暗殺者のうちが何でハンターにならなあかんねん   作:幻滅旅団

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お待たせです


#90 インネン×ノ×インネン

 突然現れたメンチ達にラミナは武器を消して、ジト目を向ける。

 

「……なんでこんなとこにおるんや?」

 

「仕事でたまたまここに来てたのよ」

 

「そしたら、妙に街が殺気立っててね」

 

「私が動物達を飛ばして調べたら、貴女を見つけました」

 

「……変装しとったやろ?」

 

「私の動物は一度嗅いだ匂いを忘れません。たとえ変装したり、香水をかけていてもです」

 

「……ちっ」

 

 ラミナは顔を顰めて舌打ちする。

 それではもう今後はどう変装していても見つけられるということだ。

 

 しかし実は言わなかったが、ザーニャの能力には欠点もある。

 それは『匂いを忘れることはないが、追跡機能がない』というものだ。

 

 本来の動物の機能を凌駕した分、本来あるべき能力が犠牲になってしまい、両方を保持しようとしたら、完全に動物の姿をした人形になってしまった。動かそうにも常に命令を細かく指示しなければならなくなったのだ。

 そのため、追跡も拠点も見つけることは出来ない。見つけた人物の見極めを行うだけだ。もちろん追跡用の犬科の動物もいるが、その場合は匂いが染みついた物がいる。

 ザーニャはラミナの匂いが染みついたものなど持っていないので、ここで逃げられれば追跡は出来なくなる。

 

「……んで? どうするつもりや?」

 

 目を細めてメンチ達を見据え、纏う気配を鋭くする。

 それにザーニャは冷や汗が流れ、コロロルクはいつでも動けるように身構える。

 

 しかし、メンチは両手を腰に当てて、

 

「戦わないわよ。私達じゃアンタに敵わないしね」

 

「じゃあ、何の用や?」

 

「今、暴れてる理由を聞きに来ただけよ」

 

「聞いたところで止められんのにか?」

 

「被害は減らせるでしょ」

 

 つまりターゲット側に逃げるように促すということだ。

 それを堂々とバラすメンチにラミナは苦笑して、

 

「安心しぃ。狙いはマフィアやでな」

 

「暗殺? にしてはここにいるのは変よね」

 

「いんや、今回うちは巻き込まれただけや。この先の孤児院を狙とる奴らがおってな。その露払い」

 

「孤児院を狙うマフィア?」

 

「事情説明するんダルイわって、ん?」

 

 どんどんメンドくさくなってきたラミナは、孤児院に行かせようとしたら街の方から大量の車がやってくるのが見えた。

 

 ジープや黒塗りの車であるのを確認すると、ラミナは伸びをしてサングラスをかける。

 

「悪いけど話は後や。お仕事開始やでな」

 

「あの車の集団がマフィア?」

 

「多分な。話聞きたいんやったら、この先にある孤児院に話聞きに行ってや」

 

 ラミナは屋根の上から飛び降りて道路に下り立ち、右手に鎖鎌を具現化した。

 

 車集団は急ブレーキをかけて停まり、先頭のジープから戦闘服を着た男達が降りてきた。

 

「お前らが【ヘリファルテ】か?」

 

「……その声。貴様が先ほどの通信の相手か。……貴様のような者が雇われているとは情報になかったが……」

 

「そら、さっき参戦したでな」

 

「なんだと?」

 

「お前らの狙いの嬢ちゃんに引っ付かれたんや。ったく、チビッ子1人捕まえるくらい、とっととせぇや」

 

 ラミナは鎖鎌を回し始めながら愚痴る。

 

 その言葉に拳銃を構える傭兵やマフィア達はラミナを睨みつける。

 

「ならばどけ。死にたくはあるまい? この人数相手に勝てると思っているのか?」

 

「足らんわ阿呆。たかが拳銃にビビる思てんのか」

 

「……そうか。ならば――」

 

「死ねや雑魚共」

 

 傭兵リーダーが攻撃の指示を出す前に、ラミナが言葉を被らせて鎖鎌を飛ばす。

 

 高速で回転しながら放たれた鎖鎌。

 それが突如オーラを放出し始め、オーラが狼の頭を形作っていく。

 

グルゥアアアア!!

