大忍び アフリカオオコノハズク【完結】 作:難民180301
かばんちゃんと図書館目指して出発したら、いろいろなちほー、フレンズと出会った。じゃんぐるちほーのカワウソ、ジャガー、こうざんのトキ、アルパカ、さばくちほー、みずべちほー――今いるちほーも初めて見る場所で、なんだかへんな感じ。
「変わったところだねー」
「黙って歩け」
アラビアオリックスに怒られちゃった。かばんちゃんは怖いのかな、さっきから黙り込んでる。
私たちはジャパリバスに乗ってへいげんちほーまでやってきたんだけど、大きな岩にぶつかってバスがストップ。そしたら急にアラビアオリックスとオーロックスが現れて、私たちが「怪しいやつ」だから偉いフレンズに見てもらうんだって。うーん、よく分かんないや。
「……懐かしい場所だ。葦名の城を思い出す」
「かばんちゃん、この場所知ってるの?」
「ああ。まさかパークにこのような場所があるとはな」
かばんちゃんは物知りだなあ。今歩いてるこの建物、お城っていうんだ。
しばらく歩いてると、かばんちゃんが「天守」って呼ぶ場所についた。オーロックスたちが「ふすま」の前にひざをついてるよ。
「ご当主様。曲者どもを連れて参りました」
「入れ」
二人が開けてくれたふすまを通って、私とかばんちゃんも中に入る。中の暗いところにフレンズが一人立ってて、うわぁ、ものすごい目つきで私たちをにらみつけてる。目が狩りの直前みたいにギラギラして爪はサンドスターで輝いちゃってるよ。落ち着いて!
「ネズミが紛れ込んだか。斬る前に、名を聞いてやる。名乗れいっ!」
「ネズミじゃなくてサーバルだよ! こっちはかばんちゃん!」
「お祖父様……!?」
かばんちゃんがすごく驚いてる。もしかしてオオカミちゃんみたいな知り合いなのかな。
怖いフレンズもかばんちゃんと見つめ合って、サンドスターのきらきらが収まった。
「儂に孫はおらぬ。じゃが……どこか懐かしい。不思議なこともあるものよ。カカッ、気に入った! オーロックス、アラビアオリックス」
「はっ!」
「大儀であった。下がれ」
「ははー!」
二人が出ていくと私、かばんちゃん、怖いフレンズの三匹が残される。
すると怖いフレンズちゃんがごろっと「たたみ」に転がって、「いやー疲れた疲れた」って言い出した。えっ?
「君たちも楽にしなよ。プライドの手前、部下にはリーダーっぽくしなくっちゃでさ。あ、私はライオン、よろしく」
「よ、よろしく」
「……よろしく頼む」
言われたとおり足を崩すけど、ライオンはそれ以上に崩れてた。部下の前だからって頑張りすぎだよ。声まで全然違うもん。でも張り切ると声と雰囲気が迫力ある感じになるのはかばんちゃんと似てるね。
「そっちのかばんちゃんだっけ? 悪いけど君に覚えはないなぁ。動物のころも孫はいなかったしね」
「はい、すみません。僕の気のせいでした」
「いやー怖がらせちゃってごめんね。来週合戦でさ、みんなピリピリしてるんだ」
「合戦!? 敵方は内府でしょうか!?」
「そんなわけなかろう」
かばんちゃんとライオンは雰囲気がコロコロ変わってすごいや。まるで一つの体にもう一匹フレンズが入ってるみたい。
ライオンによると、へいげんちほーはヘラジカとライオンの二つのグループで何回も縄張り争いをしてるみたい。五一回も戦って全勝してるなら辞めなくていいと思うけど、ケガをする前にライオンは辞めさせたいんだって。
どうすればいいかな。
こんなとき、かばんちゃんはいつもいいことを思いつく。じゃんぐるちほーの橋とか、めいろで道を見つけたりとか。きっと今回もいいことを――
「承知しました。このかばん、ヘラジカの衆を討ち滅ぼして参ります」
「かばんちゃん!?」
「たわけが!」
めちゃくちゃなことを言い出したかばんちゃんだけど、私とライオンの声で起きたみたい。ハッとしてから、
「じゃなくて、もっと安全なルールで戦うのはどうでしょう」
って言い直した。
うんうん、やっぱりこっちがかばんちゃんだよね。ゲンイチローを野生開放してるかばんちゃんもかっこよくて好きだけど、普通のかばんちゃんのほうが似合ってる気がするな。
かばんちゃんの考えたルールはとっても安全で、これならライオンとヘラジカが戦っても大丈夫。かばんちゃんはすっごいなー!
