暗殺者のうちが何でハンターにならなあかんねん   作:幻滅旅団

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#81 ブキ×ノ×オヒロメカイ

 不敵に笑ってこちらを見るラミナ達に、戦闘服を着た警備員の何人かは馬鹿にされたように感じて怒りを覚える。

 

「舐めやがって……!」

 

「レオルデ隊長。あんな連中、俺達だけで十分っすよぉ」

 

「自分達だけで殺します」

 

 ガタイの良い金髪オールバックの男が歯を食いしばってラミナ達を睨み、赤モヒカンの若い男が手の中でコンバットナイフを回しながら言い、黒髪をツーブロックに刈り上げた女性が目を鋭くして宣言する。

 他の者達も頷いて一歩前に出ると、その後ろで腕を組んで仁王立ちしている黒の角刈りの50代くらいの男、レオルデが口を開く。

 

「待て。奴らを侮るな。奴らは只者ではない」

 

「しかし……!」

 

「隊長さんの言う通りだ~ね~。あいつら、かなりヤバイ連中だ~ね~」

 

 レオルデ達の背後の階段に座っていた草臥れた茶色のシャツを前開きにして素肌を晒し、下は草臥れたジーパンにサンダルを履いた男が、レオルデの言葉に同意する。

 紫色のくせっ毛の髪で、左目が前髪で隠れている曲者感を醸し出している。

 

「どういうことだ? バギィ」

 

「あの女、少し前にハンターサイトで見た事あるだ~ね~。ベテランの殺し屋で、幻影旅団と繋がりがある奴だ~ね~」

 

「幻影旅団だと!?」

 

「それに、他の連中も少し前にヨークシンを騒がした連中の手配写真で見たことあるだ~ね~。間違いなく、こいつらクモだ~ね~」

 

 プロハンターのバギィの言葉に、警備員達からどよめきの声が上がる。

 バギィは立ち上がって、

 

「隊長さん。後ろの連中、下がらせた方がいいだ~ね~。念も使えない連中を嗾けたって犬死だ~ね~」

 

「そのようだな……。お前達はここから離れて、外で警察と合流しろ! 他にも仲間がいる可能性が高いから決して1人で動くな! 最低5人で行動しろ!」

 

 バギィの言葉にレオルデは頷いて、制服警備員達に指示を飛ばす。

 幻影旅団の名前を聞いてビビっていた制服警備員達は、すぐさま指示に従って逃げるようにその場から離れていく。

 

 それを見送ったラミナ達は、

 

「あらら。大分減ってもうたな」

 

「まぁ、大物が残ってるからいいだろ」

 

「ひー、ふー、みー…………残ったんは17人やな」

 

「なら十分ね」

 

「じゃ、始めっか」

 

 フィンクスが合図とばかりにコインを上に弾く。

 その瞬間、残った警備員やハンター達も顔を引き締めて、広間が緊張感に包まれる。

 

キィン!

 

 コインが床に落ちた瞬間、ラミナ達はバラけるように飛び出す。

 それに警備員達も反応し、それぞれの相手を見定めていく。

 

 

 ラミナの前に現れたのは先ほどレオルデに宣言していた戦闘服の女性と、長い金髪を靡かせる赤いボンデージスーツを着た美女の2人。

 ラミナを含めたこの3人が、この場にいる女性全員である。

 

「お? 女の相手は女とか律儀やな」

 

「そんな理由ではありません」

 

「あんたみたいな女の考えそうなことは、同じ女の方がよくわかるってだけさ」

 

「ふぅん」

 

「援護はお任せします。ゼィーラ」

 

「任せな。アハト」

 

 ゼィーラは両手に銃を具現化する。

 更に両足の踵部分にも拳銃が具現化された。

 

「四丁……!?」

 

「さぁ、とくと味わいな。【乱れ踊る硝煙(ガンズ・ダンスパーティー)】!!」

 

 ゼィーラは両手の拳銃を発砲しながら、ラミナに迫る。

 ラミナは横に跳んで念弾と思われる銃弾を躱しながら、ハルバードを具現化する。

 

