チイロノミコ   作:SnowWind

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第4話 後編

クレアは目の前の出来事が信じられずにいた。映像板の不良であることを何度も疑った。

だが・・・

 

「嘘でしょ・・・なんで?」

 

黒い操兵、ヨゾラノカゲヒメは間違いなくこちらへと向かって来る。

 

「なんで当たらないのよ!」

 

セイクリッド・レイニーの中を掻い潜りながらだ。

 

「聖なるの光よ、天を照らし、地を芽吹き、邪悪を清める、恵みの雨をもたらさん!」

 

2度の着弾以降、セイクリッド・レイニーはヨゾラノカゲヒメに掠りもしない。

それどころか着実にこちらまでの距離を詰めてきているではないか。

 

「・・・まさか。」

 

ここでクレアは、考えられる限り最悪の事態を思い浮かべる。

一方でチコは、セイクリッド・レイニーの『規則性』を紐解きながら再び攻撃を掻い潜る。

 

「最初の一撃は、外から。」

 

ヨゾラノカゲヒメの進路上に、矢が退路を塞ぐかのように降り注ぐ。

 

「そこから一発ずつ落として誘い込み。」

 

上空から次々と矢が降り注ぎ、ヨゾラノカゲヒメはそれを回避していく。

 

「あるタイミングで、『一歩先』の箇所に矢を落とす。」

 

上空から降り注ぐ矢は一定の間隔を保っている。

そこで相手に回避の間隔を測らせ、本命の矢を一歩ずらして着弾させる。

 

「ここだ!」

 

チコはヨゾラノカゲヒメを停止させると、矢がその一歩先に着弾した。

 

「残りの矢は全部ダミー。範囲攻撃と見せかけた罠。

全く、手の込んだ魔法ね。」

 

セイクリッド・レイニーは範囲攻撃なんかではない。

本命の矢を数発、着弾させるために大量の矢を囮にしていただけだ。

あれだけの矢を降らせる以上、それなりの魔力を消費するはずだが、術士の練度が高ければ光の矢数発だけでも操兵にダメージを与えるには十分な威力だ。

だからその数発を当てるためだけに、大量の魔力を使って盛大なダミーを作りだす。

一見すればそれは魔力の無駄遣いかもしれないが、有効打となる一撃を与えてしまえば、数発だろうが全弾だろうが結果は変わらない。

まして今は一騎打ち。これ以上の敵はいないのだ。

相手を確実に仕留めると言う点では、ある意味効果的な戦術と言える。

 

「今の動き、間違いない。見破らてる・・・。」

 

一方でクレアは、たったの2射放っただけで攻撃を捌かれたことに愕然とする。

規則性を隠すために過剰な範囲と大量のダミーの矢を使った魔法なのに、敵の操手はそれに惑わされることなく、術の法則を見抜いたのだ。

 

「くっ、聖なるの光よ、天を照らし、地を芽吹き、邪悪を清める、恵みの雨をもたらさん!」

 

クレアは再びセイクリッド・レイニーを発動する。

だが今度はシンプルに、全弾を一斉に落とし込む範囲攻撃だ。

だがヨゾラノカゲヒメはその切り替えに惑わされることなく、その速度を武器に一瞬で範囲外へと逃れた。

 

「やっぱりダメか!それなら、光よ、駆けろ!スター・ロード!」

 

ならばと、自らの矢で射抜こうとするが、ヨゾラノカゲヒメを補足することが出来ない。

するとヨゾラノカゲヒメは空中に静止し、両足を踏み出した。

 

トン、トン。

 

「またさっきの動きね。でも、わざわざタイミングを教えてくれ・・・」

 

だが次の瞬間、ヨゾラノカゲヒメがペネトレーターへと急接近し、蹴りを繰り出した。

 

「ぐっ!」

 

