Monster hunter モンスターのもう一つの物語 作:細針
※登場モンスター
ケチャワチャ(奇猿狐)
ザボアザギル(化け鮫)
グラビモス(鎧竜)
「まずは私が鉄格子を溶かす。ザボア、貴様は当たらないようにしゃがんでいろ」
鎧竜が指示する。
「おうよ。間違っても俺に当てんじゃねえぞ? 俺は熱いのは大嫌いなんでな!」
化け鮫がおどけてしゃがむ。
「私を誰だと思ってる……。グラビームの精度を嘗めるな……」
鎧竜が鉄格子の隙間から顔を出して大きく息を吸い込み、
「グラアアアアアアアッ!!」
鎧竜の叫び声と共に赤い熱線が放たれ、化け鮫の数センチ上の鉄格子を一瞬で溶かした。
「まだだああああああっ!!」
ビームは楕円を描き、化け鮫の頭上を動いた。
鎧竜のビームが止んだ瞬間、支えを失った鉄格子の部分が崩れ落ち、けたたましい金属音が地下牢に響き渡った。
「すごい……これがグラビームかあ………」
奇猿狐は息を飲んで拍手を送る。
「上手えな、グラビ」
化け鮫も驚いた表情は隠せなかった。
「感心している場合か、貴様ら! さっきの鉄格子が落ちた音で流石に人間に気付かれただろう、急げ!」
鎧竜は怒鳴った。
「……××××! …………」
その言葉と同時に、上の階から管理人の間抜けな悲鳴が響いた。
「……だな。残り時間は少ねえみてえらしい。ちょっと真ん中開けてろケチャ坊!」
化け鮫は溶けた鉄格子の上を飛び越え、地盤が柔らかい廊下から地中に潜る。二匹が見守る中、10秒もしない内に奇猿狐の収容されていた牢の床には大きな穴が空いた。
「ありがとうザボアさん! 待っててグラビさん、今開けるから!」
奇猿狐は化け鮫の掘った穴から廊下へと駆け出した。奇猿狐は鎧竜の閉じ込められている檻の前に立った。
(これを開けるのか……)
奇猿狐は鎧竜の檻に掛けられた南京錠をまじまじと見つめた。
遠目から見たときには気付かなかったが、南京錠は少し錆びていて、簡単には開きそうにも無い。
「ケチャ坊! 早く開けろ! もう人間が来たぞ!」
化け鮫が叫んだ。
「分かってるよ! 今開ける!」
そう答えた時に、奥から管理人の声が響いてきた。
「×××、××××××××!?」
モンスターが牢から逃げ出そうとするのに気付いたのだろう、管理人は顔色を変えて横にあるスイッチに向かって走り出した。
「柵だ! あの人間は出口を封鎖するつもりだ!」
鎧竜が気付く。だが鎧竜の檻はまだ開かない。
「畜生! こんなところで邪魔されてたまるかよ!」
そう言い残し、化け鮫はスイッチを入れようとする管理人に向かって走り出す。距離は約50メートル。化け鮫は重たい脚を必死に動かし突進した。
「×××!? ××××××!!」
間一髪のところで管理人は突進を避け、それと同時に突進によってスイッチが壊れた。
「どんなもんだ! モンスターを嘗めん…」
そう言っている間に、管理人は閃光玉を投げた。
「うわぁぁっ!?」
「×××!」
激しい光が地下牢を包み、その光を直視した化け鮫が怯む。
「クソッ! 前が見えねえ!」
その隙に、管理人はもうひとつのスイッチに向かって化け鮫の脇を潜り抜けようとする。
「ああっ!! こうなったらヤケだ!! 暴れ回ってやるぜ!!」
化け鮫の突然の回転攻撃に吹っ飛ばされる管理人。
しかしその代償に化け鮫の尻尾も石壁に擦れあい、血が吹き出た。
「うおらああああ!!」
「×××!」
激しい痛みに堪えながら暴れるモンスターと、必死に逃亡を阻止しようとする人間。
両者の間で激しい攻防が繰り広げられた。
「ケチャ、大丈夫だったか!?」
壁が死角になっていて閃光を免れた鎧竜は咄嗟に訊いた。
「大丈夫…! 目を覆ってたからまだちゃんと見えるよ! もう少し待って……!」
奇猿狐達が集中する時は必ず耳を伏せて目を覆う。その癖の存在を鎧竜は思い出した。
「ああ……! ザボアがあの人間を邪魔している。慌てず焦らず急いでくれ!」
南京錠が堅いのだろう、奇猿狐の爪は既に半分が割れ、血が流れていた。
「ここの部分が動けば……!」
懸命に爪を動かすが、無惨にも鍵穴から六本目の爪が割れる音がした。
「キャッ!!」
奇猿狐は小さな悲鳴を上げたが、直ぐに隣の爪を鍵穴に挿した。
(まだ子供なのに……! 私の為に……!!)
