人生の敗者が紡ぐ、素晴らしき英雄譚   作:Coder

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プロローグ

俺の外見を一言で分かりやすく言うと、「キモデブ」なんだろう。きっと。

世間はキモデブに厳しい。そりゃそうだ。どこにいても煙たがられ、ウザがられる。悲しい運命である。

 

そんな俺は、萌え系アニメの美少女がプリントされたぴちぴちのシャツを着て、小さめのリュックを背負い、お気に入りの伊達眼鏡をかけ今日も元気に玄関を開ける。勿論これが気持ち悪いと思った事なんて今まで1度たりともない。そう、ないのだ。

 

これは正装。いわばスーツのようなものである。(自論)

 

まだ外は少し暗い。短い時計の針は3と4の間を指していた。だが、これでいい。

 

今日はコミックマーケットの開催日。いわゆるコミケである。コミケ当日の電車は当然悪鬼羅刹の地獄となる為、このような早い時間に家を出る事にしたのだ。これは同じ趣味を持つ先輩からのアドバイスである。

 

もとより俺みたいなキモデブは何時に乗ろうと煙たがられる未来は見えてるから、そう言う点でも人の少ない朝から向かう分には都合がいいのだ。

本当は前日から張り込みをしておきたかったのだが、恥ずかしながらこれが初めてのコミケで、イマイチ張り込みとかどうすればいいのかよく分からなかった。言い訳である。

 

俺特有の謎の独り言(自分でも何を言っているか分からない)を呟きながら駅へ向かっていると、ふと裏路地から人の喧嘩するような声が聞こえた。

面倒事には関わらない。これは俺の座右の銘である。俺はシカトしようとして、

 

「だ、誰か助けて……!」

 

裏路地から聞こえたロリボのSOSに、思わず突進していた。

見ると、3人組のヤンキー(と思われる)が1人の女の子を囲んで壁に追いやっていた。ヤンキー?は明らかに悪者ヅラで女の子の体を舐めずり回すように見ている。それを涙目で嫌がる女の子を見て、俺の中で何かが弾けた。

 

「そんなに叫んだって誰も来ないぜ?こんな時間に外に出てたって事は暇なんだろう?俺達と朝までプロレスしようぜ」

 

「い、嫌、誰か助けて…!!」

 

人間にはやらなければならない時がある。

それはテストや入試、受験や面接、まぁそこら辺の「正念場」ってヤツだ。

そして今。まさしく人生の敗者であり続けたこの俺が迎えた正念場。

全身に力が漲る。俺が俺じゃないみたいだ。

俺が今やるべき事は……

 

「そ、その女の子から、離れろおぉぉぉ!!!!」

 

 

 

 

 

 

まぁ。結果から言うとさ。

 

返り討ちにあって、きっちりヤンキーにシメられたんだ。

 

ヤンキーは「興が削がれた」とか言って何処かに行ってしまった。

 

倒れた俺に女の子が駆け寄ってきて、何か言っているのは覚えているんだけどさ。

 

なんて言っていたか、よく聞こえなかったなぁ……。

 

俺の人生にも、少しはかっこいい場面が欲しかったな……。

 

せめて、最後に、この女の子くらいには、かっこいい所を……見せたかった……。

 

 

 

俺の意識は、そこで途切れた。

 

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