桃源郷を目指して ※ボツ   作:ツヅラP

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③:誰得即落ち2コマ

 数時間のバスの旅を各々の形で楽しんだ俺達を待っていたのは、山を切り開いた様に真っ平らで広大な高原だった。

 

 辺りを見渡せば、紅葉を迎えた山々がこの高原を取り囲む様に聳えており、鮮やかなその風景は正に感無量の一言に尽きる。

 隣の薫も何時もとは違い、心から『儚い……』と呟いている様だった。

 

 ____パシャリ

 

 その様子は絵画に描かれている麗人の如き美しさで、つい写真を撮ってしまった。後で千聖やひまりに送ろう。

 

(ふぅー……。盗撮で前科一犯か……悪くない)

 

 いや、悪いだろ。

 

 

 そう言えば、こころの別荘は何処にあるのだろうか。

 目の前に物凄く大きい施設? のような建物があるが肝心の別荘が見当たらない。

 

 

「なあ、こころ。別荘て何処にあるんだ?」

 

 

 その問いに対して、こころは笑顔で答える。

 

 

「……? なに言ってるの? この山全部に決まってるじゃない!」

 

 

 ……驚きを通り越すと如何なるか。

 この時、俺達は身を持って体験した。

 

 

 ◇◇◇

 

 

 こころのとんでも発言から完全復活した俺達はクロ服さんの案内で施設もとい別荘を周ったのだが……とても大変だった。

 

 

 _______case はぐみ

 

 

 

「わー!! なにあれ!? すごーい! ちょっと見てくるね!」

 

 

 

 はぐみは好奇心のままに駆けていく。

 ハハ、無邪気なはぐみを見てると微笑ましくな____っておい!! 

 

 

「ちょ待てぇぇぇぇぇい! はぐみはぐれるんじゃねぇ! 後で一緒に行こ? な? だから戻れぇぇぇぇぇ!!」

 

 

 は、はえぇ……。

 

 

 ________case 花音

 

 

「ふえぇ……。ここどこ……?」

 

「おーい!! かのぉぉぉぉん!!」

 

「あ、九十九君、ごめんね……。また迷っちゃって」

 

「ハァ、ハァ。いや、ハァ、直ぐ、ハァ、見つかって、ハァ、よかった……」

 

「ほ、ほんとにごめんね……」

 

「ふぅー……。皆んなのとこ戻ったら……薫と手を繋いで……はぐれないようにしてくれ……って、どうした?」

 

「え、えっとね、九十九君と手を繋いじゃ……だめかな?」

 

 

 かのぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉん!!! 

 

 

「えへへ……」

 

 

 ________case たえ

 

 

「ねぇ、九十九」

 

「ん? どうし……た……?」

 

 

 振り向いたらたえが兎を抱えていた。

 

 エマージェンシー! エマージェンシー! 

 如何やらたえが兎を召喚してしまったようだ! 至急応援を求む! ……何ぃ!? カップ麺作ってそれどころじゃないだぁ!? ふざけんじゃねぇ! 事件は脳内で起こってるじゃねぇ! 現場で起こってるんだッ!!! 

 

 

「拾ったの」

 

「はっ……! あ、そっか。ならしょうがないよな」

 

「うん。だから飼っていい?」

 

「なんでそうなった!!」

 

 

 クロ服さん曰く、たえが拾った兎は触れ合いコーナー、若しくはここで住んでいる黒服さんから脱走した兎らしい。

 

 ツッコミどころ多すぎだろッ!! 

 

 

 ________case こころ

 

 

 クロ服さんに連れられて風呂場を訪れた俺達は、その広さにそれぞれ感嘆の声をあげていた。

 

 

「露天風呂もあるから後でみんなで入りましょう!」

 

 

 こころの言葉で内心ほくそ笑む紳士()。

 

 仕方がないよな、だってこころが言うんだもの。だってアヴァロンだもの。あんなキラキラした瞳でそんなこと言われたら拒めませんよ。

 

 

「そうだよなこころ。旅と言ったら裸の付き合いが大切だよな」

 

「ええ、九十九の言う通りよ!」

 

「よしっ! じゃあ、後で仲良く「……九十九さん」入るわけねーだろーが!!! クロ服さん!! 男湯はどこだぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

「こちらでございます」

 

 

 

 ごめんこころ、魔王(紗夜)には勝てなかったよ……。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 そんなこんなで施設の案内も一通り終わり、俺達は昼食としてレストランのフルコースのようなご馳走を頂いていたのだが……

 

 

「九十九このお肉交換しよ? 私はこの葉っぱあげるから」

 

「あっ……こらたえ! 答えを聞かずにとってくんじゃねーよ!」

 

「隙ありー!!」

 

「香澄ぃぃ!!!」

 

「脇が甘いよ! つーくん!」

 

「はぐみまで……!! 俺朝飯食ってねーんだからな!! いい加減腹減ってんだよ!」

 

「……え? そうなの、つーくん。……ごめんね、はぐみ……知らなかったから……」

 

「いやいやいやいや!! うそうそ!! 朝飯食べてないなんて嘘ッ! だからはぐみ元気だせ!」

 

 

 

 その後、何とか元気になったはぐみを交えて午後の予定を決めることとなり、バトミントンをすることに決定した。

 

