暗殺者のうちが何でハンターにならなあかんねん   作:幻滅旅団

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#73 ドッジボール×ハ×オソロシイ

 ドッジボールコートに入ったゴン達8人。

 

 レイザーがルールの説明を始める。

 

「ゲームは外野1名、内野7名でスタートする! もちろん内野が0になったチームが負けだ! コート内の選手は敵の投げたボールに当たればアウト! 外野に出る! ただし!! スタート時に外野にいた選手を含め、チームでたった1人! 一度だけ内野に復活することが出来る!」

 

「また厄介な……」

 

「これもまた仲間割れを誘ってやがるな……」

 

 ラミナとゴレイヌが顔を顰める。

 

「これは『バック』を宣言すれば、いつでも戻れる!! 極端な例としてはスタートと同時に『バック』を宣言すれば、8人が内野でプレーすることが出来るというわけだ。ただし、外野が1人もいない状況で球が外野に出た場合は、相手側の内野のボールとなるので注意されたし!!」

 

「まぁ、そりゃそうだな」

 

「さらに!! ここでは当たり判定として『クッション制』を採用している!! 例えば俺の投げたボールがゴンに当たって跳ね返り、隣の少年に当たって床に落ちた場合、2人ともアウトになる!!」

 

「けどその場合、俺がゴンが当たったボールをキャッチすれば、両方セーフだろ?」

 

「その通り!! しかし、俺の投げたボールがゴンに当たって跳ね返り、その球がダイレクトで俺のチームの選手に当たって床に落ちた場合は、アウトになるのは俺のチームの選手となる!!」

 

「ふむ……」

 

「その場合、そいつがキャッチすれば、アウトになるのはゴンだな?」

 

「いかにも!」

 

 ゴンはすでにルールの把握が出来なくなっていた。

 

「……えーっと」

 

「とりあえず、お前は捕るか避ければいいんだよ」

 

 キルアはゴンが器用に跳ね返すなど出来ないと分かっているので、簡単に纏める。

 そこにラミナがレイザーに質問する。

 

「念の使用はどこまでアリや?」

 

「もちろんアリだ。ただし、攻撃性、致死性のある能力で選手を直接攻撃するのは禁止だ!!」

 

「つまり、具現化した武器で相手を斬りつけるのは無しっちゅうことやな?」

 

「そうだな。ただし、ボールに攻撃するのはアリだ」

 

「例えば、相手の動きを阻害する能力は?」

 

「それがダメージを与えない能力ならばOKだ」

 

「なるほど……。これ以上念獣を増やすことは?」

 

「禁止だ。今いる8人を超えることは認められない。もちろん俺も同様だ」

 

「俺も質問。外野にいる選手でもアウトは取れるの?」

 

「ああ。ただし、内野に戻れるのは『バック』を宣言した選手のみだ」

 

「まぁ、そりゃそうだよな」

 

 キルアはレイザーの答えに頷く。

 ラミナも今は特に質問はなくなった。

 

(……フェアではあるし、こっちの念能力も問題なく使えるルールやな。逆に言えば、それでも勝つ自信があるっちゅうことやな)

 

 ラミナはそう考えながら、レイザーが生み出した念獣達を見つめる。

 

(……そこまで強力なオーラを籠められとるわけでもない。レイザーの方がまだまだ強い)

 

 1人であの人数の念獣を生み出すのは、そう簡単なことではない。

 普通ならば生み出すだけで精一杯だ。他の能力まで付与するとなると、絶対的にオーラ量が足りない。

 

(うちが思いつく限りで、このゲームで一番手っ取り早い勝ち方は『ボールの威力を上げる事』や。キャッチさせない、避け切れないボールを投げるのが最善で安全な戦い方やんな。……あいつは放出系……。強化系とも相性はええ……。ボールにオーラを籠めて、ボールを強化するのはお手の物やろな……)

 

 念弾だけで人の頭を破壊するだけの威力だ。

 それと同じだけのオーラをボールに籠めれば、威力は更に上がるだろう。

 

「……下手したら、死人が出るかもしれんな……」

 

「どうした?」

 

 ラミナの呟きが僅かに聞こえたゴレイヌが顔を向ける。

 ラミナはゴンとキルアに顔を向けて、

 

「あいつのボール。注意しときや。多分、捕るだけでも命がけやで」

 

「さっきの念弾を見てれば分かるよ」

 

「あんなもん参考にならん。避け切れん時は【硬】で防ぐんやぞ。……多分、うちらの【堅】なんざ気休めにもならん。【硬】でも骨が砕けるんは覚悟しときや」

 

