とある遡行の上条麻琴   作:Lucas

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14話 お出掛け

2010年8月1日・朝

 

 

 

第7学区・とある高校の男子寮

 

 

 

 

「ギャアァァァァ!不幸だー!」

 

とある男子生徒の悲鳴が寮内にこだましていた。

 

 

 

「何で噛むんでせうか!」

 

「とうまはやっぱりとうまなんだよ!」

 

頭の傷をさする当麻と、ぷいと憤慨したように顔を背けるインデックス。

 

 

何が起きたのかは、読者の皆様のご想像にお任せすることにしよう。

 

 

「またやってるの?」

 

そんな彼らの元を、1人の少女が訪ねてきた。

 

「はい。お弁当だよ、インデックスちゃん」

 

「うわーい!やっぱり、まことはわかってるんだよ!」

 

呆れ顔の麻琴から受け取った弁当箱──もちろん特大サイズ──にがっつくインデックス。

 

「当麻くん、頭大丈夫?」

 

麻琴はインデックスから当麻に視線を移す。

 

「おぉ…、何とかな。助かったよ、麻琴」

 

「ホントに当麻く…」

 

「ごちそうさまなんだよ!」

 

「早ッ!」

 

麻琴の言葉を遮ったインデックスの手の中には、キレイに空っぽになかった弁当箱。

米粒1つとして残されていないのは見事と言うべきか。

 

「インデックスちゃんには、まだちっちゃかったかな…」

 

「うん。でも、今はこれくらいで我慢するんだよ」

 

「おい、インデックス。お前なあ…」

 

「当麻くん、補習に遅れるわよ」

 

「おっと!そうだった」

 

カバンを掴みドアに向かう当麻。

 

「じゃあ、行ってくる。麻琴、インデックスのこと頼んだぞ。インデックス、麻琴と仲良くしろよ」

 

「行ってらっしゃい、当麻くん」

 

「行ってらっしゃいなんだよ、とうま」

 

「おう」

 

麻琴とインデックスに送られ、当麻は夏休みの補習へと出発した。

 

これから昼まで、机に突っ伏したまま過ごすことになるのだろう。いつものように。

 

 

 

 

 

数分後

 

 

 

 

「ねえ、まこと」

 

当麻が小萌の授業に頭を悩ませているであろう頃、ゴロゴロとテレビを見ていたインデックスが麻琴に話し掛けた。

 

「ん?どうしたの?インデックスちゃん」

 

掃除機をかけていた麻琴が手を止めて応じる。

 

「つまんないんだよ」

 

「カナミン見てたんじゃないの……って終わっちゃったのか」

 

「うん。今、私は退屈なんだよ」

 

「ふぅ~ん…。じゃあ、遊ぼっか?」

 

「子供扱いしないでほしいんだよ!」

 

「うっ…」

 

(だって、私が知ってるインデックスさんよりもずっと子供なんだもん。しょうがないじゃない…)

 

憤慨するインデックスに苦笑いの麻琴であった。

 

「ねえ…」

 

「ん?何々?」

 

「まことに聞きたいことがあるんだよ」

 

そう言うインデックスの顔が真剣みを帯びている。

 

「まことって…」

 

(これは絶対に聞かなきゃいけないんだよ)

 

「とうまのこと好きなの?」

 

「好きよ」

 

「そんなあっさり!?」

 

「うん。愛してる」

 

驚くインデックスに対して事も無げに告げる麻琴。

インデックスの明るい表情がみるみるうちに曇っていく。

 

(やっぱり私が入る隙間なんてなかったんだよ…)

 

「じゃあ、まことととうまは恋人同士なんだね…」

 

残念そんな、悔しそうな顔のインデックス。

 

「えっ?違うよ」

 

「……………………………え?」

 

麻琴の言葉に、再びインデックスの顔に驚きの色が浮かぶ。

 

「だって、今…」

 

「うん。私は確かに当麻くんのこと愛してるよ」

 

“でも”と言って麻琴は続ける。

 

「付き合いたいとか、そういうのじゃないんだよねぇ…」

 

(だって親子だし…)

 

達観したような顔をする麻琴だったが、インデックスは頭上に疑問符を浮かべたままだ。

 

「むぅ…。意味がわからないんだよ」

 

「フフフ…。ちょっと複雑だからね、私と当麻くんは。まあ、当麻くんの方はそんなこと思ってないんだろうけどさ」

 

「ふくざつ?」

 

「うん」

 

「どういうことなの?」

 

「内緒」

 

「むぅ~」

 

