暗殺者のうちが何でハンターにならなあかんねん   作:幻滅旅団

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あけましておめでとうございます!
正月休みもちょっとゆっくりさせて頂いて、仕事も正月関係から解放されて一段落迎えました。

更新再開です!


#87 イチャイチャ×ノ×イチャイチャ

 ツマベニ達との戦いから4日。

 

 ラミナ達は未だにゼルンロサスでのんびりとしていた。

 

 拠点に帰るには流石に暴れ過ぎて目立ってしまったので、しばらくゼルンロサスでやり過ごすことにしたのだ。

 しかし、ホテルで泊まり続けるのも通報されたら面倒なので、街外れの2LDKの部屋を借りた。もちろんラミナの金、というかイルミからの慰謝料で。

 

 そして、この4日間はラミナはマチの接待に全てを費やしていた。

 

 変装として、マチと同じピンク髪のカツラを被り、ゼルンロサスで購入した赤の筒袖の半着に黒の帯を着させられた。下は黒のホットパンツを履いており、

 ついでにカルトも、

 

「アンタの兄貴()のせいでラミナがこうなったんだから、アンタもだよ」

 

 ということで、カルトもピンク髪のカツラを被り、白を基調とした着物と赤の帯を着させられている。

 マチはカツラは被っていないが、髪型を少し変えて黒の半着、白の帯を身に着けている。

 

 これはこれで凄まじく目立っており、カルトは渋々とした表情でラミナと共にマチの無茶ぶりに付き合っていた。

 

「まぁ、お前ももう顔バレとるし、諦めぇ」

 

「……分かってる」

 

 トルシアでの騒動は未だにニュースを騒がせていた。

 しかし、やはりラミナ達はもちろん、ツマベニのことも公表されず、マフィア同士の抗争とされている。

 ブールブ美術館のこともまだ捜査中とのニュースが流れていたが、遂に幻影旅団の名前が表に出始めていた。

 

「何で今更?」

 

「多分トルシアの事件でマフィアンコミュニティーの力がまたガタガタになったんやろな。報道を抑えさせることが出来んほど、落ちこぼれてきたっちゅうことやろな」

 

「その結果、クモが話題を掻っ攫ったってわけね」

 

「ここはマフィア連中も運が良かったみたいやな」

 

 そう、運がいい事に『ブールブ美術館からすらも盗みを成功させた幻影旅団が相手ならば、マフィアンコミュニティーが出し抜かれても仕方がない』という流れが生まれたのだ。

 しかも、マフィアンコミュニティーの十老頭が昨年のヨークシン時に死んでいたことも報道され、それも旅団の仕業となって広まり、マフィアンコミュニティーの勢力衰退が白日の下に晒されたのだ。

 そのため、トルシアの事件も十老頭の後継者争い扱いされ、しばらくこの闘争は続くだろうとコメンテーターが顔を顰めて話していた。

 

 間違ってもいないが、真相を知らない者がそれを語ることにラミナ達は呆れながら部屋でテレビを眺めていた。

 

 ちなみにマチはソファでラミナに膝枕させながら、ラミナが作ったマフィンを頬張っていた。

 カルトは巻き込まれないように座布団に正座しており、ラミナはもう全てを受け入れており何も言わない。

 

「まぁ、マフィアンコミュニティーはしばらくどんちゃん騒ぎやろな~」

 

「マフィアってまだ残ってんの?」

 

「ちっこい組が潰れた組のシマを取り込んで台頭してきたり、落ち目の組から抜け出して新しく作ったり、クーデターで組の頭が変わったりやらバンバン起きとるみたいやで。イタチごっこな感じになって来とるなぁ。さらにタラチュネラファミリーとか国が後ろにおるマフィアも出張ってきて、マフィアンコミュニティーの勢力を更に削ごうとして完全に戦争が始まっとるな」

 

「じゃあ、またこの前みたいな依頼が来るかもってこと?」

 

「そこはシルバやゼノ次第やろ。シルバとゼノはあそこまでの依頼は出さんと思うで? ゾルディック家は確かにクモと繋がっとるけど、同盟を組んだわけやないからな。持ってきたとしても、カルトをメインに働かせる依頼やろ」

 

「……それはそれで面倒だね」

 

「しばらく依頼はないやろ。うちの完治を待つと思うで」

 

 今回のイルミのやり方は殺し屋同士では御法度に近い。

 法を犯す殺し屋だからこそ契約や取引は最も重視する事柄だ。もちろん騙された方も悪いのだが、騙す方とて卑劣と言われ普通ならば絶縁になる。

 

