暗殺者のうちが何でハンターにならなあかんねん 作:幻滅旅団
1つ?お願いをば。
感想欄ですが、拙作について様々な感想を抱くのは当然です。
拙作について批判的書き込みをされることは文句はありませんし、基本的に私は削除することはありません。
自分の書き方や構成が未熟であることも理解していますからね。
しかし、そんな拙作でもお気に入り登録して下さり、楽しく読んでくださっている方々がいらっしゃいます。
その方々を遠回しであれ、侮蔑・中傷する書き込みだけは絶対に認めません。
もちろん、そんなことをされる方など一握り以下であることは承知しておりますが、1人でも、目に付く場所に現れてしまった以上、ここで言わせて頂きます(__)
拙作が気に入らないなら、評価システムを活用してくださいますようお願い申し上げます。
こういうのは、本編を書くよりも精神削れるのですよ(-_-;)
これっきりにさせて頂きたいです……。
自己満足の二次創作小説。
ここはそういうのが気軽に書ける場所のはずだと、私は思っております(__)
クロロ達はフランクリンを回収して、アジトに撤収する。
トラックはアジト近くの廃倉庫へと入れる。
倉庫には同じ大きさのトラックがあった。
「これに移すの?」
「ああ。流石にこのトラックで移動するのは目立つからな」
「っちゅうことは、アジトまで船で行くんか?」
「そういうことだな」
躊躇なく頷くクロロに、ラミナ、マチ、カルトは呆れる。
パクノダとフランクリンは苦笑し、シズクやコルトピ達は「そうするしかないじゃん?」と思っていたので表情は変わらない。
結局、文句を言ってもどうにもならないので、大人しくお宝を移すラミナ達。
「陰獣から奪った能力はどうしたん?」
「無くなっていたな」
「あぁ、あの陰獣なら邪魔だから殺したな」
「団長の能力がいつ戻るか分からなかったし、必要な情報は全部引き出したしね。フェイタンの拷問でボロボロだったし、マフィア達に返すのも面倒だったのもあるわ」
フランクリンとパクノダの言葉に、ラミナはそりゃそうかと頷く。
カルトは陰獣を知らないので、首を傾げる。
「陰獣って強かったの?」
「弱かったね。旅団に入る前のカルトでも殺せたんじゃない?」
マチは肩を竦めながら言う。
シズクはとっくの昔に陰獣がどんな連中だったか忘れている。そして、それは二度と思い出すことはない。
そこにシャルナーク、フィンクス、フェイタンが戻ってきた。
ノブナガがいないことにシズクが首を傾げる。
「あれ? ノブナガはどうしたんですか?」
シャルナークは呆れを浮かべながら肩を竦める。
「携帯持ってないから連絡が付かなかった」
「とりあえず、思いっきり『先帰る』って叫んでやったから聞こえてはいるだろぉよ」
「もうまともに警察も残てないから、問題ないね」
「ノブナガって、ここ知っとるんか?」
「……知らないかもな。まぁ、向こうのアジトに戻れれば問題ないだろ」
哀れなノブナガに誰一人同情せず、クロロを除く者達はただただ呆れるのみだった。
マチはため息を吐いて、クロロに顔を向ける。
「この後はどうすんの? まだ全員で動くの?」
「……いや、船を動かせる連中がいれば十分だ」
「残っておくべきメンバーは?」
「準備をしたシャルナーク。証拠隠滅要員のシズク、パクノダ、コルトピ。後は俺と護衛くらいだな」
「俺とボノは目立つからトラックに乗って護衛の方がいいだろうな」
「うちは結構顔バレしとるみたいやから、別行動した方が陽動になるやろ。警備員の生き残りがおったら面倒やしな」
「なら、俺とフェイ、ノブナガも別行動しとくか。俺らも警備員達の前に顔晒して、のんびりしてたし」
「そうね。ワタシ達なら、少しくらい追手が来ても問題ないね」
暴れ回ったラミナ、フェイタン、フィンクスは別行動を取ることに決めた。
ラミナは他の団員より顔が広まっているので、わざとどこかで顔を晒せば賞金首ハンターの多くは自分の方に動くだろうと推測した。
フェイタンとフィンクスは純粋にコソコソ動くのが面倒だから、である。
恐らくノブナガもフィンクス達に同意するだろうと考えていた。
これで残ったのはマチとカルトとなり、もちろんマチは、
「じゃ、アタシはラミナと動くよ。そっちに残っても、トラックが狭いだけだし」
「いいだろう。カルト、お前はどうする?」
