紅蓮の流星記   作:夢雨麻

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遅くなって申し訳ない。
受験生なので色々忙しいんです。


第六記

 あの日、木戸さんたちが来てから三日が経った。

 つまり、今日は試験を受ける日だ。

 龍駆堂学院は例年、試験内容はバラバラで、事前に知ることはできない。

 そして、今年は模擬の戦闘を行ったらしいが、俺もソレとは限らない。

 いや、恐らく違うだろう。

 手元にある資料によると、今日は龍駆堂学院内で正式な受験生たちが面接を受けるらしいことがわかった。

 俺の試験には全教師が立ち会うらしいのだが、正直、イヤな予感しかしない。

 まず、俺の試験が行われる時間帯だ。

 他の受験生の邪魔にならないよう、面接時間の『休憩』という項目の部分に、「赫宮双葉、試験」と記されている。

 つまるところ、面接に訪れている受験生も観衆となる可能性がある。

 俺のような正式ではない人間を、果たして他の受験生はどう思うのか。

 十中八九、よく思われないだろう。

 だが、そんなことも気にしていられない。

 きっと、俺の試験も実技になるだろう。

 予想の範囲だが、本職の人間との戦闘となる筈だ。

 

「………………………負けたら恥ずかしいな」

 

 そんな弱気発言をすると、琉香にドロップキックされる。

 

「弱気なお兄たまはお兄たまじゃないー!」

 

 怒っていらっしゃるようだ。

 この三日間、様々なことがあったが特に話すようなことはない。

 特筆するならば、妹の琉香とキスしたことくらいだろう。

 言っておくが、俺は決してシスコンではない。全てはブラコン妹の所為である。

 話を戻すが、何に怒ってらっしゃるか、誰でもわかるだろう。

 

「イヤな予感がするんだよ。強い人と戦うことになりそうでな………」

 

 すると、我が妹君は俺に近づいてきたかと思うと、俺を抱き絞めた。

 誤字なんかじゃなく、本当の意味で俺の首を絞めている。

 

「ぐぅ………な、ぁにする………!」

 

「元気でたー?」

 

 おこなの?、とイラつく顔で絞めを解きながら俺の顔を覗く琉香。

 その顔は真っ赤に染まっている。

 やはり、琉香も意識しているらしい。

 かく言う俺も、頬が熱い。

 

「あ、あぁ。まぁ、な」

 

 何とか落ち着こうと深呼吸をする。

 少しして二人とも平静を取り戻すことに成功する。

 そして、丁度母の呼び声もするので、二人で居間へ急ぐ。

 

「そろそろ行くよ。準備できてる?」

 

「あぁ、できてる。じゃあ、行こうか」

 

 そう言いながら、靴を履き始める。

 隣では琉香も靴を履いている。

 

「よし。ちゃっちゃと送っていくとしますか!」

 

 母がそう言い、車が目的地、龍駆堂学院へ向けて発進する。

 

 

 ○   ●   ○   ●   ○

 

 

 小一時間ほど車を走らせて、帝国軍立龍駆堂学院(ていこくぐんりつりょうかどうがくいん)へ辿り着く。

 目の前に映っているのは、学校というより監獄と言った方が正しいような気がする、そんな見た目の建物が建っている光景だ。

 俺と琉香が目を丸くしていると、前方からこちらに向かってくる人影が見えた。

 段々と近付いてきて、その顔が判別できるようになった。

 

 

「お久し振りです。お母さん、双葉君。それと琉香ちゃん、かな?」

 

 

 それは、兄さんの唯一の恋人で、兄さんの護りたい人。そして、帝国軍総帥の娘、雨峰恋水(あまみねなみだ)であった。

 

「お久し振り。あの時以来ね」

 

 あの時、兄さんの葬式。

 そこで会ったのが最後だった。

 懐かしい。それと、あの時よりも綺麗になってる。

 

「お久し振りです。どうしてここに?」

 

