目を覚ますと、俺は自分のベッドに寝ていた。
俺の看護をしていたのか、近くにいた琉香が慌てて母を呼びに行く。
その途中で転んだのか、すごい音が響いたが大丈夫なのだろうか。
その数秒後、今度は急いで階段を上がってくる音が聞こえてきた。
そして、俺の部屋のドアを、壊れてしまうのでは?という勢いで開ける。
「双葉………、良かった………!」
そう言い、俺を抱きしめる。
この歳になって母に抱かれるのは些か恥ずかしくもあるが、自分がしたことが親にとんでもないほどの心配をかけさせることだったので、文句はない。
自分自身も、こうして母と抱き締めあうことに喜びを感じてる。
すると、後から遅れてやってきた琉香が、突進したきた。
「お母さんばっかりずるいー!私もお兄たまとハグするのー!」
はは、と俺と母は笑いあう。断じてダジャレではないぞ?
とりあえず、服を着替えたかったので母と琉香に退室するように頼んだが、着替えを手伝おうとしてきたので、部屋から叩き出した。
「ふぅ………………」
漸く訪れた安静に、息を吐く。
そして、あの夢を思い出しながらまた、はぁ、と溜め息を漏らす。
「
今になって急に恥ずかしくなってくる。
と言っても、そのことを知っているのは夢の中の兄と、俺だけだ。
それでも、必ずなると誓ったんだ。
だから、今年は高校に行かず、来年の入試で
どちらにしろ、今すぐと言うわけにはいかない。
着替えを終え、部屋を出るとそこに母と琉香の姿はなく、下の階から話し声が聞こえた。
どうやら、来客のようだ。
その話し声を聞きながら階段を下りていく。
お客は三人。そして、全員女性だった。
「君が、例の………」
そう言ったのは、他の二人より一歩前に出ている、胸元に勲章のついている女性であった。
勲章がついている、それはつまり軍の人間という証だった。
それに、軍服を着ている。右からそれぞれ、青、黄、緑だった。
色毎に扱う武器の系統が違うのは知っているが、何を扱うかまでは知らない。
そして、一歩前に出ている黄色の軍服を着た女性は自己紹介を始めた。
「私の名前は、
第零小隊。第珀八まである小隊の中でも、最強の人員を集めた、所謂精鋭部隊である。
そして、後ろにいた女性たちも自己紹介を始める。
「同じく、帝国軍第零小隊副隊長の
初めに名乗ったのは青色の軍服を着た女性。
「同じく!帝国軍第零小隊特攻隊長!
最後は緑色の軍服を着た女性。
しかし、その女性は一つ。途轍もないほどに気になる言葉を発した。
母や琉香は気付いていないが、木戸さんと宮本さんは、やれやれ、といった表情をし、当の本人である織田さんは、やらかした、という表情をしている。
だが、気になって仕方がないので、そのことを恐る恐る聞いてみた。
「あの、これから、というのはどういう意味でしょうか?」
すると、気付いていたか、という顔をした三人の女性と、今更驚く母と琉香。
そして、木戸さんは話を始める。
「なんというか、そのままの意味なんです。貴方には、龍駆堂学院に通ってもらいたいのです」
何だと?俺を龍駆堂学院に、通ってもらう?
