ネト充トッププレイヤーは、異世界でLv1から色々育むそうです。 作:颯月 凛珠。
彼女の言葉に、俺は自然とその建造物を見上げていた。それは白を基調としたゴシック様式のモノで、如何にも世界史の教科書で見るような教会然とした装いだった。ただ強いてそれと違うところを述べるとするならば、横の長さがそこまで長くないところだろうか。ただなんにしても、家の近所にあるようなただ備え付けられただけのような教会よりも何十倍も美しくて、目を引き寄せられたのは確かだった。
そこまで観察してから、ふと気づいた。あれ、この尖塔って────
「さっき、入り口から見えたやつじゃん」
そう言うと、目の前の少女は驚いたように体を揺らした。その拍子に髪の毛も可愛らしくぴょこんと揺れた。
「……やっぱりエイジ様って変わっていらっしゃいますよね」
「なんでだよ!?」
あまりにも予想外の言葉に教会の前だというのについ声を荒げてしまった。この子、さっきまで不敬だからって発言に気を付けていた節があるのに、今では変人だという始末。キャラクターがブレブレ過ぎる……。
しかし彼女は、どうやらそういう意味で言ったわけではないらしく、謝りながら言葉を続けた。
「気を悪くさせてしまったなら、本当に申し訳ありません。そういう意味合いで言ったわけではなかったのです。普段から教会を訪れる方は多くいるのですが、その大体の人は教会よりも後ろにある王城を見てしまうので、いち早く教会に気づいている方のほうが珍しくて……」
「やっぱり、使……エイジ様だからなんですかね?」と言葉を紡ぐ。
「主様の使いの方だから、聖なるモノの力に惹きつけられてしまう……みたいな感じなんですか?」
彼女は顎に手を当てながら、最後に好奇心に満ちた目をこちらに向け、そう疑問を投げかけてきた。
「まぁ確かに王城に比べたら目立たないとは思うけど、確かに俺にはすぐに目についた……かも。良く分かってないけど、多分そういう力が働いたんだと思う」
彼女の疑問に適当に答えつつ、俺は頷いた。……本当は歴史的建造物に目がないせいで、先に教会に目が行ってしまった、なんて言えないからな。実際この教会、俺が生きている間に一度は見たいと思っていた、西欧に実在するある教会に物凄く似ているのだ。
それはさておき。セレナは「やっぱり本当にそういう力ってあるんですね」と、目を輝かせて言った後に、自分が深入ってしまっていることに気づいたのか、俺から一歩距離を取ると咳払いをして言う。
「こほんっ……。さ、さて。エイジ様をずっと外に立たせている訳にもいきませんから、中に入りましょうか」
彼女は踵を返すと、教会の真正面の大きな扉から────ではなく、側方へと向かって歩いていく。
「あの扉からじゃないのか?」
セレナの後を着いて行きつつそう問うと、彼女は頷いた。
「あちらの扉は信者たちの入り口です。何故かは良く分かりませんが、あちらの扉から入ると、信者たち──特に男性の方々に奇異な目で見られるとの苦情が、修道士達から上がりまして……。裏扉を設置することになったのです」
「な、なるほどなぁ……」
この世界にも、セクハラってあるんだなぁ……と思った今日この頃。まだセレナしか見ていないから他の修道士がどうかは分からないけれど……。
「…………」
「エ、エイジ様? どうかいたしましたか?」
うん、確かにそれも納得出来るような気がした。いや、納得しちゃいけないんだけどね。
そこから歩くこと数秒。
「エイジ様、少し下がっていてくださいませ」
セレナは特に他の場所と変わった様子のない壁の前に止まると、首から下げていた十字のネックレスの先端の部分を押し当て、突然詠唱を始めた。
「治の女神よ、其方の力を以てして────」
つい先ほど聞いた文句を言い終えた直後、壁の一部分が扉の形のようにポワっと光り出すと、その形のまま、本当に扉が形成された。