(普通の銃弾と思うんは危険やな)

 

 能力を発動して攻めかかろうと思った時、真上から殺気を感じた。

 

「!!」

 

 上を見上げると、そこには右手にコンバットナイフ、左手に拳銃を構えたアハトがいた。

 ラミナは慌てて後ろに下がると、アハトの姿が消えて左後ろに現れる。

 

「!! (転移能力!? けど、マーカーも無しに!?)」

 

 ラミナは目を見開きながらも左手にスローイングナイフを具現化して、背後に投げる。

 アハトが引き金を引く瞬間、指を鳴らして【妖精の悪戯】を発動して入れ替わって銃撃を躱す。

 

「っ! 転移……いえ、入れ替わる能力ですか」

 

 ラミナはスローイングナイフを消すと、ゼィーラがすぐそこまで迫って来ていた。

 ゼィーラは右蹴りを繰り出し、ラミナは顔を背けて蹴りを躱す。

 しかし、踵の銃口がラミナの眉間に向けられる。

 

「っ! 起動せよ!」

 

「ヒュウ!!」

 

ドパン!!

 

 【不屈の要塞】を発動して鎧を纏った直後、踵の拳銃から発砲されて銃弾が撃ち出される。

 しかし、その銃弾は兜に直撃した瞬間、霧散する。

 

 ゼィーラはそれに目を見開き、ラミナはハルバードを振り上げて切りかかる。

 ゼィーラは蹴りと発砲の勢いを利用してバク転することで斬撃を躱し、距離を取りながら4丁の拳銃で発砲するも、弾丸は全て鎧に当たって霧散する。

 

 そこにアハトが真後ろに出現して、ラミナの背中にコンバットナイフを突き出す。

 ラミナは前に飛び出して躱すも、左横にアハトが転移してきて銃口を向ける。

 

 更にゼィーラも発砲を続けるが、ラミナはそれを無視してアハトにタックルを繰り出す。

 アハトはそれに目を細めると、再び転移してゼィーラの横に移動する。

 

「オーラを無効化する鎧のようです。ゼィーラの能力とは相性が悪いですね」

 

「けど、それ以外には脆いみたいだねぇ。あんたのナイフと銃を躱そうとするのがその証拠」

 

 アハトとゼィーラは【不屈の要塞】の弱点を見抜いて、作戦を考える。

 ラミナも一度鎧を解除して、アハトの能力を考察する。

 

(……マーカーをしとる様子はない。考えられるんは『不可視の念獣』か『オーラを飛ばして入れ替わる能力』。やけど、後者の場合はオーラの消費が大きすぎるし、対応速度に限界がある。あの感じやと前者と考えるべきやな)

 

 アハトの能力は【飛び移る梟便(ジャンプ・オウル)】。

 術者にしか見えない3羽の梟の念獣を生み出して、更に術者の背中に同じく不可視の丸い留め具が具現化される。3羽の念獣の足には鉤具が吊るされており、そこに引っかけられる形で転移することが出来る能力である。

 

(拳銃使いの方は、うちの方がスピードは上。弾丸を躱すんも特に問題なし。なら……)

 

 ラミナは【不屈の要塞】では対処しきれないと判断し、ハルバードを消す。

 そして、左手にスローイングナイフを具現化して、右手にフランベルジュを具現化した。

 

「……武器をいくつも具現化できる能力? そんな馬鹿な……」

 

「武器を具現化するだけなら可能だろうけど……。あの能力を考えると、普通はありえないねぇ」

 

 ラミナの武器を見て、警戒度を高める2人。

 アハトは素早くゼィーラからも距離を取って、ラミナの狙いを一か所に集めないように動く。

 

 しかし、ラミナはアハトを無視して、ゼィーラに向かって全力で飛び出す。

 一瞬でラミナが目の前に現れ、ゼィーラは大きく目を見開く。

 

 それでもラミナの右腕が動いた瞬間に後ろに身体を傾け、両足の銃を連射してその衝撃をブースターのように使って、ラミナから離れようとする。

 ラミナの高速の斬撃は、ゼィーラの右前腕と左太腿を僅かに斬りつける。

 

