暗殺者のうちが何でハンターにならなあかんねん   作:幻滅旅団

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#91 ヒノメ×ト×ツキノメ

 巨狼の牙がクラピカに食らいつこうとした瞬間、

 

 

「【何でも弾く美女の肌(クイーン・ホッパー)】! 『弾かれた雫(リペル・ティア)』!!」

 

 

 コロロルクが左手を突き出して、念弾を撃つ。

 巨狼の右横っ面に念弾が叩きつけられて、左に吹き飛ぶ。

 

 【親愛なる妹のペット仲間】は操れるわけではなく、鎖鎌の軌道で動くだけ。

 なので横から弾かれると、そのまま吹き飛んだ方向に飛んで行くしかないのだった。

 

 巨狼の頭はルシラとバショウの方に向かうが、2人はすぐに横に跳んでその牙を躱す。

 

 巨狼はそのままビルに飛び込んでいき、一切の抵抗なくその壁と建物内の物品を噛み千切って鎖鎌に戻った。

 

 そのあまりの無抵抗さにバショウは頬を引きつかせる。

 

「な、なんて威力だよ……!」

 

「ボケっとすんじゃないよ!! まだ一発凌いだだけで、あの子の能力はまだまだあるよ!!」

 

 コロロルクの声に、ハッとして視線を戻すバショウ。

 その時にはラミナはすでに柳葉飛刀をクラピカに向けて投擲する。

 

 クラピカはまだ影を縛られて動けない。

 

「ぐっ……!!」

 

 しかし、柳葉飛刀とクラピカの間にルシラが飛び込んできて、両手を突き出してオーラを集中させる。

 

 直後、ルシラの目の前に十字型の大盾が出現して、柳葉飛刀を全て弾く。

 

「盾、か……」

 

 ラミナは僅かに顔を顰めて、鎖鎌と柳葉飛刀を全て消す。そして、左手にソードブレイカーと斬首剣を具現化して、視線をルシラから外す。

 

 向けた視線の先には、メンチが長包丁を全て抜いて浮かばせ、コロロルクが剣を構えて迫って来ていた。

 

「【孤高の包丁捌き(プライド・オブ・シェフ)】!」

 

「ふぅ!!」

 

 コロロルクが斬りかかり、その背後からメンチが能力で6本の包丁を操って左右から挟み込むように飛ばしてきた。

 

 ラミナは全く表情を変えることもなく、逃げるどころかコロロルクに逆に詰め寄る。

 コロロルクの剣をソードブレイカーと斬首剣の両方で受け止める。

 

 【脆く儚い夢物語】で剣に纏わせていたオーラが消え、【弱さは罪】により剣を重くする。

 

 直後、ラミナは左脚を振り上げて、剣の異常に一瞬戸惑ってしまったコロロルクの隙を突いて、鳩尾に蹴りを叩き込む。

 

「ごぉ!」

 

 更にラミナは両腕を高速で振り、左右から迫ってくる包丁を全て斬り弾く。

 ソードブレイカーで弾かれた包丁3本はその場で動きを止めて地面に落ちていき、斬首剣で弾かれた包丁はメンチの手元に戻っていく。

 

「げっ! 能力を解除する武器!?」

 

「ゴホッ! 忘れたねぇ……! もう一本は切った物を重くするみたいだね」

 

「やっぱり厄介ねぇ!!」

 

 メンチとコロロルクは相性最悪で盛大に顔を顰める。

 ラミナはそれに一切反応せずにソードブレイカーを消して、落ちていっているメンチの包丁を全て拾い上げる。

 

 そして【周】でオーラを籠めると、メンチ達に向けて勢いよく投擲する。

 

「「!!」」

 

 メンチとコロロルクは目を見開きながらも紙一重で躱した。

 コロロルクは頬を掠めて僅かに血が噴き出す。

 

「あぐ!!」

 

「! ザーニャ!!」

 

 2人の背後から悲鳴が聞こえて慌てて振り向くと、ザーニャの右肩と左脇腹に包丁が突き刺さっていた。

 

