紅蓮の流星記   作:夢雨麻

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第三記

 戦場は入試会場。激しい攻防が繰り返されている。

 

「帝国軍第零八小隊に連絡、戦場に"一筋の紅い光"が向かっている模様。先頭を行いつつ、正体を調査しろ」

 

 突如、とある小隊のもとに通信が入る。

 しかし、この状況ではどうすることもできない。

 

「こちら帝国軍第零八小隊隊長、まず視認できていない!そもそも、そんな暇はない!」

 

 もし、その正体が敵勢力のなんらかだった場合、命はない。

 第零八小隊の人員は疲弊しきっているのだ。

 

「これ以上負担がかかると、今後に関わる。下手すると全滅するかもしれない!」

 

 目の前の敵を倒すことが重要だ、そう言い強制的に通信を切る。この場を凌げたとしても、後で処罰が下るのは目に見えている。

 それでも戦おうと、仲間の方を向くと全員が遠くを見つめていた。

 そして、目を疑う。

 あの光を、見たことがある。

 かつて、仲間のために命を投げ捨て、皇国軍に単体で挑んだ男。

 帝国軍の伝説として残っている、赤い軍服の、最強の男。

 

「赫宮……双司………!」

 

 死んだはずの男、彼の遺体を見た人間は3000人は超える。

 有り得ないはずの、光景を目の当たりにしている。

 そして、気付く。

 段々と近付いて来ているのは、赫宮双司ではない。

 

「あれは確か………、双司さんの、弟………?」

 

 そう、ソレは赫宮双葉である。

 兄が身に纏った、紅き軍服。

 兄が愛用した、二本の長刀。

 兄が全力を奮うために造らせた、紅き超速運動靴。

 それらを身に付け、戦場へと足を踏み入れる。

 そして、第零八小隊に向かい、叫んだ。

 

 

「俺は赫宮双葉、助太刀にきた!負傷者は後方へ、そうでない者は救助や他の戦闘域へと移動してくれ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

      ◇  ◆  ◇  ◆  ◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 彼の叫びに、帝国軍側は狼狽する。

 それもそのはず、突然現れた少年に指示を出されて、戦闘経験があるとは思えない人間が一人で50人近くを相手取ろうとしているのだ。

 

「おまえ、双司さんの弟だろ!?何をしているんだ!!」

 

 そんな俺に対して、怒号をとばしてくる人物がいた。

 

「危険だ!今すぐここを離れろ!!」

 

 その人は、俺を戦線から離脱するように言ってくる。

 しかし、そんなことは気にせずに俺は抜刀し、敵に向かって二本の長刀を構える。

 

「一人の方が戦いやすいんです。だから、兄も一人だったんだと思います!」

 

 超速運動靴によって、通常では出せないようなスピードで動き、乱舞をお見舞する。

 何度か、兄さんの演習を見たことがあるからこそ、わかることだった。

 

「おまえは一般人、それにまだ中坊だろ!!」

 

「うるせぇ!さっさと他のところに行きやがれ!!」

 

 諭そうとしてくる彼に対し、反論する。

 

「俺は死なない。他の人も、殺させない。だから、俺に協力してくれ!力を貸してくれ!!」

 

 支離滅裂なことを言ってるのはわかっている。

 ただ、これが最善策である。確証を持って言えることだ。

 

「わかった、おまえに任せよう」

 

「ありがとうございます!」

 

 この小隊の隊長らしき人から認められたことに感謝をしていると、敵が攻撃してきた。

 弓から放たれた矢を、右手に持った命ノ太刀(ライフ・ブレード)で斬り落とす。

 そこから一気に相手の懐まで潜り込み、体当たりする。

 相手の身体が宙に浮き、そこから6m近く飛んでいく。

 そして、一本のロングブレードを振りかぶっている相手の脚に回し蹴りをする。

 体制が崩れ、隙が生まれる。その一瞬の隙を見逃さずに、相手のロングブレードを斬る。

 すると、相手のロングブレードは、斬ッ、と斬れてしまう。

 

「なッ………………!?」

 

 相手が驚いているうちに顔面を長刀の柄で殴る。

 そして、14、5m先で群れている相手の集団のもとへ向かい、地面を斬り刻み足下を不安定にする。

 さらに、近くのビルを1.5m四方に斬り取り、投げつける。

 一度に五、六人ほどを気絶させていく。

 3分も経たずに近くに敵勢力はいなくなった。

 

「中心部はどこらへんですか!?」

 

「ここから東に2㎞ほど進んだところだ、あそこには俺のダチがいる。助けてやってくれ!」

 

「任せてください!」

 

 そう言い、言われた通りに東へ向かう。

 途中、ぽつぽつと点在する敵を気絶させては先に進んでいく。

 5分ほど移動を続けると、先ほどの場所よりも大きな戦闘音が聞こえる。

 俺は美詠さんを必死に探す。

 なかなか見つからず、嫌な予感が頭を過ぎる。しかし、それでも捜索の手を止めない。

 すると、前方から話し声が聞こえる。

 

「ふん、死に損ないが………。早く楽になればいいものを………」

 

「残念だな、そう簡単に死にはしない」

 

 この声は………………………!!

