暗殺者のうちが何でハンターにならなあかんねん   作:幻滅旅団

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#82 クモ×ノ×チカラ

 時は少し戻って。

 

 コインが地面に落ちた瞬間、フェイタン、ノブナガ、フィンクスも飛び出して、各々の獲物を狩りに出る。

 

 それぞれの前に戦闘服を着た者達が立ち塞がる。

 

 フェイタンの前には、先ほど歯を食いしばって苛立っていた金髪オールバックの男を始めとする4人の戦闘服を着た警備員達がナイフや銃を構えて立つ。

 

「クモがこんなところに何しに来た……!?」

 

「そりゃワタシ達盗賊。盗みに来たに決まてるね」

 

 フェイタンは呆れながら男に言い返し、背中に右手を伸ばす。

 それに警備員達はすぐに動けるように構えるが、フェイタンが背中から取り出したのは『傘』だった。

 

「……傘?」

 

「気を付けろ。能力に関係あるかもしれん」

 

「分かってらぁ」

 

 フェイタンが傘を正眼に構える。

 傘の先が鋭く尖っているのが見えた警備員達は突っ込んでくるかと予測して、素早く散開して動き回る。

 

 しかし、フェイタンが次に行ったのは、傘を開いただけだった。

 

「? なにを……」

 

 訝しんだ直後、傘の左右から()()()フェイタンが飛び出してきた。

 

「「「なっ!?」」」

 

 突然の分身に目を見開いて動きを緩めてしまう警備員達だが、次の瞬間には拳銃を構えて発砲して、フェイタン達に攻撃を行う。

 

 しかし、全ての銃弾はフェイタン達の身体を通り抜け、一番先頭にいた金髪オールバック男の真上からフェイタンが下りてきて、逆手に握る刀を頭頂部から突き刺す。

 

「がっ!?」

 

「なっ!?」

 

「くそっ! 喰らえぇ!!」

 

 茶髪の男が左腕にオーラを集中させながら勢いよく突き出す。

 男の左手から、巨大な手を模ったオーラが飛び出して、フェイタンに迫る。

 

「ふっ」

 

 フェイタンは鼻で笑って、金髪オールバック男の上から飛び退く。

 直後に巨大な手が崩れ落ちようとしていた男の死体を押し飛ばし、再びフェイタンの姿を見失ってしまう。

 

「ぐっ……!」

 

「速い……!」

 

「【円】を使え!!」

 

「遅いね」

 

「ぎゃ!?」

 

 フェイタンの速さについていけないことに歯噛みする警備員達。

 その内の1人が【円】を使う様に指示を出すと、その背後からフェイタンが現れて首を斬り飛ばす。

 

 フェイタンはそのまま傘が落ちている所に戻って、仕込み刀を戻して傘を巻く。

 

 残った2人は動きについていけないフェイタンにどう攻めればいいのか判断出来ずに、動くに動けなくなる。

 他の仲間に手を貸してもらいたかったが、他の者達もクモを相手にしているので厳しいだろうと考えて歯を食いしばるのだった。

 

 

 

 そして、ノブナガの前には戦闘服警備員が2人、そして私服の男が2人立っていた。

 

「さぁて……さっさと始めるとすっか。俺ぁ戦い方も能力も、競争にはあんま向いてねぇしな」

 

「ふん! 舐めやがって!」

 

 赤モヒカンの警備員がノブナガを睨んで、隣にいる長い黒髪を後ろで結んでいる40代くらいの警備員が肩を掴んで落ち着かせる。

 

「落ち着け、レイビス。相手は旅団なんだぞ」

 

「はっ! 問題ねぇっすよ、カズヒコさん。所詮は盗賊じゃないっすか。それにクモが凄かろうが、こいつがスゲェわけじゃないだろうし」

 

 レイビスはカズヒコの忠告を鼻で笑い、ノブナガを見下す。

 

「こいつ1人くらい、俺だけで十分っす」

 

 ノブナガはレイビスの強気発言を、冷めた表情で聞いていた。

 左手は刀に添えたままだが、右手で顎を撫でる。

 

「……まぁ、相手が誰だろうが構わねぇけどよ」

 

 ノブナガは左手で刀を構え、僅かに腰を落として右手を柄に添える。

 居合の構えを取ったノブナガに、カズヒコは警戒に目を細めるが、レイビスは再び鼻で笑う。

 