クロロは頷いて、残ったカルトに顔を向けて訊ねる。
カルトは閉じた扇子を口に当てて考え込む。
「……ラミナと行く。そろそろお爺様達から仕事も来るかもしれないし」
「あ~……そうやなぁ。もうクロロのお守りもないし、自由に動けるからなんか言うてくるかもなぁ」
「まだやんの?」
「そりゃあ、今の所うちに仕事の依頼するんはゾルディックくらいやし。金払いがええんよなぁ。今、仲介屋は信用出来んでな」
そもそもヨークシンに入る前に、クロロがあちこちの名のある仲介屋で偽の十老頭暗殺依頼を出しまくったせいである。
あの後、十老頭が本当にゾルディック家に暗殺されたのだが、それは「ゾルディック家にも依頼出してやがったのか」で終わる。
しかし、コルトピのコピーではあったがクロロの顔がネットに晒され、ラミナが旅団と繋がっていることは問題だった。
特にラミナは、ヨークシンの仲介屋はその時旅団とは知らなかったとは言え、ウボォーギン達の討伐依頼を引き受けていたことが決定的だった。
仲介屋の同業での繋がりは強くて広い。
1つの仲介屋を裏切ったら、全体の半数の仲介屋は使えなくなると言われているほどである。
そして、その情報はそう簡単に消えることはない。
ただでさえ幻影旅団と繋がっているのだから、実は仲介屋はマフィアや賞金首ハンター達よりも厳しい指名手配を敷いていたりする。
なので、ラミナは殺し屋としての収入は、完璧にゾルディック頼み状態である。
「なんか……やっぱ外堀埋められてないか?」
シャルナークが首を傾げ、その言い方にマチが顔を顰める。
ラミナは少し大げさに肩を竦めて、
「カルト押し込まれた時点で今更やで。流石に仲介屋も無しとなると足元見られるし、旅団やっちゅんバラすわけにもいかんやろ?」
旅団員だとバラしたら、逆にターゲットにされるに決まっている。
「もう殺し屋は廃業でもいいんじゃない?」
「……まぁ、なぁ……」
パクノダの言葉にラミナは悩まし気に腕を組む。
確かに辞めても問題ないのだが、妙に後味が悪い辞め方であると感じているラミナ。
もっとも、旅団に入った時点で殺し屋を辞める辞めない以前の問題であることには誰も思い至らない。
盗賊である意識が強いためか、全員が頭の中で殺し屋とは違うと思い込んでいた。
唯一違和感を感じていたのは、カルトだけだった。
しかし、カルト自身も違和感の理由に気づいておらず、小さく首を傾げるだけだった。
カルトはどちらかと言えばシルバやゼノとは違い、『金のために殺す』ではなく、『殺したらお金が入る』という旅団に近い感覚の持ち主だからである。
これはカルトの殺しの多くが、イルミの付き添いであったことによる弊害と言える。
もう少しクロロの復活が遅れていれば、ラミナやシルバの感覚も理解できただろうが、その前にクロロが復活のめどが立って、旅団と合流したのでその未来は消え去った。
「まぁ、辞めようが続けようが、ゾルディック家が連絡してくるやろうから、結局は変わらんな。まぁ、カルトへの仕事っちゅうことなら、今後はカルトが他の団員に声かけてもええとは思うで。小遣い稼ぎにはなるやろ」
と、問題を後回しにすることにしたラミナだった。
その後、クロロ達は荷物の積み込みが終わり次第、出発した。
ラミナ達は最初のアジトに戻ると、苛立ちを隠さずに胡坐を組んで座っているノブナガを見つめた。
「あ、いた」
「あ! テメェら、どこに行ってやがった!!」
カルトの声でラミナ達に気づいたノブナガは、跳び上がるように立ち上がって詰め寄ってくる。
それにマチ達は呆れを浮かべて、
「こっちのセリフだよ」
「団長達はもうホームに向かったぜ」
「ワタシ達はここから別行動ね」
「なにぃ!? じゃあ、俺が盗んだお宝はどうすんだよ!?」
「んなもん自分で処理せんかい。お前が勝手に盗んできたもんやろが」
「っていうか、何盗んできたんだ?」
「あぁん? ちっ……絵だよ、絵」
ノブナガは舌打ちして、奥の壁に立てかけている絵を親指で指す。
絵を目にしたラミナとフェイタンは、すぐに呆れの色を深める。
「お前なぁ……なんでコレやねん?」
それは花瓶に飾られた向日葵の絵だった。
「んだよ? これって有名なんだろ?」
「有名すぎんねん。もうちょい真贋が難しい奴にせぇや。この絵は模写やら複写やらが星の数ほどあるから、偽モンの見極め方も有名で逆に簡単なんや」