 聞き覚えのある声が聞こえた。

 急いでそこに向かう。

 

「ならば、私が直接手を下そう………」

 

「私が死んでも、新たな力が貴様を殺すだろう。ライトニング・ベルセルク………………、()()()()()()()よ」

 

 皇国軍騎士長、ライトニング・ベルセルク。それは皇国騎士団の中で最強の人物である。

 そんなに強い奴が攻め込んできている。

 

「戯れ言を………………。私と対等に闘える者など、帝国軍総帥と紅焔の流星(赫宮双司)くらいだ」

 

 兄さんなら、こいつと対等に闘える。

 つまり、兄さんはそれほどまでに強いということだ。

 

「知っているか?彼には弟がいる」

 

 俺のことだ。しかし、それを話す意味とは何なのか、理解できない。

 

「それがどうした?弟だからといって紅焔の流星と同等とは限らないだろう?」

 

 そうだ、俺は兄さんほど強くは───────────────

 

「そうだな、彼はきっと兄よりも強くなる。私はそう信じている」

 

 ───────────────何を言っているのか、一瞬理解が遅れた。

 

「ハハハ、それは楽しみだ。だが、おまえはその姿を見ることはできない。何故ならもう、死ぬからだ!!」

 

 しかし、その言葉だけははっきりと認識できた。美詠さんに向かって振り下ろしている双刃槍めがけて、身体が動いていた。

 

 ギィィィィン!!!!、当たりに金属同士が当たる音が響き渡った。

 

「………………………ッ!!?」

 

 突然の横槍に驚きを隠せていない、ライトニング・ベルセルク。

 

「てめぇに!美詠さんを殺らせるわけねぇだろ………………!!クソッタレがァァァァ!!!!」

 

 全力で命ノ太刀と誓イノ太刀(オース・ソード)を薙いだ。

 ライトニングは、それを双刃槍で受け止める。

 

「赤………朱……緋…茜、紅!赫!!忌まわしい!!!!」

 

 突然性格が豹変するライトニング。

 

「そういえば帝国には、噂をすれば影がさす、という諺があるらしいが、まさにこのことだな!!」

 

 どうやら、兄さんとは因縁があるらしい。そんななかで、噂をしていて俺が現れた、ということか。

 

「クフフ、笑いが止まらん!お前()、この私が殺してやる!!」

 

 今、何て言った?

 お前も、殺す?も?も、ってなんだ?

 …………………………こいつが、兄さんを………………?

 その瞬間、何かが弾け飛んだ。いや、正確には切れたと言った方が正しい。

 

「お前が、殺したのか?」

 

 自分で、自分の抑えが効かない。理性を保てない。

 

 

こいつを、ぶっ殺したい衝動が止まらない。

 

 

「あぁ、赫宮双司を殺したのはこの私、ライトニング・ベルセルクだよ」

 

 その言葉が聞こえた瞬間、俺は憎しみに体を支配された。憎しみに、身体を委ねた。

 

「お前がァ!!殺す、殺す殺ス殺す殺す殺す殺ス殺ス殺す殺す殺す殺ス殺す殺ス殺す殺ス殺ス殺ス殺ス殺スァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!!!!!!」

 

 復讐のために俺は攻撃を開始する。

 どの攻撃も乱れていて、それでいて無限に等しいほどの斬撃が飛び交っている。

 

「グゥッ!!?」

 

 僅かに遺された人間らしさによって美詠さんの方へ斬撃が飛ぶのは抑えている。が、それもいつまで意識が保つかによる。

 

「ガァァアァアアァァァアアアァ!!!!」

 

「チィッ!総員、一度退けェッ!!皇国軍領域に入れば手も出せまい!!!!」

 

 余りの猛攻に耐えられなくなったのか、ライトニング・ベルセルク率いる皇国騎士団は戦略的撤退を始める。

 

「逃がすかァァァァッ!!!!!!」

 

「覚えておけ、紅いの!次に(まみ)えるときは私の全身全霊、私が最強たる所以の力を持ってして迎え撃とう!!」

 

 逃がすか、逃がすか!!

 兄さんの仇、復讐!!

 

「待てェェェエエェェエェエエェエェエエ!!!!」

 

 腕を伸ばす。抜けてしまうのでは、と疑うほどに、伸ばす。

 しかし、伸ばした腕は届かなかった。

 そして、俺は意識から、その手を放した。




皆さん、あと少しで年が明けます。
年が明けてから読んでいるかたもいらっしゃると思います。
そんな皆様に、今年の感謝を送りたいと思います。

ありがとうございました。また2014年も、宜しく御願いいたします。
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