思う存分遊んだ俺たちは、休憩を兼ねて沙綾が作ってきた弁当に舌鼓を打っていた。
弁当の中身はサンドウィッチに唐揚げ、玉子焼きなどで、これといって特別なものはない。
「……(モグモグ)」
味付けも同様だ。
隠し味などのアレンジは一切ない。
正に王道。
或いは凡庸。
しかし、箸が止まらない。
何かに取り憑かれたかの様に黙々と食べ進んでいく。
________何で……。
不意に、俺の心が呟いた。
________何で……、何で、何で、何でッ!?
そして、呟きは徐々に大きくなって叫びに変わり……
________……何で
こんなに美味いんだよ……。
弁当のあまりの美味さに感嘆していた。
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──ー
ー
沙綾の弁当に、食べながら一頻り感動した後、俺はモリモリ星人に変身して、ベントウを壊滅させるために殲滅を開始していた。
「……(モグモグ)」
サンドウィッチの具にはハム、チーズ、レタス、エッグサラダ、ありきたりと言っても過言ではないテンプレの嵐!!
だがしかーし!!
山吹ベーカリーお手製のパンと絶妙にマッチしているため──美味い。
娘さんを嫁に貰いたいくらいだ。
「……(モグモグ)」
唐揚げは、モモ肉に醤油や生姜で丁寧に下味を付けていたらしく、薄過ぎず濃過ぎずの丁度いい塩梅だった。
衣もちゃんと二度揚げされていて、外はカリッ、中はジューシーで文句の付け所がない至極の一品。
この唐揚げを作った人の太腿が如何に魅力的かがよくわかる。
うましーでーす♪ トゥットゥルー♪
「……(モグモグ)」
玉子焼きは純と紗南が喜ぶ様に甘めにされていた。勿論俺も大喜びである。
そして、その玉子焼きには焦げ目が一切付いておらず、中は火が通り過ぎずプルプルしていた。
作った本人の尻もプリプリしているし、技量が伺える素晴らしい品だ。
まいう〜。
「……(ゴクン)」
ふぅー……。美味かった……。
俺は周りの弁当箱を確認し、中身が空なのを確認する。
結構な量だったが、わんぱく星人三人の援護によってベントウは問題なく侵略出来た。
そのわんぱく星人であった純、紗南、あこは満足そうな表情で余韻に浸っている。
所謂メシの顔だ。
隣に座っていた沙綾は、そんなあこ達を見て優しく微笑んでいた。
________休日に仲良く遊ぶ家族ってこんな感じなのだろうか。
気付けばそんなことを考えていた。
それには特別なことなど一切なく、紛れもなく日常の一部だ。
だが、そこには確かな幸せがある。
金や権力では手に入れることができない本物の幸せというものが。
今俺は、それを感じているかもしれない。
成人もしていないガキが生意気かもしれないが、この気持ちは本物だ。
この光景には、無数にある幸せの形の一つが詰まっていると、俺は思った。
「……幸せ、だなぁ」
俺がそう言うと、沙綾はコテンと首をかしげて不思議そうな表情するが、俺とあこ達を見ると納得した様に、柔らかく微笑んで返してきた。
「そうだね♪」
◇◇◇
弁当を食べ終わった後、俺達は沙綾と紗南を加えて遊んだ。
それはもう存分に。午前中のキャッチボールが霞むってくらい激しく濃密な時間を過ごした。
おかげで全員身体はぼろぼろである。
純と紗南は疲れ過ぎて寝てしまい、帰ろうとしても起きなかったので、今は俺が純、沙綾が紗南を背負っている。
あこも疲労により最初の快活さは鳴りを潜め、俺の横で袖を掴みながら歩いていた。
「……こんな遊んだのは久々だな」
「そうだね、小学生以来かなー」
「あこもーへとへとだよぉー……」
「あこは一番はしゃいでたからねー」
「うん、だってすっごく楽しかったんだもん」
「ふふっ、私も」
会話を始めた沙綾とあこの声は完全に草臥れていたが、表情はどこかやりきった様に満足気だった。
多分俺も同じ顔をしているだろう。
当然だ。
今日は確かに疲れたが、それ以上に楽しかったのだから。
香澄風に言うなら、キラキラしていたから。
そんな心地良い疲労感なら、嫌悪する理由がない。
寧ろ招き入れるべき客だ。
そんなことを考えながら暫く歩くと、あこが袖をクンクンと引っ張ってきた。
「ねーねーつく兄、つく兄は今日たのしかった?」
そう言いながら、あこはそのくりんとした瞳で俺を見つめてくる。
俺はその一連の仕草に萌え萌えキュンキュンハートキャッチで危うくキュン死にするところだったが、背中の純のためにぐっと耐える。
「何言ってんだ、滅茶苦茶楽しかったに決まってるだろ」
俺のその返答に、あこはぱあっと明るくなり、花の様な笑顔で同意を示す。
「だよね!」
ズッキュ────ン!!!
はうぅ……! あこ……その顔は反則や……。
その後、それぞれの家に帰るまで、元気になったあこは俺の腕に身体を密着させ、それを見て対抗心を燃やした沙綾が、逆側の腕に自分の腕を密着させていた。
……正直、堪らんかったっす。