ファンタシースターオンライン2外伝 翠緑の残滓 作:水上小夜
「パイオニア計画」・・・ それは、母なる母星「コーラル」の衰えにより余儀なくされた大規模移民計画である。
無人探査機によって発見された惑星「ラグオル」に超長距離惑星間航行用の移民船「パイオニア1」が到着した。
移民団は調査を行い安全を確認、本格的に居住のための開発を開始。周辺地域の環境を整備し、生活の拠点となる「セントラルドーム」の建設に乗り出した。
・・・そして7年後。
「パイオニア1」からの招聘を受けて、本格的な第二移民船「パイオニア2」が惑星「ラグオル」を訪れる。
衛星軌道上に「パイオニア2」が到着する少し手前、セントラルドームの外で、今か今かと到着を待つ、1人の女の子がいた。
「とうとう来ちゃうのか…移民船第2号!」
180を超える大柄ながら、スレンダーなモデル体型の女性、水上 小夜(みずがみ さよ)は、小さめのツインテールを風になびかせながら空を見上げていた。
「くそぅ…どうしてこんな日に限って外の警備担当に当たっちゃうかな…一応ハンターズ所属で戦闘は出来るけどさ」
背中に背負った剣と盾を手に持つ。DBの剣と盾、軍でもそれなりに人気のある武器である。両脚にはポーチが1つずつ。右側にはハンドガン、ヤスミノコフ2000Hが、左側には中にフォトンジェネレーター…大気中のフォトンを取り込み、自分で使えるようにする装置が入っている。
「私は地質学者としてもっといろんなところに行けるようにするためにハンターズに入ったんだぞー!こんな事するために入ったんじゃないんだぞー!」
武器を軽く振り回しながら地団駄を踏む。
「いくらハンターズがお雇い組織といったってさぁ…半分強制でセントラルドームの警備ってどういう事なのさ…こういうの、軍の仕事じゃないの?」
水上は拗ねながら愚痴を続ける。
「まぁ、いつもより報酬がやたら多かったから、我慢するけど…」
水上は改めて空を見上げる。青い空に白い雲が少し浮かぶ。快晴といっても差し支えないだろう。
「この青空なら、軌道上に降りてきた船も見えるかな?…そういえばあの船には、あの子も乗ってるんだっけ。メールはずっとやり取りしてたけど、実際に会うのはいつぶりだろう…会うの、楽しみだなぁ…!」
水上はずっと握りっぱなしだった武器をしまう。
「さて…そろそろ軌道上に乗っかった頃だろうし、移民船側からの初通信が入る頃かな?」
彼女は完成したセントラルドームを振り返った直後…
セントラルドームが青白い光を放って爆発した。
しかし、彼女は見たのである。厳密には爆発したのではなく、突如現れた謎の巨大な何かによって、セントラルドームが爆破されたのを。
「こんな事─」
青い爆発は一気に広がり、水上も巻き込み…
ブルーバースト。後にこう呼ばれる事件の真相が紐解かれるのは、随分先の話である。
「うっ…」
目を開けると、青空が広がっていた。どうやら気絶していたらしい。
身体を起こして立ち上がる。背中を打ったようで少し痛いが、身体は自由に動く。大きな怪我もしていない。服も少し汚れてしまったが、損傷は見られない。
「一体何が…」
周囲を見渡す。先程居た場所とは違う場所に居た。森のど真ん中のようだ。
「セントラルドームの周辺は森だったけど…こんなに密集した場所なんてあったっけ…」
森の木々が高々と密集しているせいか、セントラルドームが見えない。水上は端末を取り出し、地図を開く。しかし、端末には大きく「UNKNOWN」の赤字が大きく出る。周辺の地図どころか、現在地の座標すら出ない。
「そもそもオフライン状態って…故障かな」
私用の携帯端末と軍の通信用端末を確認するも、全てオフライン状態だった。流石に全ての通信機器が一気にダメになったとは考えにくい。水上に焦りが見え始める。
「いくらなんでもこれはおかしいよね…」
水上は改めて手持ちを物を確認する。ジェネレーターとその触媒が数個、剣と盾、ハンドガン、緊急用の信号弾が1発、モノメイトとディメイトが数個、簡易な地質研究用機材と記録用の端末、通信機器2つ、それに3日分の携帯食糧。特筆すべきものは以上である。
「こんな森でサバイバル…なんて事にならなきゃいいんだけど…」
武器を簡単にメンテナンスしながら、今後の方針を考える。ここで救助を待つか、それとも自力で森を脱出するか…
「普通に考えれば、ここで救難信号を出して待つところなんだけど…」
水上は、気絶する前に見た爆発を思い出す。もしあれが幻覚ではなかったなら…恐らく、セントラルドームは壊滅的な被害になっているだろう。通信機器が機能しないのも一応の説明がつく。
「付近で危険な原生生物の出現報告もなかったはずだし、森自体はそんなに広大じゃなかったはず…調査の跡もどこかしらに残ってるだろうし、それを辿ればなんとかなるでしょ」
水上は、端末で救難信号を出しつつ、森を進むことにした。
「高台を探してみますか!」
「なにやら森が騒がしいですねぇ」
『リサ、少し良いか?』
「リサはいつでも大丈夫ですよぉ、ヒルダさん。何か面白そうな的が見つかりましたか?」
『的かどうかは分からないが、この付近で不可解な信号をキャッチした。一定周期で発しているようで、近くの原生種が反応して信号の発信元に向かい、その後反応が消失している』
「なるほどなるほどぉ…ダーカーですか?」
『いや、ダーカーの反応は見受けられない。だが、フォトンの反応がある。緊急用の回線で呼びかけてはいるが、呼びかけに応じていない。識別信号を出してないから、そもそもアークスですらどうかも分からん。正直なところ、何が起きているのかさえ不明だ』
「それでリサに調査を頼みたいわけですねぇ。了解です、ナビゲートお願いしまーす」
「この感じ…リサの知らない感覚ですねぇ。これは、撃ち甲斐がありそうですね…!ふふふ、ふふふふふふふ…!」
「ちょっと…話が違うんですけど…」
移動し始めて1時間ほど、水上は疲弊していた。
「凶暴な原生生物祭りじゃないの…どいつもこいつも見た事ないし…!」
水上は高台を探して東に移動しているのだが、少し歩く度に原生生物に襲われ、ろくに進めずにいた。今も原生種に襲われているところだった。
「次から次へと…!」
飛びかかってきたオオカミのような原生種、フォンガルフを最小限の動きで躱し、右手に持ったDBの剣で横っ腹を斬り裂く。着地出来ずに転がりながら倒れ込むフォンガルフに目もくれず、一緒に現れた数頭のガルフが次々と襲いかかる。
「ああもう鬱陶しい!」
水上は躱し、あるいは左腕の盾で受け流し、右手の剣、あるいは拳銃を引き抜いて的確に反撃していく。残り2頭になったところで、ガルフ達は
「1匹1匹は大したことないけど…数が、多すぎる!何でこんなに襲いかかってくるのさ!」