 ただの偶然、それでは余りにも不自然な登場だったので質問すると、予想外の返答がきた。

 

「私が双葉君の面接を担当するの。よろしくね」

 

 そう言いながら微笑んだ。

 そこで、俺はある違和感に気付いた。

 

「よろしくお願いします」

 

 気付いたが、言葉にはしなかった。

 誰しも、心を読まれていい気分になる者はいないからだ。

 

「それじゃ、こちらへどうぞ」

 

 こうして、恋水さんの誘導のもとに試験場所へ向かい始める。

 勿論、母と琉香とは別れた。

 

     ○   ○   ○

 

 四、五分歩いたところで開けた場所に出た。

 広い、運動施設のような場所で、大きな岩が点在している。

 

「おや、その子が例の?」

 

 と、後ろから声が聞こえた。

 そこにいたのは見るからにエリートといった風な男だった。

 

「え、えぇ。赫宮双葉君よ」

 

「赫宮………………、赫宮ねぇ………」

 

 何というか、正直言って、この男は嫌いだ。

 俺を値踏みするよう目で見てくる。

 そんなことからか、つい口が滑ってしまった。

 

「なんか文句があるのか?もし兄さんのことなら………、殺すぞ?」

 

 そう言い放った瞬間、その男だけでなく、遠くからこちらを眺めていた受験生たちも、皆が寒気を覚えた。

 

「な、なにを………。ん゙っ、君は私が誰なのか知っているのか?」

 

 固まってしまった身体をほぐしてから、男はそう言った。

 

「知らねぇよ、あんたみたいな奴」

 

「な…!?私は帝国軍総司令部室長の

合隆樹(かわいたかき)だ!貴様のようなガキでは一生追いつけない立場にいるのだぞ!!」

 

 男は怒りに染まった表情で、雑魚キャラのようなことを言いながら、自分の名前を言った。

 

「室長、ねぇ。どうせ、戦闘の『せ』の字も知らないんだろ?」

 

「双葉君、やめなさい」

 

 俺は恋水さんに注意された。

 だから、俺はそれ以上何も言わなくなる。

 

「ふん、無知なガキめ。私は戦闘においても優秀な()()()()()()()()のだよ」

 

 それはつまり、()()()()()()()ということだ。

 しかし、次の発言で考えていたことが全て飛んだ。

 

「だからこそ、総帥の娘である恋水との婚約もできたのさ。君の兄と違ってね!」

 

 何だと?婚約?この男と恋水さんが?

 

「恋水さん?」

 

 すると、恋水さんはばつが悪そうな顔をしてこう言った。

 

「そうよ、婚約しているの………」

 

 これで、先ほどの違和感の正体に気付く。

 これは恐らくだが、政略結婚に近いものだろう。こういう組織において、立場が上にある人間ほど、育ちのよい箱入りが多くなる。

 なのでこの男もそれなりの家の出なのだろう。

 納得いかない。

 そこで、俺はある交渉をした。

 

「へぇ、じゃあ強いんですよね?だったら俺と闘ってください。もし俺が負けた場合、二度と軍に関わりません」

 

「な、何を言ってるの?」

 

 突然の申し出に驚いている恋水さんと、こちらを睨みつけてくる男。

 

「ほう、それで?もし私が負けたらどうなるのだ?」

 

「恋水さんとの婚約を破棄してください」

 

 そう、笑顔で言い放った。

 

「私のメリットがない。だから受け付ける必要はない」

 

 まぁ、当然の返しだろう。ただ、先程まででこの男の性格は掴んだ。

 この男は簡単な挑発にものってくる。

 だから、こう言えばかわる。

 

「ビビってんの?負けることにさ。強いんだろ?だったら闘おうぜ」

 

 すると、挑発にのってきた。

 

「いいだろう。二度と口の利けない身体にしてくれるッ!!」

 

「待って!彼はまだ中学生よ!」

 

