紅蓮の流星記   作:夢雨麻

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遅れてすみません。
前回、投稿後に一気に体調が悪くなりまして寝たきりでした。
もう大丈夫なのですが、年末年始は忙しいので更新できるかは怪しいです。


第二記

 試験が終わった。

 出来はまぁ、可もなく不可もなくといったところ。

 残る面接は明日行われるため、学生は一度帰宅する。

 もちろん、俺も帰宅する。

 その時、頭の中に声が響いた。

 

 

『にげろ』

 

 

 突然のことに、学生たちの往来する道の中心で立ち止まる。キリキリ、と頭が痛む。

 顔をしかめ、その場にうずくまる。

 周りの学生からは、心配をする目と何事かとおもしろい者を見るような目。その二つが俺を囲っている。

 しかし、そんなことはお構いなしに頭の中にまた、声が響く。

 

 

『にげろ』

 

 

 ただ、それだけを繰り返す。

 すると、一人の女性が、帝国軍の軍服を着ている女性が駆け寄ってきた。

 

「どうした、体調不良か?」

 

 その問いに、問題ない、と応えようとするが、声がでない。まるで、声の出し方を忘れた、いや、声の出し方がわからなくなったようだった。

 

「誰か、教員を呼んできてくれ!」

 

 何やら慌てているが、俺は頭の中の声に集中する。

 

 

『にげろ、今すぐ。そこは危ない。すぐに奴らが………………皇国軍が………!!』

 

 

 何だと、この頭の中に聞こえる声はどこか懐かしい声で、警告している。

 なんとか周りの人間にもこのことを報告せねば。

 頭痛を我慢しながら、何とか声を振り絞って伝える。

 

「頭の中、声………皇国、攻撃…逃げて」

 

「なんだと!?」

 

 なんとか伝えることはできた。しかし、信憑性に欠ける。

 

「それはどういうことだ!?」

 

 女性が問うてくる。また、声を振り絞る。

 

「今すぐ、逃げ──────────」

 

 ここで、俺の声は途切れた。

 否、俺の声はかき消された。

 俺の声より遥かに大きい"爆発(おと)"によって、遮られてしまった。

 

「な………!?あの光、皇国の!!?」

 

 そう、皇国軍の攻撃によって俺の声は消された。

 そして──────────

 

 

──────────この攻撃によって均衡状態か崩され、第八次世界大戦の火蓋が切って落とされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

          ◇  ◆  ◇  ◆  ◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今、入試会場周辺は混沌と化している。

 多くの学生の叫び声や泣き声が響き渡っている。

 軍用の輸送車で学生を危険区域から逃がしているが、今日はおよそ30000人近くの学生や教員、警備員や帰り際だったので父兄もいた。

 俺はというと、体調不良と疑われていたのでいの一番に脱出を、と言われたが辞退した。

 だったら、他の女性や重要な人を逃がした方がいいと判断したからだ。

 

「またせたな、少年。君たちの番だ」

 

 先ほどの女性は救出班についている。

 女性の指示に従い、輸送車に乗り込む。ひとまず安心だ。

 その輸送車の中で、女性は突然とある話を始めた。

 

「昔、といってもつい5、6年前のことだから知ってる人もいるかもしれないがな。私はあの"一族鏖事件"の当事者だった。当時、私は小学生だった。学校から帰ると家の中から、母の叫び声が聞こえた。その直後、祖父と祖母の声も。そして、父の断末魔が聞こえた」

 

と、一旦間を空け呼吸する。そして、話を続ける。

 

「恐くて腰が抜けてしまってね、その場にしりもちをついてしまった。そのときに、物音を発ててしまってね。もう終わり、そう思ったんだ」

 

 何故か、それまで苦渋の表情をしていた女性が柔らかな笑みを浮かべた。

 

「しかし、颯爽と現れたヒーローに助けられたんだ」

 

 そして、その続きを聞いた途端、俺は驚愕する。

 

「赤色の帝国軍の軍服を着た、『紅焔の流星(こうえんのりゅうせい)』、()()()()さんに、命を救われたんだ」

 

 兄さんだ。この女性は兄さんに助けられたんだ。

 確か名前は──────────

 

櫟美詠(くぬぎみよ)………さん」

 

「おや?私を知っているのか?」

 

「俺………いや、僕の名前は赫宮双葉。双司は僕の兄です」

 

「なッ!?」

 

