暗殺者のうちが何でハンターにならなあかんねん   作:幻滅旅団

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#92 マサカ×ノ×ヒガイシャ

 翌朝。

 

 メンチ達は病院にいた。

 

 ルシラとザーニャはもちろん治療のため入院していた。

 クラピカは【癒す親指の鎖(ホーリーチェーン)】で、ある程度回復していたため簡単に治療だけして、すぐに仕事に戻っていった。

 

 薄情に思えるが、それはメンチ達をラミナ達から遠ざけるためだと誰もが理解していたので責める者はいなかった。むしろ、1人になるなと警告したくらいだ。

 

 しかし、クラピカはもう巻き込みたくないという思いが強く、バショウの制止さえ聞かずに病院を出て行った。

 

 バショウも一度1人にしているセンリツの元へと戻り、依頼主に色々と報告しに向かった。

 

 メンチとコロロルクはルシラ達の護衛で残っていた。

 だが、ラミナ達は追って来ずに街を出て行ったことが分かった。

 

「隠密性が高いフクロウを飛ばしたのですが……。何故か途中で引き返していく3人の姿を捉えています。おかげでギガエレファントを回収できましたが……」

 

「ったく……ホントによく分かんない奴ね。子供を助けたかと思ったら、いきなり襲ってくるし。かと思ったら、あっさり引き下がるし」

 

「クラピカって奴と因縁があるみたいだけどねぇ」

 

「あいつら、同期で結構仲良くやってたと思ったんだけどね~」

 

 メンチはハンター試験での様子を思い出しながら腕を組んで眉間に皺を寄せる。

 

 コロロルクは眉尻を下げて、

 

「流石にもうあの子を仕事に誘うのは厳しいんじゃないかい?」

 

「そうねぇ……。けど、モラウ達のことから考えれば、今回の事を無視して満足する報酬を出せば引き受けてくれる気もするのよね~」

 

「「あ~」」

 

 コロロルクとザーニャはメンチの言葉に納得の声を上げる。

 それにうつ伏せでベッドに横になっているルシラが首を傾げる。

 

「殺し合いをしたのにですか?」

 

「あいつは良くも悪くも殺し屋が染み込んでるからね。色々とドライで、物事の判断基準もはっきりしてるのよ。殺し屋にとって敵味方が変わるのは常。筋を通せば、ある程度の敵対した過去は水に流してくれるのよ」

 

「……あれである程度なのですか?」

 

「誰も死んでないしね。……あいつ、というかあいつらが最初から本気で来られたら、とっくの昔に全滅してたわよ」

 

「……まぁ、それは……」

 

 ルシラもそれには頷くしかなかった。

 

 事実、ルシラは何故自分がこの程度の怪我ですんでいるのか不思議でたまらなかった。

 あのクラピカを抱えた状態で背中を取られた時点で、ルシラにはどうしようもなかった。そして、直前のラミナの動きから、あの一瞬でルシラを殺すことは可能だったはずなのだ。

 あの鋭い刃が首に飛んでいれば、間違いなくルシラの頭は宙に舞い、地面に転がっていた。

 

 なのに、斬られたのは背中。しかも、数日で歩けるほどに回復するレベル。

 

 ザーニャも重傷のように見えたが、急所は外れており臓器は傷ついていなかった。数日安静にして傷さえ塞がれば、日常生活には問題ないレベルまで回復することも分かっている。

 

 あのラミナの実力から考えれば、それは()()()()()

 

 全員がそう考えていた。

 

 すると、ドアがノックされた。

 

「どうぞ」

 

「お邪魔するわ」

 

 入って来たのはセンリツとバショウだった。

 

 それにルシラは目を丸くした。

 

「ふ、2人が来たということは、お嬢様は……!?」

 

「ご両親と一緒にいるわ。……ナダメジマファミリーが壊滅したことで直近の脅威は去ったということで、私達は休暇を貰ったの。もう少し状況を見て、依頼完了か続行か決めるそうよ」

 

 ナダメジマファミリーの壊滅は、当然関係各所に広まっていた。

 これには事情を知っていた者達に衝撃が走った。あの息子がそこまで過激な対応をするとは思わなかったからだ。

 

 しかし、その直後に更なる衝撃が走る。

 

『ナダメジマファミリー壊滅は幻影旅団によるものである』

 

『ナダメジマファミリーが雇った傭兵部隊が()()()()()()()()幻影旅団の団員に喧嘩を売った』

 

