桃源郷を目指して ※ボツ   作:ツヅラP

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8話:“手作り弁当x家族=幸せ”幸福の科学に記された三大禁忌の内の一つ

 思う存分遊んだ俺たちは、休憩を兼ねて沙綾が作ってきた弁当に舌鼓を打っていた。

 

 弁当の中身はサンドウィッチに唐揚げ、玉子焼きなどで、これといって特別なものはない。

 

 

「……(モグモグ)」

 

 

 味付けも同様だ。

 隠し味などのアレンジは一切ない。

 正に王道。

 或いは凡庸。

 

 

 しかし、箸が止まらない。

 何かに取り憑かれたかの様に黙々と食べ進んでいく。

 

 

 

 

 

 

 ________何で……。

 

 

 

 

 

 

 不意に、俺の心が呟いた。

 

 

 

 

 

 ________何で……、何で、何で、何でッ!? 

 

 

 

 

 そして、呟きは徐々に大きくなって叫びに変わり……

 

 

 

 

 

 ________……何で

 

 

 

 

 

 

 こんなに美味いんだよ……。

 

 

 

 

 弁当のあまりの美味さに感嘆していた。

 

 

 

 ────

 ──ー

 ー

 

 

 沙綾の弁当に、食べながら一頻り感動した後、俺はモリモリ星人に変身して、ベントウを壊滅させるために殲滅を開始していた。

 

 

「……(モグモグ)」

 

 

 サンドウィッチの具にはハム、チーズ、レタス、エッグサラダ、ありきたりと言っても過言ではないテンプレの嵐!! 

 

 だがしかーし!! 

 山吹ベーカリーお手製のパンと絶妙にマッチしているため──美味い。

 娘さんを嫁に貰いたいくらいだ。

 

 

「……(モグモグ)」

 

 

 唐揚げは、モモ肉に醤油や生姜で丁寧に下味を付けていたらしく、薄過ぎず濃過ぎずの丁度いい塩梅だった。

 衣もちゃんと二度揚げされていて、外はカリッ、中はジューシーで文句の付け所がない至極の一品。

 この唐揚げを作った人の太腿が如何に魅力的かがよくわかる。

 うましーでーす♪ トゥットゥルー♪ 

 

 

「……(モグモグ)」

 

 

 玉子焼きは純と紗南が喜ぶ様に甘めにされていた。勿論俺も大喜びである。

 そして、その玉子焼きには焦げ目が一切付いておらず、中は火が通り過ぎずプルプルしていた。

 作った本人の尻もプリプリしているし、技量が伺える素晴らしい品だ。

 まいう〜。

 

 

「……(ゴクン)」

 

 

 ふぅー……。美味かった……。

 

 俺は周りの弁当箱を確認し、中身が空なのを確認する。

 結構な量だったが、わんぱく星人三人の援護によってベントウは問題なく侵略出来た。

 

 

 そのわんぱく星人であった純、紗南、あこは満足そうな表情で余韻に浸っている。

 所謂メシの顔だ。

 

 

 隣に座っていた沙綾は、そんなあこ達を見て優しく微笑んでいた。

 

 

 

 

 ________休日に仲良く遊ぶ家族ってこんな感じなのだろうか。

 

 

 

 気付けばそんなことを考えていた。

 

 

 それには特別なことなど一切なく、紛れもなく日常の一部だ。

 だが、そこには確かな幸せがある。

 金や権力では手に入れることができない本物の幸せというものが。

 

 今俺は、それを感じているかもしれない。

 成人もしていないガキが生意気かもしれないが、この気持ちは本物だ。

 この光景には、無数にある幸せの形の一つが詰まっていると、俺は思った。

 

 

「……幸せ、だなぁ」

 

 

 俺がそう言うと、沙綾はコテンと首をかしげて不思議そうな表情するが、俺とあこ達を見ると納得した様に、柔らかく微笑んで返してきた。

 

 

「そうだね♪」

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 弁当を食べ終わった後、俺達は沙綾と紗南を加えて遊んだ。

 それはもう存分に。午前中のキャッチボールが霞むってくらい激しく濃密な時間を過ごした。

 おかげで全員身体はぼろぼろである。

 純と紗南は疲れ過ぎて寝てしまい、帰ろうとしても起きなかったので、今は俺が純、沙綾が紗南を背負っている。

 あこも疲労により最初の快活さは鳴りを潜め、俺の横で袖を掴みながら歩いていた。

 

 

「……こんな遊んだのは久々だな」

 

「そうだね、小学生以来かなー」

 

「あこもーへとへとだよぉー……」

 

「あこは一番はしゃいでたからねー」

 

「うん、だってすっごく楽しかったんだもん」

 

「ふふっ、私も」

 

 

 会話を始めた沙綾とあこの声は完全に草臥れていたが、表情はどこかやりきった様に満足気だった。

 多分俺も同じ顔をしているだろう。

 当然だ。

 今日は確かに疲れたが、それ以上に楽しかったのだから。

 香澄風に言うなら、キラキラしていたから。

 そんな心地良い疲労感なら、嫌悪する理由がない。

 寧ろ招き入れるべき客だ。

 

 

 そんなことを考えながら暫く歩くと、あこが袖をクンクンと引っ張ってきた。

 

 

「ねーねーつく兄、つく兄は今日たのしかった?」

 

 

 そう言いながら、あこはそのくりんとした瞳で俺を見つめてくる。

 

 俺はその一連の仕草に萌え萌えキュンキュンハートキャッチで危うくキュン死にするところだったが、背中の純のためにぐっと耐える。

 

 

「何言ってんだ、滅茶苦茶楽しかったに決まってるだろ」

 

 

 俺のその返答に、あこはぱあっと明るくなり、花の様な笑顔で同意を示す。

 

 

「だよね!」

 

 

 ズッキュ────ン!!! 

 

 はうぅ……! あこ……その顔は反則や……。

 

 

 その後、それぞれの家に帰るまで、元気になったあこは俺の腕に身体を密着させ、それを見て対抗心を燃やした沙綾が、逆側の腕に自分の腕を密着させていた。

 

 ……正直、堪らんかったっす。

 

 

 

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