力を籠める。

 すると、分身と思っていたラミナの顔が一瞬で元に戻り、無防備なキルアの右脇に右蹴りを叩き込んだ。

 

「がっ!?!?」

 

 キルアは再び吹き飛んで、地面を転がった。

 本物だと思っていたラミナが霞のように姿を消す。

 

 キルアは脇腹を押さえて咳込みながら立ち上がる。

 

「ごほっ! ごほっ! な、何が……」

 

 偽物だったはずなのに、攻撃を入れられた。

 

(こっちの攻撃は無効化して、向こうの攻撃は当たる……!? そんなことまで出来るのか!?)

 

「……やっぱ、お前に【発】はまだ早かったか」

 

 そう呟いたラミナは武器を消す。 

 

「【流】と【練】の意識がまだまだやな。それに……相変わらず格上相手には基本距離を取って、攻撃はギリギリまでせんなぁ」

 

「!!」

 

「念を用いた戦闘で、後手に回るんはあんまり褒められたもんやない。まぁ、そういう能力やったら別やけどな」

 

 反撃型の能力はダメージを負うことが条件であることが多いため、基本的に相手の攻撃を待ち受け、見切るスタイルの者が多い。

 しかし、そうでなければ自分のペースに引き込むために攻め続けるのが定石である。

 

 ダメージを負わせれば、相手の能力を制限できる可能性がある。

 そして、一番大事なのは相手が能力を使う前に倒すのが理想だ。なので、キルアの慎重な戦い方は、念を用いた戦闘においては不利に陥りやすい。

 更に、

 

「オーラ量やオーラの攻防力移動が上の相手に『受け』は致命的やろ」

 

 そう言いながらラミナは、キルアの目の前に一瞬で移動する。

 キルアは歯軋りをしながら再び右ストレートを繰り出そうとするが、ラミナは【肢曲】を使って分身を生み出しながらキルアの左から背後へと回り込み始める。

 

(速っ……!)

 

 自分が使う【肢曲】よりも倍は速いことに顔を顰めるキルア。

 どれが本物かを見極めようと集中し、視線と顔を素早く巡らせる。

 

 しかし、相手は同じ技術を持つラミナ。

 

 キルアの顔が僅かに背後に向き、視線が左端に移動した瞬間、キルアの左斜め前にいたラミナが動き出す。

 キルアも反射的に体が反応して左腕で顔を守ろうとするが、ラミナは【蛇活】で左腕を蛇のようにしならせてキルアの腕をすり抜け、キルアの顎を打ち上げる。

 

「っっ!!?」

 

 キルアは顔を跳ね上げながら仰け反り、後ろに倒れる。

 

 ラミナはそこで動きを止めて、キルアから距離を取る。

 そして、ビスケに顔を向けて、キルアを指差す。

 

 観戦していたビスケは小さくため息を吐いて、キルアへと歩み寄る。

 キルアは気絶してはいなかったが、脳震盪を起こして起き上がることが出来なかった。

 

「う……あ……」

 

「思い知ったかい? 今のアンタじゃ、まだまだあいつとの念を使った組み手は3年早いわさ」

 

 ビスケは両手を腰に当てて、言い放つ。

 

「念だけじゃない。体術、筋力、反射、速さ、そして思考の速度。どれを取ってもあいつの方が上だわさ。焦ったところで、その差は埋まらないよ」

 

「ぐ……!」

 

「今日は念の修行も含めて、ここまで。しっかりと体を休めなさい」

 

 ビスケはそう言って、ラミナへと向き直って歩み寄る。

 

「それにしても……。ゴン達から聞いてた時から思ってたけど、アンタの能力は面白いわね。具現化した武器に、それぞれ独自能力を組み合わせるのは常套手段ではあるけど……」

 

「さっきの能力みたいなんは普通出来へん、か?」

 

「出来ないとは言わないけど。1000人に1人出来たら御の字だわね。具現化と【ダブル】の組み合わせだなんて。しかも、ただの【ダブル】じゃない」

 