 という情報が駆け巡ったからだ。

 

 ちなみにこれはクラピカが意図的に流した情報である。

 

 ジョアナはともかく、その両親は明らかに巻き込まれただけだ。

 少しでも彼らのダメージを減らしておくべきだと思ったのだ。それにルシラへの罪滅ぼしでもある。

 

 これでナダメジマファミリーやジョアナ達は、『巻き込んだ張本人達』ではなく『巻き込まれた不運な連中』になった。

 

 クラピカの目論見は見事に成功し、ナダメジマファミリーの縄張りに手を出すことにほぼ全員が戸惑っていた。

 

 ジョアナの父は完全に被害者の立場であり、これで裏社会と完全に手を切るだろうと考えられたため狙う者は今のところいない。

 

 本拠地にいるナダメジマファミリーの者達もこの状況でジョアナ達を狙う度胸などなく、大人しくしている。

 下手に手を出して、また幻影旅団に襲われたらたまらないからだ。

 

 普通ならば「襲われるわけねぇじゃん」と言えるのだが、実際に死んだ者がいる以上恐れてしまうのは仕方がないことである。

 

 普通じゃ出来ないことをするから、【幻影旅団】なのだから。

 

「そうですか……。お嬢様の様子は?」

 

「あの人とお別れの挨拶が出来なかったって寂しがってたけど、ご両親といれて嬉しそうよ」

 

「……あの人、ですか……」

 

 もちろんラミナのことである。

 

「少しはお前の事も心配してたぜ。少し、だけどな」

 

「……」

 

 バショウが苦笑しながらトドメを刺して、ルシラは顔をシーツに埋めて静かに泣き始める。

 

 そこにまたノックが響く。

 

「邪魔するぞ」

 

 現れたのはミザイストムだった。

 

「あら、どうしたのよ?」

 

「どうしたって……お前らがあいつらと遭遇したって聞いたから顔を見に来たんだよ」

 

「は? もう広まってるの?」

 

「いや、俺に協力してくれている情報系ハンターから聞いた。だから、ほとんどの奴らは知らん」

 

 ミザイストムはゆっくりと部屋の中に入ってきて、ザーニャ達を見る。

 

「再起不能までではなさそうだな」

 

「手加減されただけよ。本気だったら、だぁれもここにいないわね」

 

「そうか……。事情を聞いていいか?」

 

「いいわよ」

 

「お前達もいいか?」

 

「十二支んは幻影旅団を追ってるのか?」

 

 バショウが片眉を上げて訊ねる。

 

 それにミザイストムは首を横に振り、

 

「俺が、俺達が追ってるのはラミナという奴だ」

 

「何故かしら?」

 

「奴の情報は知っているだろう? 暗殺者でありながらプロハンターになり、幻影旅団とゾルディック家と繋がっていて、ヨークシン以降色々と派手に暴れている。しかしその一方、メンチや他のプロハンターとも仕事をして、ジンの推薦ではあるがシングルハンターになった。優秀なハンターでもあり、賞金首でもある厄介な存在だ。下手をすれば、ハンター協会にとってとんでもない爆弾になりかねん」

 

「今のうちに対処したいと?」

 

「ベストはハンター協会側に引き抜けることだな」

 

「あいつを? 副会長派とか、脱会長派が黙ってねぇんじゃねぇか?」

 

「パリストン派は口だけさ。パリストンとて、本心では奴を欲しがっているはずだ。脱会長派は放っておけばいい。俺も十か条の四については議論の余地はあるとは思う。だが、正義感だけでプロハンターは務まるものでもない。確かにラミナという者は闇側の人間だが、どちらかと言えば現場主義の者という印象を持った。下手な権力など欲しないタイプの性格をしていると推察できる」

 

「……そうね。権力よりは金って感じね。まぁ、流星街出身だから権力とは無縁だったってのもあるんでしょうけど」

 

「まぁな。だが、逆に言えば、どこかの副会長のように暗躍される心配もない。純粋に戦力として期待できる人材だ。正直、十二支んに欠員が出れば、会長が次に選んでも不思議はないくらいだ」

 

 凄腕の暗殺者で、幻影旅団とゾルディック家、流星街との繋がりがあって、マフィアなどの裏社会、闇社会にも精通している実力者。

 しかも、ジンとも繋がりがあり、シングルハンター昇格に推薦するほどの者。メンチやモラウなど名の知れたプロハンターとも完璧な仕事をしたとされていることから、信頼関係が築けないわけでもないことが窺える。