「ぐっ!」

 

 ゼィーラが離れた瞬間、アハトがラミナの背後に現れる。

 しかし、コンバットナイフを振ろうとした瞬間にラミナが指を鳴らして、姿が消えてスローイングナイフが目の前に現れる。

 

「なっ……!?」

 

「後ろだよ!!」

 

「!!」

 

 ゼィーラの声に顔だけで振り返ると、ラミナが左腕を肘を突き出して構えた状態で迫って来ており、左腕の前腕には手甲のようなものが装着されていて手の甲側から両刃の剣が飛び出していた。

 

 アハトは能力を発動しようとするが、その前にラミナが手甲剣を振り抜く。

 

 刃がアハトの右肩から左脇へと一直線に走るのと同時に、

 

 

ボボボボボボオォン!!!

 

 

 アハトの背中が連続で爆発する。

 

「がっ!?」

 

 アハトは強烈な衝撃と、体内が焼ける感覚に襲われて意識を永遠に闇へと落とす。

 ラミナは斬りつけたのと同時に【妖精の悪戯】で、アハトの前に移動したので返り血を浴びるのを躱していた。

 

 ラミナはゼィーラに詰め寄りながら、スローイングナイフを【隠】で隠して床に放置していたのだ。

 アハトが死角を突いてくることは容易に予想出来たからである。

 

 後ろでアハトが崩れ落ちる音を聞きながら、ラミナはゼィーラを見据える。

 

 ゼィーラはラミナに攻撃せずに、片膝をついて蹲っていた。

 

「ぐ……! な、なん……?」

 

「気持ち悪いやろ? 手足が考えるんと逆側が動いて、見えるもんも真逆になっていくんわ」

 

 ゼィーラは今、不可思議な現象に襲われていた。

 ラミナに斬りつけられながら離れて、すぐに反撃しようとしたが、右腕を上げようとしたら左腕が上がり、左足を動かそうとしたら右足が動いたのだ。

 

 それでバランスを崩して片膝をついてしまい、アハトの背後にラミナの姿が見えて叫んだ直後に、今度は()()()()()()()()()()()()()()()

 

「【矛盾する心身(パラドックス・ライフ)】。斬りつけた相手の手足の動きと、視界を逆様にする。それがフランベルジュの能力や」

 

「……!?」

 

「そんで視界は30秒経つと左右が逆になり、その30秒後に前後も逆様になる」

 

 話を聞いている間に、ゼィーラの視界ではラミナの右手に持っていたフランベルジュが左手に変わったように見えた。

 

「身体だけならすぐに対応出来るかもしれんけど、視界まで変わると上手く体が動けへんやろ? お前みたいな戦闘スタイルには致命的やんなぁ」

 

 ラミナはゼィーラに歩み寄りながら、左腕の手甲剣を構える。

 

「ちなみにこっちは【鐵剣断風(てっけんたちかぜ)】言うてな。少し前に襲ってきた老いぼれの能力を貰たもんや」

 

 切っ先をゼィーラの額に向けて、ゆっくりと近づける。

 

「こいつの能力はな」

 

 そして、切っ先がチクリとゼィーラの眉間に刺さった瞬間、

 

 ゼィーラの顔が爆発する。

 

「!?!?」

 

「刃に触れたもんを爆破するんや。刃に触れとる間、ず~っとな」

 

 ゼィーラはゴトンと後頭部から倒れ、両手足の拳銃が消える。

 そのまま起き上がることはなく、ラミナは武器を消して次の標的を探そうとすると、2つの人影が近づいてきた。

 

 1人はバギィ。もう1人は茶髪をオールバックにして、整った顎髭をした30代ほどのホスト風の男だった。

 

 紫のスーツに胸元を開けさせたシャツに革靴。胸元には金のネックレスに、指には指輪が何個も嵌めている。

 そして、何故か右手にウイスキーの酒瓶を持っていた。

 

「なんでこいつらと来んかったん?」

 