 ラミナが投げた包丁はメンチとコロロルクの身体に隠れていたので、ザーニャは回避が間に合わなかった。

 ザーニャの負傷にクラピカも一瞬そっちに気が逸れてしまう。予期せぬラミナ達との遭遇で覚悟が固まっておらず、巻き込んでしまったという意識があったのでラミナから注意が逸れてしまったのは仕方がないことだ。

 メンチやコロロルクも仲間がやられたのだから、当然である。

 

 しかし、ラミナを相手にそれは致命的な隙だった。

 

 ラミナは左手にガンブレードを具現化して、銃口をクラピカに向ける。

 

 それを見ていたマチはカルトの襟首を掴んで跳び下がる。

 

「うわっ!」

 

「派手なのが来るよ」

 

 そして、クラピカも視界の端でラミナの動きを何とか捉えた。

 

 僅かな幸運は、その武器と能力をクラピカとバショウは見たことがあったことだ。

 

 衝動的にクラピカは叫んだ。

 

 

「逃げろ!! 高威力の念弾だ!!!」

 

 

「お前が殺した男の技で死ねや」

 

 

 ラミナは無慈悲にその引き金を引く。

 

 

「【敬愛する兄の咆哮(ビッグバンハウリング)】」

 

 

ドッッバアァン!!!

 

 

 巨狼の頭より巨大な念弾が放たれる。

 

 ガンブレードは砕けて、ラミナは左腕を跳ね上げながら自らジャンプして宙返りしながらマチ達のすぐ傍まで下がる。

 

 メンチとコロロルクはザーニャを抱えて、路地裏に飛び込もうと駆け出す。

 クラピカとバショウも急いで下がろうとする。

 

 しかし、ルシラは逃げず、盾を地面に突き刺して受け止める構えを見せた。

 

「無茶だ!! それは――」

 

「受け止めなさい――」

 

 ルシラは怯むことなく、まっすぐ迫り来る念弾を見据えて、その能力を発動する。

 

 盾の前面に光り輝く巨大な壁が出現した。

 

 

「【慈愛なる守護の盾(アイギス・アナクフィスィ)】!!」

 

 

 念弾が光の壁にぶつかった瞬間、光の壁が形を変えて念弾を包み込んで球体になる。

 

 行き場を失った念弾はそのまま爆発するも、光の球体は膨れることも壊れることもなく、その膨大なエネルギーを全て受け止めた。

 

「なっ……!」

 

「あの念弾を……」

 

「やるじゃない」

 

 クラピカとバショウは威力を見たことがあるからこそ、完璧に防ぎ切ったことに目を丸くし、メンチ達はこれまで全く目立たなかったルシラの実力に感心する。

 

 そして、ラミナ達もまさかのルシラの能力に目を丸くしていた。

 

「……マジかい……」

 

「あれを完璧に防ぐなんてね……」

 

 ルシラは僅かに肩で息をしながら、まっすぐにラミナ達を見据える。

 

「私の能力は守りに特化しています。ボディーガードを生業にしているのは伊達ではありません!」

 

「……銃器や放出系能力防御に特化した能力っちゅうわけか。その代わりに撃退する能力までは厳しい、か……。反射される可能性は考えておくべきやな」

 

「だね」

 

「まぁ、もうさっきのは撃つ気はないんやけど……」 

 

 ラミナはソードブレイカーと鎖鎌を具現化して、ゆっくりと歩き出す。

 

 ルシラは冷や汗を流しながらも盾を構える。

 そこにクラピカがルシラの肩に手を置いた。

 

「ラミナのあのナイフは具現化したものを除念する。その盾も砕かれるだけだろう。それにあの鎖鎌の能力はその盾でも防げない可能性が高い」

 

「……かもしれませんが、だからと言って退けばいい状況でもないと思いますが? あなたの能力は効かないのでしょう?」

 

「あの刃に触れずに捕らえられれば、勝ち目はある。お前はあっちの3人を援護しながら、ここを離れるんだ」

 

 ラミナの狙いはクラピカだ。

 それ以外の者達は逃げれば見逃してくれる可能性がある。

 

 しかし、

 

「カルト、そろそろお前にも遊ばせたるわ。あっちの怪我人抱えとる3人、お前の好きにせぇ」

 

 ラミナが目も向けずにカルトに告げる。

 