 そしてモラウやメンチの話から、かなり知恵も回ることも分かる。

 

 味方にすれば、これほど心強い者はいない。

 

「けどねぇ……あいつはそう簡単に引き込めないと思うわよ~」

 

「だから情報が欲しいんだ」 

 

 それにセンリツとバショウは顔を見合わせて頷く。

 

 そして、メンチ達はラミナの知っている限りの情報を話す。

 センリツはクラピカのことについては少し悩んだが、いずれ知られる話でもあるのでクルタ族と幻影旅団の因縁について話すことにした。流石にキルアとの婚約は話さなかったが。

 

 全ての話を聞いたミザイストムは顎に手を当てて、しばらく考え込む。

 

「…………やはり難しい、か」

 

 ラミナの勧誘は厳しいと判断した。

 

「幻影旅団と家族のような関係ならば、もはや抜けることはあるまい。こちらから下手に仕掛けなければ無駄な被害は減らせそうだが……」

 

「言ったところで止まるわけないでしょ。そんなんで止まればハンターなんてやってないわよ」

 

「だろうな……。それに幻影旅団として活動している以上、どうやってもどこかで目立つ。無闇に手を出すな、くらいが限界か」

 

「それでも馬鹿は出るでしょうけどね」

 

「そこまでは責任が取れん」

 

「後はクラピカという者との因縁か……。こればっかりはどうしようもないな。止める理由がない」

 

 ハンターになっている以上、賞金首の幻影旅団を狙うことを止めることは出来ない。

 

 無用な被害を出すなと言うくらいだが、前回は出来る限り1人でやり切ろうとしている節もあり、今回は純粋な事故だ。

 責める理由はない。むしろ、よく逃げ切ったと言うべきだ。

 

「……会長にも一応報告しておくか。すでに知っていそうだが」

 

「でしょうね~」

 

「お前達はしばらくラミナを追うな。俺は調査を続けるが、今まで以上に慎重に動くつもりだ」

 

「分かってるわよ」

 

 メンチはやや不服気に顔を顰めながらも頷く。メンチが頷いた以上、コロロルクとザーニャに否はない。

 もちろんルシラ達も「誰が追うか!」という心境である。

 

 問題はクラピカだが、過去が過去なので関係が薄い者が警告しても聞く耳は持たないと考えられるのでセンリツ達が注意して見守ることになった。

 どこまで止められるか分からないが。

 

 

 

 そして、2日後。

 

 ルシラは無事に退院し、ジョアナの元へと戻っていった。

 センリツとバショウは依頼達成でお役御免となり、クラピカの護衛に専念することになった。

 

 メンチはまだザーニャが入院中だが、コロロルクを残して次の仕事へと向かった。

 

 ミザイストムもすでに街を離れた。

 

 クラピカ達の商談も大詰めを迎えており、数日後には拠点に帰れるだろうと考えられていた。

 

 だが、クラピカに届いた連絡に事態は急変する。

 

 

「なんだと!!?」

 

 

 クラピカの驚愕と怒りが混ざった大声が滞在しているホテルの部屋に響き渡る。

 

 その声にセンリツ、バショウ、リンセンも慌てて駆けつける。

 

 目を大きく見開き、瞳を震わせるクラピカの姿に只事ではないことが嫌でも理解する。

 

「お嬢様が……殺された……!?」

 

「「「!?」」」

 

 センリツ達も目を丸くして息をのむ。

 

「誰に!? どうやってだ!? ボスは無事なのか!?」

 

 クラピカも混乱を隠しきれずに、責め立てるように問いただす。

 

 流石にこの状況でライトやネオンが死ぬのは、クラピカにとっては死活問題だ。

 

 部下からの連絡では、幸運なことにボスであるライト・ノストラードは生きているようだった。

 

 しかし、ネオンが死んでしまい、ただでさえ占い能力を失くしたことに追い詰められていたライトの精神は完全に崩壊したらしく、錯乱するか虚空を見つめてブツブツと何かを呟くのどちらかの状態を繰り返しているとのことだった。

 完全に心を病んでいるライトの状態に、クラピカは歯軋りをして他に被害はどれくらいかを聞く。

 

 死んだのはネオンと護衛に就けていた男連中数人。

 世話役の侍女達は誰も死んでいなかった。

 

 どうやら銃で殺害されたようだが、銃弾や薬莢などが一切見つからず、また侵入経路が不明。

 盗まれた物はなく、完全にネオンを標的とした暗殺が目的だったことは明白だった。

 