操手槽内の衝撃に揺らされながら、クレアは苦悶の声をあげる。

操兵による戦いとは言え、操手は人間。

一定のリズムを意識させてからの急激なペースチェンジと言うフェイントに、まんまとハマってしまった。

だがフェイントを絡めた心理戦は、命のやり取りをする戦場で積極的に取るべき手段ではない。

相手が自分の術中にかかってくれなければ、大きなリスクが付きまとう。

読心術でも使えない限り、心理戦は一種のギャンブルめいたものであり、一歩間違えたら自分が死ぬのだ。

 

「随分とスポーツめいた戦いね・・・。戦場を舐めているのかしら?」

 

そうは言いながらも、クレアは屈辱から唇を噛み締める。

こちらの戦術が破られ、相手が有利な状況に後転し、その上で心理戦まで仕掛けられたと言うことは、相手には相応の余裕があると言うこと。

既に戦況は、相手の思う通りに支配されたのである。

 

「仕方ない。ここらが潮時のようね。」

 

クレアは怒りに震えながらも冷静に状況を分析する。

操手のエーテルは、操兵の動力にもなるので、魔法の発動も合わせれば魔力の消費量は著しく上がるもの。

そして自分は中級魔法を連発したせいで、魔力が切れかかっている。

魔力切れを起こせば操兵を動かすこともできない。つまりここからの撤退すら不可能となるのだ。

 

「次に会うときはこうはいかないわよ。巫女さん。」

 

クレアは大人しくペネトレーターを下げ、バレットの元へと向かうのだった。

 

 

 

 

・・・

 

 

 

 

バレットは目の前の出来事が信じられずにいた。映像板の不良であることを何度も疑った。

 

「おいおい、嘘だろ。」

 

だが敵は間違いなく、こちらに接近している。

 

「なんで当たらねえんだ!」

 

それも魔導砲の弾丸を全て斬り落としながらだ。

4本腕で魔導砲を放つ、人非ざる戦術を取っているにも関わらず、カザキリは被弾1つしない。

全てかわされ、落とされる。弾幕の密度まで計算に入れて放っているはずだが、また振り出しへと戻ってしまったのだ。

 

(補助腕の可動域は・・・あの形状ならそこまでが限界か。

それと両腕の可動域まで視野に入れて・・・。)

 

一方でレンジは、補助腕を含めたトリガーハッピーの射程範囲を分析する。

 

「よし、ようやく。」

 

そして刀を腰に構えて一気に抜刀し。

 

「目が慣れてきたぜ。」

 

4方向から放たれた弾丸を一振りで斬り落とした。

 

「こいつ、もう補助腕の攻撃にまで対応したってのか!?」

 

最初の一撃で意表を突けたが、二度目が一切通じない。

レンジの対応力と適応力の高さに、バレットは驚愕する。

やがて距離を詰めたカザキリは刀を振り上げる。

トリガーハッピーは機体を反らして回避するが、そこへカザキリは柄を突いた。

柄は補助腕の魔導砲の銃身へと当たり、レンジはそこへ魔力を流し込む。

次の瞬間、魔導砲内部で魔力による反作用が発生し、魔導砲が補助腕を巻き込み爆散する。

 

「くっ!」

 

補助腕の爆発によりトリガーハッピーが態勢を崩し、そこへカザキリが再び刀を振り上げる。

 

「甘い!」

 

だがトリガーハッピーはもう片方の補助腕から爆炎を放ち、無理やり機体を制御してその太刀を受け止めた。

 

「わりいな。俺にだって操手としてのプライドがあるんだよ。

生身での戦いでも負けたってのに、操兵でまで負けちゃあ、ギルドマスターとしての示しがつかないぜ。」

 

そうは言いながらもバレットは焦りを覚える。

あの少年の実力は本物だ。操手としての年季の差なんて簡単に踏み越えてきている。

こちらの戦術に対する対応の早さを鑑みれば、このまま戦いを続ければ・・・。

 

「バレット。ごめん、魔力切れしたわ。」

 

バレットの脳裏に敗北の2文字が浮かび上がった直後、クレアの声が通信機から聞こえてきた。

ペネトレーターは動いているので、厳密に言えば魔力が切れたわけではないが、少なくとも戦闘を継続できる余力はないようだ。

 