「ま、ぶっちゃけ今みたいな正面戦闘は不向きやし、応用が出来んから使い辛いんやけどな」

 

 ラミナはビスケの言葉に肩を竦める。

 

 先ほどの武器は『干将莫邪(かんしょうばくや)』という二刀一対の短剣である。

 能力名は【虚実投影】。

 オーラで形ばかりの分身を作り出して操り、分身と自身を入れ替えることが出来る『虚像と実像を使い分ける』能力である。姿勢は変わらないので、パッと見ではいつ入れ替わったのかは分からないのが利点ではある。しかし、入れ替わるには分身の位置を視認していないといけないため、奇襲などには少し不向きとなってしまった。

 

「まぁ、キルアの場合、問題は他にあるけどな」

 

「そうだわねぇ……」

 

 ビスケはため息を吐いて、未だに倒れたままのキルアを見る。

 しばらくそっとしとくべきだと判断した2人は、のんびりしていた場所に歩きながらキルアの問題点を話し合う。

 

「あの子はどうにも格上相手には逃げ腰一辺倒になるわね。多分、鍛えた人間のせいなんでしょうけど」

 

「やろうな。ゾルディック家の後継者として目ぇかけられとるし、最初は頭に針を埋め込まれとったくらいやしな」

 

「針って……」

 

「ゴンに出会うまでのあいつは、結構悲惨やったからな。ちょっとやそっとじゃ、あの癖は抜けんと思うで」

 

「だろうね」

 

「まぁ、そこらへんはアンタに任せるわ」

 

「簡単に言ってくれるわねぇ」

 

「あいつの弟を鍛えとるうちが言うてもな。意地を張るだけやろ」

 

「まぁ、今の感じだとそうだわね」

 

 ビスケはため息を吐き、ラミナは肩を竦めるのだった。

 

 その後、キルアは夜になるまで黙り込んでおり、その様子にゴンが心配していたがビスケが「しばらくほっときなさい」と言いつける。

 翌日からは特に組み手を頼み込んでくることもなく、キルアは修行を続けながら考え込むようになるのだった。

 

 

 

 そして、ラミナやツェズゲラ達を仲間に引き入れて1週間。

 

 いよいよ『一坪の海岸線』ゲットに向けて、海賊の拠点へと足を踏み入れたのであった。

 

「再挑戦、ってことでいいのか?」

 

「ああ」

 

 海賊達のボスであるレイザーの言葉に、ゴンが頷く。

 

 ラミナはレイザーを見て、

 

(……ゲンスルーより強い。こらぁ、戦闘系競技やったら、うちかビスケやないと無理やな)

 

 下手したら、再挑戦すら厳しくなる可能性がある。

 念を使い、相手を攻撃することが許されるのならば、死ぬことだってありえるのだから。

 

 どうやら最初の競技は、前の時と同じでボクシングだった。

 これはツェズゲラの仲間のビリーが難なく勝利を収め、その後のボウリングとフリースローもロドリオットとケスーが勝利を収める。

 

「よーし、これで3連勝だね!」

 

 ゴンは喜ぶが、ラミナは僅かに眉間に皺を寄せる。

 

(ここでボスを引っ張り出したいところやな……。突っついてみよか)

 

 ラミナは前に出て、レイザーを見据える。

 レイザーとその手下、そしてゴン達もラミナに目を向け、

 

「これ以上そっちの雑魚が出てきても時間の無駄や。どうせこっちが6,7勝したら、お前が帳尻合わせで出てくるんやろ? さっさと出てこいや」

 

「ほう……」

 

「なんだと……!」

 

 ラミナの挑発にレイザーは笑みを浮かべ、手下の1人が怒りを露わにするが、

 

「引っ込んどれや雑魚。……殺すぞ」

 

「!!?」

 

 ラミナが殺気を放って黙らせる。

 手下は一瞬で体を硬直させて、顔を青くして冷や汗が噴き出した。

 

「どうや? ボス猿」

 

「……いいだろう」

 