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紙を巻き付けた木の棒を武器にして、体のどこかにくっつけた風船を潰し合う。それがかばんちゃんの考えたルールだった。これなら棒で叩かれても痛くないし、勝ち負けもわかりやすい。
『ヘラジカには私の古い友だちが世話になってるんだ。くれぐれも穏便に頼むよ』
って念押しされてから、私たちはヘラジカのところに向かった。
お城から少し離れたところにいるヘラジカたちの縄張りでルールを説明したら、みんななんだかんだで受け入れてくれたよ。
ヘラジカが武器の棒をかざして声を張り上げてる。
「よいか皆の衆! 来たるはへいげんちほー存亡の戦! パークのため、フレンズのため、共に命を捨てて参ろうぞ!」
「ええ!? 命は捨てたらダメでしょ!」
「おっと、そうだったな」
もう、ヘラジカったら気合入り過ぎだよ。
「じゃあ改めて。みんな、武器は変わっても戦いに変わりはない。今度こそ、勝つぞー!」
「おおー!」
アルマジロ、ヤマアラシ、シロサイ、カメレオン。ヘラジカの仲間たちもみんな張り切ってるけど、張り切りすぎないか心配だな。落ち着いてるのはハシビロコウが一人だけ。でもあの子かばんちゃんをじーっとガン見しててちょっと怖い。
「そうだみんな。アイツはまた引きこもってるのか?」
「そうでござる。『どんな形であれ、戦は好まぬ』らしいでござる」
「うーむ、好きじゃないなら仕方ないな!」
「ねえ何の話?」
ハシビロコウの視線が怖くてヘラジカたちの話にまぜてもらった。ここにいる他にもう一人ヘラジカの仲間がいるらしいけど、その子は戦いが嫌いでずっと竹林の奥にこもってるんだって。好きじゃないことを無理してやることはないよね。
そんなこんなで私とかばんちゃんも自己紹介して仲間に入れてもらった。かばんちゃんは賢いから、ヘラジカに勝ち方を教えてライオンに勝たせる。それで縄張り争いを終わらせる作戦だよ。
いきなり本番を始めるのも急ってことで、棒を使った練習試合をすることになった。
ヘラジカ対アルマジロ。ヘラジカすごーい! アルマジロが吹っ飛んじゃった。
私対シロサイ。サイの迫力すごーい! でも走り回って疲れたところを叩いて私が勝ち。やった!
かばんちゃん対カメレオン。
「貴様、その構えは!?」
「……」
舞台に上がったかばんちゃんは、カメレオンの構えを見てびっくりしてる。確かに不思議な構え方だなあ。頭の横で棒を構えて、先っちょは前に向けてる。持ちにくそうだけど手慣れてて自然な感じ。
「オオカミゆかりの者か」
「……明かせぬ。師から口外無用と言われているゆえ」
「なるほど」
普通に言っちゃってるけど、カメレオンはオオカミちゃんの弟子みたい。言われてみれば雰囲気が似てるかも。
かばんちゃんとオオカミちゃんは仲悪いから、かばんちゃんが怖い顔でやる気になってる。ケガさせちゃダメだよ。背中の弓も使っちゃダメ。ライオンに念押しされたでしょ。
ヤマアラシの合図で試合が始まった。
そのとたん、カメレオンが腰のあたりから何かを取り出して口元に――
「ぐびっ」
「ぬあっ!」
それを見たかばんちゃんが飛びかかって棒を突き出すけど、カメレオンちゃんが棒を踏みつけて抑え込む。かばんちゃんは慌てて後ろに下がった。
「ぐびっ」
「ぬああ!? 体が勝手に!」
「かばんちゃーん!?」
かばんちゃんが突いて見切られてを繰り返す。
そういえばかばんちゃん、前に言ってたもんね。『いいサーバルちゃん? 僕は神聖な立ち合いのさなかに飲み食いする輩が許せないんだ。特にひょうたんは絶対ダメ』って。
体が勝手に飛びかかるくらい許せないなんて、きっと動物の頃ひょうたんのせいでひどい目にあったんだろうなあ。
そんな風に思ってると、カメレオンがいっそう強く棒を見切り、踏みつける。どん、と低い音がして、かばんちゃんが体勢を崩す。その間にかばんちゃんの風船を割って、カメレオンが勝った。
「ふふん、かばんどのの倒し方は師匠から聞いていたでござる」
「くそっ、汚いぞ!」
「忍びは汚いものにござる。今の拙者、とっても忍びっぽいでござる」
「やるじゃないかカメレオン!」
ヘラジカたちがカメレオンをほめる横で、かばんちゃんは四つん這いになって落ち込んでる。ヘラジカもすぐに「かばんの突進? もすごかったぞ!」ってほめてくれたけど、元気になるにはしばらくかかりそう。
でもひょうたんを許せない動物なんて変わってるな。ゲンイチローがどんな動物なのか、ますます気になってきちゃった。早く縄張り争いを終わらせて、図書館に聞きに行かなくっちゃ!