「ちゃんと死ぬ覚悟をしてから、かかってこいよ」

 

「舐めんなっつってんだろうが!!」

 

 レイビスがノブナガの挑発に簡単に乗ってしまい、ノブナガに向かって飛び出す。

 すると、レイビスの両脚にオーラが集中し、膝から足先まで覆うグリーブが出現する。足先や脛部分には刃のようになっており、足裏にはローラー、ふくらはぎ部分には車のマフラーのような筒が付いている。

 

 具現化を見た瞬間、ノブナガも目を細める。

 

「【切り裂く韋駄天(ターボ・トレック)】!!」

 

 マフラーからオーラが噴き出して、爆発的にスピードを上げるレイビス。

 スキーのように蛇行しながらノブナガに迫り、推進力を利用して飛び上がって、ノブナガの背後に回って回転しながら右脚を振り上げて高速の蹴りを放つ。

 

「死ねぇ!!」

 

「……馬鹿が」

 

 レイビスが蹴りを繰り出したのと同時に、ノブナガの身体の向きが()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

キッ、チン!

 

 一瞬ノブナガの右腕がブレて、短い金属音が2回響く。そして、ノブナガの姿がレイビスの背後へと移動していた。

 直後、レイビスの右脚が、付け根から離れる。

 

「!?!?」

 

 更にレイビスの鳩尾辺りで身体が上下に分かれて、左脚だけとなった下半身が回転して飛んで行き、上半身はそのまま背中から床に落ちる。

 

「ば、ば……か……な……」

 

「馬鹿はテメェだ。居合相手にテメェから間合い詰める奴がいるかってんだ」

 

 居合術はそもそもカウンター技で、それも速度を重視した剣術だ。

 それを使う以上、速さに自信があろうが単独でむやみやたらに突っ込むなど自殺行為でしかない。

 

 しかも、お互い念能力者。

 それで居合なのだから、速度に対応した能力なのは容易に想像出来る。

 

 ノブナガの能力は単純明快、居合の極みである。

 

 【抜刀・石火(せっか)】。

 

 己の間合いでもある【円】に入った相手に対してのみ、一瞬で相手に向き、極限まで抜刀・納刀速度、それに関わる体捌きを強化する。

 『シンプルイズベスト』を象徴するような能力である。

 

 しかし、そのシンプルさ故に、同時に間合い内に複数の対象がいようが一度に1人しか斬ることは出来ず、納刀まで一工程であるために抜いたらそのまま別の者に斬りかかることも出来ない。

 そこがウボォーギンとよく組まされることになった理由である。

 

 ノブナガはカズヒコ達に向き直り、ゆっくりと歩み寄る。

 

「で、次斬られたい奴はどいつだ?」

 

 

 

 その頃、フィンクスは足元に首が捻じられた2つの死体を転がしていた。

 

「ほれ、次は誰だよ? それとも残り全員で来るか?」

 

「ぐっ……!」

 

「どけ。オイラがやる」

 

 怖気づく黒短髪の戦闘服警備員を押しのけて前に出たのは、錆色のアフロ頭にタンクトップの男。

 

「デルデロ殿」

 

「銃やナイフ程度じゃ相手になんねぇ。けど、オイラの能力ならまだやれるだろうかんな」

 

 デルデロはオーラを強めて、ゆっくりとフィンクスに歩み寄る。

 両手をポキポキと鳴らしながら、フィンクスを油断なく見据える。

 

「次はお前1人か?」

 

「おうさ。楽しませてくれよ?」

 

「それはお前次第だな」

 

 フィンクスは不敵に笑みを浮かべながら、デルデロに歩み寄る。

 デルデロは一瞬両腕を脱力させたかと思うと、次の瞬間フィンクスに一気に詰め寄る。

 

 フィンクスは右手をデルデロの顔に伸ばし、その腕をデルデロは左手で掴もうとする。

 その動きに違和感を感じたフィンクスは直前で右手を止めて、左脚を振り上げる。

 それにもデルデロは掴もうと右手を動かしたのを見て、フィンクスは左脚を止める。

 

 デルデロは左手を爪立てながら振るい、フィンクスの右袖を掠る。

 

 フィンクスは一度距離を取るも、背後に黒短髪の男が回り込んでいた。

 男の背後には巨大な人型の上半身が出現していた。

 