(バトミントンなら初心者同士でも大丈夫だよな。ガチ勢なんて居ないんだし)

 

 

 ──────

 

 ────

 

 ──

 

 

 バトミントンのコートに移動した俺達は取り敢えずペアを決めることになったのだが、俺は審判を申し出た為に眺めているだけだった。

 

 何故審判になったのか、理由は簡単だ。

 

 その方が、彼女達のエロい肢体を存分に堪能することが出来るからだ。

 スポーツウェアから延びる四肢は実に艶めかしい。特に太腿、俺の股間をダイレクトに刺激してくる。流石に不味いと思って視線を上にあげれば、大小様々な双子山に又してもクリティカルヒットを喰らう。

 

 くそッ! 一体何処に視線を向ければいいんだッ!! 

 

 

「九十九くん、何見てるのかなぁ?」

 

「ヒェッ……。何でもないです」

 

 

 一人で盛り上がっている内に決まったようだ。

 

 

 美咲&有咲 香澄&たえ りみ&花音 沙綾&薫

 はぐみ&こころ 紗夜&日菜

 

 ……なんかこの短い間に美咲と有咲の仲が物凄く縮まった気がする。

 それに紗夜もその二人と仲良くなったみたいだし……何があったのだろうか。

 

 ……まあ、いいか。仲良きことは素晴らしきかな。

 

 

 

 

「はーい、じゃあ、始めるぞー。最初は____

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「wow……」

 

 

 俺は審判台に座りながら眼前に広がる光景にそう呟かざるを得なかった。

 

 何故なら、こころとはぐみという身体能力お化けペアがチート姉妹に1ポイントも取れずに負けてしまったのだ。

 俺の予想だと互角だと思ったのだが……。

 しかし、これでは紗夜と日菜のペアは無失点のままバトミントンを終えることになってしまう。

 それだと少し面白くない。

 別に俺は紗夜と日菜のことが憎いからそう思ってるわけではない。

 紗夜と日菜のことは大好きだ、愛してるといってもいい、世界の中心で愛を叫びたいくらいだ。

 

 なら何故面白くないのか。

 

 

 それは________最強は俺だからだ。

 

 

 最強の敵ははぐみとこころじゃない。最強の王者は紗夜と日菜じゃない。この俺だ。

 ドヤ顔の日菜と、澄ましている様にみせて口角が上がるのを抑えきれてない紗夜を見てるとその思いが強くなる。

 

 俺はそれを証明するために審判台から降りると、薫が隣に来る。

 

 

「……行くのかい?」

 

「……ああ。久しぶりに本気を出したくなってな……」

 

「ふふっ、そうかい。なら私もついていこう」

 

「……いいのか?」

 

「当たり前じゃないか、()()()

 

 

 薫は何時もと同じ様な薄い笑みを浮かべているが、目は違った。本気の目だ。

 

 

「……ッ!! ありがとう、()()()()()()

 

 

 俺がそう言うと、薫は少しだけ頬を赤くして穏やかな表情に変わる。今の表情は間違いなく最強だ。

 

 それから俺は美咲に視線を向けると、美咲は『やれやれ』といって審判台に上ってくれる。

 

 

 _______ありがとよ、美咲。

 

 

 俺と薫がコートに入ると紗夜と日菜の顔が変わる。如何やら俺たちの只ならぬ様子に気付いた様だ。

 

 そして薫は静かな口調で、けれども全員の耳に届く声で囁く。

 

 

「彼のシェイクスピアが描いたロミオとジュリエットは悲劇の物語だ。愛し合う二人の仲は決して結ばれることはなかった。……だが、私と九十九の物語は違う。そうだろう? ロミオ」

 

 

 

 その言葉に俺も続く。

 

 

「ああ、俺とお前の物語は悲劇じゃねぇ……喜劇だ。巨悪を打ち滅ぼして大団円のハッピーエンド、誰も不幸にはさせねぇ。そうだよな、ジュリエット」

 

「ふっ」

 

 

 薫は拳を突き出してくる。わかってるよ相棒。

 

 俺と薫は拳をコツンと合わせる。

 

 

「……ねぇ、おねーちゃん。あたし達悪者にされてない?」

 

「……そうね、日菜。少し……不愉快だわ」

 

 

 

『ワンゲームマッチ、プレイ』

 

 

 美咲の号令で試合が始まった。

 最初のサーブは俺だ。

 身体が喜んでいるのがわかる。久しぶりの試合で高揚していてるのだろう。巡る血潮が熱い。鼓動も小刻みに鳴って緊張を強める。だが悪いことじゃない。緊張はベストコンディションに近い状態だ。俺は深く息を吐いて相手を見据える。

 

 紗夜も日菜も警戒している様だ。

 しかし、悲しいかな。俺の全力の前では如何なるものも凡愚と化す。

 

 そして俺はシャトルを手から離し、自身の最強の技を放つ。

 ある白髪の少女のバリスタから伝授された秘伝。

 

 

 

 ……喰らえ________________

 

 

 

 

「パトリオットサァァァァァブ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ____数分後

 

 

「……ま、参った」

 

『えぇ……』

 

 

 紗夜日菜には勝てなかったよ……。

 

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