暗殺者のうちが何でハンターにならなあかんねん   作:幻滅旅団

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本当にお待たせしました(_ _)


#86 チイサイ×ノニ×チメイテキ

 1人の殺人鬼が抜けて、3人になった殺人鬼の壮絶な殺し合いが続いている。

 

 それをカルトは3階の窓から眺め、無意識に眉間に皺を寄せていた。

 カルトの足元には体がバラバラになった死体がいくつも転がって血の海が出来ていたが、カルトはもはやそんなことは頭から消えている。

 

(……全然動きが見切れない。なんであんな体勢から攻撃が出来るのかが分からない。見逃したつもりはないのに、気づいたら攻撃が繰り出されてる)

 

 中庭で行われているバケモノ達の饗宴に、自分がまだまだ未熟である事実を叩きつけられる。

 

 瞬きもしていないのに、コマ送りされたように3人の姿勢が変わっており、位置が変わり、攻守が変わっている。

 

(なんで【アバズレ】って奴は、ラミナや【ロストマン】の様々な能力を見切ったように動けるの? いや……見切ってるわけじゃない?)

 

「カルト」

 

 後ろから声をかけられて、振り返るとマチが腕を組んで立っていた。

 マチはカルトの横に立って、窓から中庭を見下ろす。

 

「……いつまで遊んでるんだか……」

 

「ラミナ?」

 

「あとイルミ。あいつもどっかで観戦してんでしょうけど」

 

「まぁ、イルミ兄さんは……。けど、ラミナは結構ギリギリっぽいけど?」

 

「全然よ。本気だったら、もっと手段を選ばずに派手な武器使ってるし、あんな弾丸避ける必要ないからね」

 

「……切り札って奴?」

 

「ん? アンタ、ラミナから聞いたことないの? 見たことも?」

 

「……ない」

 

「ふぅん……。ま、どうせゾルディックを信用しきってないからなんだろうけど」

 

 マチの言葉にカルトは顔を顰める。

 

 確かにゾルディックは二度もラミナと殺し合ってる。ヨークシンではキルアのためとはいえ、脅したのもある。

 婚約者というのはシルバ達が勝手に言っているだけで、本人達は認めていない。

 幻影旅団に属した以上、ゾルディックは敵対する可能性がある。その場合、カルトもゾルディック側に回る可能性がある。

 だから、ラミナは必要以上に話さないし、必要以上に聞かない。

 

 妙にところどころ距離感を感じていた理由を理解したカルト。

 

「ま、切り札に関してはアタシ達だって話さないからね。だから、これはラミナにとっては切り札ってほどのもんじゃないよ」

 

「じゃあ、何?」

 

「あいつはどうやら特殊な部族の血筋らしくてね。【月の眼】って言う能力で、自分のオーラを見た奴のオーラと全く同じものに変えて、相手の能力を無効化することが出来るんだよ」

 

「……」

 

「ま、他にもなんかあるかもしれないし、色々とデメリットはあるけど。それを使えば、ロストマンくらいは倒せるだろうね」

 

「アバズレは?」

 

「あいつはねぇ……見た感じウボォーやノブナガみたいな奴だから。小細工は難しそうだね。ラミナはあくまで時間稼ぎに徹してるんだよ。イルミがターゲットを殺せば、終わりだから。けど……そのイルミが遊んでるんだから、あの子そろそろキレると思うよ? アンタ、八つ当たりされないといいね」

 

「え゛」  

  

「そろそろアタシはここを離れるよ。警察が来てるし。アンタも別に見ててもいいけど、巻き込まれないようにね」

 

 マチはそう言って窓から目を放して、反対側の窓に向かっていく。

 カルトは頬を引きつかせてその背中を見送り、数秒中庭を見つめてラミナのオーラが膨れ上がった瞬間、猛ダッシュでマチの後を追いかけるのだった。

 

 

 

 時は少し戻って。

 ラミナはロストマンとツマベニの猛攻を凌ぎながら、徐々に苛立ちを高めていた。

 

(あんのクソ針……! 何チンタラしとんねん)

 

 いくつかの視線がこっちを見ているのはずっと感じ取っていた。

 その内の1つがイルミであることは何となく感じていたが、それがず~っと動かないのだ。

 針人間にでもやらせてるのかと思ったが、その周囲の殺気や気配が全然減らない。

 マチやカルトだろうと思われる実力者が、さっさと周囲の気配を殺して、こっちを見ているのは構わない。

 しかし、イルミが動かないのがムカツク。

 

(誰のせいでこうなっとんねん……!)