 

 3秒もせずに鎖に繋がれた巨大な狼の頭が出現し、吠えながら大きな口を開けて太くて鋭い牙を見せつける。

 

 突如現れた化け物に傭兵やマフィア達は驚き、狼の頭に銃口を向けて悲鳴を上げながら乱射する。

 

「うわあああ!」

 

「な、なんだよコイツ!?」

 

「来るなあああ!!」

 

「ひいいい!?」

 

「落ち着け! あんなものは幻だ!! 食われるわ――」

 

 念を知らない傭兵の1人が落ち着かせようと幻だと叫ぶが、それを否定するように傭兵の上半身が食い千切られて、更に他のマフィアや車も食い千切られる。

 

 【親愛なる妹のペット仲間(デメ・ワンワン)】。

 投げた鎖鎌に巨大な狼の頭部を具現化する能力で、その口に食われたモノを全て呑み込む。ただし、指定することも出来ず、自由に操ることも出来ない。ただ鎖鎌を投げた軌道上にいるモノ全てに食らいついて呑み込むだけである。

 その代わり、シズクの【デメちゃん】とは違い、『念で具現化した物』も呑み込める。

 

「ほ、本当に喰われた!?」

 

「な、なんだよアレ!?」

 

「くっ! あいつも変な力を使うのか……!」

 

 傭兵リーダーは苦々しく顔を顰める。

 【ヘリファルテ】達は前の戦場で、他の傭兵達の念能力で敗北したのだ。

 

「女を狙え!!そうすれば、あの化け物も消える!!」

 

「狙えればええなぁ」

 

「っ!!」

 

 指示を叫んだ傭兵リーダーのすぐ横から声が聞こえた。

 しかし、目を向ける前に首に鋭い痛みを感じ、直後勢いよく景色が移動していき、気づけば目の前に家の壁があって防ごうにも腕が動く感覚はなく、頬に衝撃を感じて意識を失った。

 

 そして、周囲にいた者達の目には、首を失って血を噴き出す傭兵リーダーの身体が映る。

 

 一瞬でリーダーが殺されたことに、もはや全員が冷静さを失って無秩序に逃げ始めるが、

 

「【狂い咲く紅薔薇】」

 

 左手にファルクスを具現化したラミナが【円】と能力を発動して、一瞬で半数以上の者達が首が跳び、身体が上下に斬り分かれて死んでいく。

 

 運よく腕や足が斬り飛ばされただけで生き残った者達がいたが、再度ファルクスが振られて今度こそ殺される。

 

 鎖鎌とファルクスを消して、レイピアとスローイングナイフを具現化する。

 そして、猛スピードで【円】から逃げ延びた者達を追いかけて、1人1人始末していく。

 

 すると、運よく後ろの方で生き残ってた連中が車に乗り込んで、勢いよくバックで逃げ出す。

 ラミナはそれを追いかけようとしたが、目の前に念弾が飛んできて足を止める。

 

 目を向けると、すぐ近くの屋根の上でコロロルクが右腕を突き出していた。

 

「逃げる連中まで追いかけるこたないだろ? 流石にこれ以上はやりすぎだよ」

 

「……はぁ。まぁ、ええけど(ここで死んだ方が絶望せんでええと思うんやけどなぁ)」

 

 逃げた連中は必ず拠点に戻るだろう。

 その拠点は恐らく今頃マチ達が暴れているはずだ。

 

 無事に戻って来れたと思った場所が壊滅状況で、そこをマチ達に見つかれば死ぬ時の絶望はとてつもなく大きいだろうなとラミナは考える。

 

 武器を消したラミナは、孤児院に戻ることにした。死体やら車の残骸はもちろん放置である。

 その後ろにはメンチ達も付いてきていた。

 

「警察とか呼んだわよ。文句ないわよね?」

 

「こっちに来んかったらな。っちゅうか、いつまで付いてくるん?」

 

「最後まで」

 

 堂々と言い切るメンチにラミナは呆れるが、マチ同様言うだけ無駄だろうと思って何も言わなかった。

 

 孤児院に戻ると、ルシラが門の前で立っていた。

 

「こっちに誰か来たか?」

 

「いえ、誰も」

 

「ほな、こっちはもう大丈夫そうやな」

 

「……また増えてるようですが?」

 

「ああ、こっちはプロハンター。シングルハンターのメンチとその弟子」

 