「ふっ!」

 

 男が右腕を振ると、背後の巨人も右腕を振る。

 小指が床を抉りながら迫る腕を、フィンクスは高く跳び上がって躱して距離を取り、右袖に目を向ける。

 

 右袖は溶けたように穴が空いており、僅かに異臭がした。

 

「……触れたモンを溶かす能力か」

 

「バレちまったか」

 

 デルデロはお道化たように肩を竦める。

 フィンクスは腰に両手を置いて、

 

(流石にオーラ全部を変えることは出来ねぇだろうが……。そこそこ反応もいいから、面倒だな。なら……)

 

 フィンクスは右腕を上げて、デルデロに向かって駆け出す。

 デルデロは両手を構えて待ち受ける。

 

 フィンクスは攻め寄りながら、右腕を回し始める。 

 デルデロはそれに訝しむも、

 

(何をしようが、その前に身体を溶かす!)

 

 フィンクスの背後から黒短髪男も詰め寄ってきていた。

 デルデロは溶かせなくても、牽制すれば、その間に黒短髪男が仕留められると判断する。

 

「オラ行くぞぉ!!」

 

 しかし、フィンクスが右腕を振り被った瞬間、右拳に膨大なオーラが集中する。

 

「「なっ!?」」

 

 デルデロ達はその圧力に目を見開く。

 

「オォラァ!!」

 

 フィンクスは右腕を振り抜く。

 

 デルデロも両手にオーラを集中させて受け止めようとするが、フィンクスの【廻天】のオーラに、デルデロはオーラごと上半身が吹き飛ばされる。

 

「っ!?」

 

 黒短髪男が思わず足を止める。

 フィンクスはすぐさま振り返って、密かに回していた左腕を振り被る。

 

「ぐっ!?」

 

 男は巨人の両腕を交えるように体の前に出す。

 直後、フィンクスの拳が叩きつけられると、男の両腕に激痛が走ってボギッ!と嫌な音が響く。

 男の能力は巨人が受けるダメージを自身にもフィードバックするデメリットがあった。

 巨人の両腕も折れたように曲がっていた。

 

 その一瞬の隙を突いて、フィンクスは巨人の腕を掻い潜って男に詰め寄る。

 男が気付いた時にはもうフィンクスの右手が目の前にあり、直後に視界が360度回転した。

 喉に激痛が走り、男は意識を失った。

 

 フィンクスは倒れた男の死体を見下ろして、一息つく。

 

「さぁて、これで4人か。あと1人殺れば、最下位はねぇだろ」

 

 次のターゲットを探そうとした時、

 

 

バアアアアアァァン!!!

 

 

 と、広間に閃光と爆音が広がった。

 

 フィンクスは目を閉じて、耳を押さえる。

 

「って~~……! んだぁ?」

 

 フィンクスは顔を顰めながらそっちに向くと、盛大に顔を顰めているラミナの姿があった。

 

「コラァ! ラミナ! 派手に騒ぐなら、そう言いやがれ!!」

 

「鼓膜破れるかと思ったじゃねぇか!!」

 

 フィンクスとノブナガは怒鳴る。

 ラミナは顔を顰めながら理由を説明し、フィンクス達はバギィの死体と広間の壁に穴が空いているのを目撃した。

 

「随分と派手にやりやがったな。おい、ラミナ! それで何人目だ!?」

 

「ん? 3人目やな。アレで4人目」

 

 ラミナは座り込んでいるホスト風の男を指差す。

 それにフィンクスは小さく舌打ちする。

 

「ちっ。ってこたぁ、ラミナは4人確定かよ。やっぱもう1人殺しとかねぇとな」

 

「フィンクス!」

 

「あん?」

 

「お前、アレに何回回す?」

 

「はぁ?」

 

 フィンクスは訝しみながら、座り込んでいるホスト風の男を見る。

 どう見ても戦意を失っており、能力など使う必要はなかった。

 

「あんなんに使わねぇよ」

 

「まぁ、そりゃそうか。ん~……じゃ、5回くらいにしとこか」

 

「ああ?」

 

 フィンクス達が訝しんでいると、ラミナが具現化したバルディッシュを左手で回し始める。

 回す度に刃にオーラが集中し始める。

 

「おいおい、俺の能力まで使えんのかよ」

 