「はぁ!? マジかよ!?」
「はぁ~……ここらへんの骨董品屋や闇市にゃ出せへんぞ? それなりの裏ルートがある組織でもない限り、バレた瞬間終身刑確定やろうからな」
「じゃあ、その裏ルートがある組織に売ればいいじゃねぇかよ」
「阿呆。コネもないし、そういう連中は大抵国とも繋がりを持っとる。裏倉庫の一部を奪ったうちらがのこのこと現れたら、速攻で通報されるで」
「それだけの組織は拠点もそう簡単に捨てれないね。だから、国とは持ちつ持たれつの関係を作てるよ」
「マジかよ……。じゃあ、この絵は……」
「今の所、ただの荷物やな。まぁ、この国から出れば、どっかで売れるかもしれんけど……」
ラミナは小さくため息を吐いて、
「あれだけ暴れたんや。もう世界的ニュースになっとるやろうし、裏倉庫の事は公表出来んけど、その絵が盗まれたんは公表できるやろうからな。ド田舎でも行かんと、怪しまれるだけやろな」
もう少し知名度が低く、かつ倉庫などに保管されていた物を盗んでいれば時間が稼げたかもしれないが、ここまで世界的に有名な絵などすぐにバレるに決まっている。
なので、下手に持ち運べないし、売りにも出せない。
恐らくしばらくは、贋作であろうと売りに出されている目の前の作品は、この国やハンター達に全て売り主から入手ルートまで細かく調べられるだろう。
そして、それを売る側も理解しているはずなので、しばらくは出品はもちろん買取すらも控える可能性は高い。
なので、目の前の絵は間違いなく金銭的価値はない。
ノブナガは肩を落として項垂れる。
それに全員が呆れた視線を向けて、お宝への興味を無くす。
「お前ら、どこ行くつもりなんだ?」
「ん? ん~……サヘルタに戻るつもりや。隠れ家も近いし、色々と目をこっちに向けられるやろうしな」
「ふぅん……。んじゃ、俺らはジャポンとかアイジエンの方にでも行ってみるか?」
「ジャポンでいいね。お宝の情報でも探しに行くよ」
ノブナガを放置して、お互いの目的地が被らないように相談する。
「じゃ、もう行く? ここ、朝まで過ごすには不向きだし」
「そうやな。流石にハンターも動いとるやろうし、隠れるにしてももう少し逃げやすい場所がええな」
「だね。行くよ、ノブナガ」
ここは廃ビルの地下。
警察でも真っ先に捜査の目を向けるだろう。
警察は殺せばいいが、ハンターは流石に面倒だった。
フェイタンが未だ落ち込んでいるノブナガに声を掛ける。
「はぁ……わぁってるよ」
「その絵、ここに置いていけば?」
「だな。ラミナ達の話じゃ簡単に売れねぇみたいだし。持って行っても邪魔なだけだ」
「ちくしょ~」
「あ、奢りは無しにならんで。ちゃんと他の方法で稼ぎや。次の時まで待ったるから」
「わぁってる! こうなったら、ジャポンで意地でも稼いでやる! おら、行くぞ!」
「お前が仕切んな」
絵をその場に放置して足音荒くアジトを後にするノブナガに、呆れながらついて行くフィンクス達。
ラミナ達もそれに続いて、外に出てすぐに二手に分かれて、移動を始めた。
「飛行船?」
「の方が楽やけどな。流石にこの近くの空港はもう封鎖か、検問されとるやろうし……。忍び込むか」
「その方が楽だろうね」
「ほな、空港行こ」
ラミナ達3人は気配を出来る限り消して、最大速度で街を駆け抜ける。
しかし、それは同時に、
「お~いカルト~、早よ来んと置いてくど~」
「っ……!」
カルトにとって地獄のマラソンになると言うことだった。
大粒の汗を額に浮かべて、これ以上離されまいと全力で脚を動かすカルト。
マチはラミナの少し後ろを走りながら、呆れた顔をラミナに向ける。
「あれじゃあ空港に着く頃には倒れるんじゃないの?」
「そこまで柔には鍛えとらん。大体うちよりも疲れるん早いってどういうこっちゃねん」
クロロ達に合流してからは【絶】で回復に努めていたが、それでもまだ半分くらいしかオーラは回復していない。
更には完勝とは言え戦闘後なので、当然疲労は溜まっている。
なのに、そのラミナよりも先にバテるのは頂けない。
最近はちゃんと体力、筋力面の修行をさせていないので、暇を見つけたら再開しようと考えるラミナ。
更には最近修行と組み手でガチの実戦をさせていないことも問題かと思い、ラミナの方からゼノに仕事の依頼でもした方がいいかもしれないとも考えた。
