ネト充トッププレイヤーは、異世界でLv1から色々育むそうです。 作:颯月 凛珠。
「毒は出来る限り盾で防げドアホゥ! 後ろに飛び散るじゃろうが!」
「毒攻撃の対処初めてなのにそんなの出来るか!」
「えぇい! 本当に使えない若造じゃな!」
武器の強化も時間通りに終わり、私達はその性能を試している内に二層目の階段を発見した。
一層のモンスターをあらかた倒している内にわかったのだが、グランピーの鍛冶スキルは本物だった。たった数十分の強化で、ここまで変わるものなのかと目を見張るくらいに。
具体的には、エイジの盾はあの《ジャイアント・ダンパ》の爪攻撃をいとも簡単に弾き返す程に強度が増し、更に毒耐性と腐食耐性が。
私の杖は全魔法の効果が二割方強化されている、といった感じだ。
私達はそのことを彼に感謝しつつ、二層へ続く階段を降りた。
——そして今。私は近くにあった石の上に座って、グランピーがエイジに指南するのを傍観していた。
今、彼らが相手をしているのは《ポイゾネス・キャット》。緑色の表皮を持つ猫である。正直見ていて気持ちが悪い。
猫の攻撃方法は爪攻撃と飛びつき攻撃のみなのだが、その攻撃はどちらも毒属性を帯びていた。
発見当初はその危険性を鑑みて、気付かれる前に私が無詠唱魔法でぶっ飛ばそうと考えていたのだが、その案はグランピーによって却下された。
「あの《ポイゾネス・キャット》は、ここらへんの毒属性モンスターの中でも最弱種じゃ。若造の防御練習にはもってこいだ。小娘は……しばらくそこら辺に座っとれ」
つまり、モンスターが瞬殺だとエイジの練習にならないから小娘は手を出すな、ということらしい。
グランピーの言い付け通り、私はこの石の上に座って傍観し、エイジは挑発スキル《タウント》で上手くタゲを取りながら毒攻撃の対処の練習を繰り返していた。
「ほれ、飛び付きくるぞ! 物理攻撃と口から飛んでくる毒も同時に盾で受けてみぃ!」
腕を組んだグランピーがそう言った直後、後ろ足をバネにした毒猫が、勢いよくエイジに飛び向かっていく。
「こんな感じ……かっ!」
それに対してエイジは、その場でズッシリと構えてバックラーを前に突き出すと、盾スキル《ブラントガード》を発動させた。
盾が仄かに光を帯びたその瞬間、毒猫が口を開けてエイジ目掛けて突進した。
ガゴンッ! と鈍い音が響き渡る。
「いい感じじゃないか若造! 毒もちゃんと防げておるぞ!」
グランピーが嬉しそうにそう言うと、エイジは力ずくで毒猫を押し返してから言う。
「今のは単調な攻撃で毒と物理がどこに来るか分かったから、何とかな」
「それでも三回目でそこまで出来るのは誇って良い。《ジャイアント・ダンパ》のジャストガードと言い、騎士長アルドとの戦闘と言い、少しばかりお前さんを過小評価してたわい」
グランピーは髭をわしゃわしゃと触りながら続ける。
「そいじゃ、次の段階に進むとするかのぉ。どれ、その盾ちっと貸してみぃ」
エイジは言われるがままにグランピーに盾を渡すと、彼はその盾を腕に着けた。
「若造……いや、この呼び方はもうやめておこう。お主、《鏡盾》は使えるか?」
「《鏡盾》? ……あぁ、《ミラー・リフレクト》なら使えるぞ」
《ミラー・リフレクト》。中級盾スキルで、タイミングよく盾を押し出すと単発魔法を反射するものだ。
エイジの返答にグランピーは満足気に頷くと、《タウント》を発動させてエイジから毒猫のタゲを奪い取った。
毒猫が一目散に小柄なドワーフへと向かっていく。モーションは違うが、先程と同じく飛び付き攻撃だろう。
グランピーは毒猫をスッと睨み付けながら盾を斜め前へと構える。次いで盾が白色に光だし、表面は高い空を反射して青く輝く。
それと同時に毒猫が大きくジャンプをして、口から緑色の液体を吐き出した。
彼は瞬時にその毒に盾を合わせると力強く前へと突き出した。
「むんっ!!」
その掛け声と共に盾に当たった毒が180度方向を変えて、今にも飛びかかろうとする毒猫の顔へと命中した。
普通毒類の攻撃は粘着性が高く、盾に当たったら空気中に蒸発するまでは残るものだ。それなのにグランピーは、そんな魔法でもない毒を、文字通り《リフレクト》したのだ。
「あんなことできるんだ……」
私も、少し遠くにいるエイジも目を見張ってその光景を見ていた。
「ギニャァァ!!」と悲鳴を上げてのたうち回る猫を傍目にグランピーはエイジの元に戻ってくると言った。
「とりあえずこんな感じじゃ。マスターすれば最深部近くまではほとんど毒を食らわずに行けるじゃろう。どれ、お主もやってみぃ」
「とりあえず分かったが……どうにもタイミングが掴みにくそうだな」
「それは慣れるしかあるまい。出来ればこの階層中のマスターを目指してくれ」
グランピーはそう言ってニヤリと笑うと、続いて私に声を掛けた。
「おーい、そこの小娘! ちょっとこっち来い!」
……どうやら私はまだ小娘扱いのようだ。私はその事が少しだけ気になってしまい、不機嫌に返事をした。
「なによ」
「小娘は確かウィザードじゃったな。得意魔法はなんじゃ」
「一応全属性の魔法は使えるけど……一番得意なのは風」
「……風か」
グランピーがあからさまに残念そうな顔をしたので、私は意地になって声を荒らげた。
「今一番使ってるのが風魔法ってだけで、他の属性も一応出来るんだけど」
「そうかそうか。なら小娘には初級水魔法の威力上げをして欲しい」
「水魔法? なんで」
ここら辺には火属性のモンスターは出ないはず。むしろ水属性の魔法が効果がないモンスターの方が多いのだが……。
「それは後で分かる。今はワシの言うことを聞け、小娘が」
「……っ! あんたねぇ……!!」
そこは素直に教えれば良いのに!
グランピーの吐き捨てるような言葉に、私は怒りを顕にした。それに対して、彼はやれやれと言った風に溜息をついた。
「小娘。それだからお前は小娘のままなんじゃ」
「……どういうことよ」
私が問うと、グランピーはこちらも見ずに話を続けた。
「どうもこうも自分の言動と行動を振り返ってみぃ。宮廷魔導師に勝ったからと、お前さんは相当自分の魔法に自信があるようじゃが、戦い方がなっとらん。そんな戦い方をしていると、いつか大変な事になるぞ」