 ラミナの挑発にレイザーが乗る。

 ゴン達が顔を引き締めてレイザーを見据えると、レイザーの手下で顔が少し火傷している巨漢の男が前に出る。

 

「ちょっと待てよ。俺はそのガキとやるって決めてんだ」

 

「おい! ボポボ!」

 

 仲間の1人がボポボを止めようとするが、ボポボは帽子を脱ぎ捨てる。

 

「ここからは好きにやらせてもらうぜ。おい、小僧! 表に出ろ!」

 

「表? 土俵じゃないの?」

 

「遊びは終わりだ。なんなら今ここで殺してやろうか?」

 

「ボポボ!!」

 

 ボポボはキルアに挑みかかろうとするが、その前にレイザーが声を上げる。

 

「そいつは契約違反だな、ボポボ。ムショに逆戻りだぜ」

 

 レイザーの言葉にボポボは唾を吐く。

 

「ぺっ! 知るかよ! このクソゲームに付き合うのももうヤメだ!」

 

(おいおい……。雇用囚人で、設定無視してええんかい……)

 

 ラミナはレイザーの言葉からボポボの素性に気づいて、呆れるしかなかった。

 ボポボは他の手下達に顔を向けて、

 

「他に俺に乗る奴はいねぇか!? 全員でかかればこんな奴、一捻りだぜ!」

 

 ラミナはため息を吐いて、スローイングナイフを具現化してボポボに投げようとした瞬間、レイザーが念弾を生み出してボポボの顔面に投げつける。

 ボポボは防ぐことも出来ず、脳味噌と目玉をぶちまけながら死んで倒れる。

 

 その光景に手下達と数合わせのプレイヤー達は顔を真っ青にする。

 

「タブーを破ったら厳罰。こいつに言ってなかったか?」

 

「いや……ちゃんと……」

 

「ふん! 殺されないとでも高をくくっていたか。馬鹿が! まぁ、俺が殺さなくても、あいつに殺されてたろうがな」

 

 レイザーはラミナに顔を向けながら言う。

 ラミナは肩を竦めながら、スローイングナイフを消す。

 

「んで? 勝負の外でそいつは死んでもうたけど。どういう扱いになるんや?」

 

「お前達の勝ちでいいさ。数合わせだろう連中の中から選んでくれても構わないぜ」

 

「あっそ。キルア、誰か選んどいて」

 

「じゃあ……あんた」

 

 キルアはレイザーの行為に震えているプレイヤーの1人を選ぶ。

 それに選ばれなかったプレイヤー達が怖気づいて、文句を言い始めた。

 

「な、なんだよアイツら。仲間で殺し合ってんじゃねぇかよ……」

 

「じょ、冗談じゃない! あんな奴らと戦えないよ!」

 

「待て待て。戦うのは俺達だけだ」

 

「ああ、俺達が負けた場合、アンタ達は戦わずに不戦敗でいい」

 

「ホントだな!?」

 

「俺達は絶対戦わないぞ!」

 

(あんなんでよぉハンター専用ゲームに挑んだもんやな)

 

 ラミナは数合わせプレイヤー達の言い分に呆れながらも、レイザーに向き直る。

 

「で、アンタの競技は?」

 

「ああ。俺の競技は……8人ずつで戦う、ドッジボールだ!!」

 

 競技名を告げると同時に、レイザーの足元から胸元に1~7の数字が記された人型念獣が7人出現する。

 

 それを見たラミナは、

 

(やっぱ、最後は1人で帳尻合わせられる競技か。しかもさっきの攻撃と念獣から考えて、こいつは放出系。厄介やな)

 

「そっちに勝てば8勝っちゅうことでええやんな?」

 

「その通り。この競技に勝った方が、勝負に勝つ。分かりやすいだろ?」

 

「ちっ……! やっぱ人数が足りんかったか」

 

 ラミナは舌打ちしてゴン達を振り返り、数合わせのプレイヤー達を見る。

 それにプレイヤー達は後退る。

 

「あんたらから2人。出さなあかん」

 

「む、無茶言うなよ!?」

 