セレナは、驚く俺の様子に満足したかのようにニコっと微笑み、「行きましょうか」と言いながら歩みを進めた。
中に入ると、そこは左右の壁に蝋燭が一本ずつ立っているだけの不気味な細道だった。
その中を無言で歩いていくのは流石に怖いと判断した俺は、その間に少々雑談をすることにした。まず初めに、この通路はどういったものなのかを尋ねると、この通路は堂内と外壁の間に形成されている秘密通路だと、彼女は歩きながら説明してくれた。
二つの足音と声が通路に反響する。
「そういえば、なんで治癒魔法で扉が開く仕組みなんだ?」
俺がそう問うと、迷う様子もなく即座に返答してきた。
「それは、治癒魔法が使えるのは教会に携わる修道士のみだからです。もし私たち以外に使えるような方がいたら、その都度教会に引き入れてますので」
「そうなんだ……」
俺は上ずった声で返事をした。なんか物凄く怖い話を聞いてしまったような気がする。
前に読んだラノベで、”回復魔法使いを見つけ次第教会に連行して洗脳する”なんていうシーンを見たことがあるのだが、いくら何でも教会にそんな権力なんかないよな……と俺は秘かにその物語を否定していたのだ。そんな極悪非道なことを、仮にも神聖な教会の人々がするわけがない、と。しかし、今のセレナの話でそれがかなり現実味を帯びてしまった。
俺が知りたくもなかった衝撃の真相に閉口していると、ある程度暗かった通路が段々と明るくなってきていることに気が付いた。それに次いで、行く先からガタゴトともの音が聞こえてきた。あともう二本、蝋燭の門を潜ればその部屋の扉の前に着く、というタイミングでセレナは口を開いた。
「そろそろ修道士達の集会場に着きます。恐らくこの時間は、修道士達の入浴時間なので、まずは聖メルナ様にご挨拶をすることになると思いますので、そのおつもりで」
彼女はこちらを一瞬チラっと見てから、少しだけイタズラっぽい笑みを浮かべてから、一礼した。
「……なんだよ」
気になって問いかけると、彼女は嬉々とした声で宣った。
「申し訳ありません。エイジ様はフウカ様に早くお会いしたいそうだったので」
「……楽しみにしていたわけじゃないけど、気付いていたのかよ」
「それは気づきますよ。先程フウカ様のお名前をお出した時、凄く嬉しそうなお顔をされていましたもの」
「俺ってそんなに顔に出やすいかなぁ……。まぁ、会うのは別に後ででも構わないよ」
「ありがとうございます」
俺が恥ずかしさに後ろ頭を掻いていると、セレナはフフッと笑う。しかし、彼女はその可愛らしい笑顔をすぐに引っこめると、もう見慣れてしまった真面目顔へと変化させてから、ノブに手を伸ばし扉を────
「ただいま戻りまし────」
「セレナぁぁ!」
────開けたその瞬間、何者かが風を切って飛びこんできて、俺の隣の少女はそのまま何者かの下敷きになってしまった。それはもう、ほとんどテロのような速さで。
「ごめんなさい、セレナ! 戦えないのにあなたを危険な場所に送りこんでしまって! 怪我は!? 怪我はない!?」
「あっ、んっ! ちょっ、メルナ様! お、お止め下さ……ひゃんっ!」
「この様子じゃ怪我はなさそうね! 良かった! 私凄く心配したの……ん?」
メルナと呼ばれた女性は、セレナの体を──主にふくよかな部分を──心配そうに……いや、どちらかというと変態そうに撫で回した後、触れていた手をその部分から離すと、感触を思い出すかのようにワナワナさせ、興奮を抑えるかのように小声で呟いた。
「……あら、セレナ。もしかしてまた大きくなった? これは……Dいや、Eくらいは」
「きゃあああ!! メルナ様、いい加減にしないと怒りますよ!」