「へっへっ。そうしたかったけどねぇ。俺様の能力、お姫様達と相性悪くてさぁ」

 

「それにアンタの戦い方も見たかっただ~ね~」

 

 ホスト風の男はヘラヘラと笑いながら肩を竦めて酒瓶に口を付けて傾け、バギィも卑屈に笑って堂々とアハト達を噛ませ犬扱いする。

 

「……これから戦うっちゅうのに酒、か」

 

「俺様の流儀なもんでねぇ。バギィも一杯どうだい?」

 

「……そうだ~ね~。景気づけに貰おうか~ね~」

 

 バギィは肩を竦めて、酒瓶を受け取って一口飲む。

 ホスト風の男はラミナに顔を向けて、

 

「お姫様も一杯どうだい?」

 

「遠慮しとくわ」

 

「そりゃあ、残念だなぁ。けどぉ……これでこっちの勝ちだ」

 

 ホスト風の男の顔が急に凛々しくなったかと思うと、周囲の景色が変わった。

 

「!!」

 

 バーを思わせるカウンターと酒が並べられた棚、そして革張りのソファーが設置された店の中。

 

 店の中にはラミナとバギィ達3人しかおらず、足元にあったゼィーラの死体もなくなっていた。

 

「……念空間か。っ!!」

 

 ラミナが軽く舌打ちすると、突如視界が歪み、体がふらついた。

 なんとか踏ん張って倒れるのを防ぐが、気持ち悪さは消えなかった。

 

 ()()()()()()()()()()()()()

 

「そのとおり。これが俺様の能力。【酔いを分かち合う酒場(ワン・ナイト・ラブ)】さ」

 

 ホスト風の男は店奥のソファに足を組んで座りながら言う。

 

「俺様の酒の誘いを断った奴は、この店にいる限り『他の奴が発動前に飲んだ酒分、俺様の代わりに酔っぱらう』のさ」

 

 念空間に引き込む条件は『念空間に入れたい相手の目の前で酒を飲み、「一杯どうだ?」と誘うこと』。

 飲んだ相手は飲んだ分の酔いを、相手に押し付けることが出来るので、一杯だけ飲めば能力の被害を受けない。

 

「俺様は酒に強くてねぇ。お姫様に会うまでに3本はウイスキーを空けたから、かなり気持ち悪いんじゃないかい?」

 

「ぐっ……!」

 

 ラミナは遂に片膝をついてしまう。

 

「アンタは近接系の使い手だ~ね~。その状態はかなりピンチだと思うだ~ね~」 

 

「……そうやなぁ。けど……」

 

 ラミナはニィと口を吊り上げると、左手にソードブレイカーを具現化する。

 そして、床に突き刺して能力を発動する。

 

「【脆く儚い夢物語(フラジャイル・ホープ)】」 

 

 ソードブレイカーを刺した箇所から店全体にヒビが入り、割れたと思った瞬間には美術館の広間に戻る。

 

「なっ!? 何をしやがったぁ!?」

 

「さぁなぁ」

 

 ラミナはソードブレイカーを消して、右手に両刃の剣身を無理矢理捻じったような形状をしている変わった剣を具現化する。

 

 それを右手内で回転させると、勢いよく回転を始めてバチバチと帯電を始めた。

 

「「!!」」

 

 バギィ達はそれに目を見開きながらも構えて警戒する。

 

 ラミナは槍投げのように左足を大きく踏み出して、

 

「【天を衝く一角獣(ウニコルニオ・レランパーゴ)】」

 

 右腕を振り被った瞬間、バヂイィン!!と閃光が弾ける。

 突然の閃光に一瞬ラミナを見失った直後、

 

 

バアアアアアァァン!!!