「……」

 

「外野に出たら、恐らくまともにゲーム続行は出来んと思とった方がええ。レイザーにボールを捕られた時点で、全滅も覚悟しとくべきやろな」

 

 ラミナは真剣な顔でレイザーを睨みつけながら言い放つ。

 その言葉に全員が冗談でも何でもなく、その見込みはほぼ当たっていると理解して息を呑む。

 

 ラミナ達は話し合って、最初の外野をゴレイヌの白い念獣に決める。

 

 すると、外野に『0』と顔に表示された念獣が出現する。

 

『それでは試合を始めます。審判を務めます、No.0です。よろしくお願いします』

 

 最初はジャンプボールでのスタートとなり、審判がボールを抱えてコート中心の円へと歩み寄る。

 ゴンチームからはラミナが、レイザーチームからは背が高い念獣が歩み出る。

 

『スローインと同時に試合開始です! レディー……ゴー!!』

 

 審判が合図と同時にボールを真上に高く投げる。

 ラミナは高く跳び上がるが、念獣は跳び上がらずにコートに戻っていく。

 

「なんやと……?」

 

 ラミナは訝しむも、ボールを自陣コートに弾く。

 ボールはゴレイヌがキャッチすると、レイザーチームはコート奥側に横一列で並び、腰を屈め構える。

 

「先手は譲ってやるよ」

 

「余裕こきやがって……!」

 

 レイザーの挑発にゴレイヌは眉を顰めながら、そのまま勢いよく駆け出してボールを持っている腕を振り被る。

 

「挨拶代わりにかましてやるよ!! どりゃっ!!」

 

 ゴレイヌは気合を叫びながら、ボールを猛スピードで投げる。

 狙ったのはレイザーではなく、『4』と書かれた小さめな念獣だった。

 

『ギシェッ!?』 

 

 念獣はキャッチすることもなく、後ろに吹き飛ばされる。

 ボールは外野の床に落ちる。

 

「おお! やった!」

 

「よーし!! まず1匹!」

 

 ゴレイヌはガッツポーズを浮かべるが、ラミナは今の光景を訝しむ。

 

(……確かに十分な威力ではあるが……避けるどころか、キャッチする雰囲気もなかった?)

 

 アウトになった念獣は外野に移動する。

 しかし、スタート時から外野にいた念獣の傍ではなく、右側面で足を止める。

 

 ラミナはその行動の理由を必死に考える。

 その間にゴレイヌの念獣が、ゴレイヌにボールを戻す。

 

「よっしゃ。もう一丁いくぜ」

 

 ゴレイヌは再び腕を振り被って、投げようとする。

 その時になって、ようやくラミナはレイザーの作戦を悟った。

 

(っ……!! あかん……! 止められへん……!)

 

 レイザーの作戦を止める手段が思い浮かばない。

 結果、ゴレイヌを止めることも出来ず、ゴレイヌはまた念獣にボールを当ててアウトにする。

 

 そして、アウトになった念獣はやはり左側面側に向かう。

 

「よーし、準備OK」

 

 レイザーがそう言った。

 

「あ? 今、なんて言った?」

 

「お前達を倒す準備が整ったって言ったのさ」

 

「……へぇ、面白れぇ」

 

 ゴレイヌはレイザーの言葉を鼻で笑って、再び腕を振り被る。

 ラミナはゴレイヌの体勢や腕の動きから、レイザーを狙っていることを見抜いた。

 

「阿呆!! レイザーちゃう!! 他の念獣や!!!」

 

「!?」

 

 ラミナが叫ぶも、ゴレイヌはすでにボールを投げてしまっていた。

 

「くそっ!!」

 

 ラミナはベンズナイフを具現化して、オーラをボールと繋げるとすぐさま指を鳴らす。

 すると、ボールがベンズナイフに変わる。

 

「「「「!!」」」」

 

 ベンズナイフは勢いよくレイザーへと飛んでいく。

 レイザーは笑みを浮かべたまま、左手を上げる。

 ラミナはボールをキルアに投げ渡しながら、再び指を鳴らしてベンズナイフと自分を入れ替える。

 

「ぐっ!」

 

 ラミナはレイザーにぶつかる前に床を強く押し蹴って真上に跳ぶ。

 天井まで跳び上がったラミナは天井を蹴って、自陣コートに戻る。

 

「……ふぅ」

 

「ほぉ……ナイフと入れ替わる能力か」

 

「今のはルール違反か?」

 

