2010年7月20日
「うわ~、やっちゃってるな~」
黒煙の上がっている場所にやって来た上条麻琴は、木山春生が“警備員(アンチスキル)”を相手取って大立ち回りしているのを目撃した。
「流石は“多才能力者”ってとこかな」
麻琴は連続テレポートで“警備員”たちの前に降り立った。
「君は…。ケガ人を増やしたくはない。退きたまえ」
「何やってる!早く退くじゃん!」
木山と黄泉川が麻琴に声をかける。
だが、麻琴が退ける気配は微塵もなかった。
「そうか…。ならば仕方がない」
そう言うと、木山は麻琴目掛けて電撃を放つ。
パキーンッ!
しかし、麻琴に当たった瞬間に電撃は霧散した。
「なっ!」
「先生、もう終わりですよ」
麻琴は、驚く木山に近づきながら告げる。
「この!」
木山が次々に攻撃を放つ。
電撃、火炎、水流、突風…。
全て麻琴に当たった瞬間に甲高い音と共に掻き消えた。
念動力で飛ばしたコンクリート塊。
麻琴に当たった瞬間に弾き返された。
“量子変速(シンクロトン)”によるアルミ缶群の爆発。
爆煙の中心から無傷の麻琴が現れた。
「何なんだ?君は」
絶望めいた声色で木山が問い掛ける。
驚愕する木山に、麻琴の右手が触れた。
パキーンッとガラスの割れるような音が響く。
「能力が…。クソッ!私はこんなところで…」
「大丈夫ですよ…」
麻琴は木山の耳元に顔を近づけて囁いた。
「あの子たちのことは私に任せてください」
「何故、君がそんなことまで…」
「フフッ…」
麻琴は木山から顔を離して微笑んで見せた。
「私は上条麻琴。存在しないはずの“LEVEL6”ですから」
「まさか…」
「木山先生が犯人だったなんて…」
合流した美琴たちは、連行されていく木山を見ながら呟いた。
「わかってくれた?」
そんな彼女たちに話し掛ける少女がいた。
「私、悪者じゃないのよ」
「アンタ!」
「はいはい、どうどう」
食ってかかろうとする美琴の頭を麻琴が押さえる。
「御坂くん、それから君たちも、騙して済まなかったね」
「先生…」
木山が“警備員”のバンに足を掛けたところで、振り返って声をかけた。
「それから、上条くん。例のことは頼んだよ」
「はい。帰りの足で寄ってきますよ」
「フッ…。簡単に言ってくれるな」
「先生の方もちゃんと手配しておきますよ。釈放が早まるように」
「そちらは別に頼んではいないが?」
「私が“勝手に”やるだけですから」
「そうかい。まったく、参ったよ」
「ちょっと、ちょっと!一体、何の話よ?」
「美琴ちゃんには内緒~」
「こら!てか、早く手を退けろ!」
「イヤよ。退けたらまたビリビリするでしょ?」
「当たり前だ!おらぁ!」
「おっと、当たらない、当たらない」
「避けんな!」
「フフッ…。それではまたな、上条くん、御坂くん」
木山の姿が車内へと消えた。
「行っちゃいましたね、木山先生」
「ところで、この方は本当にどなたなのですか?お姉様」
「ええっと…。そうよ!アンタ、結局のところ何者なのよ?」
「私は上条麻琴よ。15歳で高校1年生。能力は秘密ってことで。よろしくね、黒子ちゃん、涙子ちゃん、飾利ちゃん」
「えっ?何で私たちのこと知ってるんですか?」
「フフフッ、内緒。じゃあ、またね。私、この後に用事できちゃったから」
シュンッ!
「えっ、ええっ!」
「行っちゃいましたね…」
「不思議な人でしたね」
「あぁん!新しいお姉様の登場に黒子の心はもう!」
「黒子!?」
「白井さんまでどっかに行っちゃいましたね」
「はっ!いけませんわ!私は美琴お姉様一筋!如何に豊乳という未知の境地があるからと言って…」
「いい加減にしろッ!」
ビリビリッ!
『響き合う願いが今、覚醒めてく。譲れない未来のために~♪』
美琴たちの元から飛んだ麻琴の携帯電話が鳴った。
ディスプレイには“非通知”の文字。
「ちゃんと済ましたわよ」
「そのようだな」
相手はアレイスター=クロウリーだった。
「どうせ全部見てて知ってたくせに…」
「フフッ、まあな。時に、例の“子供たち”のことだが…」
「邪魔するつもり?」
「まさか。そんな些細なことで君の意志を妨げるようなまねはしないさ。むしろ、今回は協力するつもりだったのだよ。テレスティーナ=ライフラインは既に抑えた」
「どういう風の吹き回しよ?」
「ただの気紛れだ。そこに“子供たち”の居場所などのデータを送っておいた。使え」
「アンタが“気紛れ”なんて言う時点でかなり怪しいんだけど…。まあ、使わせてもらうわよ」
「フフッ。では、いずれまた連絡する」
そこまでで通話は切られた。
「ハア…。まあ“罠”なんてこともないでしょ。もしそうだったら叩き潰すだけだし」
麻琴はアレイスターからのデータに従ってテレポートした。
この時の麻琴は少々油断が過ぎていた。
アレイスターが“気紛れ”などというものを起こした時点でもう少し警戒すべきだった。
麻琴がそのことを思い知らされるのはまだ先だ。