 

 

 と、広間に爆音が轟いた。

 

 あまりの轟音にノブナガ達も耳を押さえて、戦闘が中断する。

 

 全員が音源に目を向けると、

 

「っつぅ~~~……!」

 

 盛大に顔を顰めながら左手で耳を押さえ、右手をプラプラさせるラミナの姿があった。

 

「コラァ! ラミナ! 派手に騒ぐなら、そう言いやがれ!!」

 

「鼓膜破れるかと思ったじゃねぇか!!」

 

 フィンクスとノブナガが苦情を叫び、フェイタンも恨みがましい視線を向けていた。

 ラミナは右手をプラプラさせ続けながら、

 

「すまんすまん。あそこまで派手になるとは思っとらんかったんよ。こら、建物の中で使える能力ちゃうな……」

 

「なんだよ。今まで分かんなかったのか?」

 

「ここに来る直前に創った能力なんよ。一回使うとストックが減る制約にしとるから、下手に試せへんかったんや」

 

「なるほどね」

 

「しかも、使うた手がめっちゃ痺れて痛い痛い。まぁ……威力は十分みたいやけど」

 

 ラミナは螺旋剣を投げた方向を見る。

 フィンクス達も目を向けると、そこには、胴体に大きな穴を空けたバギィが立ったまま死んでいた。

 

 更にその後ろの建物も壁などに穴が空いており、穴の縁は焼け焦げたように黒くなっている。

 

「バギィ……!」

 

「なんて威力だ……!」

 

「おい、ラミナ! それで何人目だ!?」

 

「ん? 3人目やな。アレで4人目」

 

 フィンクスの問いに、ラミナは座り込んでしまっているホスト風の男を指差す。

 

(ん~……まだ痺れがとれん。こら、もうちょいせんと使いもんにならんな)

 

 ラミナは小さくため息を吐くと、フィンクスに顔を向ける。

 

「フィンクス!」

 

「あん?」

 

「お前、アレに()()()()?」

 

「はぁ?」

 

 フィンクスは訝しみながら、座り込んでいるホスト風の男を見る。

 しかし、ぶっちゃけどう見ても、能力を使う必要もないほどに戦意を失っていた。

 

「あんなんに使わねぇよ」

 

「まぁ、そりゃそうか。ん~……じゃ、5()()()()()()()()()か」

 

「ああ?」

 

 フィンクスやノブナガが眉を顰めていると、ラミナは左手にバルディッシュを具現化する。

 

 ホスト風の男にゆっくりと歩み寄りながら、左手のみでバルディッシュを回し始める。

 

「い~ち……にぃ~い……さぁ~ん……」

 

「おいおい……ありゃまさか……」

 

 ラミナがバルディッシュを一回転させる度に、刃に集中したオーラが膨れ上がる。

 ノブナガ達はその能力に見覚えがあった。

 

「ごぉ~おっとぉ!」

 

 そして5回回すと、左腕一本で大きくバルディッシュを振り被る。

 

 刃には強大なオーラが集まっており、ホスト風の男はもはや震えて固まる以外出来ることがなかった。

 

「ほな、さいなら」

 

「ひ、ひいいいいい――!!」

 

ガアアァン!!

 

 力強く振り下ろされてくる刃に、ホスト風の男は情けない悲鳴を上げる事しか出来なかった。

 そして、先ほどまでではないとはいえ、それでもかなりの轟音と衝撃を響かせて、刃が叩きつけられる。

 

 ホスト風の男は頭と胴体が粉々になり、クレーターに血溜まりが出来る。

 両腕と腰から下がクレーターの周囲に残っており、それがまた悲惨さを増大させている。

 

 ラミナはバルディッシュを消して一息つく。

 

「ふぅ……十分過ぎたか……」

 

 【仁愛なる兄の豪肩(リッパー・サイクロトロン)】。

 フィンクスの能力を模倣した能力である。フィンクスの能力より一回転ごとに上がる威力は低いが、それでも使い勝手はよいものに収まった。

 

「さて、これで4人……」

 

 ラミナはフィンクス達に目を向けると、それぞれ1人ずつと戦っていた。 

 残っているのは、レオルデのみであった。

 

 ラミナは右手の調子を確かめながら、レオルデに声を掛ける。

 

「おっちゃん。暇やったら、相手しよか?」

 

「……」

 

 レオルデは眉間に皺を寄せて、ラミナに目を向ける。

 

「……貴様1人で俺に勝てるとでも?」

 

