Monster hunter モンスターのもう一つの物語 作:細針
モンスター達の挙動を脳内再生しながら読んで貰えたら嬉しいです。
※登場モンスター
ラージャン(金獅子)
ティガレックス(轟竜)
ババコンガ(桃毛獣)
ババコンガ亜種(緑毛獣)
ゴア・マガラ(黒蝕竜)
「オラァァァァァァッ!」
轟竜が突進する。黒蝕竜が後ろに飛んでかわした。
「ガァァッ!」
轟竜の軌道を読んで黒紫色のブレスを放つ黒蝕竜。
「当たるかよ!」
轟竜は直前で急停止する。そのまま咆哮を放とうと大きく息を吸うが激しく噎せる。
「チッ! なんだこの粉!?」
ブレスが破裂して辺りに鱗粉が撒き散らされる。轟竜は仰け反った。
それを黒蝕竜は見逃さなかった。すぐさま滑空して轟竜を狙う。
「させるかぁぁぁぁ!」
天高く跳んだ桃毛獣が黒蝕竜にのし掛かる。バランスを崩した黒蝕竜はそのまま墜落した。黒蝕竜は悲鳴をあげる。
「ハアッ!」
倒れた黒蝕竜の上に高速で回転して体当たりする金獅子。黒蝕竜の身体に直撃した。
「どうだ……?」
倒れた黒蝕竜を囲むように近付く三頭。筆頭ハンター達を避難させた緑毛獣も合流した。
黒蝕竜は立ち上がった。それどころか翼の裏で妖しく光っていた水色の部分が紫になっている。不穏な気配に四頭は身構える。
黒蝕竜が全身に力を込める。黒蝕竜の頭から紫に光る一対の角が現れた。
「!?」
「シャァァァァァァァァァァッ!!」
黒蝕竜が吠える。翼から大量の鱗粉が舞い上がった。その鱗粉は黒い霧となって空を覆い、樹海を黒く染めた。
「……今やっと本気を出したところ、か。かなり面倒な相手だな……」
金獅子が呟く。
黒蝕竜がバックステップして包囲網を抜ける。
「ガァァッ! ガァァッ! ガァァァァッ!」
大量の黒球が金獅子達を襲う。間一髪で避ける金獅子達。休む間も無く次々に黒球は放たれる。ある球は真っ直ぐに、ある球は的確に追尾し、ある球は変則的に曲がる。飛び交う球を避ける内にスタミナが削られていく。破裂した時に撒き散らされる鱗粉が彼らに付着して一層追尾球の精度が高まる。
「うわっ!」
桃毛獣が動きを見切れずに直撃した。倒れた桃毛獣に一斉に球が襲う。
ボオン!
桃毛獣に向かった球が吹き飛ぶ。周囲一帯には臭気。
「あんたいつまで倒れてんの! 早く立ち上がりんしゃい!」
正体は緑毛獣の放屁だった。立ち込める悪臭に桃毛獣が顔をしかめる。
「お前、助けるにももっとマシな助け方があるだろ……」
桃毛獣は文句を吐きながら立ち上がった。
一方、金獅子は軌道を把握したのか黒蝕竜に向かって走り出す。軽やかなステップで襲い掛かる黒球をかわしながら距離を詰める。
それを見た轟竜が負けじと動く。被弾を気にせず豪快に突進する。痛みを堪えながら金獅子と並走した。
「グァァッ!」
敵が近付く気配を感じた黒蝕竜が今までとは違った動きで下にブレスを放つ。本能的に危険を感じた金獅子達は横に逸れる。
ダァン! ダァン! ダァン!
ブレスは正面では無く真横に爆発した。油断していた二頭が転ぶ。
轟竜が先に起き上がる。バックステップで距離を離す。
「痛えじゃねぇかよ……」
目は血走り、腕には血管が浮き出ている。
「オラァァァァァァッ!!」
轟竜の怒りは頂点に達した。怒りに任せて地面を抉って黒蝕竜目掛けて飛ばす。あまりの速度に避ける間も無かった。黒蝕竜の右翼脚に当たって砕ける。甲殻は潰れ、隙間からは血が流れる。
轟竜の攻撃はこれだけでは終わらない。すかさず飛び掛かり、出血している翼脚に噛み付く。黒蝕竜の悲鳴が響く。
轟竜の変貌を遠巻きに見る金獅子達。
(下手に近寄るとワシらに襲い掛かりそうじゃな……)
今の轟竜にとって目に写る生物は全て『敵』と見なしていた。轟竜は目の前の竜をひたすら切り裂き、噛み砕いた。
暫くの間猛攻は続き、黒蝕竜はボロボロの状態になっていた。鱗は剥がれ、翼は破れ、尻尾の先は千切れていた。それでも角は光り、翼からは絶え間無く鱗粉が飛び散っていた。
「ハァ……ハァ…………」
轟竜のあれだけ激しかった勢いが弱まる。口からはだらしなく涎が流れている。スタミナが切れたのだ。顔を狙う爪の動きも鈍る。
「ガァァッ!」
「ギャッ!」
黒蝕竜がその爪に噛み付いた。続けて顔面にブレスを当てる。
三回の爆発音が止んだ時には既に形勢は逆転していた。気絶して、ぐったりと倒れた轟竜目掛けて黒蝕竜の翼脚が降り下ろされる。
ガッ!