そこから30分ほどかけて、空港に到着するラミナ達。
やはり空港周辺や中では警察や警備員やらがワラワラしていた。
「お~。まぁ、せめて国内に留めときたいわな~」
「どれがヨルビアン大陸行き?」
「さぁ?」
「あのねぇ……」
「しゃあないやろ? 確認したいけど、明らかに空港内に念能力者がおるんやから」
空港内には【円】が張られていたのだ。
【朧霞】では【円】を誤魔化せないし、【絶】や【隠】で隠れるにはリスクが高い。
後ろでへばっているカルトもいることもあり、怪しまれる可能性が否定できない。
しかし、だからと言ってカルトを休ませないのがラミナとマチである。
「おい、カルト。もう行けるやろ。お前の能力でそこらへんの連中、盗み聞きして探れや」
「動かないし、行けるでしょ」
「…………分かった」
カルトは息を整えながら、手早く人型の紙を数枚取り出して操る。
特にトランクなどの荷物を運んでいる職員を狙い、数人に貼り付けて声を聴く。
職員ならば、口頭確認で行き先を口にする可能性が高いからである。
飛び立ちそうな飛行船を集中的に狙い、10分ほどするとサヘルタ合衆国の名前が出た。
ラミナ達は飛行船に向かう経路を確認して、【朧霞】で姿を消したラミナが注意を引きながら3人は飛行船に飛び乗る。
乗り込んでしまえば、チケットを確認されない限りバレる可能性は低いので、飛び立つまでは食堂で客のふりをする。
ちなみにラミナは空港に向かう途中で干されていた洗濯物を物色して着替えている。
クカンユ王国からサヘルタ合衆国まで約4日。
その間、どうにかして寝床などを探さなければならないが、
「バレたら全員殺して、飛行船を乗っとればいいよ」
というマチの言葉で、カルトは納得してラミナはため息を吐いて色々と諦めた。
しかし、初日からそれをするのも面倒だったので、空室を探してバレないように鍵を開けて、そこで寝泊まりすることにした。
それで運がいい(乗員にとって)ことに、バレることなくサヘルタ合衆国に到着した。
再びバレないように空港から抜け出し、街へと移動する。
到着したのは【ゼルンロサスシティ】だった。
ラミナ達は安ホテルに部屋を取り、ラミナは一度ネットカフェに足を向ける。
その間もブールブ美術館襲撃事件が世間を賑わせており、テレビではコメンテーターが的外れの知ったかぶり発言をしていた。
どうやら襲撃者が旅団であることは、まだ発表されていないようだった。
(ふむ……。クモの名前くらいは出ると思とったんやけど……ネテロやハンター協会が止めるわけないやろうし、ジンもちゃうやろなぁ)
誰が情報を規制しているのか思い浮かばずに歩きながら首を傾げるラミナ。
盗まれたかどうかはともかく、襲撃されたこと自体は報じても問題ないはずだ。
正体不明の襲撃犯を押し通すよりも、クモの名前を出した方が世間はまだ納得する可能性が高い。
(ああ……そうか。マフィアンコミュニティーがおったな。一度『仕留めた』と大々的に発表して、ネットに首まで晒したのに『実は全員生きてました』となりゃ、ただでさえ駄々下がりの権威が更に駄々下がりやもんなぁ。下手すりゃ、マフィアンコミュニティーそのものが崩れ去るか)
すでにマフィアンコミュニティーはブランド名だけで生き永らえている集団に過ぎなくなってきている。
新十老頭への野心、抗争、消滅と新設の繰り返し。
特にカキン王国では、すでにマフィアンコミュニティーの勢力は一掃されつつある。
王国の王子と繋がっていたマフィアが一気に台頭してきたからだ。
もちろんほとんどの組がクモが生きていることに気づいているが、それを公表するしないでは大きな違いがある。
それはつまりヨークシン時にクモ討伐に関わった当時の十老頭直下組の失態を公表することになるからだ。
彼らは新十老頭に就任したり、新十老頭になった組の後ろ盾になったりしているのがほとんどだ。
その者達の失態が晒されたとなると、再び十老頭の選出し直しや落ち着いてきた抗争が再開される可能性が高い。
特にクモの情報すら掴めない血の気だけ多い組が、確実に暴れ出す。
そんな者達に潰されるほど弱ってもいないが、暴れられたという事実がすでに落ち目なのだ。
なので、マフィアンコミュニティーは必死にクモの存在を隠そうとしている。