セレナがメルナの声をかき消す程大きな声を出す。そのせいで彼女が何を言いかけたのか全く聞こえなかった。が、しかし何となく予想はついていたので、俺は一体何を見せられているのだろうと思いつつ、顔を背けた。
「まぁまぁ、別に言われて減るものじゃないし、いいじゃないの────ってあら? そちらの方は?」
ようやく俺の存在に気づいたのか、メルナは小首を傾げながら俺を不思議そうに見つめていた。
セレナはその隙を見逃さなかった。慣れた素早い動作ではだけた装束の胸元を抑えつつ、メルナから脱出すると、荒いだ息のまま叫ぶように言う。
「はぁはぁ……。メ、メルナ様、その方がもう一人の使徒様の《エイジ様》ですよ!」
「……ふぇ?」
彼女の間の抜けた声が、集会場に響き渡る。次いで、先程とは違った意味で手をワナワナさせだした。
「え、ちょ、使徒様ですって!? ちょっとセレナ! そういうことはもっと早く言って頂戴!」
「言う暇を与えて下さらなかったじゃないですか!」
「オッパイ揉まれて感じてる暇があったら言いなさいって言ってるのよ!」
「なっ……! そ、そんなこと!」
憤怒と恥ずかしさでまるでリンゴの様に赤面するセレナを傍に、メルナはすぐにスカートを叩いて付いた埃を落とすと、一度咳払いをした後に、手を前に組んでにこやかに微笑んだ。
「お初にお目にかかります。私はこのメルトリア教会の大司教を務めております、《メルナ・ノア・ミハエル》です。ようこそお出でなさいました、使徒様。以後お見知りおきを」
彼女はそう言いながら、そのままスカートの裾をちょこんと摘んで上にあげると、如何にも中世風の挨拶をした。流石にあの光景を見た後だと大司教の威厳も何も無いのだが。
「あなたが"聖女"メルナ様ですか。知ってはいると思いますが、俺の名前はエイジです。ここの修道士達の神様から聞いてるとは思うけれど、これからお世話になると思いますが、よろしくお願いします」
だが敢えて、そこには触れないことにした。触れたらセレナの何かが大変なことになってしまうような気がしたから。なにが、は言及しないが。
「こちらこそ、よろしくお願いしますね。エイジ様」
お互いに挨拶を交わして、握手をする。……この小さな手が、あの巨大な大狼を瀕死まで追い詰めたというのだから、世の中本当どうなってるのかさっぱりだ。この世界のことまだよく知らないけれど。
「流石使徒様と言ったところでしょうか。Lv3なのにも関わらず物凄い魔力を感じます。いえ、それ以上にこの生命力は────」
「こらこらこら、勝手に人のステータスを覗き見するな」
苦笑い混じりに言う。別に俺的には見られても構わないのだが、無断というのはどうなのだろうか。
そう思ったのだがしかし、どうやら認識違いだったのは俺の方らしく……。
「あら? 相手の体に触れる許可をするということは、ステータスを見るのを許可するということよ?」
「そ、そうなのか……」
なにこの世界。俺の常識が全く通用しなくて本当に怖い。
俺がその事実に戦慄していると、彼女は「それにね……」と言いながら、メルナは掴んだままの俺の手をグイっと引っ張ると、耳元まで顔を近づけてきた後に、ボソッと囁く。
「使徒様は、セレナが【呪い】に掛かっていることを知っていらっしゃるのよね?」
「っ! ……お前」
俺はその言葉を聞いて、すぐ傍にある顔を睨みつけた。やっぱり、こいつの仕業だったのか……。
しかし対する彼女の表情は、俺の目を見て臆するどころか嬉々としているようにも見えた。
「あら、やっぱり。あなた様こそ私の可愛いセレナちゃんの
メルナは俺から離れて口元に人差し指を立てる。
「その秘密の意味を知りたければ、後で私のところに来てくださいね、使徒様♪」
ついでに可愛らしくウインクも付けてそう言った後、メルナはセレナに「教会の案内と、フウカ様との会合、最後に彼のお部屋の場所を教えて差し上げて。それまでお風呂は待ってるから」と言うと、さっさと部屋から出て行ってしまった。
