前回、投稿後に一気に体調が悪くなりまして寝たきりでした。
もう大丈夫なのですが、年末年始は忙しいので更新できるかは怪しいです。
試験が終わった。
出来はまぁ、可もなく不可もなくといったところ。
残る面接は明日行われるため、学生は一度帰宅する。
もちろん、俺も帰宅する。
その時、頭の中に声が響いた。
『にげろ』
突然のことに、学生たちの往来する道の中心で立ち止まる。キリキリ、と頭が痛む。
顔をしかめ、その場にうずくまる。
周りの学生からは、心配をする目と何事かとおもしろい者を見るような目。その二つが俺を囲っている。
しかし、そんなことはお構いなしに頭の中にまた、声が響く。
『にげろ』
ただ、それだけを繰り返す。
すると、一人の女性が、帝国軍の軍服を着ている女性が駆け寄ってきた。
「どうした、体調不良か?」
その問いに、問題ない、と応えようとするが、声がでない。まるで、声の出し方を忘れた、いや、声の出し方がわからなくなったようだった。
「誰か、教員を呼んできてくれ!」
何やら慌てているが、俺は頭の中の声に集中する。
『にげろ、今すぐ。そこは危ない。すぐに奴らが………………皇国軍が………!!』
何だと、この頭の中に聞こえる声はどこか懐かしい声で、警告している。
なんとか周りの人間にもこのことを報告せねば。
頭痛を我慢しながら、何とか声を振り絞って伝える。
「頭の中、声………皇国、攻撃…逃げて」
「なんだと!?」
なんとか伝えることはできた。しかし、信憑性に欠ける。
「それはどういうことだ!?」
女性が問うてくる。また、声を振り絞る。
「今すぐ、逃げ──────────」
ここで、俺の声は途切れた。
否、俺の声はかき消された。
俺の声より遥かに大きい"
「な………!?あの光、皇国の!!?」
そう、皇国軍の攻撃によって俺の声は消された。
そして──────────
──────────この攻撃によって均衡状態か崩され、第八次世界大戦の火蓋が切って落とされた。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
今、入試会場周辺は混沌と化している。
多くの学生の叫び声や泣き声が響き渡っている。
軍用の輸送車で学生を危険区域から逃がしているが、今日はおよそ30000人近くの学生や教員、警備員や帰り際だったので父兄もいた。
俺はというと、体調不良と疑われていたのでいの一番に脱出を、と言われたが辞退した。
だったら、他の女性や重要な人を逃がした方がいいと判断したからだ。
「またせたな、少年。君たちの番だ」
先ほどの女性は救出班についている。
女性の指示に従い、輸送車に乗り込む。ひとまず安心だ。
その輸送車の中で、女性は突然とある話を始めた。
「昔、といってもつい5、6年前のことだから知ってる人もいるかもしれないがな。私はあの"一族鏖事件"の当事者だった。当時、私は小学生だった。学校から帰ると家の中から、母の叫び声が聞こえた。その直後、祖父と祖母の声も。そして、父の断末魔が聞こえた」
と、一旦間を空け呼吸する。そして、話を続ける。
「恐くて腰が抜けてしまってね、その場にしりもちをついてしまった。そのときに、物音を発ててしまってね。もう終わり、そう思ったんだ」
何故か、それまで苦渋の表情をしていた女性が柔らかな笑みを浮かべた。
「しかし、颯爽と現れたヒーローに助けられたんだ」
そして、その続きを聞いた途端、俺は驚愕する。
「赤色の帝国軍の軍服を着た、『
兄さんだ。この女性は兄さんに助けられたんだ。
確か名前は──────────
「
「おや?私を知っているのか?」
「俺………いや、僕の名前は赫宮双葉。双司は僕の兄です」
「なッ!?」
真実を証すと、とても驚いている様子だった。
しかし、その表情はすぐさま憐れみに変わった。
「そうか。あの話は、聞いている。入学の時に聞かされた」
本当に残念だ、と先ほど兄さんの話をしていたときと違って、顔から笑みは消えていた。
兄さんは、この人の笑顔を守った。
だけど、俺の必要無い言葉でその笑顔を曇らせた。
「やっぱり、違うなぁ………」
○ ● ○
ここは家の近く、危険区域から抜け出して安全になった。
とはいえ、どこに敵が潜んでいるかはわからない。
バスの中で聞かされた話によると、皇国軍の人間は、すでに内部に侵入してから十日は経っていたそうだ。
俺はそれを伝えるために家路を急ぐ。
4、5分して家に着く。すぐに情報を伝える。
幸い、妹も母も無事に家に辿り着いていたため、外出をしなければ大丈夫という結論に至った。
「そう、双司が助けた娘と………。あの子も、まさか自分が助けた娘が自分の弟を助けるなんて、考えもしなかっただろうね………」
兄さんが助けた人に助けられた俺。
なんとも情けない。
しかし、俺の選んだ道はこれだ。
母を、妹を養う。絶対に死なない。
そのための道を選んだ。
そのとき、テレビから聞こえてきた声に戦慄する。
『輸送車に攻撃が当たり、大破。中に乗っていた櫟美詠さんが重傷を負っている模様です。しかし、危険区域内の比較的中心に近い位置で、救出は困難な模様です』
櫟さんはきっと、他に輸送車に乗っていた人の代わりに全てを受けたのだろう。
彼女は、自分のことは省みずに他人を救った。
俺だって、助けてもらった。
「変なこと………、考えてないでしょうね?」
「ッ!!」
はっきりと言って、図星だった。
助けることは叶わない。だが、せめて櫟さんたちのことを敵に感づかれないように。
しかし、母はそれを見切っていた。
「双葉が行っても、何も変わらないよ」
そんなことは、わかっている。
しかし、兄さんが助けた、俺を助けてくれた彼女を、放ってはおけない。
「変えるんだ。なんとしてでも、変えなきゃなんない」
しかし、頑として俺は決意を曲げない。
正直言って、恐い。
死ぬかもしれないのだ。今し方、思ったことと矛盾しているのだ。
それでも、彼女を救わなきゃ、行動を起こさなきゃ、兄さんに嫌われるかもしれない。
そう思うと、何が何でも決意を曲げたくなくなる。
「どうして?死んじゃうよ!?双葉まで失うなんて嫌!!」
母は、泣いてすがりついてくる。
それでも俺は─────
「行かなきゃ、兄さんに合わせる顔がなくなっちまう」
─────あの人を助けたい。
「………………、どうしても、行くんだね」
「あぁ、行く」
俺は自分を曲げない。
「………………、言うと思ったわ。ハァ………」
へ………?どういうこと?
「お母さぁーん、有ったよぉー!」
二階から母を呼ぶ妹の声が聞こえたと思ったら、その妹が
その
そして、妹が背負っている二本の長刀、兄さんの愛用武器─────
─────
「これは………、どうして………?」
別にこれがここにあるから驚いている訳でも、とって置いてあることが信じられないわけでもない。
何故、これを俺に託すのか。それがわからない。
「双葉は知らないけど、双司があの日の少し前に言ってきたのよ。もし俺が死んだらこの装備は双葉に、ってね」
兄さんが、俺に?
「だから、双葉に託すの」
………、兄さんと一緒に………!
「いってらっしゃい、双葉。………死なないで」
それなら、なんとかなる気がする。
気がするだけかもしれないけど、できる。
俺はそう信じている。
「あぁ、生きて帰ってくるさ。絶対に!!」