 ラミナの言葉にルシラはまた驚きに目を見開き、メンチ達を中に案内させてラミナは携帯を取り出してマチに連絡する。

 

『もしもし?』

    

「どうや?」

 

『今、本拠地を潰してるとこ。カルトに暴れさせてるけどね。そっちは? 少し前になんか団体が出て行ったけど』

 

「ほぼ終わったで。いくらか逃げたけど、そっちに向かっとると思うわ。まぁ、どうするかは任せるわ」

 

『了解。あと30分もあれば終わるから、アンタもこっち来な。そっちに戻る理由もないでしょ』

 

「それもそうやな。ほな、これから向かうわ」

 

 通話を切ったラミナは、そのままマチ達の元に向かおうとすると、メンチ達が出てきた。

 

 センリツやバショウも付いてきており、ラミナの元にやってきたメンチ達は少々複雑な表情を浮かべていた。

 

「まぁ、今回はまともな理由みたいね」

 

「マフィアが絡んどる時点でまともな理由ちゃうわ。んで、チビッ子は?」

 

「寝たわ。どうやら安心したみたい」

 

「まぁ、自分を襲いに来る連中がいなくなったしな。後はボスの方を何とかすれば……」

 

「今からそっち向かうわ。そろそろ()()()みたいやし」

 

「終わる?」

 

「うちの仲間がナダメジマファミリーの拠点潰しに行っとるんよ。そろそろボスも殺しとるやろ」

 

「仲間って……旅団よね?」

 

「そら、もちろん」

 

「じゃあ、車で行こうぜ。ハンター証があれば、検問でも止められねぇだろ」

 

「チビッ子の護衛はどうするんや?」

 

「私が残るわ。変な音や声が聞こえたらすぐに連絡するから」

 

 センリツが残ることになり、バショウとザーニャの運転で街に向かう。

 ラミナの案内で拠点の近くに車を停め、ナダメジマファミリーの拠点へと足を進める。

 

 進行方向に見えるのは、外壁に囲まれた4階建てビル。

 鉄柵の門は開かれており、車が無造作に停められている。

 

「静かですね」

 

「死体もねぇな」

 

「目立つところに死体なんぞ残すかい」

 

 ルシラとバショウの言葉にラミナは呆れる。

 特に警戒することもなく、ビルの中に入っていくラミナに続いて、メンチ達も中に入る。

 

 すると、通路の至る所に死体が転がっており、ムワッと血の臭いが鼻に襲い掛かる。

 それにルシラやザーニャは顔を引きつらせる。

 

 ラミナはそんな中を顔色一切変えずに進んでいくどころか、

 

「また変にいたぶっとるなぁ。こんな奴らに手間かけてどうすんねん」

 

 と、殺され方に呆れていた。

 

 メンチやコロロルクは死体を見て、

 

「基本的に斬られて死んでるけど、ところどころ殴り殺されてるわね」

 

「というか……弾痕が見当たらないねぇ」

 

「つまり、撃つ前に殺されたってわけか」

 

「別に驚くことちゃうやろ。この建物の中やったら、銃口向けられる前に近づけるわ」

 

 さらにカルトは【発】の紙手裏剣などで遠距離攻撃も出来る。

 拳銃程度に後れを取る2人ではない。

 

 最上階まで上がって一番豪華な部屋に入る。

 部屋の奥にある豪華なソファに白髪の老人が座らされており、手足から血を流し、右耳が斬り落とされた息も絶え絶えな状態で拷問を受けていた。

 

 もちろん、楽しんでいるのはカルト。

 マチは別のソファに座って、酒を飲んでいた。

 

「……なんか増えてない?」

 

「ヨークシンの前に一緒に仕事したグルメハンターや。暴れとるところを見つかってしもた」

 

「ふぅん……」

 

 どうでもよさそうに答えるが、目が細まって殺気が噴き出し始めたので苛立っているのは間違いない。

 

 特にメンチを睨んでおり、メンチも実力差は分かっているはずだがまっすぐと睨み返していた。

 

 それにザーニャ達は体を強張らせるが、ラミナは苦笑してカルトに顔を向ける。

 

「んで、お前は何しとんの?」

 

「他にも拠点がないかとか、企んでることがないかとか聞いてた」

 