「いやいや。ほぼ全滅の状況で、そんなこと言われても恥ずかしいだけやで」

 

「……クモとは言え、小娘であることは変わらん。引退して戦場から離れてここで隠居同然とは言え、まだまだ衰えてはおらん。舐めていると、痛い目を見るぞ」

 

「そっちこそ、小娘や思て舐めとったら痛い目見るで? 死ぬんなら、痛くない方がええやろ?」

 

「……口が減らんガキめが……」

 

 レオルデは額に青筋を浮かべて、オーラを強める。上着を脱ぎ捨てて、インナーだけになる。

 その右前腕には、10個のハートマークが刻まれており、その内8個は中心が割れたようなマークになっている。

 

 しかし、ラミナはその全てがオーラで刻まれているのを見逃さなかった。

 

「……部下の命を利用する能力か」

 

「私直々に鍛え上げた部下が死んだ時、そのオーラは我が力となり。私が死んだ時、私を含めて他の部下のオーラが生き残った部下に振り分けられる。これが我らの絆、【隊は1つの命なり(ワン・フォー・オール)】だ!!」

 

 ドン!!と、膨大なオーラが噴き上がる。

 

 そのオーラ量は確かに馬鹿に出来ないものだった。

 

「そして、部下達より受け継いだオーラを注いで造り出すのが我が力!!」

 

 更に体から膨大なオーラが噴き出し、レオルデの身体が浮かび上がっていく。

 噴き出したオーラは徐々に巨大な人の形に変化していき、最後にはオーラが金属に変化していく。

 

 そこに現れたのは5mほどの鎧巨人。

 両腕は鮫肌のように逆立っており、下手に防げば体が削り千切れそうだった。

 レオルデは兜の口部分から顔を覗かせていた。

 

「お~……」

 

「【我は巨将なり(パンツァー・レオルデ)】! 全てのオーラを注いで造りあげた、この鎧は先ほどの閃光や剣とて防ぎ切る!!」

 

(まぁ、【脆く儚い夢物語】で終わりそうなんやけど……。それはそれでつまらんなぁ)

 

 そんな事を考えていると、レオルデの鎧が更に一回り巨大化する。

 

 ラミナは首を傾げて、顔だけで背後を振り返ると、

 

「お~お~、でっかくなりやがって」

 

「見た目だけのパワーと硬さはありそね」

 

「ラミナ、代わってやろうか?」

 

 ノブナガ、フェイタン、フィンクスが戦いを終えて、揃って腕を組んでのんびりとレオルデを見上げていた。

 ラミナは苦笑して、

 

「問題ないわ。後ろで休んどきぃ」

 

 そう言って、ラミナは大太刀を右手に具現化する。

 

「お! お前が太刀を使うのは初めて見るな」

 

「前は短刀と薙刀を持っとったから、使えんかったでな」

 

「なるほど。で、それはどんな能力か?」

 

「すぐに分かるわ」

 

「おのれぇ! いつまで雑談しているのだぁ!!」

 

 痺れを切らしたレオルデが巨鎧を操って、右腕を勢いよく振り下ろす。

 ラミナは素早く左に跳んで、巨大な腕を躱す。

 

 ハンマーの如く、床が砕ける。

 

 大太刀を左脇に構えたラミナは、巨鎧の右拳が床に叩きつけられたのと同時に跳び上がって、巨鎧の右上腕部分に向かって大太刀を()()()()()

 

 その1秒後、巨大な右腕が切り離されて床に轟音を立てて落ちる。

 

「なっ!? バ、バカな!?」

 

「ほぉ」

 

「なんでぇ。随分と柔いじゃねぇか」

 

「違うね。ラミナの太刀、よく見るよ」

 

「「あん?」」

 

 フェイタンの言葉に、フィンクスとノブナガがラミナの大太刀に目を向ける。

 

 そして、目を凝らすと刃先にオーラが集中しているのが見えた。

 

「……あ? ありゃあ、もしかして【硬】か?」

 

「多分ね。太刀を出してからラミナのオーラが見えなくなたね」

 