 

 半分はラミナのせいだが、それを棚に上げる。

 

「いい加減、わてに集中しておくれやす」

 

 ラミナが勢いよく屈むと、頭上を銀閃が走る。

 

「嫌や」

 

 屈んだ姿勢のまま斬首剣を振り上げるが、ツマベニは打ち合うことなく横に跳んで躱す。

 先ほどからツマベニは徹底的に斬首剣との斬撃を躱していた。

 それに舌打ちをしたくなるラミナ。

 

「んとに、ムカツクやっちゃなぁ」

 

「おおきに。ほな、()()()()殺し合い出来ますえ」

 

「せぇへん」

 

「いけずなお人やなぁ」

 

「殺気の籠った攻撃がお望みかね?」

 

 全く殺気の籠っていない声が2人の耳に届き、直後銃声が響き、閃光が襲い掛かる。

 ツマベニは大きく後ろに跳び下がり、ラミナはソードブレイカーで防ぐ。

 

 ラミナは斬首剣を消して、レイピアに変える。

 

「【啄木鳥の啄ばみ(ピアス・ビーク)】」

 

 ロストマンに向かってレイピアを鋭く突き出す。

 

 ロストマンは剣筋上から外れて、距離を取る。

 

(どいつもこいつも勘が良すぎるわ、全く……)

 

 どうにも決定打に欠ける戦況に更に苛立ちを高める。

 

 そこに再びツマベニが斬りかかってきて、嵐のような斬撃が襲い掛かる。

 ラミナはレイピアを消して、その全ての斬撃を紙一重で躱す。

 

「くふ♪ ホンマ、楽しいわぁ。リッパーはん」

 

「うちは楽しないわ」

 

「わては武器よりも、その身のこなしに惚れ惚れしますよって。わての腕の位置と筋肉の動き方から剣筋を読んではるんやろ?」

 

「……」

 

「振り始めと切り返す時は、どうやっても速さは落ちてまう。リッパーはんの目を誤魔化すんは厳しおすなぁ」

 

 ラミナは刃が付くあらゆる武器を使う。

 故に【リッパー】と呼ばれているのだが、その真価はその武器達を使いこなす体術である。

 

 ツマベニの斬撃は恐ろしいが、使っているのは熟知した刀。

 姿勢や握り方、筋肉の動きを捉えれば、その剣筋を読むのは()()()()()()

 

 これまでの戦いから、【蛇活】などの関節を外す様子もない。

 なので、ツマベニの斬撃は、人の関節可動域から外れたモノはないと判断できる。

 

「避けるんが精一杯やけどなー」

 

「嫌やわぁ。躱されるんが一番屈辱的なんはリッパーはんもよぉ分かってはるやろうに」

 

 防がれるならば、()()()()()()()()()

 しかし、避けられてしまえば、どうやっても斬ることは出来ない。

 

 刃が届かない。

 

 それは刃の武器を扱う者にとって、何よりも屈辱なのだ。

 

「せやから……あんさん()を斬りたぁて斬りたぁて、たまらんのやあああ!!」

 

 目を見開いて、狂気的な笑みを浮かべたまま斬りかかるツマベニ。

 しかし、向かったのはラミナではなく、二丁銃剣を構えるロストマンだった。

 

 その瞬間をラミナは逃さなかった。

 

 体からオーラを噴き出し、右手に具現化したのは螺旋剣。

 

 回転させて帯電するのを確認した瞬間、斬りかかっていたツマベニと下がって躱していたロストマンは、弾かれたように左右に跳ぶ。

 

「ええ加減に……」

 

 ラミナは左足を大きく踏み出す。

 

「せぇやイルミイイィィ!!」

 

 

ドッッッパアアアアァァァン!!