「さっきみたいな玉、当たったら死んじまうよ!!」

 

「命の方が大事だ! 俺は帰る!」

 

「ちょ、ちょっとタンマ! 今、考えるから!」

 

 キルアやロドリオット達が慌てて宥めて説得するが、それでも効果はない。

 ボポボが死んだ光景が頭から離れないのだ。

 

「俺達だけでやろうよ」

 

 そこにゴンが険しい顔をしながら言う。

 

「命がけなんだから、やれる人だけでやろう。こっちは6人でもいいでしょ?」

 

 ゴンはレイザーに訊ねる。

 しかし、

 

「いや、そうはいかないな。8人対戦がルールである以上、数はしっかりと合わせてもらう。そうでなければ15人集めさせた意味がないだろう?」

 

「まぁ、そらそうや」

 

「そっちは1人じゃないか! ふざけるなよ!」

 

 ラミナは納得するが、ゴンは怒りを露わにして声を荒らげる。

 

「仲間だったんだろ? ボポボって人が殺されなきゃいけないほど、何をしたって言うんだ!」

 

「……はぁ~」

 

 ラミナは盛大にため息をつく。

 

「ボスへの反乱は普通打ち首やろ。犯罪者相手に何を怒っとるんや……」

 

「けど……!」

 

「どうせアイツはここを追い出されたら、死ぬまで刑務所暮らしか死刑やぞ? せやろ?」

 

「ああ。あいつは強盗殺人に強姦殺人、他のも合わせると確定してるのは11件だったかな」

 

「え!?」

 

 ラミナとレイザーの言葉に、ゴンとキルアは目を見開く。

 

「ボポボを始め、手下連中はこのゲームのために雇われた死刑囚やろうな」

 

「そうだな。絶対服従を条件にハンターが雇うことはままある。ボポボは命令違反に脱走の扇動までしていた。極刑は当然。むしろここで罰さないと雇い主が罰せられる」

 

 ツェズゲラが詳しく説明して、ゴンとキルアは感心するように頷く。

 

「恐らくレイザーはゲームマスターだ」

 

「ゲームマスター?」

 

「ゲームを作った連中の1人ってことさ」

 

「え!? じゃあ……じゃあ!」

 

 ゴンはレイザーに顔を向けて、

 

「ジンもグリードアイランドにいるの!?」

 

 と、問いかける。

 ゴレイヌがジンという名前に首を傾げるが、レイザーはジンの名前を告げられたことにゴンの素性を悟る。

 

「そうか……。お前がゴンか……」

 

「うん!」

 

 ゴンが頷いた直後、レイザーが纏うオーラが爆発したように力強く噴き上がる。

 

「お前が来たら手加減するな……と言われてるぜ。お前の親父にな」

 

 口を吊り上げてレイザーが言い放つ。

 ラミナはそれに思わず天井を見上げる。

 

(あんの放蕩親父……! ガキが気になっとるんやったら、さっさと会えや!)

 

 心の中でジンに愚痴りながら、これでは数合わせ連中はもう駄目だろうと悟った。

 案の定、数合わせ連中は逃げ出し始めた。

 

 その背中を睨みつけていたラミナは、レイザーに顔を向ける。

 

「メンバーは念獣でもええんか?」

 

「ああ。今いるメンバーが生み出した奴なら問題ない」

 

「なるほど。(っちゅうても、【虚実投影】を使うても後1人足らん。それに【虚実投影】は他の武器が使えん)」

 

 腕を組んで策を考えるラミナ。

 そこにゴレイヌが、

 

「なら、問題ないぜ」

 

 そう言って、背後に白毛と黒毛のゴリラの念獣を生み出した。

 

「ほぉ……」

 

「これで2人追加だ。8人揃ったってことでいいよな?」

 

「ああ」

 

 レイザーが頷いたことで、メンバーの問題も解決した。

 

 いよいよ、決戦が始まる。 

 

 




もちろん『干将莫邪』は未来の英霊さんのものです。
説明は次回に。
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