もちろん、無駄な努力で終わるのだが。
ラミナが入ったネットカフェで一般公開されているネットニュースの中にチラホラとクモの名前が出されていたからだ。
情報関係に携わるプロハンターやその庇護下にいるジャーナリスト達である。
マフィアの権力など知ったこっちゃない命知らずの者達が次々と出す情報が少しずつ広がって来ていたのだ。
しかし、何を盗まれたのかまでは流石に発表していない。
ノブナガが奪った絵すらも発表されていなかった。
「……裏倉庫は公表できんとして……。まさか、他はあの絵しか盗まれんかったから、クモやのうて火事場泥棒とでも思われたんか?」
戦闘で美術館を美術品そのものを破壊しているのに、あの絵だけをわざわざ盗んだ意図が警察やその他捜査関係者達には理解出来なかったのだ。
そのため、絵に関しては別人の可能性があると的外れの推測をしていた。
しかし、それを肯定も否定もする前に、廃ビルの地下で無造作に放置されていた絵を発見してしまい、急いで発表する必要もなくなってしまったのだった。
ラミナは続いてハンターサイトを見る。
「……お~……うちが旅団に入ったんは確定扱いされとるな。ん? 懸賞金が消えとるな。いや……単に規定額じゃなくなっただけか」
A級首集団の幻影旅団に入ったことで、ラミナを狙うことは旅団全体を敵に回す可能性があるので、これまでのように単独の殺し屋として懸賞金をかけるのが難しくなったのだ。
それでも最終表示金額は数十億を超えていたので、最低でその額なのは賞金首ハンター達も理解している。
しかし、表示されないということは、ハンター協会ですら『危険度が高い』と判断したということだ。
そして、幻影旅団に関する情報の閲覧料も更に金額が上がっており、そこらへんのハンターでは見ることも出来なくなっている。
それだけでも旅団の危険度が更に上がったことを示していた。
「逆に言えば、これから現れる奴はそれなりの腕を持っとる可能性が高いっちゅうことやな。まぁ、今更やけど」
さらにラミナはヒソカやクラピカの情報を調べることにした。
ヒソカの情報は変化無し。
クラピカは、ノストラードファミリーの若頭になっていた。
「おぉおぉ。立派になったもんやなぁ。……そこそこ修羅場はくぐったみたいやなぁ。所詮はマフィアとしての、やけど。緋の眼も結構取り戻してるみたいやな。終わった時にどう動くか、やなぁ」
復讐に動くのか、鎮魂に伏すのか、正義に動くのか、自由になるのか。
「……前2つはともかく、後2つはないか。あいつがそんな器用に生きれるわけないわな。まぁ……ゴンが関わったら分からんけど」
ゴン達はまだゲーム内にいるようで相変わらず情報がない。
そこで席を立って、ラミナはホテルへと戻ることにした。
その時、携帯が鳴る。
表示された名前は、イルミだった。
「イルミぃ?」
ラミナは盛大に顔を顰めて、嫌々だが電話に出る。
「……もしもし?」
『や。久しぶり』
「何の用や?」
『仕事の依頼。手伝ってほしいんだよね』
「なんでうちに?」
『親父も爺ちゃんも他の仕事で動けなくてね。だから、カルトでもって思ったけど、今は君に鍛えて貰ってるって思い出してさ』
「……」
『団員になったみたいだし、そっちに伺いを立てるのが筋と思っただけ。それにクカンユの事件って旅団だろ? なら、丁度暇になったんじゃない?』
「……まぁ、カルトは一度仕事させようか思とったからええんやけど……。場所は?」
『【トルシア】だよ。待ち合わせは4日後。どうだい?』
「……はぁ。まぁ、ええけど……。他の団員とも一緒におるから、相談してまた連絡するわ」
『了解』
通話を終えて、ラミナはため息を吐く。
「なんか企んでそうで嫌やなぁ……。あいつだけはゾルディック家でもシルバ達の意見を無視する時がありそうやからなぁ……。流石に殺しに来たりはせんやろうけど……」
信用ゼロのイルミからの誘いに、盛大に顔を顰めるラミナ。
しかし、暇だったのも事実なので、カルトに委ねることにした。
決してマチに睨まれたくないからではない。
カルトの修行にいいからである。
だから、カルトに決めさせるのだ。
そう心の中で言い訳したラミナは、帰る途中で酒とツマミを購入し、気持ちゆっくりな足取りでホテルに戻るのだった。
決してマチに睨まれたくないからではない。
ないったら、ないのだ。