とある遡行の上条麻琴   作:Lucas

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第2章 多才能力者・木山春生
6話 上条麻琴、15歳


2010年7月19日

 

 

 

 

「不幸だー!」

 

黒髪ツンツン頭の少年・上条当麻は、大勢のスキルアウトたちに追われながら、いつもの口癖を叫んでいた。

 

 

 

全ての始まりはほんの数分前。

 

 

立ち寄ったファミレスで、見知った女子中学生がスキルアウトのような少年に絡まれていたのを当麻は見かけた。

 

(助けてやろっかな~)

 

そんな考えで少年に声をかけた。

 

「ちょっと…」

 

「あ?」

 

「彼女、困ってるじゃないですか」

 

しかし、そんなことでは終わらないのが、上条当麻が“不幸”に愛される少年たる所以である。

 

「おい、どうした?」

 

トイレからゾロゾロと現れるスキルアウトたち。

数にして10は軽く超えている。

 

「あは、あはははは…」

 

苦笑いを浮かべつつ、ファミレスから脱兎のごとく駆け出した当麻であった。

 

 

 

そして現在。

 

 

「ハア…ハア…。ったく、やっと撒いたか…」

 

スキルアウトたちの足音が聞こえなくなったため、当麻は鉄橋の上で足を止めた。

 

「ちょっと…」

 

しかし、そんな彼に話し掛ける人間がいた。

 

「不良を守って善人気取りか…」

 

ファミレスでスキルアウトに絡まれていた女子中学生・御坂美琴である。

 

「熱血教師ですか?」

 

呆れたような彼女の言葉通り、当麻が助けようとしたのはスキルアウトたちの方だ。

不用意に美琴に近づいた彼らが危険と判じたから動いたのである。

 

しかし、ここでの美琴の登場は当麻の脳に不幸な予感を与えた。

 

「アイツらが追っかけて来なくなったのって?」

 

「うん…」

 

恐る恐る問いかける当麻に、美琴は普段の快活な調子を崩さずに答えた。

 

「めんどいから私がやっといた」

 

当麻の予感的中。

今夜の苦労は水の泡となったようだ。

 

「やっぱり…」

 

「ねえ…」

 

ガックリと肩を落とす当麻にはお構いなしに、美琴は話題を変える。

 

「“レールガン”って知ってる?」

 

「レール…ガン?」

 

当麻には耳慣れない言葉だったらしい。

こんな科学の街に住んでいるのだから、知っていてほしいところなのだが。

 

「別名“超電磁砲”…」

 

美琴はどこからか取り出したコインを右手に遊ばせながら言葉を続けた。

 

「フレミングの運動量を借りて、砲弾を撃ち出したりできるもんなんだけど…」

 

そこで、美琴は親指でコインを上へ弾いた。

そして、コインの落下に合わせて彼女の右手に紫電が生じる。

 

「こういうのを言うらしいのよね!」

 

コインが美琴の右手に再び触れた瞬間、それは一条の光線と化して当麻の身体の右方スレスレを通過した。

その後、鉄橋の表面を数m抉ってから消滅する。

 

「こんなコインでも、音速の3倍で飛ばせばそこそこ威力が出るのよね」

 

「まさか…連中を追い払うのにそれを?」

 

当麻が恐々尋ねるが、流石にこの質問の答えは非だった。

 

「馬鹿にしないでよ。LEVEL0の無能力者どもの料理法くらい、心得てるわよ」

 

かなり物騒な台詞を平然と口にする美琴。

 

「お前がこの学園都市に7人しかいない、LEVEL5の超能力者なのはよくわかったけどさ…」

 

御坂美琴はLEVEL5の第3位。

この街最強の“電撃使い”で、能力名は“超電磁砲(レールガン)”。

先ほどのコインを使った技が由来であることは言うに及ばないだろう。

 

そんな彼女に、上条当麻は気兼ねを見せることもなく言った。

 

「人を見下すような言い方、やめた方がいいぞ、ホント」

 

「まったく…」

 

至極真っ当な指摘だったはずなのだが、美琴の心には火が点いてしまったようだ。

 

「強者の台詞よね…」

 

ビリビリと美琴の身体から紫電が迸る。

 

「おいおい!俺だってLEVEL0…」

 

当麻の抗議の声は美琴には届かない。

 

「どりゃー!」

 

そのまま、美琴は大出力の電撃を放………とうとした。

 

 

 

「ハァーイ、そこまで~」

 

 

 

とある少女が美琴の頭に手を置きながら声をあげた。

途端に美琴の電撃が霧散する。

 

「なっ!」

 

驚いて振り返ると、視界に捉えたものを見て、美琴は更なる驚愕を味わった。

 

「アンタ…」

 

「こんにちは。はじめまして、美琴…ちゃん」

 

美琴をそのまま2年成長させたような姿の少女が微笑んでいた。

 

「アンタ、誰?」

 

「私は当麻くんのクラスメートよ。流石に危なそうだったから止めに来たの」

 

言外にずっと見ていたことを告げる。

 

「アンタ、今どうやって…、いやどうなって…、え、あ…、ええっと…」

 

どうやって自分の電磁波レーダーをかいくぐって、背後をとったのか?

どうやって自分の能力を封じているのか?

なぜ自分とほぼ同じ顔の形をしているのか?

 

疑問が多すぎて、何を質問するべきか決められなかった。

 

「まあ、また会うことになるんだし、焦らなくてもいいわよ…」

 

そんな美琴の姿を見兼ねた麻琴が口を開く。

 

「私の名前は上条麻琴。よろしくね。それじゃ、バイバーイ」

 

「えっ!ちょっ…」

 

抗議も虚しく、美琴はシュンッという音を残して消えてしまった。

 

「助かったよ。ありがとな、麻琴」

 

残った麻琴に当麻が声をかける。

 

「ううん、気にしないで…」

 

麻琴は当麻の方を向くと、満面の笑みを咲かせて言った。

 

「当麻くん」

 

 

 

 

上条麻琴、現在15歳。

“遡行”から3年が過ぎようとしていた。

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