ポーンギルドの付与術師   作:キョウさん。

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クソ挿絵追加されました(´・ω・`)


1話-メイリオの短剣~オルカはオルカ~★

「やすいよ……ヤスイヨ……」

「ママみてかないのー?」

「しっ、落ちぶれ貴族よ財産を切り売りしてるのよ」

 

 この世界に来て、まっさきに行ったことは金策だった。というより多くのネットゲームにおいて真っ先にやることはレベル上げか金策だし間違ってはいないと思うし、なにより空腹で満たされているのだ、食わねば何もできないのだからどうしようもない。

 

 不幸にもクエストがないので経験値を稼げないしクエスト報酬で手に入る謎の食べ物などもないわけで、そうなると金銭を自力で稼ぐほかなくなるのだ。

 

「マインドポーションおいしいねえ……」

 

 

【挿絵表示】

 

 

 うわごとのようにつぶやきMP回復ポーションを呷る、まずい。

 やっぱ飲むんじゃなかったと思いながらフタをしめてインベントリに収納したそれは、ごく一般的なポーションだ、ゲーム内ではぐびぐび飲んでいたしなんなら濃縮したやつを連打していたが実際には相当まずいことが今わかった、今まで苦労してたんだな自キャラ。

 

 ただそこに至るまでにも、いくつかわかったことはあった。

 

 この世界はとりあえず異世界、というものなのは確定で、しかしネットゲーム準拠ではないということだ。ある程度ゲーム世界は完璧に回っていた自信はあるのだがしかし、聴いたことのない地名やエリアの話しか聞けなかった、なお情報量でヒールポーションをひとつ持っていかれた。

 

 そして自分に関してだが、ちらっと同人がもっていた剣の反射で見た感じネットゲームの自キャラと同じ外見になっているらしい。

 

 趣味の黒髪をやや上に尖らせてあるこの髪型はいわゆる初期設定で使える髪のひとつで、課金して手に入れたそこそこ経験を積んだ若冒険者といった風格をした顔つきとの絶妙なマッチさが気に入っている。衣服は例の”付与術師のリュミエール”を装備しているがどうやら、こんなものを着てここをうろつくのはあまり推奨されないらしい、なんでも高そうな服は嫉妬を買うとか。

 とはいえインベントリ―――100種類まで収納可能なデフォルトバッグに入っていたのがこれだけというか、なにより自分はアバターが豊富なあのゲームにおいておしゃれ要素に力を入れていなかったのだ、あるにはあるんだがすべてを倉庫やドレッサーにしまいこんでありあいにくと手元にはない。かわりにエンチャント用の道具、移動用ライドパートナー、ポーションなどはこれでもかというほど豊富にあったのは救いだろうか。

 

 レベルが上がると倉庫アクセスが解禁される仕組みだったけど解禁されないだろうか……。

 

「お兄ちゃん、このポーションもらえるかい」

「まいどッス」

「かなり安いけど、ここで売るにはみんなの手がとどかないねえ」

「そうなんですか……?」

「そりゃあ、ポーションは稼いでる冒険者とか街の薬局が使うものだもの」

「そっかぁ……」

 

 情けをかけてくれたのだろうか、おばあちゃんがヒールポーションをひとつ買っていってくれた、うれしい。

 

 チャリン、と頂いた貨幣は銅を八枚、どうやら商業組合が発行しているものなのでちなんでギルドというらしく、まあオーソドックスに銅銀金、あと貨幣を半分に割ったり四角いのがあったり、まあ大きさと等級にちなんでそのまんま価値が決まるらしい。自分の資金はあいにくとすべてサブキャラに預けていたためにゼロだ、ゼロってちょっとだけかっこいい、かっこよくない。

 

 それと能力値もエンチャント画面同様見ることができるみたいで、それによるとステータスはそのまんま受け継がれているようだ。レベルは上限突破110のただし、成長傾向でエンチャンターとして振り切らせていた都合上防御、攻撃はほぼ最低値であり、かわりに魔力量や作業速度、そして幸運がぶっちぎりである。

 なるほど一般NPCにも負けたのがわかる、へっ次はステータスリセットで相手をしてやるぜ、しゅっしゅっ……やべえ倉庫だ……。

 

