アオゾライレブン!   作:フェブラリー

5 / 5
決意! サッカーバトル!

世界サイド

 

俺は夕日を浴びながら、口を尖らせて河川敷を歩いていた。

 

「なんだよ智明の奴、先に帰るならそう言えよな…」

 

独り言を呟き、河川敷に視線を移すと、その言葉は意味を無くしてしまった。

そこには、誰か分からない金髪の女子と共にボールを蹴る智明の姿があった。

俺を置いて女子とサッカーをしている智明に対して、呆れよりも感動を覚えていた。

俺はすぐに河川敷の坂を滑り降りる。するとそのまま智明の体へ突進した。

 

「智明ーー!!」

 

「ぐっっはあぁ!?」

 

智明は起こったことが分からないままタックルを喰らい、体勢を崩してしまうが、倒れるまでには至らなかった。

 

「世界!? 何しやがる! 突然タックルしてきやがって、イノシシか!」

 

すると、智明の後ろにいた女子がクスリと笑った。

 

「面白いお友達ね。智明くん」

 

智明は女子の方を見るが、俺の肩を掴んでその女子に言い放った。

 

「友達じゃねぇ。親友だよ。唯一無二のな」

 

「そう、じゃあ私も挨拶しておこうかしら」

 

女子は俺に近づくと、右手を差し出した。

 

「私はエム。本名はエミリー・アントワーヌ。私もサッカー部に入れて貰おうと思っているのだけれど」

 

俺はすぐにエムの右手を両手で掴んだ。

 

「新入部員なら大歓迎だ! 入ってくれて嬉しいよ!」

 

エムはまたクスリと笑った。

 

「えぇ、入れて貰えて私も嬉しいわ」

 

俺は内心歓喜していた。

今日で一気に三人も部員が集まったのだ。

これほど嬉しいことはない。

 

だが、そこに智明が割って入った。

 

「そろそろ帰るぞ世界。エム、今日は付き合って貰ってすまない」

 

「ふふ、そういうのはありがとうと言うのよ」

 

「生憎、礼を言うのが苦手な性格なんでな」

 

智明が河川敷を去ろうとするので、俺も急ぎ足で智明の元に駆け寄った。

河川敷を去り、住宅街に差し掛かったところまで来た時だった。

 

「なぁ智明、もう残り四人だぞ? あと四人集められたら、俺たちはフットボールフロンティアに出場出来るんだよ!」

 

目を輝かせながら智明に言った。

だが、智明は真剣な眼差しで突飛なことを俺に言ったのだ。

 

「……なぁ世界、これから一週間、部員集めはやめさせてもらっていいか?」

 

「……はぁ?」

 

俺は口を開けたまま呆然と足を止めることしか出来なかった。

 

「どうしたんだよ智明!? 一緒にフットボールフロンティアに出場して、優勝するんじゃなかったのか!?」

 

俺は智明を説得しようとするが、智明の意志は固いようだった。

 

「だからだよ」

 

智明は遠い夕日を眺めながら、話を続けた。

 

「俺はフットボールフロンティアに出れば、そこそこの実力は発揮できるだろうと思ってたんだ。だけどそれは、俺の大きな思い違いだった。だから俺は、もっと強くなりたい。お前の力になりたいんだよ」

 

それを聞いて、俺は安心した。

智明は、サッカーが嫌いになったわけじゃなかったんだ。良かったぁ。

俺は智明の意志を汲み取ったことの証明に肩を叩いた。

 

「分かった! 俺も部員が集まれば、すぐに練習するよ!」

 

「……恩に着る。じゃあ、また明日」

 

「あぁ! また明日!」

 

そう言って俺たちは、それぞれの帰り道に別れて行った。

 

 

 

****

 

 

 

翌日の朝、登校時間を知らせるチャイムが鳴り響く一年生の教室に、ドタバタと走り寄る足音が響く。

その正体は、俺の全力疾走だった。

俺は自分のクラスである1-1教室の前で足を止める。

 

「ギリギリセーフ!」

 

「大空君っていつも余裕ないよね」

 

顔を上げると、そう話しかけてきたのは奏太だった。

 

「あれ? 奏太って同じクラスだったっけ?」

 

「自分のクラスメイトくらい把握しといてよ……」

 

俺も苦笑して頭を掻く。するとその奥で、大きな怒号が鳴り響いた。

 

「おいお前! 何しやがんだよ!」

 

「ひぃっ! すみません……」

 

どうやら大柄の男が、気の弱そうな男子に当たっているようだ。

 

「なんだ? あれ」

 

状況の分からない俺に、奏太が説明するように言った。

 

「彼は矢場 武。所謂、このクラスのリーダーだよ。どんなことでも当たってくるし、喧嘩は強いから、皆関わりたがらないんだ」

 

成る程、そして今がその「当たり」の真っ最中というわけか。

 

「……見過ごせないな」

 

俺は矢場の元へ近寄った。

 

「おい、矢場! 謝ってるんだから、許してやれよ!」

 

「あぁ? うるせぇ!」

 

そう言って矢場は、俺に殴りかかろうとするので、俺もしゃしゃり出てきたくせに喧嘩が強いわけではないので、目を瞑ってしまう。が、矢場の腕は俺の体のどこにも当たることはなかった。

ゆっくりと目を開けていく。

 

「……お前が勝負を選べ。その勝負で俺が勝ったら、もうしゃしゃり出てくんな」

 

俺は状況を掴めなかったが、取り敢えず真っ先にこう言った。

 

「サッカーバトルだ! 放課後、河川敷で勝負しよう!」

 

「そうか分かった。俺も数連れて来るから、お前も連れてこい」

 

そう言って矢場は自分の席に戻った。

 

「大空君、なんてことしてんの!? 矢場は運動神経がいいことで有名なんだよ! あぁもう負けだ〜」

 

奏太が俺の前で体を折った。

 

「おいおい奏太。まだ始まってもないのに諦めんなよ。頑張れば勝てるさ!」

 

俺は奏太に言い聞かせる。

すると奏太は、何かに気付いたようだった。

 

「えっと、なんで僕も参加するみたいに言ってるの?」

 

俺は首を傾げた。

 

「え、なんで出ないんだ?」

 

そう言うと奏太は、死んだような目をして自分の席に戻った。耳を澄ますと、何かブツブツ言っているようだった。

 

「あの、僕もそのサッカーバトルに入れて貰えませんか?」

 

そう言って来たのは、さっき矢場に当たられていた気弱そうな少年だった。

 

「良いけど、君、名前は?」

 

「あ、僕、池田 若って言います。僕のせいでこうなったし、何か手伝えることがあればしたいんです!」

 

俺は池田のその誠意に感心した。

 

「あぁ! こちらこそ宜しく頼むよ!」

 

サッカーバトルに必要な人数は五人だから、あと二人、一人は根子でいいだろうけど、もう一人は……。

 

「……あいつにするか」

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。