 恋水さんは必死に説得しようとするが、耳に入っていないようだ。

 

「双葉君もよ!すぐに謝りなさい!」

 

「恋水さんには、兄さん以外の男は似合わない。それに、嫌なら嫌と、はっきり言えばいいじゃないですか」

 

 俺に対しても説得をしているが、俺はそれに対し言い返す。

 

「そんな顔してたらもったいないですよ。綺麗な顔をしてるのに」

 

「あっ、ぅぅ………。何を言ってるの………、もぅ」

 

 何故か顔を赤くして俯いてしまった。

 

「さぁ、さっさと始めようか………!」

 

 おっと、そんなことよりこっちだったな。ったく、つくづく邪魔な野郎だ。

 

「武器なら持ってきてるからさ、本気で殺しにきなよ。さもないと………、死ぬぞ………!!」

 

 俺が言い放ち、戦闘が開始する。

 この男の武器は銃だ。軍服が青色だからだし、その手にトーラス・レイジングブルを持っている。

 回転式の拳銃で、弾数は五発。

 対する俺の武器は長刀で、リーチの差で圧倒的に不利だ。

 男はその有利なリーチを利用してくる。

 まず、俺の右肩を狙い撃ってくる。

 

「くっ………!」

 

 腰を基点として上半身をそらし、それを何とか避ける。

 しかし、それに続けて追い討ちしてくる。

 

「馬鹿なガキが!私の武器とは不利なモノで私に勝てるはずがないだろう!!」

 

 そう言いながらさらに撃ってくる男。

 しかし、五発撃ったところでリロードをする。

 そこで、相手に大きな隙が生まれる。

 といっても一瞬だが、超速運動靴(ソニック・ブーツ)ならその一瞬を突ける。

 その隙を突くタイミングを見計らいながら、相手の攻撃を避けていく。

 そして、五発目を撃とうと引き金に指をかけた瞬間、一気に飛び出す。

 

「なっ………!?」

 

 五発目は誰もいないところに弾痕を残す。

 そして、俺は男の懐に潜り込み、男の首を命ノ太刀(ライフ・ブレード)誓イノ太刀(オース・ソード)で挟み、斬る。

 勿論、峰打ちではあるが、その衝撃は相当大きい。

 男の首にはV字に火傷ができている。

 そして、男は気絶している。

 つまり、俺の勝ちということだ。

 

「何事ですか!?」

 

 漸く騒ぎに気付いたのか、教師らしき人間が複数人近付いてくる。

 そして、この状況を見て目を疑っている。

 

「見ているんでしょう?総帥サマ?」

 

 俺は校舎側に向かいそう言った。

 一瞬、(もや)がかかったように空間が(かす)み、2mを越す巨体が現れた。

 

「あ、雨峰総帥!?何故貴方がここに!!?」

 

 教師たちは驚いている。

 しかし、俺は臆することなくその巨体に向かって言った。

 

「最初から見てたんでしょう?約束は守ってもらわないと。そのためには貴方の許可も必要………。そうでしょう?」

 

 それに対し、巨体は少し考える仕草をした後、

 

「ふむ、まぁよかろう。年端もいかん子供に負けるような男とは思っておらんかったからのう………」

 

 その言葉に、俺は安堵した。

 恋水さんは余程嬉しいのか、俺に抱きついてきた。

 だが、巨体は話を続けた。

 

「君には本当にすまないと思っておる。じゃがそれと同時に期待もしておる。これからもこの龍駆堂学院で精進することじゃのう」

 

 それはつまり、俺は合格、ということだった。

 それに対しざわつく教師陣と、遠巻きに観ていた受験生。

 しかし、総帥の決めたことに意見を言える教師も、今の闘いを観ていた受験生たちも、誰一人として文句は言えなかった。

 こうして、俺は帝国軍立龍駆堂学院へ通うことが決まった。




さてと、勉強はもうどうでもいいや(白目)
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