「阿呆。こんなショボいマフィアのボスを拷問にかけた所で、うちらが欲しい情報なんざあるかい。とっとと殺しとき」

 

 スローイングナイフを具現化して投擲し、ボスの額に突き刺す。

 ボスは悲鳴を上げることもなく、一瞬身体をビクつかせて死んだ。

 

「これでうちらは解放やな。後始末はそっちやナダメジマの生き残りに任せたらええやろうし」

 

「だね」

 

「とりあえず、ここ離れよか。他のマフィアや情報屋、警察に孤児院近くで暴れたことでここは嗅ぎつけられるやろうし」

 

 ラミナの言葉に頷いて、拠点から離れた路地裏に移動する。

 

 そこでメンチが、

 

「ねぇ、逃げ回ってるなら仕事手伝ってくれない? また面倒な密猟者を潰さないといけないのよね」

 

 と、ラミナに仕事の依頼をしてくる。

 しかし、ラミナが答える前にマチが口を開く。

 

「ざけんじゃないよ。ラミナは今アタシのだ」

 

「アンタに聞いてないわよ」

 

 ギロン!と睨み合うメンチとマチに、コロロルクとラミナは小さくため息を吐き、ザーニャは相手が相手なだけにどう仲裁すればいいかと慌てる。

 カルトは「こいつらと戦うのは楽しそう」と思っており、内心「やっちゃえ!」と願っている。

 

 ルシラとバショウは、巻き込まれないように距離を取ろうとしている。

 

「……どうにかしとくれよ」

 

「無茶言うなや。あの2人そっくりやから、止めた所で止まらんわ」

 

「「似てない!」」

 

「ほれ見ぃ」

 

「だねぇ……」

 

 コロロルクは顔を手で覆って項垂れる。

 

 ラミナは呆れを隠すことなく、メンチに声をかける。

 

「今うちを誘うんは色々と周りから言われるんちゃうか?」

 

「別に気にしないわよ。仕事をしっかりするのがプロハンターにとって一番重要なんだから」

 

「十二支んやら賞金首ハンターが動いとるようやけど? 十か条その4に引っかかとるんちゃうか?」

 

「証拠がないもの。ブールブ美術館に関しても、生き残った2,3人の警備員の証言だけで映像があるわけじゃないから、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。それ以外の騒動に関してはマフィアや暗殺者同士によるものだから、十か条に絶対に引っかかるわけじゃないわ。それがアウトなら、そこの連中だってアウトだもの」

 

「クモって時点であかん気がするんやけど?」

 

「ゾルディック家の人間がプロハンターになってる時点で今更よ」

 

「……はぁ。悪いけど、うちはもうハンター活動に興味はないでな。それこそゴンやキルアでも誘い。うちだけ誘うより戦力になるやろ」

 

「あいつら今どこにいんのよ」

 

「そろそろゲーム出たはずや。携帯にでも連絡すれば通じるんちゃうか?」

 

「強くなってんの?」

 

「うちら程やないけど、お前やザーニャなら同等以上やと思うで」

 

 コロロルクは戦闘向きの能力なのではっきりと比べられないが、ゲンスルー達相手に生き延びたらしいので、かなりの実力になっていると考えている。

 なので、ラミナ1人よりはマシだと十分に保証できる。

 相手に念能力者がいれば話は別だが。

 

 その言葉にメンチは眉を顰めて考え込む。

 

 それにようやくマチも苛立ちを抑え込もうとした時、

 

 

「バショウ!」

 

 

 ラミナの耳に、聞こえるはずのない声が届いた。

 

 ラミナとバショウが勢いよく、他の者達は特に気にすることなくただただ声が聞こえたから振り返る。

 

 そこにいたのは、

 

 黒いスーツを着た、クラピカだった。

 

「っ!! 待て、クラ――」

 

 バショウが止めようとしたのと同時に、怖気が走るほどの殺気がクラピカやメンチ達に振りかかった。

 

『!!?』

 

 クラピカは足を止め、メンチ達は反射的に殺気の放出元から跳び下がって武器を抜く。

 

 そこにいたのは、無表情にクラピカを見据えるラミナがいた。

 

 クラピカもラミナの姿を捉えて、目を丸くして動揺を露にしながらも右手に鎖を具現化していた。

 

「ラ……ミナ……」

 

「久しぶりやなぁ。もうしばらくは会うこたぁない思てたんやけど」

 