 フィンクスは呆れながら、相手を殺すラミナを見ていた。

 

「っと、いけね。俺も獲物見つけねぇと」

 

 フィンクスはレオルデの方に顔を向けると、目の前に紫のドレッドヘアを後ろで束ね、黒い革ジャンとズボンを身に着けたガタイの良い男が立ち塞がる。

 

「おっと。隊長さんのところに行くのは早いんじゃねぇかな?」

 

「俺が行かなくても、あいつが行ってるぜ?」

 

 フィンクスはラミナを親指で指す。

 ラミナはレオルデの方に歩み寄っていた。

 

「あの嬢ちゃんはかなり消耗してんだろ。あれだけの能力を使った後だしな。隊長さんの敵じゃねぇよ」

 

「だから、俺の方が先ってわけか?」

 

「そういうことだ」

 

「ふぅん。ま、いいか。俺は獲物が増えて助かるからな」

 

「……舐めてると……いや、ここまで一方的にやられてんだ。舐められても仕方ねぇか」

 

 ドレッド男はフィンクスの言葉に一瞬苛立ちを露わにするが、ほぼ全滅状態なのも事実なので、すぐに怒りを引っ込めてため息を吐く。

 そして、顔を引き締めると、両腕を広げて両手を開く。

 

 両手の前に丸鋸状のオーラが6枚放出され、ドレッド男の周囲を飛ぶ。

 

「ほぉ……」

 

「アンタは近づけると危なそうだから、な!!」

 

 左手を突き出して、3枚の丸鋸オーラを飛ばすドレッド男。

 フィンクスはそれを紙一重で躱しながら詰め寄ろうとするも、ドレッド男は右手を動かして、自らの身体を守る様に3枚の丸鋸オーラを浮かべる。

 その時、フィンクスが右腕を振り抜いて、何かを投げる。

 

 それは先ほど巨人の腕が抉った床の欠片だった。

 

「っ――!?」

 

 突然高速で飛来してきた欠片にドレッド男は全く反応出来ず、額に風穴を空ける。

 フィンクスはパチンと指を鳴らして、

 

「よっし! 5人目ぇ!」

 

 と、喜びの声を上げ、フェイタンとノブナガを見る。

 

 それと同時にフェイタンは最後の1人を傘で突くと見せかけて、持ち手のボタンを押して傘先の突起を発射する。

 

「は!? ぎゃ!?」

 

 警備員は目を見開いて、眉間を貫かれて死亡する。

 

 そして、ノブナガも一気に詰め寄って居合で警備員の首を斬り飛ばす。

 

「お。向こうも終わったか」

 

「これで残るはラミナだけね」

 

 その後、3人はラミナとレオルデの戦いを見守り、勝負が終わるとフィンクスとフェイタンはフランクリンに合流し、ノブナガはお宝を探しに行くのだった。

 

 

 

 またまた時は少し戻って。

 

 クロロ達は裏倉庫に入って、トラックにお宝を運び込んでいた。

 もちろん、ここでもコルトピの能力でコピーが大活躍である。

 

 すると、外からサイレンの音が聞こえてきた。

 

「ん? 警察か?」

 

「フランクリン」

 

 クロロが携帯片手に裏倉庫から顔を覗かせて、フランクリンに声を掛ける。

 

「シャルからだ。外の警察と警備員を引っ掻き回してくれ」

 

「ラミナ達は?」

 

「あいつらは念能力者の警備員を相手にしているようだ。だから、外にいるのは雑魚の筈だ。シャルもそっちに行くらしいから、お前も車を中心に壊して来てくれ」

 

「あいよ」

 

 フランクリンは頷いて、ノシノシと歩いていく。

 それを見送ったマチ達は、

 

「アタシ達はいいの?」

 

「まだ他にも来るかもしれんからな」

 

「了解。ほら、カルト。どんどん運びな」

 

「……分かってる」

 

 新人ゆえの洗礼なのか、怫然とした表情でこき使われるカルト。

 もちろんマチも運んでいるので文句を言うことも出来ず、護衛として待機しているボノレノフが少しだけ羨ましかった。

 

 少しすると、銃声と悲鳴、爆発音が聞こえてきた。

 

「出来れば、この間に終わらせたいね」

 

「そうだね」

 

「急ぎましょうか」

 