「くっ! (一体誰が……!? まさかラミナ……? いや、占いをねだり続けていたマフィアンコミュニティーの誰かか?)」

 

 ネオンの占いはマフィアンコミュニティー内の顧客が多い。

 ライトはそれでのし上がってきたので、「早く戻さねば!」と追い詰められていたのだ。

 しかし、一向に能力が戻る気配はない。

 

 それで痺れを切らした者が出てもおかしくはない。

 

 ネオンの占いは基本的に的中率100%。

 死を避けるためには最高の手段だったのだ。

 

 己の死を知ることが出来なくなる。

 

 その恐怖はネオンを恨むには十分な動機になる。

 

 特に今マフィアンコミュニティーは十老頭の席を狙って大混乱だ。

 今こそ占いが欲しい。

 

 しかし、手に入らない。

 

 その苛立ちは、ある推測を生み出した。

 

『もしかしたら、他の組と手を組んで占いが出来ないふりを……? もしや、最近調子がいい組はまさか……!』

 

 一度考えてしまうと、否定できる材料はない。

 占いなどファックス一本で終わるのだから。

 

 こうなってしまうと、もう全てが疑わしい。

 

 そして、行きつく先は……もう占いを期待しなくて済むようにすること。

 

 ネオンが死ねば、占いは絶対に出来ない。

 

 そうなれば占いを求めることもないし、他の組も占いを手に出来ないのだから変に疑う必要もない。

 

『なんだ……それが一番楽じゃないか』

 

 だって殺すのは、()()()()()プロに任せればいいのだから。

 

 なので、クラピカは犯人を特定することが出来なかった。 

  

 

 ちなみに犯人はラミナである。

 

 もちろん仕返し、というよりは八つ当たりである。

 

 依頼したのは【ロストマン】だ。

 

 先日の戦いの借りを返した形である。

 

 報酬は100億ジェニー。

 

 一般人レベルの戦闘力もないネオンを殺すだけには、あまりにも法外な金額である。

 これは前回命を助けられたにも等しいことへの、礼も含めていたからだ。

 

 これで断る暗殺者はいない。

 

 しかも、普段はいる念能力者の護衛もいない。

 ロストマンは迅速に仕事に取り掛かって、ネオンを暗殺したのだった。

 

 

 クラピカは手で目元を覆いながら、

 

「センリツ、バショウ、リンセン。すぐに拠点に戻ってくれ」

 

「けど、それじゃああなたの護衛が……」

 

「今はそれどころじゃない。それにメンチ達の話ではもうラミナは街を離れたんだろう? ならば、今は危険は少ない。明日中には商談を纏める。だが、それはノストラードファミリーが残ってなければ意味がない。流石にボスまで死なれてはたまらない」

 

「……そうだな。分かった」

 

「……無理はしないでね」

 

「ああ。そっちも気を付けてくれ」

 

 センリツ達は後ろ髪を引かれながらも、クラピカの指示に従って拠点へと戻ることにした。

 

 翌日、クラピカも商談を纏めて、すぐさまノストラード邸に向かう。

 

 2日ほどかけて戻ったノストラード邸はどこか鬱蒼としており、クラピカが戻ってきたことに多くの者がホッとした表情を浮かべていた。

 

 ネオンの遺体はすでに火葬を終えていた。

 葬式はライトがそれどころではなかったし、暗殺されたマフィアの娘の葬式を行うことなど恥を晒すに等しいからだ。

 

 身内でひっそりと、が流儀ではあるが、その身内もまともな状態でないのでそれどころではない。

 

 すでに屋敷の修繕も終わっており、クラピカはセンリツ達が集まっている部屋に向かう。

 

 僅か一日早く帰っていただけだが、センリツ達の顔にはとてつもない疲労が浮かんでいた。

 

「ご苦労、だったな……」

 

「全く……ヨークシンでのことがなかったら、今ここで辞表叩きつけるとこだぜ……」

 

 バショウは少しでも疲れやこの雰囲気を誤魔化すために冗談を言うが、6割くらいは本音で、センリツとリンセンの2人も同意するような雰囲気だったのであまり冗談になっていなかった。

 

「ボスの容体は?」

 

「……もう表に出るのは無理でしょうね。叫んだり暴れることは減ったけど、今にも自殺しそう。入院も視野に入れるべきね」

 

 センリツの能力は音楽で心を落ち着かせるのが限界。

 治療が出来るわけではないのだ。

 