 それを本人は認めていないとはいえ、身内と呼ぶラミナに行ったのだからシルバやゼノとて当分は顔など出せないだろう。

 ただでさえ、キルアとカルトが世話になっているのだから。

 

「うちも当分は修行のし直しやなぁ。体が鈍っとる感じやし」

 

「そうだね。右腕を斬り落とされるヘマしたし」

 

「……せやな」

 

 ズバッと言われて、グゥの音も出ないラミナ。

 どう考えても、今回は100%ラミナのヘマである。

 

「とっとと本気でやっておけば良かったのに、やる気も出さずに余裕ぶるからだよ」

 

「……反省しとります」

 

 真下からジト目を向けられて、そっぽを向くラミナ。

 その時、ラミナの携帯が震える。

 

「ん?……振込?」

 

「は? 針野郎からはもう報酬は振り込まれたんでしょ?」

 

「のはずなんやけど……って、ああ。ツェズゲラか」

 

「誰?」

 

「ゲームで会った奴や。キルア達に協力した報酬やな」

 

「……ああ」

 

 思い出したのか、キルアの名前に苛立ちを隠さないマチ。そして、カルトはバッ!とラミナに振り返る。

 ラミナは苦笑してマチの頭を撫でて、新しいマフィンをマチに咥えさせる。

 

「報酬が払われたっちゅうことはゲームクリアしよったんか。ボマーから最後のカードも奪えたみたいやな」

 

「んぐんぐ……いくら?」

 

「2億。まぁ、一回のイベントに付き合うただけやしな。こんなもんやろ」

 

「ふぅん」

 

 実際はバッテラの依頼キャンセル料から支払われただけで、ゲームクリアもしていないし、ゲンスルー達からもカードを奪ってはいない。

 それどころか、ゴン達にゲンスルー達を押し付けて、ゴン達は数日後に戦いを始める準備をしているところだったりする。

 

 ちなみにツェズゲラはツェズゲラで、ラミナ達の情報を調べて事件の事を知り、報酬を払うべきか葛藤していた。

 結局契約に従って払うことにしたが、もう会うのはやめようと仲間と話し合って決めたのだった。

 

 ラミナは携帯を置いてお茶を飲む。

 

「それにしても、これからどうしたもんか……。拠点に帰るんはちと厳しそうやし……」

 

「十二支ん、だっけ? なんかウロチョロしてるハンターって」

 

「みたいやな。率先して動いとるんはミザイストムっちゅう奴らしいけど」

 

 情報屋サイトとハンターサイトで確認したところ、カゴッシの吹き飛ばした家とトルシアの崩壊したホテルの現場に現れたらしい。

 間違いなくラミナを追いかけている。ここがバレるのは問題ないが、拠点はバレるのは非常に厄介だ。

 

「十二支んは会長が選んだ実力者や。ミザイストムは警備会社を経営しとるダブルハンターらしいから、警察関係者にハッカーハンター、情報に強いハンターとも仲がええやろうしなぁ。流石に油断出来んでな。他の十二支んにも探偵をしとる奴もおる」

 

「アタシらとはどれくらい?」

 

「ちょっとだけうちらが分が悪いな。会長が参戦したら無理」

 

「……ふぅん」

 

 1人1人であるならばそう簡単に負けないだろうが、総力戦となるとカルト、パクノダ、コルトピが厳しいとラミナは考える。

 ジンだけでも正直団員2人がかりでないと厳しい可能性が高い。

 なので、必要以上に刺激するのは避けたいというのがラミナの本音である。

 

「ウボォーがおったら、大分話は変わったと思うけどな」

 

「その場合、アンタかカルトがいないけどね」

 

「まぁ、うちは元々ヨークシンの後は4番でクモに入るつもりやったし、カルトが団員やないっちゅうだけちゃうか? うちの弟子みたいな感じで付き添いやったと思うで」

 

 恐らくゾルディック家は何かと理由を作ってカルトを押し付けてきたと考えているラミナ。

 カルトも団員になれなくても、ラミナに近づくつもりだったのでそうなっていただろうなと頷いていた。

 

「まぁ、まだクロロ達もホームに戻っとらんし、ゆっくりしよか」

 

「まぁね」

 

 その後マチはそのまま昼寝をして、ラミナは夕飯の支度をしたかったが動けず顔を顰め、カルトは呆れながら念の修行を始める。

 ノートパソコンを使おうにも膝が埋まっているので使えず、ラミナはただひたすらにマチが起きるのをテレビを眺めながら待つのだった。

 

「……カルト~、茶ぁ淹れて~」

 

「……はぁ、分かった」

 

