18話 懸念
2010年8月20日
「ふ~ん……」
思案するかのように呟いた上条麻琴。
現在、彼女はとあるカフェのテーブルに座っていた。
「つまり“最近美琴ちゃんの様子がおかしい”と……」
「そうなんですの……」
麻琴の台詞を、意気消沈という言葉がピッタリの有り様で肯定するのは、向かいの椅子に腰掛けた白井黒子だ。
「確かに気になるわね……。話してくれてありがとね、黒子ちゃん」
「いえ、こちらこそ、突然……」
「でもさ……」
黒子の台詞を遮って麻琴が問い掛ける。
「何で私に話してくれたの?知り合ってからそんなに日も経ってないのに……」
「それは……」
黒子が言い淀む。
「ん?何か言いにくいことだった?」
「あっ、いいえ。そういうことではなく、これと言った理由はありませんの。なんとなく上条先輩ならば大丈夫かと……」
「そっか……。信用されてるってことかな?」
麻琴が黒子に微笑みかける。
「それにしても美琴ちゃんの方が気になるわね……」
自分の笑顔に黒子がドキッとしたことにも気付かず、麻琴は言葉を続ける。
「………え、あっ!は、はい、そうですわね。私としては………。あら?」
更に黒子が何か言いかけた時、遠くでけたたましく警報音が鳴り響いた。
「行った方がいいんじゃない?」
「ハア……、そうですわね……。それでは失礼いたします。お姉様のことは……」
「何か気付いたら知らせてあげるから。さっ、早く早く……」
「はいですの」
麻琴に見送られ、黒子は空気を切る音を残して姿を消した。
「チッ……、嫌な予感するわね、時期的に……」
独り言ちた麻琴は、勘定を済ませると、足早に街へと繰り出した。白い影を求めて────。
「チッ!」
白髪の少年が、イラついた表情で路地裏を歩いていた。
足元には、彼に蹴散らされたのであろう不良たちの姿が見える。
『これより実験を始めます────』
少年の脳内では、とある情景がリフレインされていた。
無機質な声色、感情に乏しい瞳、見知った少女に似た顔、1発の銃声、流れ出る鮮血、倒れ込む少女、そして………
『これにて実験は終了です────』
「クッ……」
苦々しげに歯を噛みしめた少年は、感情に任せて壁を殴りつけた。轟音とともに壁に大穴が穿たれる。
砂埃が立ちこめる中、少年はその場から姿を消した。
「増えた!御坂2号!?」
上条当麻が素っ頓狂な声をあげる。
現在、彼の周りには御坂美琴と、彼女と瓜二つの少女。黒子はさっきまでいたがどこかへテレポートして行った。
「妹です、とミサカは答えます」
「ええっと、御坂の妹で一人称が“ミサカ”なの?ややこしくないか?」
「ミサカの名前はミサカですが、とミサカは言い張ります」
「ひょっとして御坂ミサカ?いや、そんな訳ないよな……」
コメディパートを演じる当麻と御坂妹だったが、それも長くは続かなかった。
「アンタ、一体!」
突如として美琴が大声を出す。
「こんなところで何やってんのよ?」
「研修中です、とミサカは答えます」
「そう……」
美琴の表情に暗く影が差した。
「おい、みさ……」
「お~い、妹!」
美琴の声が当麻の呼び掛けを遮る。
「色々話したいこともあるし、こっち来ようか……」
「いえ、ミサカにもスケジュールが……」
「いいから!来なさい……」
断ろうとする御坂妹の腕を掴むと、美琴は彼女を引っ張って当麻の元を辞した。
「複雑なご家庭なのかな?」
当麻の呟きに応える者はいない。
「フフフフフッ……」
いつも通り、ビーカーの中でさかさまになりながら、アレイスター=クロウリーは笑っていた。
「概ね予定通りと言ったところか。しかし、彼女の介入はまだ早すぎる。だが、このタイミングで任務を与えてしまってはあまりにあからさまと言うものか……。断片的とはいえ情報を得た以上、大人しく従うとも限らない。尤も、万に一つの可能性ではあるが……。まあいい。それならばそれなりの措置を講じるまで。むしろ問題は彼の方か……。いや、しかし彼は彼で、さしたる難関もないだろう。全ては我が掌の中、か……。フフフフフッ……」
ちょっと短いですがあげました。
絶対能力者進化計画篇開始です。
☆さんがどんどんイヤなやつに……。