『いえ、問題ありません』 

 

「おい! どういうことだ!?」

 

 ラミナは審判に訊ねて、問題ないと言われてホッと息を吐く。

 そこにゴレイヌ達が駆け寄ってきて、ゴレイヌが詰め寄ってくる。

 ラミナは顔を顰めて、ゴレイヌを見る。

 

「あんなタイミングでレイザー狙うなや。あのままやったら簡単に受け止められて、向こうボールになっとったぞ」

 

「なんだと……!?」

 

「いきなり入れ替わったナイフすら驚くことなく、掴もうとしとった。ボールくらい簡単に受け止めるやろ」

 

 ラミナは地面に転がっているベンズナイフを消して、レイザーを睨みつける。

 

「で、なんであんなことしたんだ?」

 

「そらぁ、ボールを渡さんために決まっとるやろうが。周囲を囲まれとる状況で、ボールを奪われるわけにいかんやろ」

 

「あ? 周囲ぃ?」

 

「あいつらは外野に3人配置するために、わざとアウトになったんや」

 

 キルア達は3方向に配置されている念獣達を見渡す。

 先ほどより妙に威圧感がある気がして、ラミナの推測が外れていないことを悟る。

 

「あの審判の念獣を考えると、あいつの能力はこのゲームに特化しとると考えられる。そうなると、あんな簡単にアウトになるんは違和感しかないわ」

 

「じゃあ、何のために?」

 

「そらぁ、パスを通すためやろな。開始時の状況ではパスは基本1パターンのみ。外野がウロチョロしようが、注意を払うんは容易い。けど、3方向に外野がおれば、最短コースでパスを縦横無尽に回せる。やから、ここでボールを向こうに取られたら、取り返すどころか避けるんも厳しなるで」

 

「……じゃあ、どうすんだよ?」

 

「レイザーは最後の方がええ。内野が0になった時点で勝ち。つまりラスト1人になった時点でレイザーは『バック』を使えん。他の念獣も油断は出来んけど、レイザーに『バック』を言わせるよりマシや」

 

「……確かにそうだな」

 

 ラミナの作戦にツェズゲラも同意する。

 ゴンはやや不服そうだったが、キルアとビスケが押さえ込んでいた。

 

「キルア、ボール寄こせや」

 

「ん」

 

 キルアはラミナにボールを投げ渡す。

 

「お前が投げるのか?」

 

「提案した以上、ある程度責任は持つでな。それに、うちの方がパワーは上やろうしな」

 

 ラミナは片手でボールをリフティングしながら不敵な笑みを浮かべ、レイザー陣に向き直る。

 レイザー達は最初と同じくコート奥で横に並んで構えている。

 

「次はお前か」

 

「そういうこっちゃな。まぁ、メインディッシュは最後にしとくけどな」

 

「ほう……」

 

 ラミナは右手に力を籠めて、ボールを掴む。

 そして、右爪先で軽く床を2,3回叩くと、一瞬で腕を振り被った体勢でコート真ん中まで移動する。

 

 ドン!!!と、床が大きく揺れる程左足を大きく踏み込んで、左足から腰、腰から右肩、右肩から右腕に力とオーラを流し、変形するほど握ったボールにオーラを籠めて、気合と共に投げる。

 

 

つぁらっ!!!

 

 

 空気が爆発したような音を轟かせて、ラミナが投げたボールは高速で『3』と書かれた念獣に迫る。

 

「!! (No.3じゃ無理!!)」

 

 レイザーは一瞬で判断したが、対応は間に合わない。

 ボールは念獣の胸に叩き込まれ、そのまま念獣を押し飛ばしながら背後の壁に激突する。

 

「……これは恐れ入った……」

 

 レイザーは素直に称賛の言葉を呟く。

 ラミナは体を起こしながら、息を吐く。

 

「ふぅー……」

 

「……なんと…いう……」

 

「……ははは……」

 

 ツェズゲラは想像以上の威力に慄き、ゴレイヌは乾いた笑いを浮かべるしかなかった。

 ビスケは素直に感心する表情を浮かべており、キルアやゴンは特に驚くことはない。2人はラミナがゾルディック家の『試しの門』を【4】まで軽く開けたことを知っているからだ。

 

 レイザーの念獣は、壁にめり込んだまま沈黙している。

 ボールは床に転がって、ゴレイヌの念獣が掴み上げる。

 

「よっしゃあ! これで後4人!!」

 

「あの威力なら行けるぜ!!」

 

