SOLEIL ~咲き誇る太陽~   作:いゆ

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北国 シルヴァン地方
北国への移動


 ソレイユたちの防衛により、ムウェン南部、センニブル市に攻めてくるランダン軍はほとんどいなくなった。しかしその代わりに、ランダン軍は北から侵略することをムウェン政府に宣告していた。しかし、防衛ができていない仮面ライダーたちに対し怒り心頭だったムウェン王家は、彼らを強制的に城まで戻させた。

 薔薇たちは、《誠実なる青王子》の説教を聞くために集められ、城の硬い床に座らされていた。

「ミラ、俺たち早く北に行ったほうがいいんじゃないのかなぁ?」

 レグルスが小声でミラに話しかける。

「僕もそう思うんだけど、相手は王子だ。絶対勝手に行ったら怒ると思う。」

「当たり前でしょ。二人とも静かに待ってなさいよ。」

 サクラが二人をまとめる。すると、《誠実なる青王子》がやってきた。もちろん、表情はきつく、怒っていた。

「全く、私は君たちの適当さに怒っている。仮面ライダーとは名前だけなのか全く。今から君たちには北国のシルヴァン地方へ行ってもらう。返事は待たない。すぐに行け。絶対に守れよ。」

 王子は怒りを乱暴にぶつけることなく、ジャンヌ達に薔薇たちを連れて行かせた。北国までは蒸気機関車が通っているので簡単に行けるた。

 蒸気機関車は城から田園地帯を抜け、黒い煙が立つ工業地帯に通った。

「ここの地下に《秘密結社エボル》の基地があるんだよ。」

 レグルスが言う。レグルスは懐かしそうに外を眺める。しかし、戦時中だからなのか人は誰もいなかった。

 そのあとまた田舎の線路を通り、長いトンネルに差し掛かった。するといきなり、トンネルの中で蒸気機関車は止まった。

 乗務員が客車にやってくる。彼はしかめっ面で話す。

「すまない。ここで機関車は行き止まりだ。トンネルを抜けたら線路に深い雪が積もってるんだ。」

 薔薇たちは客車を降りてみてみると、レグルスの肩のあたりまで雪が積もっていた。

「これじゃ機関車は通れないね。」

「私たちならいける。行くよ、ミラ。」

「え?ああ。」

 ミラは薔薇の合図で彼女の腰に巻き付く。

『パンジー!』『フラーワ...フラーワ...』「変身」

『耐寒のコモンフラワー!その顔は何を言う? パンジー!』

 仮面ライダーソレイユはパンジーフォームに変身をする。パンジーは寒いところに強いのだ。

「パンジーリムーバル!」

 ソレイユの手はパンジー模様のスコップになり、それは巨大化し、一気に雪をどかす。すると、大きな街が見えてきた。

 ソレイユは変身を解除し、走っていく。あたりは真っ白で、反射した日光が彼らを輝かせる。

「雪ってテンション上がるね!!」

 レグルスは雪で遊び始める。

「戦争なんて関係ないや!」

 ミラも遊び始めるが、サクラが二人を止める。

「いくわよ、もう!」

 街はセンニブルほど壊されてなく、足りないのは人だけだった。宿もちゃんとしており、一人一部屋暖かい部屋だった。早朝だったが明け方全く寝ていない薔薇たちは、宿についたらすぐに休んだ。

「おはよう!薔薇!」

 薔薇がうとうとしていると、窓からナイトメアの声がした。

「わわわ!?何もう!ひとが一番気持ちいいときに!」

「邪魔して悪かったな。一つだけ報告に来た。」

 薔薇は裸眼じゃ何も見えないので、眼鏡をかける。

「何?」

「ミラの兄が時空の割れ目の隅に遺体で見つかった。」

 薔薇はミラの兄、ディフダのことを思い出す。

「それって結構前じゃない?」

 ディフダが上に丸く収めるようにといって帰ったのはかなり前のことだ。

「そうらしい。あいつは結構かわいい部下だった。ミラと同じでもともとの力はないが、その分伸びしろが相当あるから惜しいやつをなくしたよ。」

 ナイトメアは悲しむ。

「お前がやったんじゃないの?」

「俺はあの時湊敬一としてラフレル達と戦っていた。サクラも一緒にいた。」

「じゃあ、ほかにディフダ殺しの犯人がいるってこと?」

「そうなるな。まあ気が向いたら犯人探しを手伝ってくれ。あ、ついでに言っておくが、俺らにとってもこの地は相当寒い。だから朝や昼は軍が起きれないから夜にやろう。頼むぞ。」

「なんだそれ。」

 ナイトメアはそれを言い残すと帰っていった。薔薇はミラにはそれを伝えなかった。

 

◇◆◇◆

 

 ナイトメアはランダンに帰るときは必ず変身して帰る。ランダンの王は人間が嫌いだからだ。

「お前らもよくやるよ。全く。俺に感謝しろよ。」

 ナイトメアはランダンの王に言う。

「ムウェン侵略の件については、本当に感謝しているよ。だが、もうこの城に金はほとんどない。月三億なんてくるっている!」

「はははは。金がなくなったら俺はこの国から出ていく。死んでも金を集めろ!まあムウェン侵略が達成できたらそこから巻き上げればいいさ。」

 王とナイトメアは笑う。王はその言葉の安心さに、ナイトメアはその言葉を簡単に信じる王に笑っている。

 いきなり、ナイトメアのマスクの下の顔から笑みがなくなる。

「ああ、俺はこの国が心配だよ。」

「どうしてだね?」

「ムウェン侵略を目標にしたらムウェンに全部兵を出しちまうんだもんなぁ。馬鹿げたことだよ。」

 王は意味が分からず首をかしげる。

「今ならランダンはどっからでも攻め放題ってことさ。ついでにお前も殺し放題。」

 ランダンの王の後ろから召使の人間の女性が来る。

「はははは!お前ごときが私を殺そうなどと考えるな!私は王だ!この国の!この世界の!」

 召使の女性は立ち上がり、王に会釈をする。ナイトメアは腕がとがった葉になる。

「おい召使!この危険な思想の持ち主の相手をしろ!」

「わかりました。王様。」

 女性はそういい、ランダンの胸に自身の剣を突き刺す。

「そんなことをしていいと思っているのか!?」

 その問いにはナイトメアが答える。

「残念ながらこの国の、この世界の王は俺だよ。」

 ナイトメアは玉座から小太りの男性の死体を蹴落とし、そこに座る。

「これからは俺らの国だ。ひなた。」

「やっとあたしを名前で呼んでくれたね。敬一。」

 召使の人間の女性とは、仮面ライダーサン/ひなたのことだった。


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