 真実を証すと、とても驚いている様子だった。

 しかし、その表情はすぐさま憐れみに変わった。

 

「そうか。あの話は、聞いている。入学の時に聞かされた」

 

 本当に残念だ、と先ほど兄さんの話をしていたときと違って、顔から笑みは消えていた。

 兄さんは、この人の笑顔を守った。

 だけど、俺の必要無い言葉でその笑顔を曇らせた。

 

「やっぱり、違うなぁ………」

 

 

         ○  ●  ○

 

 

 ここは家の近く、危険区域から抜け出して安全になった。

 とはいえ、どこに敵が潜んでいるかはわからない。

 バスの中で聞かされた話によると、皇国軍の人間は、すでに内部に侵入してから十日は経っていたそうだ。

 俺はそれを伝えるために家路を急ぐ。

 4、5分して家に着く。すぐに情報を伝える。

 幸い、妹も母も無事に家に辿り着いていたため、外出をしなければ大丈夫という結論に至った。

 

「そう、双司が助けた娘と………。あの子も、まさか自分が助けた娘が自分の弟を助けるなんて、考えもしなかっただろうね………」

 

 兄さんが助けた人に助けられた俺。

 なんとも情けない。

 しかし、俺の選んだ道はこれだ。

 母を、妹を養う。絶対に死なない。

 そのための道を選んだ。

 そのとき、テレビから聞こえてきた声に戦慄する。

 

 

『輸送車に攻撃が当たり、大破。中に乗っていた櫟美詠さんが重傷を負っている模様です。しかし、危険区域内の比較的中心に近い位置で、救出は困難な模様です』

 

 

 櫟さんはきっと、他に輸送車に乗っていた人の代わりに全てを受けたのだろう。

 彼女は、自分のことは省みずに他人を救った。

 俺だって、助けてもらった。

 

「変なこと………、考えてないでしょうね?」

 

「ッ!!」

 

 はっきりと言って、図星だった。

 助けることは叶わない。だが、せめて櫟さんたちのことを敵に感づかれないように。

 しかし、母はそれを見切っていた。

 

「双葉が行っても、何も変わらないよ」

 

 そんなことは、わかっている。

 しかし、兄さんが助けた、俺を助けてくれた彼女を、放ってはおけない。

 

「変えるんだ。なんとしてでも、変えなきゃなんない」

 

 しかし、頑として俺は決意を曲げない。

 正直言って、恐い。

 死ぬかもしれないのだ。今し方、思ったことと矛盾しているのだ。

 それでも、彼女を救わなきゃ、行動を起こさなきゃ、兄さんに嫌われるかもしれない。

 そう思うと、何が何でも決意を曲げたくなくなる。

 

「どうして?死んじゃうよ!?双葉まで失うなんて嫌!!」

 

 母は、泣いてすがりついてくる。

 それでも俺は─────

 

「行かなきゃ、兄さんに合わせる顔がなくなっちまう」

 

 

─────あの人を助けたい。

 

 

「………………、どうしても、行くんだね」

 

「あぁ、行く」

 

 俺は自分を曲げない。

 

「………………、言うと思ったわ。ハァ………」

 

 へ………?どういうこと?

 

「お母さぁーん、有ったよぉー!」

 

 二階から母を呼ぶ妹の声が聞こえたと思ったら、その妹が()()()を持ってきた。

 その()()()とは、兄さんの使用していた赤色の帝国軍の軍服と赤い超速運動靴(ソニック・ブーツ)

 そして、妹が背負っている二本の長刀、兄さんの愛用武器─────

 

 

─────命ノ太刀(ライフ・ブレード)誓イノ太刀(オース・ソード)だ。

 

 

「これは………、どうして………?」

 

 別にこれがここにあるから驚いている訳でも、とって置いてあることが信じられないわけでもない。

 何故、これを俺に託すのか。それがわからない。

 

「双葉は知らないけど、双司があの日の少し前に言ってきたのよ。もし俺が死んだらこの装備は双葉に、ってね」

 

 兄さんが、俺に?

 

「だから、双葉に託すの」

 

 ………、兄さんと一緒に………!

 

「いってらっしゃい、双葉。………死なないで」

 

 それなら、なんとかなる気がする。

 気がするだけかもしれないけど、できる。

 俺はそう信じている。

 

「あぁ、生きて帰ってくるさ。絶対に!!」

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