「っていうか、全部は流石に無理じゃない?」

 

 シズク、マチ、パクノダがスピードを上げるも、カルトはまだまだ残っているお宝に呆れるしかなかった。

 まだお宝は半分に行くかどうかで、しかもまだ運びやすいものから始めていたので、これからは大きい物なども運ばなければならない。

 

 それにクロロも頷いて、

 

「そうだな。ここからは売れそうな物から運ぶか」

 

「最初からそうしてよ」

 

 流石にマチも呆れながら言う。

 シズクの能力もあるが、そうなるとコルトピのコピーが出来ない。

 

 流石に地下競売のお宝と違い、裏倉庫のお宝は今後取り返しに来る可能性が非常に高いので、少しでも時間を稼ぎたいのだ。

 

 クロロは素早く目についたお宝を選んで、それをマチ達が運んでいく。

 

 そこにラミナから電話がかかり、警備員討伐終了の連絡が来た。

 クロロは指示を出して、電話を切ると、

 

「ラミナ達も終わったらしい。誰か来たら、フランクリンを拾って俺達も引き上げよう」

 

『了解』

 

「お客だ」

 

 見張りをしていたボノレノフが立ち上がりながら、声を掛ける。

 マチ達が顔を覗かせると、2人の男が近づいてきていた。

 

「……やられたぜ。まさかここにお客がくるとはな……」

 

「上は囮か? やってくれるじゃねぇか」

 

 後頭部を掻きながら顔を顰めているスーツの黒髪パーマの男。

 その隣に悔し気に顔を歪めて腕を組んでいるのは、同じくスーツの白髪坊主の男。

 

 2人ともオーラを纏っており、間違いなく念能力者であった。

 

「まだ残ってたみたいだね」

 

「1人は俺がやる。もう1人は好きにしろ」

 

 ボノレノフはマチ達に声を掛ける。

 マチ、シズク、カルトは顔を見合わせて、ジャンケンを始める。

 

 その様子に男達は額に青筋を浮かべる。

 しかし、そこにボノレノフが体の包帯を脱ぎ捨てて、その身体を露わにする。

 

 ギュドンドンド族の身体を見た男達は、顔を鋭くして構える。

 その直後にジャンケンで勝ったマチが前に出て、更に怫然としたカルトが2人の戦いを観察しようとするも、パクノダに「仕事が先」と荷物運びを再開させられる。

 

 身体を動かして音を奏で、双頭槍と仮面を身に着けた姿に変わるボノレノフ。

 白髪坊主の男が背中から短刀を抜いて、斬りかかる。

 

 黒髪パーマの男はマチに殴りかかり、マチは軽やかに躱して蹴りを繰り出して、男を壁へと蹴り飛ばす。

 

「がぁ!?」

 

 黒髪パーマの男は背中から壁に叩きつけられて、地面にズレ落ちる。

 

「なんだ……。弱いじゃない」

 

 マチはその一撃で実力差を見極め、ため息を吐く。

 その後ろではボノレノフがあっさりと白髪坊主の男を殺していた。

 

 黒髪パーマの男は痛みに顔を顰めて、立ち上がれなかった。

 

「……もしかして、下っ端?」

 

「ぐ……!」

 

 マチの言葉に男は顔を顰める。

 マチの推測通り、この2人は四大行を覚えたばかりの新人だった。

 

 自分の推測が当たったことを反応から理解して、ため息を吐くマチ。

 

 その時、

 

ドォン!!

 

 男がもたれている壁の向こう側。美術館の中から爆発が起こった。

 

「爆発?」

 

「……今のは……」

 

「中の戦闘は終わったんじゃないのか?」

 

 マチ達は首を傾げ、黒髪パーマの男は思い当たることがあったのか僅かに目を見開く。

 

 直後、濃密な殺気が圧し掛かる。

 

 といっても、絶望を感じたのは黒髪パーマ男だけで、マチ達はそれが誰の殺気かすぐに分かった。

 

 その数秒後、男のすぐ横にあったドアが勢いよく吹き飛んだ。

 

「!?」

 

 更に殺気が濃くなり、男はもちろんカルトやパクノダも少し息が苦しくなる。

 

 現れたのは、目が完全に据わっている不機嫌オーラ全開のラミナ。

 