「仕方ねえ。クレア、引き上げるぞ。」

 

「了解。全く、可愛げのない子どもたちね。」

 

「やれやれ、思ってた以上に面倒なことになったな。」

 

そうは言いながらも、バレットは笑みを浮かべながら葉巻に火を付ける。

確かに子ども相手に徹底的に打ち負かされ、自分もクレアもプライドがズタボロだ。

だがそれ以上に、思い通りにいかないアクシデントを楽しむバレットは、今の何もかもが思い通りにいかない現状さえ、暇つぶしの一環として捉えるのだった。

 

 

 

 

・・・

 

 

 

 

戦闘を終えたチコたちは、サナギへと帰還してそれぞれの機体から降りる。

 

「スズ、大丈夫だったか?」

 

「うん。」

 

「ごめんね、怖い思いさせちゃって。」

 

「チコさんと一緒だから平気です!」

 

そう笑顔で言うスズを見て、レンジもチコも苦笑する。

 

「みんな~お疲れ~。」

 

そんな一同をミリアが明るい声で出迎える。

 

「あれ?カンナちゃん。こんなところにいたんだ。」

 

するといつの間にか、カンナがチコたちの後ろに立っていた。

 

「こんなところって、カンナ、寝室にいなかったんですか?」

 

「いや~気づいたらどっか行っててね。

操縦室のモニターから目を離すわけにもいかないし、とりあえず戦場にはいなかったみたいだからいいかなあって。

てゆうか、てっきり君たちと一緒かと思ったよ。」

 

チコは目線だけでレンジに聞くが、レンジは首を横に振る。

戦いの最中、カンナは忽然と姿を消していたのだ。

一体どこに・・・。

 

「ふう~・・・。」

 

すると隣にいるスズから盛大なため息が漏れた。

 

「スズちゃん、お疲れなんじゃないの?」

 

「あはは、今になって緊張が解けたみたいです。」

 

「スズ、早く部屋に戻って休みましょう。」

 

恥ずかし気に笑うスズを見て、チコも一旦思考を中断する。

いくら気丈に振る舞っていても、スズは戦闘術を持たない普通の女の子だ。

内心とても怖くて、疲弊していたに違いない。

そのことに改めて胸を痛めながらも、チコはスズを休ませることを優先する。

 

「もう日がとっぷり暮れちゃってるし、流石に今日はここで一夜を明かしますか。

周り見たところ魔獣の気配もないし、ここなら安全だろうからね。」

 

細かいことは気にしない主義のミリアも、カンナのことを詮索せずに今晩はサナギで過ごすことを告げる。

 

「寝室は1つしかないから、レンジ君にとっては窮屈かもしれないけどね~。」

 

するとミリアが悪戯めいた笑みを浮かべながらレンジを茶化す。

 

「別に、問題ねえです。」

 

その言葉にレンジは一切の動揺を挟まずにあっさりと答える。

 

「うわ、反応薄っ。君、昔流行った草食系男子ってやつ?」

 

内心、なんだそれは?と思いながらレンジはため息を吐く。

1つの部屋に1人の男子が複数の女子に囲まれて一夜を過ごす。

武術一辺倒のレンジにだって、それが客観的に見れば男子が羨むような状況であることは理解できる。

だが主観的に見れば、内1人は実の妹、内1人は幼女、最後の1人に至っては女子とかどうとか以前の問題であり、こんなメンツでレンジに異性を意識しろと言う方が無理である。

 

「私、先にシャワー浴びちゃってもいいですか?」

 

「いいよ。シャワー室は寝室出てすぐ目の前にあるから。」

 

「スズ、旅中の水は貴重だ。無駄遣いするなよ。」

 

「わかった。」

 

「チコ、お前とカンナも一緒に入れ。その方が無駄にならねえ。」

 

「そうするわ。スズ、一緒に入りましょ。」

 

「はい。」

 

この中で一番旅慣れているレンジからアドバイスが飛び交うが、こんな会話が自然と出来ている時点で異性として意識できていないことは明白であり、ミリアはつまらなそうな表情を浮かべる。