 

 と。

 そんなわけで、この状態では貧弱一般人と同じな自分―――オルカ、自キャラの名前をとってオルカ、イルカじゃなくってオールカミングのオルカ、と名乗った自分はせめてもの食い扶持を稼ぐために個数カンストしているヒールポーションと、適当にゲーム当時から整理が面倒でインベントリの隅に仕舞われていた短剣などをエンチャントして売っていたところだ。

 

 短剣と言ってもレベル帯で言うなら40くらい、まあそんな上等じゃないだろう放出して問題ない感じのものに”スタミナ軽減の”といった軽めの付与をしているだけだ、店売りでもそこそこの値段になったものだし、いる人はいるんじゃないだろうか……でも売れない、ううむ。

 

 おばあさんも言う通り、ここは貧民街のど真ん中らしい、照りつける太陽に耐えつつ路上販売を行っていたがしかし、ポーションだけならともかく一向に装備が売れる気配がないのだ。場所を変えるべきだろうか。

 

 思い立ったら即実行である、このオルカ、臆病なうえに堪え性がない。

 そんな矢先インベントリにせこせことポーションをしまっていると、徒労感すら感じるのだ。

 

 照りつける太陽が憎らしい、だがあらま、突如として訪れた雲が太陽を遮ってくれたではないか。これはありがたい、その雲の顔を拝んでおこうと顔を見上るのだ、恩人の顔を見ておくのは礼儀だと思う。

 

 しかし見上げたさきにあったのは―――

 

 

「や、これいくら?」

 

 肩の下あたりまで伸びた赤い髪を揺らし、短剣を指差す乙女ではないか。

 飾り付けを赤色基調に皮の鎧を身に着けた、少女を抜けきらない小柄な乙女もまた腰に短剣を持っており、見るからに軽装備の戦士といった感じである。その胸は薄く、鎧も必要最低限の箇所だけを覆っておりなるほど、とても動きやすい装備だなと思えた。

 

「ども、ども、銀貨十二枚に銅貨五枚ですぜお嬢さん」

「へーぇ……ほんとに?」

「は、端数切り捨てにしまッス銀貨十枚です……」

 

 このオルカ、臆病である。

 やすやすと値切りされては舐められないかという心配をよぎらせつつもしかし、値切りに応じるのは自分がこの世界の物品の価値というものをわかっていないからだ。串焼きや謎肉の肉まんの値段はアテにならないものだから、どうしても手探りになる、なにより今このオルカは腹が減っている……とにかくはやめにまとまったお金を手にして何かを食べたいのだ。

 

 そういえば回復職などは食べ物を味方に投げつけて回復する手段があったらしい、いま回復職だったら食べ物を持っていたのだろうか……。

 

 誘惑とのてんびんにかけて見事にへし折れた自分はレベル40相当の、みっつのエンチャントがされた短剣を銀貨で交換すると今日は店じまいだよと物品をどんどこ仕舞っていくのだ。これだけあればしばらく食うことくらいできるだろう、住む場所はまあどこか軒下でも借りよう、このオルカ、どこでも眠れるのだ。

 さあお嬢さん行きな行きな、散った散った、今日は店じまいだよ何を言ってももう売らないよ、俺はこれから謎肉の肉まんをたらふく食べるんだ、お酒は弱いのでリソースを肉まんに割けるんだ、へっあの兄ちゃんミルク頼んでるぜって笑われても上等なのだ。

 

「あの……なんッスか…?」

 

 されど目の前の少女はずらからない、まさか自分の着てる服でも買い取りたいってことだろうか。

 

「服はちょっと非売品なので」

「いや買わないけど」

 

 なるほど買わない、では自分を買うということだろうか、なるほどここは法の通らぬ貧民街、いたいけな少女に見えても男に飢えた野獣、こんなあどけなさそうな顔をして飢えた男からも襲われないということは皆知っているのだ……お嬢さん店じまいだよ!この貞操はSold outだ。

 

 そうして身体を抱いていると少女のほうから口を開いた。

 