 しかし、その顔や髪は黒く汚れており、上着はブラがギリギリ残っているだけで腹部が露出していた。ズボンは右脚の膝から下が破れているだけだった。

 

 ラミナはすぐ横に座り込んでいる虫けら()のことなど気づきもせず、マチの傍まで歩み寄る。

 

「……あのクソ共が……!」

 

「爆弾?」

 

「みたいやな。エレベーターの扉の外側に仕掛けられとったから、気づくんがギリギリになって服が吹き飛んだわ」

 

 基本的に裏倉庫に通じるエレベーターは使われないので、最終防衛手段としてレオルデはエレベーターのドアに爆弾を仕掛けていたのだ。

 上の階を壊さないように計算されていたので、威力はそれほどではなかった。

 ラミナは咄嗟に【堅】を発動して、ほぼ無傷で乗り切ったのだ。

 

 ラミナは額に青筋を浮かべて、怒りのボルテージを更に上げる。

 

 黒髪パーマの男は、更に強まった圧力と殺気、そして目に映った絶望の象徴に目を見開いて唖然とする。

 

「う……あ……」

 

 

 露わになったラミナの背中に刻まれていたのは、『11』の数字を背負う12本脚の蜘蛛。

 

 

 それが何を現すのか、男はよく理解していた。

 

「……幻影……旅団……」

 

「あん?」

 

 ようやくラミナが男の存在に気づいた。

 

「なんやコイツ?」

 

「雑魚だよ。気晴らしに使えば?」

 

「はっ! こんなん殺したところで気が晴れるかい」

 

「だろうね。じゃ、アタシがやるよ」

 

 マチは肩を竦めて男に歩み寄り、男の頭を蹴り砕く。

 地面と壁に血が巻き散り、頭を失った身体が横たわる。

 

「シズク。悪いけど、片づけお願い」

 

「うん」

 

「コル。悪いけど、マチ姉の上着コピーしてんか?」

 

「いいよ」

 

 シズクはデメちゃんを具現化して死体と血を吸い込み、コルトピはマチの着物と帯をコピーしてラミナに渡す。

 ラミナはマチとお揃い姿になり、一息つく。

 

「いつの間に刺青入れたの?」

 

「マチ姉と2人でカゴッシに帰る途中」

 

「……ウボォーと同じ場所にしたのね」

 

「うちなりの供養っちゅう感じやな」

 

 コルトピの質問に帯を締めながら答え、微笑みながら言うパクノダに肩を竦めるラミナ。

 そして、クロロに顔を向ける。

 

「で、もう終わったんか?」

 

「ああ。後は撤収だけだ。フィンクス達は?」

 

「フィンクスとフェイはフランの所に行ったで。ノブナガは……どこ行ったんやろ?」

 

「「「は?」」」

 

「いや……4人で警備員一番殺した奴に飯を奢るっちゅう勝負して、ノブナガが負けたんやけど。金ないとか言うてたから、そこらへんのお宝奪えばええんちゃうか~とか言うたら、どっか行ったんよ。すっかり忘れとったけど」

 

「……馬鹿じゃないの?」

 

「まぁ、ええんちゃう? アジトの場所くらい覚えとるやろ。行こ行こ。どうせもうエレベーター動かんし」

 

「外で拾った方が早いわね」

 

「シャルナークに連絡しておけば大丈夫じゃない?」

 

「そうね」

 

 ラミナの言葉にパクノダ、コルトピ、マチがそれぞれ反応し、クロロも頷いて撤収の準備を始める。

 

 すでに外では警備員も警察もほぼ全滅しており、クロロ達は悠々と美術館から逃げ出すのだった。

 

 

______________________

ラミナ’sウェポン! (忘れてました)

 

・【虚実投影】

 干将莫邪に付与された能力。

 

 分身を生み出して操り、分身と自身を入れ替える能力。

 

 入れ替わった際の姿勢は変わらないので、パッと見ではいつ入れ替わったのか分からない。

 実像ではないので、分身は壊れてもオーラをあまり消費せずに元通りに出来る。

 

 二刀一対であるため、他の武器との組み合わせが難しく、入れ替わるには分身を視界に入れていないといけないので、潜入などには不向き。

 

 

 




ノブナガの力はもちろん拙作オリジナルです(__)

それと刺青は変わり映えしないかもしれませんが、ウボォーギンリスペクトは大事かなと思ったので(__)
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