 観戦していたロドリオット達は盛り上がり、レイザーの部下達は目を見開いて冷や汗をかいている。

 ラミナはボールを受け取って、投げる準備を始める。

 

「さて……どうしたものか……」

 

 レイザーは構えながら、対策を考える。

 

「だがまぁ……あれくらいならば……」

 

 そう呟いた直後、ラミナが振り被ってコートの真ん中に現れる。

 レイザーはラミナが投げた瞬間に、コースを予測する。

 

 すると、残った3体の念獣が混ざり合って体が巨大化する。

 

「はぁ!?」

 

 キルアは驚きの声を上げる。

 『15』と記された念獣は、ラミナの剛速球を見事に受け止めてキャッチする。

 

「マジかい……」

 

「審判! あれ、アリかよ!?」

 

『アリです』

 

「合体もアリなら、分裂もアリなのか!?」

 

『はい。ただし、人数をオーバーするのは駄目です』

 

「あ~……増やしたらあかんのは聞いたけど、合体はあかんとは言うとらんなぁ。あいつの念獣なんやし、そら合体も分裂も自在やわな」

 

「そういうことだ」

 

 レイザーは薄ら笑いを浮かべたまま念獣からボールを受け取ると、念獣を『2』と『13』に分裂させる。

 ラミナのパワーを考えて、1体は合体させたままにしとくべきと判断したのだった。

 

「さて……正念場やな」

 

「ああ」

 

 ラミナは後ろに下がって、腰を据える。

 他のメンバーも構えて、いつでも動けるように備える。

 

 すると、レイザーはボールを受け取った位置から、ゆっくりと腕を振り被る。

 

「? あんな位置から?」

 

「パスに注意しろ!」

 

「もち!」

 

(流石に向こうからのボールに【妖精の悪戯】を使えんな。うちもあいつのボールを受け止められるかどうか分からんし、オーラは無駄に出来ん。自分らで躱してもらおか)

 

 ゴン達はレイザーの構えを訝しむも、油断は出来ないと気を引き締める。

 ラミナも流石に余計なことに意識を割く余裕はないので、ゴン達には自分で対処してもらうことにする。

 

 そして、レイザーが腕を振り抜いた瞬間、

 

 先ほどのラミナとほぼ同じ威力のボールが、猛スピードでゴレイヌの顔面目掛けて放たれる。

 

「っ! (そこまで力入れたように見えんかったのに……!)」

 

 ラミナはゴレイヌに防ぐことは不可能と判断する。

 

(横からなら逸らせるか……!?)

 

 ラミナは駆け出して、右拳に【凝】でオーラを集中させる。

 すると、

 

「【白の賢人(ホワイト・ゴレイヌ)】!!」

 

 ゴレイヌの身体がオーラに包まれた直後、ゴレイヌの姿が白い念獣に変わる。

 

「っ!」

 

 ラミナは僅かに目を見開いて、足を止める。

 白い念獣の顔面にボールが直撃し、頭部が吹き飛んで体もそのまま砕けて消える。

 

 ボールは大きく弧を描いて跳ね返り、レイザーの元へと戻る。

 

「ナイスリバウンド」

 

 レイザーは後ろを振り返ると、そこには膝をついて荒く息を吐くゴレイヌの姿を捉える。

 

「自分と念獣の位置を入れ替える能力か」

 

「はぁ……はぁ……」

 

 白い念獣は戻ることなく、そのままオーラが霧散していく。

 

(念獣が粉々に砕けた。それはすなわち、ゴレイヌがレイザーの攻撃を見て受けたイメージそのものだわね)

 

 ビスケ、ラミナ、ツェズゲラはゴレイヌの精神的ダメージは大きいと判断する。

 少なくとも、白い念獣の方はしばらく再び生み出すことは出来ないだろう。

 砕かれたイメージはそう簡単に克服できるものではないからだ。

 

(まぁ、死なれるよりはマシやな。もしやられとったら、3人減って外野無しになっとった)

 

 ラミナはゴレイヌの行動は十分及第点と判断する。

 そこにキルアが審判に声を掛ける。

 

「この場合、アウトなのは白い念獣の方だよな?」

 

『はい。しかし、ゴレイヌ選手が内野に戻るには『バック』が必要となります』

 

「つまり、念能力での交代はOKなんやな?」

 

『その通りです』

 

 審判の言葉に満足したラミナとキルアは、頷いて再びレイザーの攻撃に備える。

 

「さぁ、次行くぞ!」

 

 レイザーは今度は外野にいる念獣にさっきほどではないが高速で投げる。

 