 カルトは嬉しそうに頬を緩めるも、閉じた扇子を口に当てて首を傾げて訊ねる。

 

「いいの? 殺しちゃっても」

 

「ええで。その程度を覚悟しとるから攻撃してきたやろうしな。クラピカの鎖に注意せぇよ」

 

「うん」

 

 カルトの口が吊り上がり、狂気の笑みを浮かべながらゆっくりとラミナの傍に歩み寄る。

 久しぶりに殺しがいがある相手だからか、殺気と禍々しいオーラが抑えきれずにゾワリと溢れ出す。

 

 それにメンチとコロロルクは歯軋りする。

 

「ちょっとマズイわね」

 

「だねぇ……。ザーニャは?」

 

「急所は外れてるわ。刺さったままだから出血も少ない。けど、動けば傷が広がって臓器を傷つけかねないわね」

 

「す、すいません……!」

 

 ラミナが参戦を許した以上、手練れであることは明白だった。

 武器の重さは元に戻ったが、カルトの能力は不明のため下手に戦うことを選択は出来なかった。 

 

 クラピカはカルトの参戦に歯を食いしばる。

 

「バショウ! 彼女達を連れて今すぐ逃げろ!!」

 

 

 そう叫んだ瞬間、ラミナがクラピカ達の目の前に一瞬で移動した。

 

 

 クラピカは目を見開いて対処しようとしたが、その前にラミナの右脚が動こうとしていた。

 

 しかし、ここで再びルシラが先に動いた。

 

 

「【舞い防ぐ七の花弁(ロー・アイアス)】!」

 

 

 ルシラの大盾が七つの小さな盾に分裂して、ラミナの頭上、顔、胸、右上腕、左上腕、右膝、左膝に出現した。

 

「「!!」」

 

 ラミナも流石に動きを止められずに盾の群れにぶつかって、攻撃も止められてしまう。

 クラピカも目を丸くしていた。

 

「その刃に切られると消えるのなら、触れないように、そして振れないようにすればいいだけです!!」

 

「こいつ……!」

 

 ラミナは歯を食いしばってルシラを睨みつける。

 メンチ達はともかく、ルシラまで手にかけるつもりはなかったのだが、今最も面倒なのは間違いなくルシラだった。

 

 そしてルシラが作った隙は、今度はラミナにとって致命的で、クラピカにとって最高の好機だった。

 

「!!」

 

 クラピカの眼が赤く染まる。

 

 一瞬。

 

 時間にして0.1秒未満。

 

 目の前で動きを止められてしまったが故に、ラミナにとっては防ぎようのないどうしようもない隙で、クラピカにとって巻き付けるには十分すぎる時間だった。

 

 

「【束縛する中指の鎖(チェーンジェイル)】……!」

 

 

 ラミナの身体に鎖が巻き付いた。

 

 ラミナのオーラが消え、両手の武器が消える。

 

「っ……!!」

 

「これで……終わりだ……」

 

「言ったはずです。守りに特化していると。『守る』とは、阻害することも、相手に攻撃させないことも含まれるのですよ!!」

 

 徹底的に危険を遠ざけ、攻撃を防ぎ、攻撃そのものを阻害する。

 

 それがボディーガードの神髄である。

 

 ジョアナには全く通じなかったが。

 

 ルシラは後ろに下がり、七つの小盾はクラピカの周囲に浮かばせる。

 

 ラミナが捕らえられたことにカルトは目を丸くして動きを止め、マチは怒りに顔を歪めて飛び出そうとする。

 

 その時、

 

 

「誰が、終わりやって?」

 

 

 ラミナの眼が金色に輝いて、クラピカを見据える。

 

 その変化にクラピカが目を見開き、一瞬動きが止まる。

 

 

 直後、確かに縛り付けられていたはずのラミナが、鎖をすり抜けてクラピカに迫り、爪を尖らせた右貫手を心臓に向けて繰り出す。

 

 ルシラは驚きながらも何とか小盾を動かすが、ラミナの貫手を完璧に防げずに逸らすだけで精いっぱいだった。

 