 ラミナもやや眠気に襲われながら、空のコップを掲げる。

 カルトはため息を吐いて、大人しくコップを受け取ってお茶を淹れに行く。ここで渋れば夕飯で揶揄われるのは目に見えているからだ。

 

 ちなみにカルトは家の中ではカツラを外しているが、ラミナはずっと被らされている。

 

『脱いだら、念糸で縫い付けるよ』

 

 そう姉に脅されたからだ。

 

「はい」

 

「さんきゅ~」

 

 微睡みながらコップを受け取って、一口お茶を飲むラミナ。

 その後、ラミナも背もたれにもたれ掛かって、昼寝を始める。

 

 カルトは眠っている2人を見て、

 

(……ホントにそっくりだなぁ)

 

 と、呆れながら念の修行を続けるのだった。

 

 

 

 2時間後、ラミナはマチに叩き起こされて夕飯の支度を始めていた。

 

『とっとと起きな』

 

『イダァ!?』

 

 文字通り叩き起こされて、やや不機嫌な顔で調理を進めていた。

 

 もちろんマチはソファでふんぞり返って缶ビールを飲み始めており、カルトはピシッ!と背筋を伸ばして正座をして大人しくしていた。

 

「今日の夕飯なに?」

 

「んー……角煮、八宝菜、麻婆豆腐、キンペダックの用意中」

 

「ふぅん……魚は?」

 

「……揚げ? 蒸し? 煮つけ?」

 

「ん~……蒸し」

 

「あいよ」

 

 ラミナは文句も言わずに冷蔵庫から魚を取り出して下拵えを始める。

 そのやり取りにカルトはもう同情を憶えなくなっていた。

 

 毎日似た会話が行われているのだから。

 

『肉が少ない。揚げた奴がいい』

 

『へいへい』

 

『もっと牛系の肉が食べたい。ローストビーフ、ステーキ、揚げ物』

 

『あいよ~』

 

『ギョーザとラーメン』

 

『おう』

 

『あ。あと、もつの煮込み、焼き飯も欲しい』

 

『へーい』

 

 と、追加の仕方が恐ろしく雑で、数が多いのだ。しかも微妙に手間がかかる品ばかり。

 

 カルトは手伝うフリして大丈夫なのか訊いたところ。

 

「可愛いもんや。流星街におる時や他の団員が揃っとる時は、もっと酷いし量も多いでなぁ」

 

 と遠い目をしながら答えられて、カルトはもう何も言えなかった。

 

 そして、テーブルにいつも通り見事な料理が並べられる。

 ちなみにカルトにはさりげなくゴマ団子が用意されていたりする。これがまたラミナに逆らえなくなっていく要因となっていくのだ。

 

 ラミナは紹興酒までも用意して、マチに出す。

 カルトはもちろん普通にお茶である。

 

 かなりの量だが、これもまたいつも通りどんどん皿から消えていく。

 流石に追加を注文することはなかったが、夕食を食べ終えたら酒盛りが始まるので結局追加を作ることになるラミナである。

 

 一先ず食べ終えた皿を手早く洗っている間、マチは新しい酒を出して下着姿になる。

 ラミナもおつまみを用意して、上はブラだが下はハーフパンツ姿になる。もちろん、カツラはそのままである。

 

 そして今日は、寝間着に着替えたカルトもマチに確保されていた。

 

「な、何でボクまで……!」

 

「アンタもそろそろ酒の味を覚えたら? 別に未成年とか気にする必要ないでしょ。殺し屋なんだし」

 

「ラ、ラミナ……!」

 

「ん? 別にええんちゃうか? 毒の訓練にでもなるやろ」

 

 ラミナは毒の訓練のおかげで滅多なことでは酔わない。

 マチもある程度訓練しており、ラミナほどではないが毒に耐性がある。

 

 決して、妹に負けたくなかったからではない。

 

「師匠の許しも出たし、ほれ」

 

 ガッシリと抱えているカルトに紹興酒が入ったコップを押し付けるマチ。

 もちろんカルトの筋力で振り解けるわけもなく、コップに注がれていた全ての酒がカルトの喉を通り過ぎる。

 

 毒とはまた違う熱さが喉を通り過ぎる。咽そうになるが、マチが口を押える。

 

「ゲホッ! ゲホッ!」

 

「っていうか、酒って飲んだことないの?」

 

「……少しだけ、数年前に……」

 

「なんだ、じゃあラミナと大して変わらないじゃない。いけるでしょ」

 

「いや、うちも最初は駄目やったからな」

 