「来よった……!」

 

「速っ……!」

 

 すると、念獣達は受け流すようにスピードを落とさずにパスを回し始める。

 内野ではレイザーがパスの向きを変え、スピードを維持させる。

 

 ゴン達はもはや内野中央でボールの軌道を追いかけるしかなかった。

 まだゴン、キルア、ビスケ、ラミナは素早く反応しているが、黒い念獣はもちろんのことだがツェズゲラも僅かに反応が遅れ始めていた。

 

「ぐっ……!」

 

「速すぎ……!」

 

(黒い念獣とツェズゲラは無理。……賭けやけど……)

 

 ラミナは右手にブロードソード、左手に圏を具現化する。

 それにキルア達やレイザーは僅かに目を見開く。

 

(また新しい武器!?)

 

(ほぅ……。この状況を打開できると……。面白い!)

 

 レイザーは笑みを深めて、更にパスの速度を上げる。

 そして、左外野にいた念獣が、パスを奥側の念獣に回した瞬間、

 

 ラミナが全力で床を蹴り抜いて、パスコースに入り込む。

 

「ふっ!!」

 

 右手に握るブロードソードを高速で振り上げ、ボールを掬い上げるように受け流す。更にすぐさま振り下ろし、今度は打ち上がりそうになるボールを抑え込むように当てる。

 その後も目にも止まらぬ速さでブロードソードを振りながら、ボールの進行方向に動く。

 

 高速で飛んでいたボールは、徐々にスピードを落としていき、最後にラミナが体を回転させながら左腕でボールを抱え込んで内野中央に跳び下がる。

 

「はぁ~~……しんどぉ……」

 

 武器を消して右腕を解すように振りながら、大きく息を吐いてボヤく。

 あまりの離れ業にキルア達は唖然とし、レイザーもこれには小さくではあるが驚きの表情を浮かべていた。

 

「腕は無事なのか?」

 

「ギリギリやったけどな。一度念獣を経由すると、一段階スピードもパワーも下がりよるから上手くいったわ」

 

 それでも【意地を貫く拳】で体を強化してなければ、止めきれなかっただろうとラミナは内心舌を巻く。

 右腕も限界の速度で剣を振っていたので、あれ以上速めることも、パワーを上げることも出来なかった。

 更に【周】にも回すオーラも限界だったので、下手したら砕けていたかもしれない。

 

 かなりギリギリだったことに、ラミナは内心歯を食いしばる。

 

(次も上手く出来る自信はない……。このチャンスを無駄には出来んな)

 

 しかし、まだ右腕は僅かに痺れており、先ほどと同じようなボールは投げられないだろう。

 

(けど、それやとあの念獣共にまた合体されて捕られるだけやな。……しゃあないか)

 

 ラミナは小さく息を吐いて、ボールをキルアに渡す。

 

「ちょっと持っとって。準備するわ」

 

「準備?」

 

「審判。ちょいタイム」

 

『はい』

 

 キルアは首を傾げながらボールを受け取る。

 ラミナはキルアの疑問に答えずに、審判に告げて一度コートの外に出る。

 

 そして、上着とブーツを脱いで、タンクトップと裸足姿になる。

 キルア達は一体何の準備かと更に首を捻る。

 

 ラミナは自然体を取り、目を瞑って呼吸を整える。

 

 数秒ほど深呼吸しながら両足を肩幅まで開く。

 そして、突如大きく目を見開いて、

 

 

はあ!!!

 

 

 気合を叫ぶと同時に、全力の【練】を発動する。

 床に大きくヒビを入れて、膨大なオーラが噴き出す。

 

 キルア達は目を見開いて、体に叩きつけられる圧に体を踏ん張る。

 

「な、なんてオーラ量だ……!」

 

「す、すごい……!」

 

「……化け物かよ……」

 

「……凄まじいの一言だわね……。(完全にベテランハンタークラスのオーラ量だわ。これでもまだオーラをコントロールできるギリギリで抑え込んでいる……。つまり、コントロールすることを諦めれば、まだ増えるってことだわね)」

 

 ツェズゲラ、ゴン、キルアは冷や汗を流し、ビスケは顔を鋭くしてラミナの実力を見極めようとする。

 ラミナは恐ろしいオーラを纏ったままコート内に戻る。

 四肢の筋肉はやや膨れ上がり、血管が浮かび上がっている。

 

「ボール」

 

「……ああ」

 

「少し離れときぃ」

 

 ラミナはボールを受け取って、ラインギリギリまで下がる。

 そして、左手に圏を具現化し、右腕にボールを抱えると、陸上のクラウチングスタートの姿勢を取る。

 

「……ふぅー……」

 

 そして、ゆっくりと息を吐き、更に全身に力を籠めて行く。 

 オーラが増えることはないが、明らかに【練】の密度が上がっていることをその場にいる全員が理解する。

 

 レイザーも流石に笑みを消し、真剣な表情で構える。

 

(豹……。いや……猛虎か龍、だな)

 

 レイザーがそう思った瞬間、ラミナが更に身を屈める。

 

「っ!! 来る……!!」

 

おおおおお!!!

