「九十九! アーンして!」
名前を呼ばれたので振り向くと、天真爛漫な金髪の美少女──弦巻こころが無邪気な笑顔で俺にプリンを一口差し出していた。
こころにこんな魅力的な表情で、しかもアーンなんて、断れる奴が存在するだろうか?
こころの笑顔は老若男女を虜にする。
伊達に『世界を笑顔でいっパイパイ(──コホン、失礼)いっぱいにする』なんて目標は掲げていない。
それにしても、ア〜ン、カワイイしん!
「おう。アーン」
「あら、私のを忘れてるんじゃないかしら」
──バッ!?
振り返ると、友希那がこころと同じように、俺にアーンを勧めてきていた。
クールビューティを地で行く歌姫──湊友希那が、頬を染めながらこんなことするなんて! なんて萌えるんだ! 俺の中の紳士()が『友希那を食せ』と轟き叫ぶっ!!
「ok。隅々まで味わい尽くそう」
「……ねえ、私のも食べてよ」
──グイッ
肩を掴まれ、向きを変えさせられる。
すると、そこには友希那と同じクールビューティ党の一人──美竹蘭がいて、蘭もまたアーン待機の姿勢で俺を誘っていた。
イタダキマース!
俺は飛びかかろうとするが──?
「モカのが先だよー?」
──バッ‼︎
モカだと!?
いや、モカだけじゃない!
「私のを食べて下さい」
紗夜!!
「お姉ちゃんずるい! あたしの食べて!!」
日菜!!
「わ、私の食べなきゃ許さねーからなっ!」
有咲!!
「はい、あーん」
たえ!!
「私のを食べてくれたら……その、嬉しいです……」
りんりん!!
他にも沢山の美少女がアーンを勧めてくる。
俺は、このあまりにも現実離れした状況にフリーズしていると──
「日菜!! 貴女はいつも私の真似ばかりして!! 退きなさい!!」
「いや!! あたしがアーンするの!」
「美竹さん、貴女は引っ込んでなさい」
「湊さんこそ引っ込んでなよ」
「おやおや子猫ちゃんたち、私に譲ったらどうだい?」
「かおちゃんは黙って」
「私の食べて欲しいなぁ」
「ひーちゃんはソレ自分で食べちゃいなよー」
……ヒェッ!
各所で火花が散っている。
このままでは大乱闘スマッシュシスターズになってしまう!
と言っても、誰のを食べればいいんだ。
ぶっちゃけ誰のを食べてもバットエンドしか見えない。
天才的な頭脳(自称)で解決策を模索しようにも、俺の脳内は絶賛混乱中だ。
A『馬鹿野郎!! 巨乳のひまり以外ありえねーだろ!!』
B『それなら有咲だろ!!』
C『いや燐子だろーが!! にわかがっ!!』
D『クソッタレども!! 貧乳の価値がわからん奴は◯ね!!』
E『胸より尻だっ!!!』
F『こころ、顔に似合わずなんてけしからん体してやがるんだ!!!』
G『体しか見てねー奴は消えろ!!』
他にも様々な俺が脳内で熱い討論を繰り広げている。
カオスだ……。
しかし、ここで俺(I)が妙案を出した。
I『誰も選べないのなら、全員選んでしまえば事態は丸く収まると思うのだが。どうかね?』
「『『『『『『『それだ!!』』』』』』』」
方針は決まった。I 先生ありがとうございます!
俺は即座に実行に移す。
「喧嘩すんじゃねー! 安心しろ、全員もれなく頂きます!!!!」
九十九、イッキマ──ース!!
俺は今度こそ、彼女らに飛びかかる……
……が、飛び込んだ先にはオカマしか居なかった。
えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!????
「…………ファ!!!?? ……あれ??? ……あ、夢か……」
そして、この男──八原九十九の夢への道程が始まった。