「っ……!」

 

 クラピカは歯を食いしばりながら、ラミナの背後にいるマチとカルトに目を向ける。

 

 マチの姿を見て、胸の奥から憤怒が湧き上がりそうになったが、

 

 

ゾワリ

 

 

 と、ラミナから寒気がするほどの冷酷で刃のように鋭い【練】が放たれて冷や水を浴びせられる。

 

「っ! (これが……暗殺者であるラミナのオーラ……!)」

 

 その場にいる全員が理解する。

 

 

 あと一歩でも前に出れば、()()は斬撃の吹雪と化す。

 

 

 呼吸すらも意識しなければならないほどの圧。

 

 そこに更に、

 

「ラミナ。あの金髪が、鎖野郎?」

 

 マチの声が異常なほどに響き渡り、更にクラピカ達の身体を重く感じさせる。

 

 何とかマチに視線を向けると、マチもラミナと同等の殺気とオーラを纏い、しかしラミナ以上の怒りを瞳に浮かべてクラピカを見据えていた。

 

「ああ。まだ、手ぇ出すなや」

 

「なんで? 殺さない理由がないよ」

 

「うちが先約や」

 

「知らないね」

 

「……流石にこれは譲れへんぞ」

 

 お互い一歩も引かずに視線をぶつけ合うマチとラミナ。

 

 本来ならただの隙でしかないのだが、クラピカ達はそれでも仕掛ける気にならなかった。

 

(隙ではあるが……私達の攻撃が届く前に対処される)

 

 確信めいたものが全員の頭を過ぎる。

 故にマチが唐突にコイントスを始めても、誰も動かない。

 

「表」

 

「裏や」

 

 マチが手をどける。

 その結果は、

 

「裏やな」

 

「……ちっ」

 

「カルト、お前も手ぇ出すなや」

 

「……分かった」

 

 カルトも物凄く不服そうな顔を浮かべるも大人しく頷く。

 

 ラミナはクラピカを正面から見据える。

 

「さて……随分とマフィアが板についてきたみたいやけど。強ぉなったか?」

 

「……」

 

「ま、お前の能力はうちには効かんけどな」

 

 ラミナの挑発にクラピカは歯軋りをする。

 

「クロロからも聞いとるで。お前の鎖の効果。縛り付けた相手を強制的に【絶】にするんは中指の鎖やな」

 

「っ……!」

 

「うちも具現化系やでなぁ。能力の付け方はよ~知っとる。念能力を得たばかりのお前が、そんな能力を付与するなら制約と誓約を使わんと無理。指の鎖ごとに能力を変えるなら尚更や」

 

「……」

 

「しかも、クロロが攫われた時の状況を考えると、お前の鎖はある程度操作出来るはずや。そうなると、や……縛った相手を完全に【絶】状態にするのはともかく、旅団一の怪力やったウボォーが千切れへんのはおかしいと思うんよな。しかも、うちがクロロを助けた時も、その能力を使わんかったことから考えると……」

 

 ラミナはニヤッと嗤い、

 

「クモにしか使えん……ちゅうところやな。そんで、それを破れば念能力を失うか……死ぬ」

 

「っ……!!」

 

「それと心臓に刺す剣の鎖。それを使うにゃ【緋の眼】でおる必要があるんやろ?」

 

 クラピカは全力で驚愕を押し留める。

 だが、ラミナの口はまだまだ止まらない。

 

「お前の鎖は後3本。その内2つは大体予想出来とる」

 

「……」

 

「1つはここを見つけた能力。お前の仲間からの情報(記憶)ではダウジングを使えるみたいやったでな。人や物を探せる能力があるんやろ。もう1つは治癒能力。飛行船でうちの攻撃は確実に骨を砕いた感触はあった。やのに、お前は数時間で万全に回復しとった。装っても呼吸は乱れるもんやのに、お前は一切乱れとらんかったでな。それならウボォーとやり合った後で動き回れとったんも納得出来る」

 

「……!」

 

 クラピカは左手を握り締め、バショウも必死に表情筋を抑え込む。

 メンチ達はラミナ達とクラピカの動きに注視しており、余計な口を挟まない。

 

「問題は残りの1本やけど……。ヨークシンでは使う様子がなかったことから、その時は持っとらんかったと考えるべきか?」

 