 

「レンジ、あなたも後でちゃんとシャワー浴びなさいよ。」

 

「オレはいい。」

 

「良くないわよ。汗くさい男と一緒の部屋で寝るなんて真っ平ごめんよ。

それに私だけならともかく、スズとカンナがいるってことを忘れないで頂戴。」

 

「・・・チッ。」

 

そう言われてはレンジとしても引くしかなく、忌々しく舌打ちしながらチコの意見を聞き入れる。

だがこれまたごく自然に、『私だけなともかく』なんて言葉が出てくるあたり、チコも妙なところで鈍感である。

 

「ホント、仲良いんだか悪いんだかわかんない2人だね。」

 

そんな2人のやり取りみたミリアは一転、面白そうな笑みを浮かべる。

 

「本当ですよ。」

 

一方スズは、つまらなそうにジットリとした目で見るのだった。

 

 

 

 

・・・

 

 

 

 

それぞれシャワーと夕食を終えたチコたちは、寝室で寝る支度をしていた。

 

「ベッドは1つ、布団も1つ。

レンジ、ベッドはスズとカンナに使わせるけどいいわね。」

 

「問題ねえ。」

 

「すっすみません。気を遣わせてしまって・・・。」

 

「気にしないで。スズとカンナなら2人でベッドでも狭くないだろうし。ある意味適材適所よ。」

 

「ありがとうございます。カンナちゃん、一緒に寝よ。」

 

「ふわあ・・・うん。」

 

寝むたそうに目を擦るカンナをスズがベッドまで手を引き、2人で掛布団に潜る。

 

「さてと、問題は・・・。」

 

そしてチコはレンジと睨み合う。

最後の問題は当然、自分とレンジのどちらが布団を使うかである。

当然、同じ布団で一緒に寝るなんて選択肢は世界が滅びてもあり得ない話であり、そもそもそんなスペースもない。

だからと言って畳で雑魚寝なんてのも御免だからわざわざ相手に譲りたくない。

でも相手から貸しを作るのも御免だ。

・・・この時点でチコもレンジもどちらに転んでも反発し合う未来しかないわけだが、それに気づいてか知らずか、レンジが風魔を手に取り立ち上がる。

 

「どこ行くの?」

 

「魔獣の危険が無いとも限らねえ。オレが寝ずの番をするからお前ら勝手に寝てろ。」

 

「なっ、ちょっと何を勝手に・・・。」

 

「どうせお前は布団譲らねえし、オレが譲るっつっても受け取らねえだろ。」

 

「そんなのお互い様じゃない。」

 

「だったら譲らねえし、いらねえから勝手に寝ろ。」

 

そう言い残し、レンジは1人部屋を出る。

 

「・・・あの、チコさん?」

 

スヤスヤと眠るカンナを優しく抱きながら、スズがチコの様子を伺う。

 

「・・・何でもないわ。あいつの言う通り今日はもう寝ましょう。」

 

「はい。」

 

スズにそれだけを言い、チコは部屋の明かりを消す。

結局予期せぬ貸しを1つ作られたわけだが、これ以上強情になってはスズに迷惑し、ここであいつの厚意を無下にしてわざわざ睡眠時間を削ってしまうのは、それはそれでまた貸しが1つ増えそうだ。

 

「あ~もう、メンドくさいやつね。」

 

最早、何が貸しなのかよくわからなくなってきたチコは、仏頂面のまま布団に潜る。

 

(ふふっ、チコさんがそれ言いますか?)

