俺は走って部室のドアを開いた。
「先輩! 今日二人部員が増えました!」
胸を張って、誇らしげに言った。
「ほぅ、二人もかい。いつも頑張ってくれてる成果だね。いつもありがとう」
六坊先輩がそうは言ってくれたが、真顔で言ってくるので正直興味が見えないように見えた。
うーん、この人は本当に表情が読めないなぁ。
すると、六坊先輩は立ち上がった。
「じゃあ俺も、頑張ってみようかな」
「! 先輩も勧誘するんですか!?」
「うん、知り合いがサッカーやってたんだ。誘ってみるよ」
六坊先輩が部室から出て行くと、深津先輩もそれに同行した。
「……あれ? 智明はどこに行った?」
****
智明サイド
「あいつ、走って戻りやがった……。疲れることを知らないのか? ……今日は一人で帰ることになりそうだな」
俺はどこかに行ってしまった世界を置いて、先に帰った。
ここで勘違いしないで貰いたいが、俺は世界が嫌いなわけではない。
ただ、待つのが嫌いなだけだ。
俺は何に対しても淡白で、薄情らしい。
それに対しあいつは、サッカーを好きすぎる。
普通の奴なら、もうすぐ廃部と聞いて引き下がるだろう。
なのにあいつは、復興させようとしている。
すごい奴だ、と尊敬までする。
だから俺は、お前に付いてきているんだろう。
すると、帰り道にある河川敷でボールを蹴っている音が聞こえた。
それに気付き見てみると、空鳥中の制服を着たブロンドの髪をしている女子がゴールに向かってボールを蹴っていた。
フォームは、とてつもなく綺麗だ。
プロのシュート映像を見せられているようなシュート。
そのコースも隅ばかりで、命中率の高さが伺える。
だがそれよりも引き込まれたのは、その楽しそうな表情だった。
「たった一人でも、あんなに楽しそうに出来るんだな……」
すると、俺の視線に気付いたのか、女子がこちらに顔を向けた。
女子も見られながら蹴るのは集中出来ないだろうし、俺は退散しようとするが、女子は俺に手首を前後に振ってみせた。
どうやら俺を呼んでいるらしい。
俺は彼女のプレイには少し感動していたので、興味もあったし近付いてみることにした。
「…で? あんた、俺に何の用だ?」
すると、彼女は突然ボールを上に上げて、そのまま俺に向けてボールを蹴った。
「……!」
動揺してしまい、俺は少し行動が遅れてしまったが、なんとかボールはトラップ出来た。
「……何するんですか?」
俺は少し怒った口調で言うが、彼女の微笑みが失せることはなかった。
「まぁ、及第点ってところね。私はエム。少し暇だったの。付き合ってくれないかしら?」
そう言って彼女は、俺に微笑みかけた。