 ノブナガの言葉に、フェイタンが頷き、フィンクスが呆れる。

 

「マジかよ。無茶しやがんな」

 

「っつぅか、あんな細い【硬】なんて簡単に出来ねぇぞ?」

 

「ってこたぁ、あれがあの武器の能力か」

 

「だろうね。もし、ラミナのオーラを全部籠めてるなら、あの切れ味が出て当然ね」

 

「なるほどな」

 

 3人が雑談している先で、ラミナは一瞬で巨鎧の背後に回り込む。

 しかし、

 

「舐めるなぁ!!」

 

 巨鎧の上半身が反転し、それに合わせて膝の向きも変わる。

 下半身は完全にオーラで構成されているため、人形のように向きを簡単に変えることが出来るらしい。

 さらに右腕もすでにくっついており、修繕されている。

 

 レオルデは振り返った勢いで拳を叩きつけようとしたが、すでにラミナの姿はそこにはなかった。

 

「!!」

 

「遅いわ」

 

 声が聞こえたのと同時に、両膝が斬り飛ばされる。

 レオルデは後ろに倒れて背中から地面に叩きつけられる。

 

「ぐっ!!」

 

 衝撃に顔を顰めながらも上を見上げると、そこに大太刀を両手で振り被っているラミナがいた。

 

「!?」

 

「シィッ!!」

 

 ラミナが鋭く息を吐き出すと、振り被っていた大太刀と両腕が霞む。

 

 銀色に輝く風が巨鎧の上半身の中心を、シィン!と何かが擦ったかのような音を立てながら吹き抜け、気づいた時にはラミナは大太刀を振り抜いていた。

 大太刀の刀身は床に沈んでおり、ラミナは息をゆっくりと吐きながら大太刀を消して体を起こす。

 

 直後、巨鎧が消滅し、露わになったのは体が縦に両断されているレオルデの死体だった。

 

 レオルデは何が起こったのか理解出来ていなかったようで、呆然とした顔で死んでいた。

 

「はぁ~……しんど~……」

 

 ラミナはオーラを大量に消費した虚脱感に襲われて、ため息を吐く。

 そこにノブナガ達が歩み寄ってくる。

 

「すげぇ斬れ味だな」

 

「そら、ほぼ全オーラを集中させとんねんから、あれくらい斬れ味ないと困るわ」

 

 右肩を回しながら、呆れたように答えるラミナ。

 

「んで、これでうちは5人殺したんやけど?」

 

「俺も5人殺した」

 

「ワタシは4人ね」

 

 フィンクスとフェイタンも人数を口にする。

 相手は17人だったはずである。

 ということは、

 

「ノブナガがビリだな。俺とラミナに後で奢りな」

 

「……マジかよ。金なんざ持ってねぇぞ……」

 

「シャルナークにでも借りるね。それか今回のお宝の報酬ね」

 

「なんやったら、そこらへんの展示品パクって売ったらええんちゃう?」

 

「おっ! その手があったか!」

 

 ノブナガはラミナの言葉に指を鳴らして、金になりそうな展示品を探す。

 ラミナ達はノブナガの行動に呆れながら、

 

「んで、団長達が盗み終えるまではここで待機か?」

 

「退屈ね」

 

「逃げ出した警備員でも追うか? 警察とかもたんまり来とるかもしれんで?」

 

「雑魚が多いのはダリィだけだろ」

 

「脆いのはつまらないね」

 

 そんなことを話していると、

 

ドドドドドドドドド!!!

ドオォン!!

パァン! パパァン!!