 ラミナは話を続けながら左手に柳葉飛刀、右手に鎖鎌を具現化させる。

 

「けど、お前が今も考えとらんわけがない。じゃあ、どんな能力か。……ヨークシンの後に考えたんなら、あの時の()()()()()()()は忘れられんよなぁ。お前は」

 

「っ……!」

 

「うちの予想は、クモ以外の手練れが敵対した際に無力化する能力。特に念能力を封じることを念頭に置いた、な」

 

 あの時のクラピカの最大の想定外は『ラミナが旅団員ではなかったこと』。

 

 ラミナのようなアウトローの協力者、更にはヒソカやゾルディック家などと敵対する可能性をクラピカが無視できるわけがない。

 仲間の眼を取り戻すために、マフィアの契約ハンターを続けるならば念能力は必須。 

 ならば、中指の鎖以外に相手を無力化する術がいる。念能力者との戦闘において、念能力を封じれば制圧は容易になる。

 

 そして、

 

(ヨークシンにおけるクラピカのもう1つの懸念材料は『仲間』。ゴンとキルアが捕まったことやノストラードの連中が殺されたんは、相当追い込まれたはずや。お前なら、絶対に最後の能力は『1人でも相手を制圧できる能力』にする!)

 

 故に、相手の念能力を封じながら、更にある程度複数相手でも戦い抜ける能力にしているはず。

 

 クラピカは馬鹿ではない。キルアよりも頭は回る。

 しかしそれは逆に言えば、()()()()()()()()()()使()()()()()()()()()()()()()()()()

 

(十中八九、『相手の【発】を奪い、それを利用する能力』! ()()()()()()()()!)

 

 クラピカならば確実にネオンの占い能力を奪ったのがクロロであると見抜いているはずだと、ラミナは考えている。

 

 そして、ラミナの能力もある程度知られていると思えば、クラピカが思いつくであろう能力を推測するのは容易い。

 

(クロロとうちの事を考えれば、ある程度使いやすさも重視しとるはず……。流石に奪うならば『相手との接触が必須』。そして使いやすくするならば『一度に奪える数には限度があり、奪った能力にも使用回数があり』、1人で戦い抜くことを想定しているならば『それをサポートする存在を具現化する』のが妥当)

 

 命を懸けないのであれば、これが限界だ。

 

 クロロの能力【盗賊の極意(スキルハンター)】は、奪った相手が生きている限り、その能力を何度でも使うことが出来る。

 それ故に奪うにも使うにも、面倒な制約が多い。

 

 しかし、制約を緩くするのであれば、絶対に回数制限が出る。

 ラミナのように他のオーラを利用して能力を創っても、回数制限は排除できないのだから。

 

(『鎖』という部分から離れられん限り、クラピカの能力は対処できる)

 

 ラミナはそう結論を下した。

 

 直後、柳葉飛刀を1本、クラピカの脚を狙って投擲する。

 クラピカはもちろん軽々と後ろに下がって躱す。

 

 しかし、それこそがラミナの狙いだった。

 

 柳葉飛刀が地面に突き刺さった瞬間、クラピカは体が異常に重くなって動き辛くなった。 

 

「なっ!?」

 

 ラミナはすかさず3本の柳葉飛刀を投げて、1本目の傍に突き刺す。

 

 それと同時に身体が完全に動かなくなり、右手の鎖が消えた。

 

「!!?」

 

「【裏を縛れば表も同じ(シャドウバインド)】」

 

 【裏を縛れば表も同じ(シャドウバインド)】。

 影を刺された者は動きと念能力を封じられる。

 相手の強さによって必要な本数が増え、約30秒しか封じられない。

 

 しかし、30秒も動きと能力を封じれば十分だ。

 

「【親愛なる妹のペット仲間(デメ・ワンワン)】」

 

 鎖鎌を投げて、具現化した巨大な狼頭がクラピカに食らいつこうと口を開けて、飛び掛かる。

 

 

 クラピカはその迫る巨大な口を、ただただ見つめることしか出来なかった。

 

 

 




能力紹介は次回です。

シズクは性格的なところで、ラミナの妹分的な立ち位置だなと思ったので、あの能力名ですw
ラミナが忘れっぽいシズクの分も、料理や洗濯などの家事をしていた光景が浮かぶのですよw
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