2010年8月21日20時30分過ぎ
第10学区・操車場
「御坂妹から離れろっつってんだよ!聞こえねえのか、この三下ッ!」
上条当麻の叫び声とともに、
当麻が一方通行に突進し、一方通行が砂利を飛ばすことでそれを迎撃し、吹き飛ばされた当麻が再び一方通行を目指して進み、一方通行が引き剥がしてボキボキに折り曲げたレールを当麻に飛ばし、それを当麻はくぐり抜け、………
「チッ!」
「くっ……」
ノーダメージの一方通行が舌打ちをしながら、浅いものばかりとはいえ傷だらけになった当麻をコンテナの上から見下ろし、当麻は下から一方通行を睨み返す。
(何なンだってンだよ、鬱陶しい。そンな目ェこっちに向けンじゃねェよ、アイツ思い出しちまったじゃねェか)
自らに立ち向かってきた
今の自分の姿を見れば、あの少女はどう思うのだろうか?
おそらく、一も二もなく止めにくるだろう。ちょうど目の前の少年と同じように。
「チッ……。関係ねェだろうが……」
しかし、一方通行は一言、口の中で呟いて邪念を振り払う。
そうだ。関係ない。
あの少女が何を思おうと、一方通行は止まらない。もう、今更止まれない。
もう既に、犠牲となった“妹達”がいるのだから────
殺す気はなかった。
わざとではなかった。
“妹達”が拳銃を放ち、一方通行の反射膜が弾丸を跳ね返した。
そして、自ら放った弾丸により、その個体は斃れた。
それが始まり。
そこに一方通行の意図はなかった。
しかし、彼はそんなことは表に出さない。
一切の言い訳も言い逃れもなく、実験を続ける道を選んだ。
せめて、“妹達”の死に意味を持たせることが出来るように、と……。
そこまで思考した一方通行が再び視線を下に向ける。
これまで以上に力強く拳を握る少年の姿があった。
「ハァ……。身構えてどォすンだよ」
それを見た一方通行は溜め息混じりに告げる。
「もういいや。好きな方の手に触れろ。それだけで楽になれるからよォ」
左右の手をひらひらと見せびらかすように振りながら、一方通行はコンテナから地面に降り立ち、当麻との距離を一歩ずつ詰める。
「どっちがいい?右か?左か?それとも、両方か!?」
ガーン!と地面を蹴り、一方通行が当麻に飛びかかった。
触れれば即死の両腕が当麻に襲いかかる。
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!」
気迫の籠もった声をあげた当麻が右拳を突き出して一方通行を迎え撃つ。
その時だった──。
シュンッと空気を裂く音と共に、交錯しようとしていた2人の間に1人の少女が現れた。
黒髪の少女の動きは素早かった。
自身の左肘を当麻の右腕の内側に滑り込ませて軌道を流すのと同時に、右手で一方通行の胸ぐらを捉え、反時計回りに身体を回転させて2人を一度に地面に倒した。
「フゥ……」
少女は顔にかかった黒髪を払いながら、短く息をつくと、こう言った。
「ギリギリ間に合ったかな?」
「「麻琴!?」」
「なんで……」
なんだかんだ言っても戦いの様子が気になって、操車場に駆け付けた御坂美琴は、フェンスを1枚挟んだ先から、3人の姿を捉えていた。
「なんでアンタが此処にいるのよ!」
「麻琴……、お前、なんで……」
「当麻くんへの説明は後よ」
「おい!そんなんで納得できるわけ……」
「先に!……」
声を荒げた当麻を、更に声を荒げた麻琴が遮る。
「先に、あっちを何とかしないとね」
麻琴が見つめる先には、早々に砂利の中から身体を起こしていた純白の少年。
「麻琴……、てめェ……」
苦々しい表情を浮かべながら、麻琴を睨み付ける一方通行。
「……知ってンのか?」
感情を殺した声色で問いかける。
「俺が何をやったか、知ってンのか?」
「うん」
麻琴の返答は短かった。
「だから……、止めに来た。友達でしょ、私たち?」
「あァ……」
一方通行は、顔を下に向けて表情を隠して、嘆息するように呟いた。
「お前ならそォ言うと思ってた」
「ね?あーくん。ほら、もう……」
「でもよォ!」
一方通行は麻琴の呼び掛けを拒絶する。
「だからって、止まれねェンだよ!」
「待って!」
「うるせェ!」
一方通行がつま先で弾いた砂利が、弾丸のような速度で麻琴に襲いかかる。
しかし、一方通行と同等にベクトル変換の能力を有する麻琴は、回避しようとはせず、前へ飛び込もうとした。
だが……、
「麻琴、危ねえ!」
「ちょッ……」
麻琴の背後で素早く起き上がった当麻が、彼女を射線から外すべく、身体を右方へと突き飛ばした。言うまでもなく、自分の身体は射線に晒されたまま……。
「この!」
当然、当麻がそのまま蜂の巣にされるのを見過ごせない麻琴は、倒れ込む直前に自身の左手で、当麻の右手を掴んだ。幻想殺しの右手を……。
そして、その右手を引き寄せ、同時に自分の身体を引き戻し、当麻の身体を捕まえると、盾になるかのように抱き留めた。
そこへ、無数の“弾丸”が飛び込み、大量の砂埃が2人を覆い隠した。
砂埃が晴れた時、当麻の胸の中には血だらけになった麻琴が、ぐったりとして抱きかかえられていた。
「「オイ……、嘘だろ……」」
2人の少年の声が重なる。
「「ふざけんなーーー(ァァァ)!!」」
またやってしまいました。本当にすいません。もうすっかり不定期更新になってますね。
筆が進まずついつい更新を先延ばしにしていたらあっという間にもうすぐ3ヶ月……。
これからもやらかすかもしれませんが、必ず完結はさせますので何卒見捨てないでください。