 

 レイザーも体に力を入れて、【練】を発動する。

 

 ラミナは体育館内の空気を震わせるほど叫び、両脚の筋肉が一瞬更に膨れ上がったかと思うと、右腕に抱えていたボールをコート中央天井スレスレまで高く放り投げる。

 直後、床を砕きながら一歩前に踏み出して、更に全力で跳び上がりながら体を全力で捻る。

 

「なっ!?」

 

「何をする気だ……!?」  

 

 ロドリオット達は目を見開いて、ラミナの動きを見守る。

 

 ラミナは回転しながら体を横にし、ボールに近づいて行く。

 

「まさか……!」

 

「蹴る気……!?」

 

 キルアとビスケはラミナが何をする気か気づき、目を見開く。

 

 その言葉通り、ラミナは膨大なオーラを全て右足に集中させる。

 

おおおおお!!!

 

 叫びながら、右脚を全力で振り上げる。

 

 そして、叩きつけるようにボールを蹴りつける。

 

 ボールは大きく凹み、破裂する直前で大砲を撃ったかのように爆音を轟かせながら放たれた。

 

 音速かと思うほどの超高速で放たれたボールは、強烈な回転をしながら彗星の如くレイザーへと迫る。

 

(これは……!! 角度的に跳ね返すのは無理! しかし、捕るにしても確実にコート外まで吹き飛ばされる!! 念獣は……貫かれる!!)

 

 レイザーは即座に回避行動をとる。

 一番動きやすかった後ろに反射的に下がる。

 

 しかし、強烈な回転をかけられたボールが、ホップしてレイザーを追う様に顔面に向かって飛んで来た。

 

「っ!!? ちぃ!!」

 

 レイザーは両腕を上げて、顔の前で交えてオーラを集中させる。

 直後、爆発したかのような衝撃がレイザーに襲い掛かった。

 

 レイザーは後ろに吹き飛ばされて壁ギリギリまで転がっていき、ボールは真上に跳ね上がって天井に当たる直前に破裂した。

 

「ボ、ボールが爆発した!?」

 

「なんて威力だよ……!?」

 

「あの威力だ! レイザーもただじゃすまないだろ!!」

 

 ラミナはコート中央に着地して、息を整える。

 

「ふぅ……。さて、どうなった?」

 

 ラミナは圏を消して、レイザーに目を向ける。

 誰もがレイザーの動きに注目していると、仰向けに倒れていたレイザーが両脚を上げて、反動をつけて飛び起きて立ち上がる。

 

「なっ!?」

 

「ふぅー……。流石に今のは焦ったな」

 

 レイザーはそう言いながら、両腕の状態を確認する。

 僅かに腫れているだけで、骨折などはしていなかった。

 

「……ちっ。(【硬】で防ぐのと同時に、体ごと上半身を反らして衝撃とダメージを減らしよった……! バケモンが!)」

 

 ボールが真上に跳んだのがその証拠。

 もし受け流せていないのであれば、確実にラミナ達のコート側にボールが飛んできているはずだ。

 

「あのボールを完璧に受け流されるんは、ちょいと自信無くすんやけどなぁ」

 

「そう言うな。あれ以外どうにも出来ないと思ったし、それでも上手く行くかは分が悪い賭けだったんだぜ? 俺が運が良くて、お前は少し運が悪かっただけさ」

 

「その『少し』が、今はデカすぎるでなぁ」

 

「それは、まだ分からんさ。で、だ。『バック』!」

 

 レイザーはバックを宣言し、内野に戻る。

 

「これでこっちは後がなくなってしまったな。なりふり構っている……場合じゃない、か」

 

 レイザーはそう言いながらも、不敵な笑みは消えていない。

 そして、ラミナも汗を流しながらも不敵に笑う。

 

「……それはこっちも、やな」

 

 

 命がけのスポーツは、まだまだ続く。

 

 

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