 ラミナの貫手は心臓から逸れて、クラピカの右脇下を抉る。

 だが、ラミナの左脚が突如振り上がって、蛇のようにうねってクラピカの鳩尾にドゴン!と叩き込まれる。

 

「ごあ゛!!?」

 

 クラピカは想像以上の衝撃とダメージに限界まで目を見開いて、くの字に吹き飛ぶ。

 背後にいたルシラが咄嗟に飛び込んで、後ろに滑りながら抱き止める。

 

 だが、その時にはすでに右手にフランベルジュを握るラミナが目の前にいた。

 

「!!」

 

 ルシラは小盾を動かして止めようとしたが、もう小盾の存在を知ったラミナには通じない。

 

 直前でステップを変えて、一瞬でルシラの背後に回り込んで背中を2回斬り裂いた。

 

「がっ……!!」

 

「ちぃ!!」

 

 メンチは包丁をラミナに飛ばし、コロロルクも念弾を放つ。

 

 ラミナは左手にソードブレイカーを具現化する。

 

「【銀を纏う精霊軍(オーバーソウル・シルバーアーミー)】……!」

 

 更にザーニャも気合で能力を発動する。

 

 現れたのは銀色の翼を持つ鷲と鷹が出現した。

 

「コンバットモード、『シルバーイーグル』『シルバーホーク』……!」

 

 舞い上がった鷲と鷹の翼が、戦闘機を思わせる機械的な翼に変化する。さらに翼の下には武器も具現化され、鷹にはミサイルが、鷲にはガトリング砲が装備されていた。

 高速で飛翔する鷲と鷹は、ラミナに砲撃を開始する。

 

 それを見たラミナは大きくジャンプして、念弾と鷲の銃撃を躱す。

 

 ビルの壁を蹴ってマチがいる方に移動しながら追ってきたミサイルと包丁をソードブレイカーで斬り落とし、その直後にソードブレイカーを柳葉飛刀に変えて投げ、鷲の頭と鷹の背中に突き刺す。

 

 鷲と鷹は悲鳴を上げて消滅する。

 2羽を具現化していたアクセサリーがバキン!と壊れて、地面に落ちる。

 

(動物を殺したら、アクセサリーも壊れるんか……)

 

 マチのすぐ傍に着地して、柳葉飛刀を消してソードブレイカーに変える。

 

 カルトも一度下がって、ラミナの眼を覗き込む。

 

「それがイルミ兄さんと戦った時に使ったっていう?」

 

「まぁな」

 

「いい加減遊び過ぎだよ。もう待たないからね」

 

 マチがギロリとラミナを睨みつける。

 

 むしろ良く我慢してくれたなとラミナは思い、苦笑して肩を竦める。

 

「まぁ、もうマチ姉が出る必要もなさそうやけどなぁ」

 

 ラミナはそう言って、クラピカ達に目を向ける。

 

 クラピカは口から血を流しながら十字架の付いた鎖を腹部に当てており、ルシラは両膝をついて息を荒らげながら困惑気に手足や周囲を見渡している。すでに盾は消えていた。

 メンチは包丁が残り一本しかなく、コロロルクとバショウ以外はもはや戦闘続行は不可能に近かった。

 

 クラピカは息を荒く吐きながら、ラミナの両眼を見る。

 

「はぁ…はぁ…その……眼は……」

 

「別に眼の色が変わるんはクルタ族だけちゃうで。ま、もう一族は滅んで、名前も知らんけどな」

 

「……鎖をすり抜けたのは……」

 

「この眼の力やで。この眼……【月の眼】はうちのオーラを、目にした相手のオーラと同質化することが出来るんや」

 

「オーラを……同質にする……!?」

 

「同じオーラやからお前の具現化した鎖に干渉してすり抜け、同じオーラやから【練】や【堅】も無視できる。んで、攻撃が当たる瞬間にオーラを戻して、無防備な身体に大ダメージを与える」 

 

 ラミナの言葉にマチを除く全員が絶句する。

 

 そのリアクションにラミナはニヤリと嗤い、

 

「やから言うたやろ? お前の鎖はうちには効かんてな」

 

「っ……!」

 

「ちなみにルシラは今手足が思うように動かず、視界が逆になっとるで。もう能力はまともに使えんやろなぁ」

 