「君、商売はじめて?」

「まあそうだねえ……売る仕事はやったことが」

「だよねえ」

 

 言う野獣少女は買い取った短剣をくるくる回すと、それをこちらにしっかりと見えるようにし、そして言う。

 

「この業物、どこの掘り出し物かは知らないし、あたしくらいじゃないと価値がわからないケド―――銀貨10枚なんて安いも安い!金貨をじゃんじゃか積んで買えるものだって思うわよ、ギルドじゃ名の知れたローグのあたしが言うんだから、信じなって」

「お返ししていただけるってことです?」

「それはダメ」

 

 目の前でネタバラシをした挙句返さない、なんていじわるなんだ。

 なきそう、ないた、やっぱ泣かない。これは自分のミスだから次から強くなろう。

 

 だからじゃあねと会釈を別れにさよならなんだ。

 

「ちょっ、ちょっと待ちなさいって!?」

「あの、自分肉まん食べに行くので……」

「そんなものよりいいもの食べさせてあげるから!!」

「ほう」

 

 ならば話を聞く理由があるな。

 どうぞレディ、話を続けて。

 

 襟を正して声をかけると、困った顔を一瞬して、それからまた話しだした。

 

「いい?なんでこんなところでこんなものを売ってたのかわからないけど、ポーションにしたってこの短剣にしたっていくらなんでも安すぎるの、あなた何?出家志願の元貴族?」

「いえ民間人です」

「それならいいけど……じゃあ聞くわ、これ、どこから手に入れたの?」

「それなら―――武器はもともと持ってたし、エンチャントは自分でしたものッスけど……」

「……えっ」

 

 今度は目を丸くするやじゅ…短剣少女、コロコロと表情が変わるのは面白い。

 そうするとなぜだろう、ブツブツとつぶやきはじめやがて、距離を一気に縮めてきたのだ、なんて欲の強い!

 

「あなたがこれやったの!?ほんとに!?」

「ウソつく理由ないです…!このへん来たばっかで値段とかもさっぱりだけど、昔はこれだいたいこの値段で売れてたし…!店売りで……!あっあっ胸ぐらつかまないであっあっあっ」

「そう……そうなのね、でもそっかぁ……このへんには来たばかりの旅人ってことよね。じゃあこのあたりの常識や物価を知らなくてもおかしくはない……のかな。あなた出身は?」

「ヒエーッサイタマ!」

 

 胸ぐらをつかんでぶんぶん振るやっぱり野獣な少女にヒエーッとつぶやきながら、しばし彼女が考え出すそぶりを見せるとようやく解放された。

 

「ねえあなた、行くアテはあるの?」

「正直なくて困ってたところかなあ……だからご飯を食べてから考えようって」

「ウチで食べてきなさい!」

「まじでっ!」

 

 肉まんも捨てがたいが、きちんとしたおうちのご飯が食べられるという誘いに乗らないことはないのだ。これが普段の冷静にクリックと右クリックの作業をしていた頃の自分なら違ったかもしれないが、あいにくこのオルカ、今空腹である。

 

「うちの”ギルド”ならあなたに教えられることもあると思うしね。こんなものをこの値段で譲ってもらったときに何も言わなかった迷惑料も兼ねてよ、そろそろお昼時だし一人くらい増えても誰も文句は言わないと思うわ」

「でも知らない人についてっちゃダメってお母さんが」

「お利口さんでいいわね?あと10年若ければね?」

「ハイ」

 

 この綺麗な返し、こやつできる。

 だがそれを考える頭よりさきにおなかが鳴るのだ。

 

 あとできる質問はというとひとつくらいだろう。

 そうなるとふむ、何を聞くべきか――― ああ、そうだ、アレかな。

 

 礼儀は、礼儀だ。

 

「―――ところで、君の名前は?」

「ああー」

 

 そこまでで、ふと言い忘れてたわねー、と野獣少女が目線をそらしつぶやく。

 それからこちらに振り返ると、首元にあるドッグタグ……のようなものを手でつまみ見せながら答えた。

 

 

「あたしはメイリオ、”ポーンギルド(くずギルド)”のメイリオよ!」

 

 




メイリオフォントすき
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