暫しの沈黙と、誰かのため息が部屋に反響する。
「……メルナ様と何をお話しなさっていたんですか?」
数秒経った後、セレナが口開いた。しかしその声はどこか遠慮気味なもので、おずおずとしていた。まぁ、恐らく俺が怒っているのが原因だろうけど。だから俺はできる限り平静を務めて、彼女にただの世間話だったよ、と伝えた。
「その割にエイジ様、結構怒っていらっしゃったようですが……」
「まぁ、その、なんだ。いきなり何の前置きなしにステータスを覗き見されてたからな」
俺が
「もう、メルナ様ったら……。あとでちゃんと叱っておきますね」
彼女自身全く悪くない、寧ろかなりの被害者だというのに、申し訳なさそうにそう言うと、メルナが出て行った扉の左側へと歩みを進め始めた。
「えっと……セレナ、どこ行くの?」
いきなり歩き出したセレナに問いかける。先程、メルナが部屋を出る直前に、セレナに対して行動指南を執り行っていたのは少なからず聞こえていたのだが、具体的な内容までは良く聞こえていなかったのだ。
「どこって……決まってるじゃないですか。忘れてしまわれたのですか?」
しかしどうやら、彼女は既に行き先を俺に教えていたようで。分からずに思い出そうと首を捻っていると、じれったいと思ったのか
彼女は直ぐに答えを口にした。
「エイジ様の相方、フウカ様に会いに行くんですよ」
☆☆☆
「実は私、この教会で一番フウカ様と仲が良いんですよ」
月明かりに照らされる廊下に二つの足音が響き渡る。俺がこの世界に転移してきたのは今朝のことなので、もう直ぐ一日が経とうとしているという事実に少しばかり驚かされてしまった。
「へー、そうなのか。ちなみにあいつ、どんな感じだ?」
相槌を打ちつつ、会話が終わらないように質問を投げ掛ける。彼女は一瞬俺の問いに対して不思議そうな顔をしたが、気にしない事にしたのか返答を続けた。
「そうですね……今日で会ってから丁度二週間なんですが、毎日一緒に編み物をしたりお料理をしていたりしていますね」
それを聞いて、俺は安堵のため息をついた。こんな状況で趣味に没頭できる彼女は俺の知っている彼女そのものだった。実は少しだけ、この世界に来て病んでしまってるのでは、と心配していたのだが、どうやらそれは杞憂だったようだ。
「あいつ、確かに手先が器用だって言ってたな」
「エイジ様は食べたことないんですか?」
隣を歩く彼女が、コテンッと首を傾げる。……フウカと仲が良いということは聞いてるもんだと思ったのだが、どうやらこの様子では聞かされていないらしい。まぁ確かに、オンラインゲームも何もないであろうこの世界の住人に、俺達の出会った経緯を説明するのは難しいからな。
だから俺は至って簡潔に、なんの気負いもなく平然と言ってのけた。
「まぁだって、俺とフウカって会ったことないしな」
「あ、なるほど。会ったことないのなら仕方がないことでぇぇぇ!?」
キィーン! と廊下にノイズが響き渡る。そのノイズの発生源の間近にいた俺は、自ずと歯を食いしばって手を耳に当てて防御姿勢を取っていた。
「ちょ、セレナ! うるさいって!」
未だにぐわんぐわんと廊下を駆け巡る残響を背にセレナに注意する。
「申し訳ありません、エイジ様! ……でも、だって私、エイジ様とフウカ様は恋人同士で、いつも一緒だったと聞かされていたので、会ったことないというエイジ様の言葉と矛盾が起きていて……」
注意に対して、彼女が申し訳なさそうに頭を、まるでヘッドバンキングのように下げ続けると、次いで弁明を述べた。
なるほど、流石はフウカだ。面倒臭さに完全に説明を端折ってやがる。恐らく彼女は、俺達のゲーム内の生活を現実世界の私生活に見立てて、それをセレナに話したのだろう。いわゆる一種の夢物語を彼女に語った、というワケだ。