 ラミナは呆れながらもマチを止めずに酒を煽り、マチと()()()のコップに酒を注ぐ。

 やり方はどうあれ、酒に耐性をつけなければならないのは事実だ。

 

 酒の味が分からなければ、酒に入れられた毒に気づけないのだから。

 

 ポイっとカルトがマチとラミナの間に放り込まれる。

 直後、するりと左右からマチとラミナの腕がカルトの両肩に回されて、逃げ道を塞ぐ。

 

 下着姿の美女(見た目)に挟まれれば、健全な10歳の少年であれば赤面は間違いなしだが、そこだけは妙に熟成しているカルトは()()()()では取り乱さない。

 

 何故なら襲いかかってくるのは『色気』ではなく、『酒気』なのだから。

 

 

「「 飲め 」」

 

 

「……………」

 

 

 数時間後、カルトは顔どころか首まで真っ赤にして寝室の布団に転がることになったのは言うまでもない。

 

 

 

 

 カルトを布団に放り投げてきたラミナは、リビングに戻ってマチとまた酒を飲む。

 ちなみに寝室は3人一緒で、布団を並べているだけである。

 

「あの調子で大丈夫なの?」

 

「まぁ、これからも()()()飲ませていくしかないやろ」

 

「そっちもそうだけど。戦闘の方だよ」

 

 カルトを揶揄っていた雰囲気は一切鳴りを潜め、真面目な顔でウイスキーが入ったグラスを傾けながら言うマチ。

 

 ラミナは肩を竦めて、

 

「うちの身体が治らんと修行もつけられんからなぁ。ただの組み手だけやとそろそろ限界があるし」

 

「けど、アンタだって修行し直すんでしょ?」

 

「せやな~……流石にちょっとここ最近人の事や仕事に時間取られ過ぎたからな。鈍っとる体引き締めんと。そこにカルトも巻き込むつもりではおるで」

 

「まぁ、アタシも最近本気で体動かしてないし、それもいいかもね」

 

「武器もちょっと補充したいでな」

 

 2人はそのまま酒を飲み続けて、日付が変わった頃に寝室に行き、マチとラミナは寄り添う様に布団に潜って眠りにつくのだった。

 

 それから更に数日後。

 ようやくラミナの腕もほぼ完全に回復して、マチも満足したのかカツラや着物を強制しなくなった。

 と言っても、変装のために外出時はラミナもカルトも被り続けているが。

 

「この街にも飽きたし、【ガスラベス】に行かない?」

 

「ガスラベス? カジノでもやるんか?」

 

「やってもいいし、いいモノあったら盗んでもいいし。そこで2,3日遊んで、修行しにいけばいいでしょ」

 

「まぁ、ええけど」

 

 ということで、ラミナが車を用意して3人はガスラベスに向けて出発した。

 

 

 

 

 ノストラード組拠点。

 

 スーツを着たクラピカは、部屋に入って中にいる者に声をかける。

 

「センリツ、バショウ」

 

「ん?」

 

「なに?」

 

「護衛の仕事だ」

 

「私も?」

 

「ああ。少し厄介そうだが、成功すれば金になる。私は賭博の方でリンセンと動く」

 

「厄介そう、ねぇ。まぁ、いいぜ。用心棒の仕事で厄介じゃない方が珍しいしな」

 

「助かる」

 

「で? 依頼人は?」

 

 センリツとバショウはソファから立ち上がりながら尋ねる。

 クラピカは頷いて、

 

「依頼人はナダメジマファミリーの若頭。護衛対象は、その若頭の5歳の娘だ」

 

「……確かに厄介そうだなぁ」

 

 子供が相手と聞いてバショウは小さくため息を吐く。

 

「期間は一週間。外遊中の護衛とのことだ」

 

「外遊ってことは、あまり自分の組の護衛は動かせなかったってことかしら?」

 

「そこが『厄介』な理由なんだろうな」

 

 組の若頭が自分の娘の護衛を、他の組に任せるような状況なのだからぶっちゃけ少し厄介なんてレベルではない気がするバショウとセンリツ。

 しかし、クラピカがそこを調べていないわけではないわけはないだろうし、2人でも問題ないと判断した以上そこまで大事でもないのだろうと考える。

 少しずつノストラード家も持ち直してきているが、やはり念使いを増やせる余裕はなかった。なので、クラピカはセンリツとバショウ、リンセンの3人は一番失えない存在なのだ。

 

 ボスやその娘よりも。

 

「場所は【ガスラベス】。ヨークシンとは違って、場所に気をつければ抗争を仕掛けてくることはないだろう。よろしく頼む」

 

 再び因縁が巡り出そうとしていた。 

 

 

 


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