 

 

 ラミナが右腕を振り抜いた瞬間、轟音と閃光が中庭を支配する。

 

 ロストマンとツマベニは片腕で目を守りながら、建物内に飛び込む。

 ラミナは息を吐きながら屋根の上に移動する。

 

 光が落ち着くと、中庭の様相が一変していた。

 

 ホテルの北側が抉られたように崩れ去っていた。

 

 ラミナはツマベニ達ではなく、全く仕事をしないイルミととっとと死にも逃げもしないターゲット達を狙ったのだ。

 

「ふん! これで終わりやな。ほな、逃げよか」

 

 痺れた右腕をプラプラと振りながら、崩れ去ったホテルを見下ろすラミナ。

 

 その時ラミナは、化け物達との戦闘で少なからず消耗し、仕事を終えたと思ったことで一瞬だけ集中と殺意を緩めてしまった。

 

 

 その隙を、飢えた獣は見逃さなかった。

 

 

 ラミナの右上腕を、銀閃と一筋の風が通り過ぎた。

 

 

「―――!!!!」

 

 大きく目を見開いたラミナは、右腕の感覚が消えたのを感じ、真下から獣が飛び出してきた。

 

「やられてしもたなぁ……お互いに♪」

 

 目を見開いて嗤うツマベニが、右手の刀を振り上げる。

 

 次の瞬間、

 

 ラミナが目を見開いたまま、無拍子で飛び出してツマベニの懐に潜り込んでいた。

 

 ツマベニは背筋に悪寒が走り、反射的に左腕を胸の前に動かす。

 直後、強烈な衝撃が襲われて吹き飛ばされた。

 

 左脚を突き出しているラミナの姿を見て、蹴られたことを理解したツマベニ。

 

(全く見えへんかった……! 殺気すらも……くふ♪)

 

 それでも笑みを更に深めるツマベニ。

 

 まだラミナに先があると理解したから。

 中庭に下り立って、再び詰め寄ろうと顔を上げる。

 

 しかし、ラミナはすでにいつも通りの雰囲気に戻っており、めんどくさそうな顔で斬り落とされた右腕を左脇に挟んで去ろうとしていた。

 

「やらかしたわ……。ホンマ……最悪の仕事やな」

 

「逃がさへんよおおぉ!!!」

 

 ツマベニが獣のように身を低くして駆け出そうとした瞬間、側面から一筋の閃光が放たれた。

 

 ツマベニは躱そうと小さく跳び上がったが、そこにもう一発の弾丸が迫って来ていた。

 

「っ!! ひゃあ!!」

 

 左手の短刀で弾丸を斬り落とそうと刃が触れた直後、

 

 

バアアァン!!

 

 

 弾丸が爆発して、ツマベニは反対側のホテルに吹き飛ばされて突っ込んだ。

 突っ込んだ建物が崩れていくのを見ながら、ラミナは背を向けてホテルから去る。

 

「借り1つ、やな」

 

 そして、銃弾を放ったロストマンも銃剣を消して、背を向ける。

 

「貸し1つ、だぞ」

 

 そう言ってホテルから姿を消した。

 その直後にようやく警察が押し寄せてきたのだった。

 

 

 

 ラミナはホテルから数km離れた路地裏で、壁にもたれて座り込む。

 

「はぁ~……しんどぉ」

 

「馬鹿なこと言ってんじゃないよ」

 

 大きくため息を吐いてボヤくと、マチとカルトが下りてきた。

 マチは不機嫌全開でラミナに歩み寄り、カルトはラミナがやられていることに唖然としていた。

 

「とっとと腕出しな」

  

 マチはラミナの右傍に屈んで、不機嫌に言い放つ。

 ラミナは拗ねた顔を浮かべてそっぽを向き、右腕をマチに渡して右袖を捲る。

 

 マチは捲った右袖を念糸で縛る。

 

「力抜いて、オーラ止めて。腕は持って」

 

「……へ~い」

 

「あ?」

 

「ハイ」

 

 傷口から血が噴き出し、傷口に合わせるように右腕を固定する。

 マチが念糸を用意して、傷口を注視する。

 

「……行くよ。【念糸縫合】」

 

 次の瞬間、マチの右腕がブレ、猛スピードで念糸が傷口と傷口の間に結ばれていく。

 

 路地裏の暗闇に淡く輝く念糸が舞う。

 

 それは30秒もせずに終わり、マチの手が止まった時には太い光がラミナの腕を繋ぎ合わせていた。

 

「終わり。血管、神経、筋肉、骨、100%繋げたよ」

 

 そう言いながら右手を引くと、傷口と傷口が引き寄せられるように合わさる。

 残ったのは右上腕を1周する皮膚の切れ目のみ。

 右手を離握手して感覚を確かめたラミナは、大きくため息を吐く。

 

「ハァー……おおきに。代価は?」

 

「当分下僕。金は、あいつに貰う」

 

 ずっと下僕だったとツッコもうかと思ったが、マチが縫合を始めた直後に現れたイルミを指差したので、言うのを止めた。

 今のマチを刺激したくないというのが本音であるが。

 