「な……!?」

 

「お前の【緋の眼】は能力の底上げっちゅう感じみたいやな。それに……オーラの雰囲気がちょいと変わりよったな」

 

 ラミナも眼の色が変わるとオーラの系統が変わる。

 同じ気配をクラピカにも感じたのだ。

 

 しかし、特に時間を気にした戦いをしないこと、そして鎖とは無縁な能力も見せないことから【緋の眼】はあくまで補助的能力であると判断した。

 

(鎖を使う制約に【緋の眼】を使うことを設定しとることから考えると……『全系統のブースト』が妥当やな。それやったら、あの回復能力にも納得できる)

 

 恐らく特質系に変わっているであろうことは想像に難くない。

 むしろ状態に合わせて系統が変わるなど、特質系くらいしかないのだから。

 

「さて……死ぬ覚悟は出来たか?」

 

 ラミナ達が一歩踏み出した瞬間、クラピカとルシラの傍に駆け寄っていたバショウが動いた。

 

 さりげなく取り出していた短冊にオーラを籠めて握り潰す。

 

「【流離の大俳人(グレイトハイカー)】」

 

 すると、路地を覆うほどの煙が一気に噴き出した。

 

 ちなみにバショウが短冊に書いたのは、

 

『煙満ち 敵から逃げ延び (けむ)に巻く』

 

 という微妙な俳句(正確には川柳)であった。

 

 それでもラミナ達の眼から、一瞬でもクラピカ達は姿を隠すことに成功した。

 

 その瞬間、ザーニャも動いた。

 

「『シルバーギガエレファント』! 『シルバービッグボア』!」

 

 銀色の鼻を持つ巨象と、銀色の牙を持つ巨大な猪が具現化する。

 

「コンバットモード!!」

 

 巨象は足裏にキャタピラが出現して鼻が戦車の砲台に変化し、巨猪は前脚と後ろ脚にそれぞれタイヤに変化して車になった。

 

「ギガエレファント、足止めをお願いします! 皆さんはビッグボアに乗ってください!」

 

 戦闘にほとんど参加していなかったバショウとザーニャはずっと逃げる隙を窺っており、逃走する用意をしていたのだ。

 

 ギガエレファントは路地を埋め尽くすほどの大きさで、勢いよくラミナ達の元に突っ込んでいった。

 その隙にバショウはクラピカとルシラをビッグボアの荷台に放り込み、ザーニャはメンチに乗せられる。

 

 コロロルクは能力で建物の上までジャンプして、クラピカ達を援護することにした。

 

 ラミナ達は突然煙の中から現れて、砲撃してきたギガエレファントに特にリアクションは見せなかった。

 

 ラミナがソードブレイカーを具現化した瞬間、バショウが具現化した煙が霧散した。

 

「あ? なんや、この煙。能力やったんか」

 

「みたいだね」

 

 単純に隠し持っていた煙幕弾だと思っていたのだ。

 

 ラミナは砲撃を掻い潜ってソードブレイカーをギガエレファントの砲台に突き刺す。

 

 ギガエレファントは姿を消し、地面に象牙と戦車の形をしたプレートを繋げたネックレスが転がる。

 クラピカ達はすでに猛スピードで走り出しており、姿は見えるも小さくなっていた。

 

「ちっ……!」

 

「追いかけるの?」

 

「当然だよ。ここで殺す」

 

 マチの言葉に頷いて、3人は走り出す。

 【月の眼】を解除して倦怠感に襲われるラミナだが、戦闘続行は可能と判断する。

 

 3人は建物の上に跳び上がって、一気に距離を詰めようとしたが、

 

ピリリリリ! ピリリリリ!