つまり、待たずにすむのか?いや、そんな簡単なわけがない。
脳内で自問自答をしていると、俺の考えてることを察したのか、木戸さんはさらに話を続ける。
「勿論、簡単なものではありますが試験を受けてもらいます」
それはそうだろう。俺自身、もし試験がなければこの話は蹴っていた。
これは願ってもないチャンスだ。
しかし、納得しない人物がいた。
「双司だけでなく、双葉まで奪うの………?」
言わずもがな、うちにそんなことを言うのは一人しかいない。
息子を一人失い、さらにもう一人の息子までもとなっているのだ。
だが、いつまで経っても俺は親不孝である。
「いや、その話受けます」
そう言いきった。母は何か言おうとしたが、俺の顔を見るなり顔を俯け、口を
俺の決意は固い。
母はそれをよく知っている。
「そうですか、ならこちらを」
そう言って渡されたのは、数枚のプリントとファイルだった。
「そのプリント類は、受験に関する資料と決意書、ファイルの中に入ってるプリントには君の能力を書いて三日後に、龍駆堂学院へ来てください」
「はい」
そう返事をする。
そうすると、三人は一列に並び直した。
「それでは、これで失礼します」
木戸さんがそう言い、三人で敬礼する。
そして、ドアを開けて出ていった。
三人が出ていくと、案の定母に呼ばれた。
「双葉、本当に………………、本当に行くの?」
母は、泣きそうな、それでいて暖かい眼差しで俺を見ていた。
だが、それでも俺の決意は変わらない。
「あぁ。………………俺は、兄さんと約束したんだ。絶対に、強くなって、この世から争いをなくすって」
そう言った瞬間、母の顔は驚愕の表情に染まる。
「双葉、本当に………?本当に双司と逢ったの………?」
母の言葉の意味がわからない。
逢ったかと問われれば、逢ってないというのが正しい。
夢の中だから、自分の勝手な想像と思われる筈だ。
「その夢………」
夢、兄さんの夢のことだ。
それがどうしたのだろう。この夢は俺と兄さんしか──────────
「私と双司しか………、知らないはずなのに………」
母と、兄さんだけ?
何を言っているのだ、俺の中の兄さんと俺しか知らないはずだ。
「俺は、兄さんに頼まれたんだ。………夢の中で」
「双司が………、
つまり、兄さんの本当の夢を俺は、夢の中で受け継いだということか………?
「俺は、兄さんの頼みを叶えたい。それが本当に兄さんの夢なら、尚更だ」
「琉香も、お兄ちゃんの夢を叶えるお兄たまが見てみたいな」
琉香は、兄さんと俺の夢を応援してくれる。
母は、何ともいえない顔をしている。
「じゃあ、一つ条件。いい?」
突如切り出してきた交渉に、反応が遅れるがすぐに返事をする。
「あ、うん。別に大丈夫だよ」
「絶対に危険なことはしないで。それだけ守ってくれるなら、私は許可する」
なんだ、そんなことか。心配ない。
「俺は、衰弱以外の原因では絶対に死んでやらん。絶対にだ」
そう言うと、母は思わず笑みをこぼしていた。
「双葉なら、そう言うと思った」
なんて。相変わらず、年齢にも、三人の子供を産んでるようにも見えない。とても若々しい母だ。
歳の近い人が笑っても何とも思わないが、母が笑うといつも顔が熱くなる。
そして、そんな俺を見て妹がむくれるのだ。
何があっても、この和やかな雰囲気を失うわけにはいかない。
そのためにも、俺は死ねない。
「あぁ、そうだ。明日みんなでさ、兄さんの墓参り行こうよ」
「そうね、双葉のことも方向に行かなきゃいけないし」
「琉香も、
こうして、兄さんの墓参りに行くことが決まった。
夢の中だけじゃなくて、直接誓いをたてたいしな。
それきっと、あそこにいけば
ちゃんと、報告もしたいしな。
だから、今日は早く寝よう。
どれくらい眠っていたか気になるけど、部屋のカレンダーやら電波時計やらを見ればわかるだろうし。
それに、龍駆堂学院に通うことになる可能性が出来たことの、気持ちの整理もしたいしな。
「早めに寝ることにする、おやすみ」
そう言うと、
「おやすみ、何かあったら言いなさいね?」
「お兄たまと一緒に寝るー!」
二人とも、それぞれ反応してくれる。
そして俺は、妹を連れて自室へ向かう。
琉香がこう言ったときは一緒に寝ないと、朝気付くとベッドに入ってきているので、どうにもできない。
まぁ、眠いから寝るとしよう。気にしなければ、何ともないしな。