「いや~、悪い悪い。つい見入っちゃった」

 

「嘘つけ阿呆。お前のターゲット、アバズレの方やったな?」

 

「あ、やっぱ分かった?」

 

 あっけらかんと言い放ったイルミに、ラミナとマチは青筋を浮かべて、カルトは目を丸くする。

 イルミは両手を上げて、

 

「言っとくけど、あのターゲットも嘘じゃないよ。あれはカルト達の方の仕事だったからね。だから、報酬は全額ちゃんと出るよ。交渉も嘘じゃない。俺の方は失敗だけどね」

 

「ほんなら、自分でやれや」

 

「いやいや、流石にあの面子は俺でも厳しかったんだよ。だから、アバズレが殺れたら、すぐにそっちのターゲットも始末するつもりだったんだぜ?」

 

「やかましいわ。道理で全っ然殺さへんと思たわ。あいつら殺したら、うちが戦う理由無くなったでな」

 

「そうなんだよ。けど、最初に正直に言うと乗らなかっただろ?」

 

「当たり前や。ロストマンと捩魔がおらんかったら、話は別やったやろうけどな」

 

「だから、厄介だって言ったろ? どうやって君を乗らせるか必死に考えたんだ」

 

「このクソが……」

 

「でもアバズレの奴、全然隙見せてくれなくてさー」

 

「無理や無理。あいつに奇襲するんやったら、ああなる前にやらんとな」

 

「うん、だから失敗。で、取引で騙した分の弁償はちゃんと払うよ。治療費込みの100億でどう?」

 

「……ま、そんなところやな。ただ、お前からの依頼はもう受けんで」

 

「分かってるよ。流石に親父達やクモをこれ以上怒らせる気はない」

 

 イルミの言い方に何かが引っかかったラミナ。

 

「……待てやコラ。お前、何したんや?」

 

「ヨークシンで騙した埋め合わせにヒソカに医者紹介して、仕事手伝ってもらった報酬でクロロの情報渡した」

 

「……お前なぁ……!」

 

 ラミナは左手で額を押さえて項垂れ、マチは殺気を全開にして、カルトは流石に呆れた。

 イルミからすれば、クロロの情報を隠しておく必要性はないので、話す可能性があると思ってはいた。

 しかし、仕事の報酬となるとラミナからすれば正当な取引なので、怒るに怒れない。

 

「マチ姉、イルミにキレるだけ無駄や。もう情報渡しとるし、あれだけ暴れたらどっちにしろヒソカも分かったやろ」

 

「ヒソカに教えたのは美術館襲撃直前だから、今の居場所はバレてないと思うよ。教えた場所から、あそこまで数日はかかるはずだし」

 

「ヒソカってホーム知っとるん?」

 

「……知らないはずだよ」

 

「なら、メールでクロロに連絡しとき。それでクロロなら十分身を隠せるやろ」

 

「……そうだね」

 

「ほんじゃ、うちらは行くで。ええよな?」

 

「ああ。今回は悪かった。報酬は爺ちゃんの仕事の時の口座でいい?」

 

「それでええ。はぁ……早よ寝たい。当分はカルトに合わせた仕事よこせや。うちの腕も本調子に戻るまで時間かかるし」

 

「爺ちゃんに言っとく」

 

 そう言ってラミナ、マチ、カルトは街を離れるために走り出す。

 

 イルミもすぐにその場から離れて、後始末に動くのだった。

 

 

 

 

 無残に崩れ去ったホテルにて。

 

 警察、救急車、救急隊などが走り回って、被害状況を調べていた。

 

 そこにはミザイストムと坊主頭に金環を身に着けた十二支んが『申』サイユウ、そして白マントを靡かせる賞金首ハンターのブシドラがいた。

 

「おーおー、こりゃスゲェな」

 

「この惨状にハンターが関わっているとバレれば、協会の名誉が汚される! やはりハンター十か条の改革は必要だ!」

 

「今は被害の確認が先だ」

 

 サイユウは小指で耳を穿りながら言い、ブシドラは腕を組んで顔を顰めてラミナがハンターを名乗っていることを嘆き、ミザイストムはそれを宥めながら周囲の警戒を続けていた。

 

「ゾルディック家もいたかもしれねぇんだろ? 賞金首のオンパレードだな」

 

「監視カメラのデータが完全に破損している。ゾルディックの方は確認しようがないな」

 