 

そんなチコの言葉に、スズはつい心の中で苦笑するのだった。

 

 

 

 

・・・

 

 

 

 

深夜、目を覚ましたチコは枕元に置いた懐中時計を見る。

 

(午前3時か・・・。)

 

昨日は多少早くに寝たので、睡眠時間としては十分だろう。

チコはスズとカンナを起こさないように物音立てずに布団から出て、側に置いてあった自分の剣を手に取る。

そして静かにドアを開け、外へと出ると。

 

「何の真似だ。」

 

こちらに目もくれず、レンジがぶっきらぼうに尋ねてきた。

チコはドアを閉め、ドアを挟んでレンジとは反対側に壁に腰掛ける。

 

「見張りの交代。」

 

「いらねえ。」

 

「あなたに貸しを作られたままでいるのはイヤなの。

これで貸し借り無しよ。」

 

「知るか。お前の都合なんざどうでもいいからさっさと戻れ。」

 

「こっちこそ、あなたの都合なんかどうでもいいからさっさと寝なさい。」

 

お互いに小声で言い争い、しばしの沈黙が訪れる。

こうなったら根競べだが、チコには勝てる自信があった。

なぜならレンジは不良かぶれのクセに義理堅く、相手の厚意を無下にすることなんて出来ないからだ。

 

「・・・チッ。」

 

しばらくして、レンジが忌々し気に舌打ちしながらゆっくりと立ち上がり、ドアに手をかける。

勝った。なんて内心思いながら、チコはレンジに念を押す。

 

「言っておくけど、ちゃんと布団で寝なさいよ。

畳で雑魚寝なんかしたら疲れが取れないからね。」

 

「るせよ。軟弱なお前と一緒にすんな。」

 

「マギアディール到着までに、またやつらが来るとも限らないでしょ。

疲れが取れずにヘロヘロな状態でコテンパンにされてもいいなら止めないけど、私たちでスズを守るってことを忘れないでよね。」

 

スズの名前を出して更に念を押す。

 

「・・・チッ。」

 

再度レンジが舌打ちをし、ドアを開けて部屋へと入る。

スズに弱いレンジのことだから、これで断ることも出来なくなるだろう。

部屋の中から布団を被る音が聞こえてきたので、チコはホッと一息をつく。

 

「よし・・・。」

 

3時を過ぎているとはいえ、夜明けまではまだ遠い。

一応これは、魔獣を警戒するための見張りであることは忘れてないので、チコはうっかり寝ないように気を引き締める。

 

(懐かしいわね・・・最初にこうやって見張りをしたのって、いつだっけ?)

 

チコは昔を思い出す。

あの時も確か・・・操兵の訓練に出るレンジに対抗して、無理を言って輸送艦に乗せてもらったのだった。

次代の巫女が操兵の訓練に無理やりついてきて街の外へと出る。

あの時大人たちも、両親も、顔を真っ青にして肝を冷やしていたことを思い出し、今にして思えば、随分と迷惑をかけたものだ。

そして今日のように、輸送艦で一夜を明かすことになり、レンジとどちらが寝ずの番をするかで揉めたのだ。

結局、2人して寝ずの番に付き、自分はうっかり寝落ちしてしまった。

目が覚めたときには身体に毛布が巻かれており、後になってそれがレンジの仕業だと知った時にはぶん殴ってやりたいくらいに自分に腹が立ったものだ。

 

(結局・・・負けず嫌いもお互いさまよね。)

 

自分に一度も勝てたことがないレンジは、何かと対抗心を燃やしてくるが、自分からすれば、レンジに対して勝っているものは白兵戦での実力しかない。

それは今日もまた身に染みた。

客観的な判断力、旅の慣れ方、操手の実力、そして何よりも己を信じられる強さ。

アクメツ流を極めたレンジは心・技・体の全てを高水準で揃えている。

自分よりも弱いくせに、それ以外の全てで自分よりも先を行くあいつのことが気に入らない。

そして何よりも気に入らないのが、そう認めざるを得ないほどの実力を、自分は何度も目の当たりにしてきたことだ。

 

(だからこそ、あいつには負けたくない・・・。よし、気合を入れて夜更かししますか。)

 

気持ちを1つ切り替えたチコは、手に持つ剣を強く握る。

背中から伝わる、3人の魔力反応に身を委ねながら、チコは灯り1つない静寂な輸送艦の通路で、寝ずの番を続けるのだった。

 

 

 

 

・・・

 

 

 

 

次回、チイロノミコ第5話

 

「カゲヒメノナゾ」

 

運命の糸が、物語を紡ぐ。

 

 

 

 

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