「あら、これは……」
「そっか、確かにランダムとは言ったけど……でもこれはさすがに」
話し声が聞こえる。全身が痛い。
なんとか意識を取り戻した俺は、その場で辺りを見渡してみることにした。
ここどこ?
何も無い真っ黒な空間。床と壁の境目も分からないくらいに真っ暗である。
そして、
「あ、目が覚めたかしら」
「全く、呑気に寝てくれちゃってさ」
その部屋に似合わぬ、見目麗しい2人の少女。……浮いてる?
1言で2人を表すのなら、「清楚」と「萌え」だろうか。
いや、ちょっと待って。
「浮いてる!?」
「そりゃそうよ、神様だもん」
ダメだ思考がスパークしてきた。何言ってんだこの萌え美少女は。
いや、それより、
「こ、ここは何処なんだ?てか、お前らは誰なんだ?」
「ここは生と死の狭間。貴方は死んだのよ。呆気なく」
「女の子助けようとして自分が返り討ちにあっちゃ意味ないじゃないのよ、腕振り回して突撃するだけで勝てるとでも思ってたのかな?ぷぷ」
「……見てたのか」
「そりゃもう事の顛末までしっかりと。情けなさすぎて笑えてきますわ」
「ほんとだっさ〜い」
「う、うるさいな!俺だってあれが全力だったんだよ!」
意外と毒舌な2人……。
「あら、私達、まだ自己紹介してなかったかしら」
「そういやそうだね。まぁこの先会うことはないだろうし名乗る必要もないと思うけど」
「じゃあ状況説明も兼ねて、ご挨拶と致しましょうか。」
そう言うと、2人の女神(?)はゆっくりと降りてきた。大きな羽が揺れる。まさしく天使だ。写真撮……違う。そうじゃない。
まず先に、白髪の女神がスカートの裾を掴み、優雅に礼をした。
「はじめまして。私はガブリエラ。本名はもっと長いのですが、面倒なので端折りますね」
そう言って微笑むガブリエラ。大きく肌が露出した服も相まって中々可愛い。まるで
アニメの世界からそのまま飛び出してきたみたいな……
それにしても胸デカ……
「あ、今不埒な想像を私に抱きましたね。この変態」
「なっ何も考えてないよ!!」
「ふふ、冗談です」
「顔が笑ってないんですが」
「じゃあ次は私の番ね!」
そういってガブリエラの後ろから飛び出してきたのは、いかにも元気溌剌、って感じの女神さま。
「私はイメラ。どう?超絶美少女のこのスマイルが見られたんだから、泣いて感謝なさい?」
確かに超可愛い。こっちもガブリエラとは違う可愛さがあっていい。ただ真っ平らな事は除いて……
「殺す」
「すいませんでした」
何故か自然に謝ってしまった。なんでだろう。
「さて、紹介も終わったことですし、貴方が今置かれている状況について説明しますね」
そう言ったガブリエラは、指を軽く鳴らした。途端、目の前の空間にモニターらしきものが現れ、どこかの大陸のような画像が表示された。
「貴方は数多の勇者候補の中からランダムで選ばれた選ばれし勇者です。もっとイケメンが良かったんですが」
「悪かったな!!」
「まあ選ばれたからには運命を全うしてもらいましょうか。勇者をランダムで決めるのって、こっちの仕事も減って楽ですし」
本音がかなり漏れる方なんだろうか、ガブリエラは……
「貴方に課せられた運命は、ざっくり大雑把に言って『魔王討伐』です。」
「魔王か……異世界転生の醍醐味ってやつだな」
「そうです。おそらく貴方の思い浮かべてるソレで間違いないでしょう。貴方には、魔王によって平和が脅かされているこの世界を救って欲しいのです。まあ今の所至って平和ですが」
「平和なの!?」
「魔王は『魔王の僕』が全て倒れた時か、世界ぶっ壊したくなった時だけ現世に現れるみたいなんですよね、ですから貴方には魔王の僕を全員倒し、その暁には魔王討伐、と言う感じで」
「理由の後半適当過ぎない?」
「私達には魔王の考えてることなんか分からないし分かりたくもないので〜」
失笑する女神様。なんてこったい。
それにしても、これまた面白い事に巻き込まれてしまった。現世じゃヒキニートじみたオタク道を突き進んだまま一生を終える所まで未来が見えてた(多分)し、これはこれで面白そうなのかもしれない。てか楽しみ。超楽しみ。
だって、あれでしょ、異世界転生って言ったらさ。
「なぁ女神様、勿論、最強スキルとか、伝説の剣とか、そんなの貰えたりするんでしょ?」
「「は?」」
……あれ?
思ってた反応と違うぞ?
俺の顔の近くまで、ぐっとイメラが詰め寄ってきた。近い近い。
「貴方ね、さも当たり前のように用意されてる所謂『チートスキル』とか『俺TUEEEE系スキル』が楽に用意出来ると思ってるわけ?あれ結構申請とか上の許可貰わないといけないからめんどくさいんだからね!」
「そ、そこは女神の力で何とか出来ないのか?」
「えーめんどくさい。仕事なんて出来れば少ない方がいいもの」
おいおい嘘だろこれは聞いてないぞ。
てっきり天下無双のハーレム天国だと思ってたのに。女神がこれじゃダメじゃないか。
いや、でもそれよりどうしても変えてもらわなきゃいけないのは、
「分かった、じゃあチート諸々は諦めよう。それでもせめてこの無様な姿はせめてイケメンに変えられないのか?」
そう。俺は転生したまま。ただのキモデブなのだ。こんな見てくれではハーレムどころか魔王討伐も程遠い。
こんなキモデブに倒されるような魔王ならいっそ魔王なんてやめて欲しい。
「えーめんどくさ……とは言っても、その顔や体じゃ出会う人全てに哀れみの目を向けられる事も無く顔を背けられてしまうでしょうね。仕方がないわ、そこだけは善処してあげる」
心に来る……。
それでもイケメンなマッチョに生まれ変われるのなら最高だ。
「あ、それと貴方言葉もまともに話せないんじゃないかと疑われる程の超人的な滑舌だったから、コミュ力諸々のスキルは元から上げといてあげたからね。感謝なさい?」
「あっ、言われてみれば」
どうりでやけにすらすら喋れると思った。そう言う事だったのか。
「さて、そろそろ新たなる世界へ旅立ちの時です。このゲートを潜りなさい」
俺の目の前に白いゲートが現れた。煌々と光り輝くゲートの先は真っ白で何も見えないが、この先が異世界だと思うとなんだか心が踊る。
「よし、じゃあ行ってくるよ」
「はーい、せいぜい死なないように頑張りなさいよ」
「この世界の地図は貴方のポケットに忍ばせておきます。後でご確認くださいませ。」
「ありがとう、それじゃ!」
2人の美人な毒舌女神に感謝を告げ、俺は勢いよくゲートに飛び込んだ。
なんか望む形じゃなかったけれど、それでも俺の異世界生活はここから始まる!
さぁ、運命の第1歩を踏み出……!!
「……は?」
女神を恨んだ。恨み尽くした。
何処かも分からない、寂れた牢屋に転送させられた俺は、1人唖然とするままであった。
「……そう言えばイメラ、このゲート、故障してなかったかしら?」
「あれ、そうだったかな?……あ、ほんとだ、『行く先がランダムになる為修理予定』……」
「「……」」
2人はふて寝する事にした。