見兼ねた鎧竜は叫んだ。
「もういい! ケチャ、お前達だけでも逃げろ!!」
だが奇猿狐はその場から動かなかった。
「嫌だ! グラビさんが置いてきぼりになるのは嫌だ!」
そう叫びながら、また一つ南京錠から悲痛な音がした。
一方、化け鮫はスイッチの前で巨大化することで道を塞いでいた。
「××! ×××××!」
膨れ上がった化け鮫の腹に毒ナイフを投げる管理人。
「いくらでもやりやがれ! 俺は何されても退かねえぜ!!」
そう叫ぶものの、血液に浸透した毒が、着実に化け鮫の体力を奪う。
「坊主……早く開けてくれ……!」
化け鮫が呻く。
「やっと空いた!!」
奇猿狐が九本の爪を犠牲に鍵を開けた。
「ザボア! 逃げるぞ!!」
鎧竜が化け鮫の元へ走りながら叫んだ。
「やっとかよ! 待たせやがって、ケチャ坊!!」
そう答えながらも、化け鮫の口元からは笑みが溢れた。
「じゃあな! 人間!!」
化け鮫が腹部に溜めていたガスを排出する。その風圧に管理人が吹き飛んだ。その僅かな隙に三匹は管理人の横を走り抜け、階段へと駆け出した。
「我々の樹海は北にある筈だ、月を確認したら潜ってここを抜け出す!」
鎧竜が指示した。
階段を登り、廊下を走り、程なくして大きな門が彼らの前に立ち塞がった。門の隙間からは月明かりが差していた。
「邪魔だ!!」
鎧竜のタックルによって門は簡単に壊れた。
それと同時に、柔らかな月明かりが彼等を包んだ。
「ケチャ! 私の目は衰えて光がよく見えない、どんな月がどの方向にある?」
鎧竜が目を細めながら訊く。
「えっと……左側に満月がでてて……このまま直進だよ!グラビさん!」
奇猿狐が夜空を見上げながら言った。
「承知した……おいザボア? 大丈夫か?」
鎧竜は化け鮫の違和感に気付いた。
衰弱している。鎧竜は体が丈夫な上、地下牢の石を食べる事が出来るが、3日間に渡って僅かに染みる水だけで過ごした後の戦闘に毒。化け鮫は立っているのもやっとの状態だった。
「大丈夫だ……! 早く……行くぞ……!」
そう答えながらも、化け鮫はバランスを崩し、倒れた。
「ザボアさん! ここまできたのに!」
奇猿狐が持ち上げようとするが、幼い牙獣種には重すぎて、動かない。
「全く……世話をかけさせおって」
そう言って鎧竜は化け鮫を軽々と背中に背負った。
「……おい……グラビィ……何のつもりだ…………」
化け鮫は小さな声で言った。
「お前がここで倒れたら我々の脱出は失敗したことになるだろう? 失敗は御免だ」
鎧竜は前を向いて化け鮫を見ないようにして言った。
「さあ、大詰めだ。私が穴を掘るからケチャ、貴様は後ろをついてこい。穴は直ぐに塞がるから急ぐのだぞ」
「うん!」
[2時間後]
【上位樹海‐南境界線付近】
東から暁の光が朝露を照らす中、三匹のモンスターが倒れ込むようにして眠りについた。
彼等は憔悴しきっていたが、皆、協力して地下牢を脱出したことへの満足感で一杯だった。
一、闘技場の脱走劇 02 終
如何でしたでしょうか。
2話目投稿しちゃいましたお目汚し本当すいません。
三匹を未知の樹海にまで逃げさせましたけどこれから先どのモンスターを登場させましょうか。
管理人可哀想な役になっちゃいましたね。
×の部分は何て言ってるかご想像にお任せします。
こんな駄作ですが次回も読んでいただければこの上なき幸せです。