 クラピカは顎に手を当てて、

 

「そうだな……。別荘で少し休んでもらって様子を見よう。専属の精神科医やカウンセラーを手配して、常に監視を。……最悪を想定して、組の後継についても考え、ボスが落ち着いている時に書類で遺してもらうべきだな。……お嬢様の侍女達は?」

 

「そっちはもう辞めさせてあげてもいいと思うわ。……流石にスクワラとお嬢様を立て続けに亡くしたから……。他の子達も、流石にここを襲われたのはショックが大きいみたい」

 

「……そうか……そうだな。彼女達には一般社会で職を探すと伝えてくれ。もちろん、就職できるかどうかは本人達次第だが、退職金や転居の費用も十分に出す」

 

「分かったわ」

 

「ボスや侍女達の対応が終わり次第、この屋敷も手放す」

 

「まぁ、この状況でここを維持する理由はねぇよな」

 

「……お嬢様のコレクションはどうする?」

 

 リンセンの言葉にセンリツとバショウは僅かに顔を強張らせる。

 

 クラピカも数秒黙り込んで、

 

「……オークションに出す。表に出していいものは一般のオークションで、無理なものはマフィアの裏競売に出す。幸い今年はネットオークションの予定だからな。開催が怪しいならば、他の裏競売を探す」

 

「……【緋の眼】はどうするの?」

 

「……私情を挟み、持ち主が亡くなっているのは気が引けるが……私が買い取らせてもらう。オークションで支払った金額を私の給料と貯金で支払うつもりだ」

 

 クラピカの提言の是非を判定することはセンリツ達には不可能なので、その言葉に頷くしかなかった。

 

 少なからず対価もしっかりと払っていると言えるので、火事場泥棒と後ろ指を差されることもないだろう。

 

 しかし、センリツの耳にはクラピカの困惑と懺悔、そして強い覚悟を示す心音が聞こえていた。

 それがセンリツの不安を増長させるが、今はライトの事や他の者達のことなどやるべきことがたくさんある。

 

「とりあえず、まずはボスの安全と療養体制を整える」

 

 クラピカの言葉に全員が頷いて、すぐに動き出す。

 

 これでまたクラピカは幻影旅団に構う暇など無くなってしまった。

 

 

 

 

 ラミナは隠れ家に戻って武器の補充をして、マチ達に依頼の件を話した。

 

「――っちゅうわけで、これでクラピカは組の立て直しと【緋の眼】回収で手一杯になると思うで」

 

「……微妙だね」

 

「効果ある?」

 

「クラピカにとって、今更マフィアとの伝手が無くなるんはデカいやろうから宿()()はしっかり守ると思うで? 若頭っちゅう立場も失いたぁないはずやでな。仲間の眼も取り戻すんは金も手間もかかるはずやし、こっちにわざわざ手ぇ伸ばす余裕はなくなる」

 

 マチとカルトは懐疑的だが、ラミナは十分な嫌がらせになると考えていた。

 ラミナの仕業かどうか判断できないのが、またクラピカを精神的に追い詰めるだろうとも。

 

「ま、もう終わったことやし。クロロのとこに向かうことに集中しようや」

 

「それもそうだね」

 

「ラミナ、組み手して」

 

「あいよ」

 

 と、3人はクラピカの事などポイッと放り投げて、ほのぼの?とした時間を過ごすのだった。

 

 

 




これでクラピカは更なる修羅場に追い込まれ、クロロの本から占いが消えるということですね。

さて、いよいよキメラアント編へと向かっていきます。
それで、その前にある程度予告、というか報告をば。


ラミナをキメラアント討伐隊に参加させるのは確定ですが、ゴンとキルアも原作より強くなっており、キメラアント討伐隊の戦力が超増加してしまいます。

なので、キメラアント護衛軍も1人増やす予定で、敵味方含めて師団長、兵隊長の蟻も増やすつもりなので、確実に原作と大きく話が変わります(__)
今の難所は『護衛軍4人とか、ノヴさん宮殿に侵入する隙なくね?』ってところです。

もちろん出来る限り原作のストーリーを最大限努力して尊重するつもりです。原作で輝いたキャラクター達を活かしたいと思っています(__)


そして、これが一番の悩み。

キメラアントのあの色々と混ざり合った独特な姿を、文章で表現できる自信がありません!
そこは許して頂きたい……かなぁと。

こんな拙作ですが、よろしければこれからもよろしくお願いします。

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