とある遡行の上条麻琴   作:Lucas

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第3章 魔導書図書館・インデックス
11話 光の柱


2010年7月20日

 

 

 

冥土帰しの病院

 

 

 

 

とある病室の前で、上条麻琴とカエル顔の医者が話していた。

 

「じゃあ、お願いしますね、先生」

 

「うん…。まあ、子供たちも木山くんも僕に任せてくれればどうにかするけどね…。一体、君は何者なんだい?アレイスターとは…」

 

「それ以上は答えられないから聞かないでください」

 

「ふん…、そうかい…」

 

「ごめんなさい…」

 

「いや、僕の方こそ聞くべきではなかったね。これからも困ったことがあれば来るといい。僕は医者で大人で、君は患者で子供なんだからね」

 

「ありがとうございます」

 

(私のこと取り上げたのはあなたです、とは言えないわよね…)

 

「じゃあ、そろそろ行きますね」

 

麻琴は一礼すると、カエル医者の元を辞した。

 

 

 

 

 

「麻琴ー!」

 

「あぁ…、軍覇くん…」

 

麻琴が病院から出たところで、削板が文字通り飛んできた。

おそらく近くにいたのだろう。

 

「偶然だな」

 

「そうね…。軍覇くんは何でこんなとこに?」

 

「この先で騒ぎがあったとモツが言っていたんでな。さっき見てきたところだ」

 

削板が後方を指差しつつ答える。

 

木山春生と“警備員”が交戦した辺りを指していた。

 

「ああ、“警備員”の銃撃戦か。それなら…」

 

「ん?“警備員”?」

 

「あれ?違うの?あっちの方にある高架路であったんだけど…」

 

「おぉ、そうなのか。だが、俺が言っているのはすぐそこだ」

 

「ふ~ん、そうなんだ。ケガ人とかは?」

 

「いや、幸いいなかったらしい。痕を見た限りでは、かなり大きかったようなのだがな。目撃者もいなかったとモツは言ってたぞ」

 

「目撃者がいなかった…」

 

麻琴が削板が指した方向に視線を送る。

 

表通りで、まして今日は夏休みの初日だ。

誰もいなかったなどということがあり得るだろうか。

 

「そんなことより!麻琴、勝負だ!もう用事は済んだだろ」

 

「あぁ…」

 

(誤魔化し作戦、失敗か。仕方ない)

 

話を伸ばして誤魔化そうとした麻琴だったが、削板の頭の中では常に最重要であることを忘れるはずもなかった。

 

「ハア…。じゃあ、やりましょうか」

 

「おっしゃー!」

 

削板が気合い充分といった様子で拳を突き上げる。

 

「ここじゃ危ないから飛ぶわよ」

 

麻琴の言葉の通り、病院の前で戦闘はマズい。

特に削板軍覇はマズい。

 

「いつもの河原でいいわよね?」

 

「おう!」

 

削板の言質を取った麻琴は、シュンッと音を立てて、自身と削板をテレポートさせた。

 

 

 

 

 

第7学区・河原

 

 

 

 

「よぉし!始めるぞ!」

 

「よっしゃー!どっからでも来い!」

 

人気のない河原で、麻琴と削板は対峙していた。

なんだかんだ言ってやる気満々な面持ちの麻琴である。

 

「すごいパーンチ!」

 

先手は削板。

右拳を突き出して衝撃波を飛ばす。

 

「効かないわよ…って、うゎッ!」

 

衝撃波は麻琴には当たらず、足元の土を吹き飛ばした。

驚声をあげた麻琴は後方に跳躍する。

 

(直接狙っても消されるから、足場吹き飛ばしたか。軍覇くんって意外と考えてる?)

 

「おらぁ!」

 

気迫の籠もった声をあげつつ、削板が一瞬で麻琴との距離を詰める。

そのまま、能力は使わずに麻琴に右拳を叩きつけにかかった。

 

「甘いッ!」

 

それに対して、麻琴は身体を僅かに右に逸らし、両手を削板の右腕に回して、一本背負いの要領で後ろに投げ飛ばした。

 

「おっと!」

 

投げられた削板は、左手を地面に叩きつけて跳び上がり、麻琴から距離をとる。

 

音速の数倍での攻防だ。

 

麻琴も後方へ跳んで削板から距離をとりつつ、ポケットに手を入れた。

 

「新技いくわよ!」

 

麻琴は右手に帯電すると、ポケットから取り出したコインを“超電磁砲”として打ち出した。

 

「おぉッ!」

 

麻琴に向き直った削板は、彼女の右手から放たれた光線を真正面から受け止める。

 

「えっ?顔…じゃなくて口?歯?軍覇くん、だいじ…」

 

「しゃーッ!」

 

「…ょうぶだよね、うん」

 

少し驚き、削板を心配してしまったことを後悔するように呟く麻琴。

 

「何だ?今のは。初めて見たぞ」

 

「そりゃ、初めて出したからね」

 

「また新技か!お前はすばらしい根性をしているな!惚れ直した!」

 

「惚れ直さなくていいから!むしろ、私以外の女の子も見て!へそ出しカチューシャで“~けど”が口癖な女子高生とかオススメだけど!」

 

「知らん!今の俺にはお前しか見えん!何としても、お前のお父さんを倒してお前をオトしてみせる!」

 

削板の思いを象徴するかのように、彼の背後でドーンと七色の爆煙があがった。

 

(不幸だ~。芹亜さん、ホントにごめんなさい)

 

「じゃあ、取りあえず、今日のところは返り討ちよ!」

 

「やってみろ!まだまだ勝負はこれからだ!」

 

「はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

「おらぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

 

 

 

 

数分後

 

 

 

 

「くそ~。まだ俺の根性は足りなかったか!」

 

地面に倒された削板が心底悔しそうに声をあげた。

 

「軍覇くんも強くなったわよ。でも、私はまだまだ負けないわ」

 

そんな削板に麻琴が話し掛ける。

 

服こそ汚れているが、無傷な麻琴であった。

 

因みに、地面が捲れ上がったり、大穴が開いていたりと、周りの被害は凄まじいものである。

 

「また根性を鍛え直して、次こそは勝つ!」

 

「アハハハハ…」

 

やっぱり諦めない削板に苦笑いの麻琴。

 

 

その時、遠くからドーンと凄まじい音が響いてきた。

 

「何だ!」

 

「えっ…」

 

削板は驚いたように口を開いたが、麻琴の口からは呆然とした声が漏れた。

 

夜空に一筋の光の柱が打ち上がっている。

 

(あっちは小萌先生のアパートがある方…。嘘でしょ。早すぎる…。まさか!)

 

そこで、ハッとしたように、麻琴は見つめる先を変えた。

 

(何かしたのか!)

 

麻琴の見つめる先には、怪しい輝きを放つ高いビル。

アレイスター=クロウリーの居城・窓のないビルだ。

 

しかし、そんなことをしている場合ではない。

 

「軍覇くん、私…」

 

「いいから行け!」

 

「うん!」

 

麻琴の表情からただならぬ雰囲気を感じ取った削板に背を押され、彼女は小萌のアパートに向けて連続テレポートを開始した。

 

 

 

 

 

「当麻くん!」

 

ものの数秒で麻琴は小萌の部屋に到着した。

 

その瞬間、彼女の目には最悪の光景が飛び込んできた。

 

 

力尽きたように床に倒れているインデックス。

 

インデックスを庇うように覆い被さる当麻。

 

呆然として立ち尽くす神裂とステイル。

 

 

そして、部屋の中を舞う無数の輝く羽。

 

 

 

「いやあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

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