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「見るでござる! 師匠直伝、月隠の術!」
「消えた!?」
「いや、声がするから分かるぞ。そこだ!」
お城の表の方から合戦の音が聞こえる。「忍びの技があればアラビアオリックスたちも怖くないでござる!」って言ってたカメレオンがやられて、今はシロサイ、ヤマアラシ、アルマジロ、ハシビロコウの四人で頑張ってるみたい。
私、かばんちゃん、ヘラジカの三人はお城の裏手からこっそり中に忍び込んだ。表で目立ってる間にこっそり忍び込むのがかばんちゃんの作戦なんだ。
「大丈夫かな……」
「かばんの作戦は完璧だ。みなを信じよう!」
「そうそう、心配ないよ! あ、みんな止まって!」
お城の中はよく音が響く。ちょっと遠いところから足音が聞こえた。私は耳がいいんだ。
そっと「いしがき」の角から覗き込むと、二人のフレンズがうろうろしてるのが見えた。きっと門番だ。一人は見たことないけど、もう一人はけいばじょうで見かけたくろげによく似てる。馬のフレンズかな。
ライオンのところに行くには回り道しなきゃいけないと思ったけど、前のめりになりすぎて私は陰から出ちゃった。二人のフレンズがじっとこっちを見てる。
逃げなきゃ――そう思ったとき、
「
ふみゃー!? うるさーい! 耳ふさいでもきーんてするよ!?
え、なんかヘラジカまで出てきた。「おお、なんと威勢のいい。私も負けてられないな」って――
「やあやあ私はヘラジカだ! へいげんを縄張りとするヘラジカ衆、その頭領とは私のことよ! いざ尋常に勝負!」
ふみゃ゛ー!!?
「ヘラジカさん、目的が違ってます!」
「なんでだ、勝負しよう!?」
「「まてー!」」
かばんちゃんに手を引かれ、逃げ出す。
だけど私はもうこれまでみたい。お茶を飲む前のトキの五倍くらいのショックで目が回ってるもん。
「サーバルちゃん!?」
「かばんちゃん……私の、分まで、がんばっ、て……ガクッ」
耳がいいのっていいことばかりじゃないんだね。かばんちゃんといっしょだといろんな発見があって楽しいな――
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目が覚めたのはお城の表の草の上だった。
ヘラジカとライオンの戦いは終わったみたいで、どっちのグループのフレンズもみんないっしょにわいわい集まってお話してる。
「ふああ、おはよー」
「サーバルちゃん、大丈夫!?」
「へーきへーき。私がんじょうだから!」
かばんちゃんの声をきっかけにみんなが集まってきた。みんな心配そうで、ヘラジカと鬼鹿毛は「すまなかった!」ってまた大声で謝ってくれたけど、大丈夫。ちょっとびっくりしただけだもん。
「かばんちゃん、あの後どうなった?」
「天守でおじい……ライオンさんとヘラジカさんが戦って引き分けになったよ。すごい戦いだった」
「そうなんだ。って、あれ!? 天守に穴が空いてるよ!」
「うん、そのくらいすごかったんだ」
お城のてっぺんにある天守には大きな穴があいてた。よく目をこらしてみると、穴の縁が焼けたみたいに真っ黒になってたり、壁の一部が鋭い爪で斬られたみたいに両断されてたりするのが見える。ヘラジカもライオンも強いフレンズだから、お互い風船を割るのも大変だったみたい。私も見てみたかったなー。
ライオンは縄張り争いが終わって満足、ヘラジカもライオンと戦えて満足してる。
次の勝負のルールをかばんちゃんが考えだしたとき、新しいフレンズが一人、へいげんの方からやってきた。
「フン。戦、戦と騒いで何をしておるのかと思えば……」
「おお、猩々!」
「オランウータン! ん? ライオン、ショウジョウってなんだ?」
「あ、気にしないで」
茶色っぽいモコモコした毛皮のその子はオランウータンっていうらしい。左腕がないのはケガでもしたのかな? ちょっと目つきがオオカミちゃんに似てて、緑色の耳飾りがきれい。竹林の奥にこもってたのはこの子だったんだね。
「誰も死なぬどころか血さえ流れぬ。これでは炎が翳るわけだ」
「?? ねえ、それは何持ってるの?」
「オオカミの手土産じゃ」
「ぬあ!」
「おっと」
オランウータンが手に持ってるもの、とっても大きなひょうたんを掲げたら、またかばんちゃんが跳びかかった。危ないと思ったけど、棒を踏みつけたから安心。
「サンドスターを醸したもんらしい。争いが一段落したなら、一つどうだ」
「そりゃあいい! みんなでいっちょ宴といこう!」
「おお、よく分からんが分かった! みんなで騒ぐぞー!」
おおー、と声をあげるみんなといっしょに私も声をあげる。ライオン以外誰も分かってないみたいだけど、オランウータンは縄張り争いが終わったお祝いに、おいしいものを振る舞ってくれるみたいだね。ほらかばんちゃんも、ひょうたんをにらみつけてないで騒ごうよ!
たーのしー!