 ラミナの【天を衝く一角獣】の攻撃で吹き飛んだ建物の一室に監視カメラのサーバーがあったのだ。

 完全に崩壊したことでデータが取り出せず、ホテル内の監視カメラはただの飾りとなっていた。

 

 その時、同じく崩れていた西側の建物の瓦礫が突如舞い上がる。

 

 ミザイストム達はすぐさま現場に走る。

 

「ハンターだ!! 全員下がれ!!」

 

「巻き込まれても助けねぇぞぉ!!」

 

 ミザイストムとサイユウの言葉に警官達は慌てて離れる。

 

 瓦礫の下から人影が飛び出して、崩れていない屋根の上に下り立つ。

 

「ふあ~……ちょっと寝てしもたなぁ。久々に動き過ぎて疲れてもうたんかねぇ」

 

 人影、ツマベニは周囲の状況など気にも留めずに欠伸をして首をコキコキと鳴らす。

 

 爆発で吹き飛ばされて瓦礫に埋まり、今まで気を失っていたのだ。

 最後のラミナの一撃に気を取られ過ぎて、ジャンプしていたせいで爆発の衝撃をいなし切れなかった。

 

「あれは、【アバズレ】……ツマベニか……!」

 

「ん? お? おやおやまぁまぁ、十二支んのお歴々やないの」

 

「んだよ、全然ピンピンしてんじゃねぇかよ」

 

「そうでもありまへんえ? 左腕は折れてもうてるし、オーラも随分使てしもたねぇ。お宿も壊れてもうたし、寄生主も殺されてもうた。今回はボロボロですよって」

 

「ならば、大人しく投降しろ!」

 

 ブシドラの警告に、ツマベニは声を出して嗤う。

 

「くふふふ♪ おもろいこと言いはるねぇ。捕まったところで楽しめるものはないでっしゃろ? わてがそんなん受け入れると思てはるのん?」

 

「思わねぇよ」

 

「わてはリベンジせなあきまへんよって。今日はここでさいならさせてもらいます」

 

「逃がすと思うのか!?」

 

「別に追いかけて来てもええけど……ちゃんと、覚悟してからおいでやす♪」

 

 ニヤリと獣の笑みを浮かべて言い放ったツマベニは、ヒラリと屋根から街の闇へと飛び込んでいった。

 

「逃がすか!!」

 

「待て、ブシドラ!!」

 

 ブシドラはミザイストムの制止を無視して追いかける。

 

「くっ! 警官は誰も追わないように伝令しろ! あいつは常人が手に負える人間じゃない!!」

 

「は、はい!!」

 

 ミザイストムは警察等に被害が出ないように指示を出す。

 近くにいた警官達はすぐさま走って、ミザイストムの指示に従う。

 

「サイユウ。お前まで突っ走るなよ」

 

「命令すんじゃねぇよクソボケ。行くわけねぇだろ。他にもいるかも知んねぇのに、下手に動けるかよ。ブシドラはいいのか?」

 

「ああ。多分追いつけん。逃げ出したツマベニは一度見失うと、見つからんことで有名だからな」

 

「それにしても、やべぇくらい気持ち悪いオーラだったぜ。あれで手負いとかどんだけだよ」

 

「会長が遊びたがってたくらいだ。かなりの実力者だろうさ」

 

「げぇ……」

 

 ネテロが戦いたがるならば、十二支んレベルであることは疑いようがない。

 十二支んの戦闘組でもあるサイユウでも、油断は出来ないということだ。

 

「闇の深いところで生きる連中の実力は計り知れん。下手に手を出すべきじゃない」

 

 そう言うミザイストムの頭に浮かぶのは、同じ十二支んの1人。

 

(奴はどちらかと言えば黒幕側だが……。それでも、奴と同じ闇の世界で戦い抜いている連中に絶対隙を見せられない。何が『隙』となるのかも、分からないのだから)

 

 これだけ暴れておきながら、ほとんど情報を遺さず、中心人物は誰一人死んでいないのだから。

 

 暗殺者でこれだ。

 

 黒幕気質の者まで参戦すれば、ハンター協会でどこまで応戦できるのか。

 それどころか、ハンター協会こそ一番警戒しなければならないかもしれないことに、ミザイストムは恐怖を憶えずにいられなかった。

 

 




とりあえず、ロストマンと捩魔を出せて満足したので、次回からは三姉妹?をイチャイチャさせようと思いますw
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