 

 マチの懐から着信音が鳴り響いた。

 走りながら携帯を取り出したマチ、表示された名前を見て眉を顰める。

 

「団長から」

 

「あ?」

 

 ラミナ達は足を止めて、マチが電話に出る。

 

「もしもし?」

 

『どうした? 何か取り込み中か?』

 

「鎖野郎に会った。今、逃げられて追いかけてるとこ」

 

『ほぅ……』

 

「そっちの用事は?」

 

『ホームに帰って、これから新しい仕事にとりかかろうと思ってな。その誘いだ』

 

「……」

 

 マチはクロロのお誘いと、クラピカの命を天秤にかけて顔を顰める。

 

 それにラミナとカルトは顔を見合わせる。

 

『俺としては、正直こっちに来てもらいたいんだがな』

 

「……分かった。そっちに行く」

 

『ふっ……じゃあ、待ってるぞ』

 

 通話を終え、マチは携帯を仕舞いながら内容を話す。

 

 ラミナとカルトは盛大にため息を吐くも、もちろん逆らえないので大人しく従うことにした。

 

「いっぺん、拠点に戻ってええか? 武器の補充したいねん」

 

「いいんじゃない?」

 

「カルトは家に仕事の紹介してもらい。クロロの仕事がつまらんかったら、そっちの仕事で暴れたらええわ」

 

「うん。けど、あいつらはこのままでもいいの? また追いかけてくるかもよ?」

 

「ん~……そうやなぁ。まぁ、メンチ達は大した実力ちゃうし、放置でもええやろ。ルシラ? は、娘っ子の依頼があるし」

 

「鎖野郎は?」

 

「……あんま気乗りせんけど……」

 

 ラミナは眉を顰めながら携帯を取り出す。

 そのまま操作を続け、数分ほどすると終えたのかポケットに戻す。

 

「なにしたの?」

 

「……依頼、やな」

 

「誰に? 何の?」

 

「まだ返事待ちや。オッケー貰てから話しするわ」

 

「ふぅん」

 

「とりあえず、まずは移動しよか。クラピカ達が警察やら他のハンター呼び寄せてきたら面倒やし」

 

 マチとカルトは聞きたそうだったが、ラミナの言葉に頷いて移動を始め、街から離れたのだった。

 

 

 

 その数日後。

 

 クラピカの耳に、衝撃的な情報が届いた。

 

 

「お嬢様が……殺された……!?」

 

 

________________________

 

ラミナ’sウェポン!!

 

・【裏を縛れば表も同じ(シャドウバインド)

 

 柳葉飛刀に付与された能力。

 

 影に柳葉飛刀を突き刺して発動。刺された者は約30秒、動きと念能力を封じられる。

 実力者ほど刺すべき本数が増える。

 

 他の者に抜かれてしまえば解除されてしまうため、多人数相手には使い辛い。

 

 元ネタは単純に『影縛りの術』。

 

 

・【親愛なる妹のペット仲間(デメ・ワンワン)

 

 鎖鎌に付与された能力。

 

 投げた鎖鎌に巨大な狼を頭部を具現化する。

 口の中はブラックホールのようになっており、喰らうというよりは『呑みこむ』。

 

 シズクの【デメちゃん】をイメージして創ったが、全く似ていない。

 

 対象を指定できず、操作することも出来ず、吐き出すことも出来ない。

 その代わり、念で具現化したものも呑みこむことが出来る。

 

 

 

ルシラの能力!

 

・【慈愛なる守護の盾(アイギス・アナクフィスィ)

 

 等身大の十字の大盾を具現化して使用する能力。

 

 銃弾、ミサイル、爆弾、放出系能力などを前方に作った反射能力がある光の壁で包み込んで無効化する。

 

 『盾の前には敵しかいないこと』『後ろに誰か守るべき者がいること』『壁の大きさに比例してオーラを消費する』が制約。

 

 *盾のイメージは『FGO:マシュ・キリエライトの【ギャラハッドの盾】』。

 

 

・【舞い防ぐ七の花弁(ロー・アイアス)

 

 七つの小さな盾を具現化する能力。

 

 操作可能で反射能力があるが、上記の能力よりは脆く、面の部分でしか作用しない。

 

 重ねて並べた場合の強度は随一。【超破壊拳】【天を衝く一角獣】ですら防ぎきる。ただし、あくまで『点』における防御において、である。

 

 *元ネタは『Fate:英霊エミヤ【ロー・アイアス】』

 

 




よし。コロロルク達も活躍させれたよ。

バショウさんの能力について。
『バショウさん あなたの能力 分からない』

次回はクラピカサイド。

そして、いよいよキメラアント編へと進みます!

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