 

 と、外から銃声や爆音が聞こえてきた。

 

「フランクリンの奴か?」

 

「この音はそうやろな。クロロに電話してみよか」

 

 ラミナは携帯を取り出して、クロロに電話をかける。

 

『……ラミナか?』 

 

「そっちはどない? なんやフランが暴れとる音がするけど」

 

『もうすぐお宝を積み終わって、駐車場から出る予定だ。今はフランクリンが適当に撃ちまくって、逃げる隙を作ってるところだ』

 

「うちらは? 念能力者の警備員は多分全員殺したけど」

 

『こっちに合流してもいいし、自分で逃げ出してもいいし、フランクリンを手伝ってくれてもいい』

 

「了解」

 

 通話を終えたラミナは、フィンクスとフェイタンにクロロの言葉を伝える。

 

「だったら、フランクリンを手伝ってやるか」

 

「ワタシも付き合うよ。適当に殺して引き上げればいいね」

 

「うちはオーラも消費したし、クロロの所に行くわ」

 

「おう」

 

 フィンクス達は外を目指し、ラミナは裏倉庫に繋がっているエレベーターを目指して歩き出す。

 

 ラミナがノブナガを忘れていたことに気づいたのは、クロロ達と合流した時だった。

 

 

 

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ラミナ’sウェポン!! お久し!

 

・【弱さは罪(バッド・ルーザー)

 斬首剣に付与された能力。

 

 物体に対して:一度斬りつける度に、重さを倍にする。

 生物に対して:3回斬りつける度に、重さを3倍にする。

 

 斬りつけられた者が膝をついた場合、体が拘束されて念獣に首を斬り落とされる。

 念獣と枷は、処刑される者のオーラを利用する。

 

 具現化系で造られた武器や念獣にはほぼ無意味。

 操作系は操られたモノ次第。

 

 実力者相手になると、3回斬りつけるのも難しいので、基本雑魚にしか使えない。

 

 *元ネタは『BLEACH【侘助】』

 

 

・【鐵剣断風(てっけんたちかぜ)

 手甲剣に付与された能力。

 

 刃が触れたものを爆破する。触れている間、常に爆破する。

 

 *元ネタは『テイルズオブベルセリア:ベルベットの刺突剣』『BLEACH【鐵拳断風】』

 

 

・【矛盾する心身(パラドックス・ライフ)

 フランベルジュに付与された能力。

 

 1:斬りつけた相手の四肢の動きを逆様にする。

 右腕を動かそうとすれば左腕、左腕は右腕と、片側だけならば反対側が動き、両腕同時の場合は両脚が動き、逆もまた然り。

 

 2:斬りつけた相手の視界を逆様にする。

 最初は上下が逆に、30秒後に左右が、その30秒後に前後が逆様になる。

 

 ただし、両方発動する場合は2回斬りつけなければならない。

 1回だけの場合は、四肢の方が優先される。

 

 *元ネタ『NARUTO:綱手【乱身衝】』『BLEACH【逆撫】』

 

 

・【天を衝く一角獣(ウニコルニオ・レランパーゴ)

 螺旋剣に付与された能力。

 

 回転させると帯電し、投擲すると雷が落ちたかのように閃光と爆音を発して高速で飛ぶ。

 

 『投げるときは回さないといけない』『一度使うと壊れる』『使った場合、投げた腕がしばらく痺れる』が制約。

 

 *元ネタ『Fate:アーチャー【カラドボルグⅡ】』『とある:御坂美琴』

 

 

・【無垢村雨(むくむらさめ)

 大太刀に付与された能力。

 

 刃先にほぼ全てのオーラを【硬】で極限まで集中させることで、切れ味を高める。

 

 刃先以外は普通の硬さで、体もオーラで包まないのでかなり危険。

 しかし、それ故にその威力は絶大。

 

 制約は『発動中は【硬】しか使えない』『能力を解除するには必ず生き物を斬らなければならない』『何も斬らずに能力を解除すると、大太刀は壊れて全オーラを消費してしまう』『一度壊れると、一週間具現化できない』

 

 *元ネタは『BLEACH【残火の太刀:〝東〟旭日刃】』

 

 

・【仁愛する兄の豪肩(リッパー・サイクロトロン)

 バルディッシュに付与された能力。

 

 割愛w

 

 




ゼィーラの能力は『ベヨネッタ』。
ホスト風男の能力は『僕ヒロ:酒木泥泥』。
レオルデは……どっかで見た気がする能力と見た目w

アハトの能力は拙作オリジナルです。

次回はせっかくなので、フェイタン達の戦いとクロロ側の話をする予定です。
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