「ハアアアアアアッ!」
高く上げた翼脚を押さえる金獅子。轟竜が噛み付かれた時点で既に助けに向かっていたのだ。
押し合いながら睨む二頭。金獅子の方が力はあるが四本の足で支える黒蝕竜も負けてはいない。
「コンガ! マヒダケを!」
金獅子が叫ぶ。
「マヒダケ!? ――あぁ、そういう事か! ちょっと待ってくれ!」
桃毛獣と緑毛獣が辺りを探す。その時。
「ガァァァッ!」
「!!」
黒蝕竜が金獅子の顔面にブレスを当てる。
ダァン! ダァン! ダァン!
顔面で誘爆を起こす。爆風がエリア内を駆け巡る。轟竜が気絶する程の衝撃が金獅子を襲った。
――それでも金獅子は腕を離さなかった。
「どうした……? 力じゃ負けるからか……?」
挑発する金獅子。爆発の衝撃で顔周りは傷だらけで、左目から血が涙の様に流れていた。
「ガァァァッ……」
再び黒蝕竜はブレスを放とうとする。先程ので力を使いすぎたか中々吐き出す鱗粉が形にならない。
「ラー! 待たせたな! 準備完了じゃ!」
二頭がマヒダケをくわえて黒蝕竜を挟む。危険を察知した黒蝕竜が手を離そうとする。
「逃がさん!」
金獅子ががっしりと握る。黒蝕竜はその場から動けなくなった。
その間にマヒダケを咀嚼する二頭。よく噛んで唾を溜める。そして、大きく息を吸い込んで――
「「せーの!」」
「「ブゥゥゥゥゥゥッ!!」」
口内の物をブレスの様に吐き出す。唾液と混ざったマヒダケの欠片が黒蝕竜の傷口に染み込む。麻痺性の毒が全身に回る。
「グゥゥゥッ! ガッ! ギャァァァァァァ!」
全身に行き届いたのだろう、黒蝕竜は痙攣しながら踞る。
「ハァァァァァァ!!」
格好の的となった黒蝕竜に金獅子の連続パンチが襲う。麻痺で動けない黒蝕竜は避けることも受け止めることも出来ずにその全てを食らう。
金獅子はスタミナの限り殴り続けた。全身に返り血を浴びて真っ黒になっていた。
金獅子の攻撃が止まる。肩で息をしながら黒蝕竜を見る。
「ガァァァッ…………」
黒蝕竜は死に物狂いで立ち上がろうとする。だが、その努力も虚しく倒れ、動かなくなった。息は止まり、あれだけ飛ばしていた鱗粉も消え、空は青色を取り戻した。
「終わったな……」
金獅子が口に溜まった血を吐く。
「奴は……何者じゃったんじゃろうな…………」
桃毛獣が呟く。
「さあね? ……さ、気絶してるティガを起こして帰ろう」
緑毛獣が倒れている轟竜をつつく。
「…………――オラァ! 敵はどこだ!? ……ん?」
跳ね起きて辺りを見回す轟竜。緑毛獣が苦笑する。
「あんたが倒れてる間に倒しちまったよ。もう終わったのさ、あたしがクックに報告しとくからあんたたちは帰りな」
自分が倒せなかったことを悔しがる轟竜。その姿に桃毛獣が笑う。
「じゃあ緑コンガ、任せたぞ。お前達、飛べるか?」
金獅子が轟竜の傷だらけの翼を見ながら言う。
「さっきまでグースカ寝てたんだ、飛べるわ!」
轟竜の八つ当たり。轟竜は先に羽ばたいて行った。
「元気の良いことじゃな。ワシらも帰るか」
桃毛獣と金獅子が追い掛ける。陽は西に傾いていた。
[1時間後]
【上位未知の樹海‐南境界線付近】
三頭は集落の端に着地した。炎王龍のところへ向かう。
「なあ皆。……なんか息が苦しくないか?」
桃毛獣が不意に言った。
「コンガ、お前もか? 妙だよな」
轟竜が賛同する。
「そうか? 俺は何も感じないが……」
金獅子は首を傾げる。
「気道に変な物が入ってる感じっていうかな……。頭も痛いし」
桃毛獣が説明する。轟竜も頷く。
「先程の戦いで鱗粉を吸いすぎたのかもな。今日は水をよく飲んではやく寝ろ」
「うーい」
「やっぱ酒……いや、今日は水飲もう」
この時、桃毛獣と轟竜の喉には凶竜結晶が作られていた。
勿論、そんな事は二頭は知らない。
ニ 地を染める不吉な来訪者 02 終
如何でしたでしょうか。
\シャーシャーうるせえ!/……ゴマちゃんの叫び方の表現に苦しんでおります。
そういえば今回ケチャワチャ登場が一回も無かったですね。
ショタキャラは扱いが面倒だと思って来た頃なので登場しない回は少し気が楽です。
そして最近事情で忙しく、下手したら2ヶ月程執筆出来ません。
できるだけ更新したいですがこれまでのように最低でも週1は投稿していたペースが落ちると思います。
処女作の駄文な上に更新遅くなりますがそれでも次回を待ってもらえれば嬉しいです。
暫く乗り切ればまた週1の更新ペースに戻ると思います。