「ごめんごめん。怒んないでよ」

 

「まことは内緒が多いんだよ」

 

「ごめんね。でも訳があるのよ」

 

「ふーんだ」

 

麻琴が宥めるも、インデックスはそっぽを向いてしまった。

 

「ハァ…、不幸だ」

 

やっちゃったとばかりに麻琴が黒髪を掻く。

 

(大人のインデックスさんはちゃんとしたシスターさんなのにな…。お父さんはずっと寮に居候させてたって言うけど、やっぱりスゴいわ)

 

「ねえ、インデックスちゃん…」

 

(取りあえず、ここは話題を変えて…)

 

「お出掛けしよっか?」

 

「お出掛け?」

 

「そ。お出掛け。当麻くんが帰ってくるまでには戻んないといけないけど」

 

「うん!行くんだよ!」

 

さっきまでのやり取りはどこへやら、インデックスが顔を輝かせて立ち上がった。

 

「よし!」

 

(良かった…。機嫌直った…)

 

ほっと胸をなで下ろした麻琴も立ち上がり、インデックスを連れ立って部屋を後にした。

 

鍵はあらかじめ当麻から預かっていたので問題ない。

 

 

 

 

 

第7学区・街中

 

 

 

 

「ん~!学園都市はおいしいもので溢れてるんだよ!」

 

すっかりご機嫌になったインデックスが通りを走り回っていた。

 

時折、店の中に入っては、ブラックホールのごとく食べ物を吸い込んでいる。

 

「インデックスちゃ~ん、ほどほどにね~」

 

インデックスの後ろからには、若干引きつった表情の麻琴がいた。

 

(よせば良かった…。請求書……、ステイルさんに回せばなんとかなるか…。なんたって、未来の旦那さんなんだし)

 

そんなことを考える麻琴だったが、彼女の元に怪しい人物が接近していた。

 

 

シュンッ!

 

 

「お姉様!」

 

「キャッ!」

 

空気を切り裂くような効果音と、聞き覚えのあるセリフがしたのと同時に、麻琴に何者かが飛びかかった。

 

「あぁん!私服に着替えたからと言って、この白井黒子の目と鼻は誤魔化せませんわ!その全身からビシビシ来るお姉様オーラ!そして……あら?まあまあ、お姉様!黒子の知らぬうちにこんなふくよかなものがお胸に!」

 

「ヒッ!ちょ、ちょっと、黒子さ……黒子ちゃん、ダメ、私…」

 

麻琴が振り払おうとするのを歯牙にもかけず、黒子は彼女を押し倒し、胸に頭を擦り付け始めた。

 

「いいですわ!素晴らしいですわ!黒子は黒子はもう!我慢できませんの!」

 

「やめ……、ちょっ……、待っ……、あぁ!」

 

一方通行を瞬殺し、削板に無傷で勝利した、LEVEL6・上条麻琴が、完全に白井黒子に押さえ込まれていた。

 

「く~ろ~こ~」

 

そんな時、麻琴にとっての救世主が現れた。

 

「は!お姉様!?何故そちらに?」

 

「“何故”はこっちのセリフよ…」

 

黒子を追って現れた御坂美琴は、プルプルと身体を震わせている。

 

「何やってんだ、アンタは!」

 

美琴が叫ぶと同時に、黒子に高電圧の電撃が襲いかかる。

 

「あばばばばばばばばば!」

 

躱せずに電撃をその身に受けた黒子の身体が、自身の名と同じく真っ“黒”に焦げる。

 

「あ、ありがとう、美琴ちゃん」

 

「アンタ、大丈夫?」

 

黒子の拘束から漸く逃げ出した麻琴に、美琴が心配そうに声を掛ける。

 

「うん。こんくらい、どってことないから。あはは…」

 

乾いた笑いを漏らす麻琴の目は、まるでこの世の闇を覗き込んだかのように光を失っている。

 

「大丈夫、大丈夫。私も最初の頃はヒドい目に遭ってたから気持ちは分かるわ」

 

「うん…」

 

美琴が励まそうとするが、麻琴が立ち直るにはしばらく時が必要なようだ。

 

 

 

「ああ!大きいお姉様と小さいお姉さ…」

 

「アンタは黙ってろ!」

 

ビリビリッ!

 

「あぁん!やはり、お姉様はこうでなくては!」

 

 

 

彼女たちが、自分たちが好奇の視線に晒されていることに気付くのは、もう少し後のことであった。




やっぱり麻琴にとっての天敵は、ペンデックスよりアレイスターより黒子ですよね(~o~)
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