そこまで考えて、ふと思った。
あれ? でも、その夢物語を構成していた《エイジ》と《フウカ》は今、この世界では俺達の一部として生きているワケで。……そう考えると、あいつの説明もあながち間違ってないような気がしてならない。
「まぁ、その事についてはフウカと一緒にまた後で話すよ」
「よろしくお願い致します。頭がこんがらがってしまいましたので……」
考え込むと永遠にその場に足踏みしてしまいそうなので、面倒なことは後回しにしてセレナと共に歩みを進めた。
フウカがなぜ説明を放棄したかが何となくだか分かったような気がした。
☆
暫く歩くと、他の修道士達の部屋のモノとは一風変わった扉が現れた。明らかに豪華なそれは、その先に誰が住まっているの想像に難くない程だ。
「フウカ様、ご紹介したい方がいらっしゃいます」
「その声はセレナね? 通していいわよ」
ドアに邪魔されてくぐもってはいるが、部屋の中から驚くほど美しい声が聞こえてきた。
そして俺は、その声に聞き覚えがあった。いや、聞き覚えがあるどころじゃない。それを直接聞いたことはないが、毎日耳元で機械を通して聴いていた声そのものだった。
セレナが、「失礼します」と言いながらドアを開ける。その風圧で換気された甘い部屋の香りが、俺の鼻腔を嫌という程くすぐる。
中に入ると、まず目に付いたのは、お姫様が使うような大きなベッドだった。部屋の隅にあるそれは、窓から差し込む月の光に照らされて、これでもかと言うほどキラキラと輝いていた。
その輝きの中、上半身だけを起こして本を読んでいる少女が一人、黒い影となってカーテンに映されている。
「いらっしゃい、セレナ。──それと、そちらの方は?」
彼女の影が口を開き、その声が俺の耳を貫く。聞く限り、どうやら彼女は俺と認識出来ていないようだった。
無理もない。今俺が彼女をシルエットとしか見れていないのと同様に、彼女からもまた俺の事をシルエットでしか見えていないだろうから。まるで、ゲームの中での会話を通して、彼女の姿を想像していたあの頃のように────。
「見たところ男性のようだけれど」
あぁ、紛れもない。俺にとってはどんな声優も歌手も敵わない、俺が一番大好きなあの声だ────。
「フウカ」
そう思った途端、無意識に彼女の名前を口にしていた。
その直後、カーテンの向こう側でシルエットがびくっと揺れ、呼応するかのように腰まで伸びた髪が踊った。その光景は月の光と相まって更に美しく感じられた。隣にいるセレナも見入っているのか、感嘆のため息をついていた。
「……エイジ?」
彼女の声が俺の名前を呼ぶ。機械越しに聞いていた声が今、確かに目の前で聴こえたのだ。
「本当に、エイジ?」
シルエットが布団を剥がし、隠れていた足が露わになる。
「あぁ、本当だよ、フウカ」
俺はもう一度、彼女の名前を呼んだ。
「エイジ……!」
彼女はカーテンを開けるのももどかしく、更に靴も履かずに床を走ると、俺の胸元に飛び込んで来る。俺はそれをしっかりと受け止め、抱きしめた。ちゃんと、触れられる。ちゃんと今、俺の目の前に彼女が実在している。
「フウカ、会いたかった。二年間、ずっと」
俺がそう言うと、彼女は俺の胸の中でコクンっと頷いて顔を上げた。
初めて見る彼女の顔。
予想していた顔よりも遥かに美しいその顔は、俺と同じように涙に濡れていた。
「うん、私も。ずっとエイジに会いたいって思ってた」
腰に回されている手が更に強まった。まるで俺の存在を確かめるかのように。そして彼女は俺の中で泣き笑いをした。
二年前。ゲームの中で彼女の化身と出会い。そして今日、そのゲームによく似た世界で、大切な人となった彼女と────フウカとの初めての"再会"を果たしたのだった。